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「ゼロの(オンドゥル)使い魔-3」(2007/10/25 (木) 17:21:02) の最新版変更点
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ミスタ・コルベールはトリステイン魔法学院に奉職して二十年、中堅の教師である。二つ名は『炎蛇のコルベール』。『火』系統の魔法を得意とするメイジである。
彼は、先日『春の使い魔召喚』の際に、ルイズが呼び出した平民の青年のことが気にかかっていた。正確に言うと、青年の手に現れたルーンのことなのだが。珍しいルーンであった。それで、先日の夜から図書館にこもりっきりで、書物を調べているのであった。
彼は教師のみが閲覧を許される『フェニアのライブラリー』の中であった。
生徒たちも自由に閲覧できる一般の本棚には、彼の満足のいく回答は見つからなかったのである。
『レビテーション』、空中浮遊の呪文を使い、手の届かない書棚まで浮かび、彼は一心不乱に本を探っていた。
そして、その努力は報われた。彼は一冊の本の記述に目を留めた。
それは始祖ブリミルが使用した使い魔たちが記述された古書であった。
その中に記された一節に彼は目を奪われた。じっくりとその部分を読みふけるうちに、彼の目が見開いた。
古書の一部と、青年の左手に現れたルーンのスケッチを見比べる。
彼は、あっ、と声にならないうめきをあげた。一瞬、『レビテーション』のための集中が途切れ、床に落ちそうになる。
彼は本を抱えると、慌てて床に下りて走り出す。
彼が向かった先は、学院長室であった。
学院長室は、本塔の最上階にある。トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマン氏は、白い口ひげと髪を揺らし、重厚なつくりのセコイアのテーブルに肘をついて、退屈をもてあましていた。
彼は、今、秘書であるミス・ロングビルにセクハラ攻撃をしかけて、お説教をくらったところだ。
そんななか、勢いよくドアを開け、コルベールが部屋へ飛び込んだ。
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?」
ミス・ロングビルは何事もなかったように机に座っていた。オスマン氏もすでに腕を後ろに組んで、重々しい態度で蘭入者を迎え入れた。
「たた、大変です!」
「大変なことなど、あるものか。すべては小事じゃ」
「ここ、これ見てください!」
コルベールはオスマン氏に先ほど呼んでいた書物を手渡した。
「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。まーたこのような古臭い文献など漁りおって。そんな暇があるのなら、たるんだ貴族たちから学費を徴収するうまい手をもっと考えるんじゃよ。ミスター・・・なんだっけ?」
「コルベールです!お忘れですか!」
「そうそう。そんな名前だったな。君はどうも早口でいかんよ。で、コルベール君。この書物がどうかしたね?」
「これも見てください!
コルベールは剣崎の手に現れたルーンのスケッチを手渡した。
それを見た瞬間、オスマン氏の表情が変わった。目が光って、厳しい色になった。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
ミス・ロングビルは立ち上がり、部屋を後にする。それを見届け、オスマン氏は口を開いた。
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」
ルイズがめちゃくちゃにした教室の後片付けが終わったのは、昼休み前だった。
罰として、魔法を使って修理することが禁じられたため、時間がかかってしまったのである。といってもルイズは魔法の成功率ゼロといわれるほどなので、禁止されていなくても、その成果を期待できないのだが。
「とんだ災難だったな」
「うるさいわね」
ふたりで食堂に向かう途中、慰めるつもりで言葉をかけたが、逆に怒らせたらしい。
実は、剣崎一真(22)は彼女いない歴=年齢である。女性の感情の機微など理解できないのであった。
食堂につくと、剣崎は椅子をひき、ルイズに、座れ、と促す。
「とりあえず、腹いっぱい食べれば、嫌なことなんて忘れるって」
「・・・」
ルイズは無言で席に着く。剣崎は床におかれたスープの前に座ると、朝生徒たちがやっていたように祈りの言葉を唱える。
「始祖・・・ブリミ。女王様。ささやかなご飯をありがとうございます」
うろ覚えなため、少々おぼつかない感じになったが、なんとかそれっぽいものにはなった。
スープを引き寄せようと手を伸ばしたとき、皿がひょい、と持ち上がった。
「なんだよ?」
「なによ。ブリミって。私たちのこと馬鹿にしてるの?」
どうやら、つい先ほどの教室での事件から立ち直ってないらしい。
貴族だのなんだの言っているが、やはり悔しいのだろう。
「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、今日聞いたばかりだけど、ご飯の前にいうことくらいは憶えておきたくて・・・」
「嘘。あんたもどうせ、私のこと馬鹿にしてるんでしょ。ふん、平民のくせに・・・」
平民のくせに。なによ。
ルイズはそのまま机に突っ伏してしまった。どうやら、下手に慰めるより、昨日のように怒らせてやったほうが気分転換になって良かったのかもしれない。
ならば、実行してやる。
「そんなんで落ち込んでるから、ゼロのルイズなんだよ」
「あんですって!?」
「うわっ!た、立ち直り早いな・・・」
「あんたね、私が泣いてるとでも思ったの?私はね、ご主人様の心情も理解できないダメダメな使い魔を召喚してしまったことを嘆いていたのよ。そして、どんなお仕置きをするか、ってこともね」
墓穴を掘ってしまった。ルイズは全然、弱くなかったのだ。むしろ橘さんより強い。メンタル面で。
「あんた、ごはん抜き」
ルイズは先ほど奪った手スープを自分で飲んでしまった。
「お、俺の唯一の昼食が・・・」
がっくし、と落ち込むふりをしつつ、手はテーブルの高級料理に近付いていく。今なら、ルイズはスープを飲みきるのに夢中で気づかない。
あと10センチ。
あと5センチ。
あと1セン・・・
すんでのところで、ルイズに手首を掴まれる。もう食べ終わってしまったのか。
「はい止めー。ゼロって言った数だけご飯ヌキ!これ絶対!例外なし!」
結局、ルイズのご立腹もあり、剣崎の昼食はなしになった。
心を理解しろ、といわれてもどうしたらいいやら。
どうやら、自分は重すぎる役割を背負ってしまったらしい。
「それにしても、腹減ったなぁ」
暇すぎる。ルイズは昼食中。ほかの生徒たちもそれぞれ食事をしている。
「どうなさいました?」
振り向くと、大きい銀のトレイを持ち、メイドの格好をした素朴な感じの少女が心配そうにこちらを見つめている。カチューシャで纏めた黒髪とそばかすが親しみやすそうな雰囲気をかもし出している。
「いや、ちょっと昼メシを奪われてね」
少女はちらり、と剣崎の左手のルーンを見た。
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったていう・・・」
「俺を知ってるのか?」
「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ」
にっこりと笑顔で答えてくれた。なんていい子なんだろう。
ルイズとは大違いだ。
「君はメイジ?」
「いえ、私は違います。あなたと同じ平民です。
貴族の方々をお世話するために、ここでご奉仕させていただいてるんです」
なるほど。魔法使いの世界だと思っていたが、どうやら普通の人間もいるらしい。とりあえず、剣崎は挨拶をすることにした。
「俺は剣崎一真。よろしく」
「変わったお名前ですね・・・。私はシエスタっていいます」
シエスタっていうのか。
俺から聞いたら、そっちも変わった名前なんだけど。
とりあえず話すこともないので、それじゃ、と剣崎が行こうとしたところを、シエスタが呼び止めた。
「あの、もしかしてお腹すいてるんじゃないですか?」
「うん・・まぁ」
「こちらにいらしてください」
シエスタは歩き出した。
剣崎が連れて行かれたのは、食堂の裏にある厨房だった。
大きな鍋や、オーブンがいくつも並んでいる。そこで、コックやメイドが忙しそうに料理を作っている。
「ちょっと待っててくださいね」
剣崎を厨房の片隅に置かれた椅子に座らせ、シエスタは小走りで厨房の奥に消えた。そして、お皿を抱えて戻ってきた。皿の中には、温かいシチューが入っている。
「貴族の方々にお出しする料理の余りモノで作ったシチューです。
よかったら食べてください」
「ほんとうにいいのか?」
「はい。賄い食ですけど・・・」
やっぱりいい子だ。ルイズやらキュルケやら個性が強すぎる貴族とは違う。それに自分が今まで関わってきたあらゆる女性と違う。
優しくて、気が利く。しかも中々かわいいし。まさに理想の女性像である。
シチューを一口すすって口に運ぶ。おいしい。
「うまい。うまいな、これ」
「よかった。お代わりもありますから。ごゆっくり」
剣崎は夢中でシチューを食べた。
シエスタは、ニコニコしながら剣崎の様子を見つめている。
「なんで、ご飯、貰えなかったんですか?」
「ご主人様の心を理解できてない、ダメな使い魔だから・・・ってのと、ゼロのルイズって言ったから。
そしたら、スープを取られて、飲まれた」
「まぁ!貴族にそんなこと言ったら大変ですわ!」
「・・・慰めるつもりで言ったんだよ。
あいつ、落ち込んでたからさ、怒れば普通になるかなって思って」
「優しいんですね・・・」
シエスタはますます笑顔になって、剣崎を見つめてくる。
剣崎は空になった皿をシエスタに返した。
「うまかった。ありがとうな」
「よかった。お腹が空いたら、いつでも来てくださいな。
私たちが食べているものでよかったら、お出ししますから」
なんと。これで食事の心配は解消された。
少しルイズに反抗しても大丈夫かもしれない。
「ありがとう」
「いえ」
ふと、見ると、まだ厨房では人々が慌ただしく働いている。
「タダってのもなんだし、何か手伝うよ」
少し迷ってから、シエスタは笑みとともに言った。
「なら、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」
「ああ、分かった」
こういう手伝いなら、むしろ喜んで引き受けたい。
デザートをのせた大きい銀のトレイを運んで、剣崎はシエスタとともに食堂内を回っていた。
シエスタはトレイからはさみでケーキをつまみ、一つずつ貴族たちに配っていく。
妙に着飾った、気障な貴族がいた。薔薇をシャツのポケットに挿している。
「なぁ、ギーシュ!お前、今は誰とつきあっているんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
彼の周りの生徒たちが、口々に彼を冷やかしている。
ギーシュというらしいメイジは、すっと唇の前に指を立てた。
「つきあう?僕にそのような特定の女性はいないのだ。
薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
見ているほうが赤くなってくる。
なんでこんなに恥ずかしいことを堂々と言えるのだろうか。剣崎がそう思っていると、ギーシュのポケットからガラス製の小壜が落ちた。中では紫色の液体が揺れている。
剣崎は親切心で、ギーシュに向かって呼びかけた。
「これ、ポケットから落ちたぞ」
しかし、ギーシュは振り向かない。聞こえてないのか。
剣崎はトレイをシエスタに預けるとそれを拾い、ギーシュに突き出した。
「これ、落としたぞ。お前のだろ?」
受け取るそぶりがないので、とりあえずテーブルに置く。
ギーシュは苦々しげに剣崎を見つめると、その小壜を押しやった。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
その小壜に気づいた周囲の生徒たちが、大声で騒ぎ始めた。
「おお?その香水は、もしや、モンモラシーの香水じゃないのか?」
「そうだ!その鮮やかな紫色は、モンモラシーが自分のためだけに調合している香水だぞ」
「そいつが、ギーシュ、お前のポケットから落ちてきたってことは、つまりお前は今、モンモラシーとつきあっている。そうだな?」
「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが・・・」
ギーシュが言いかけたとき、後ろのテーブルに座っていた茶色いマントの少女が立ち上がり、ギーシュの席に向かって、コツコツと歩いてきた。
栗色の、かわいい少女だ。マントの色からして、一年生だろう。
「ギーシュさま」
そして、ボロボロと泣き始める。
「やはり、ミス・モンモラシーと・・・」
「彼らは誤解しているんだ、ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ・・・」
しかし、ケティと呼ばれた少女は、思いっきりギーシュをひっぱたいた。
「その香水があなたのポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ!さようなら!」
ギーシュは痛そうに頬をさすっている。
すると、遠くの席で見事な巻き毛の女の子が立ち上がった。
いかめしい顔つきで、かつかつとギーシュの席までやってきた。
「モンモラシー。誤解だ。
彼女とはただいっしょに、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで・・・」
ギーシュは首を振りながら言った。冷や汗が、つ、と額を伝っている。
「やっぱり、あの一年生に手、を出していたのね?」
「お願いだよ。『香水』のモンモラシー。
咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りでゆがませないでくれよ。
僕まで悲しくなるじゃないか!」
モンモラシーは、テーブルからワインの壜をつかむと、中身をギーシュの頭からかけた。
「うそつき!」
モンモラシーはそう怒鳴り、去っていった。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ。
顔をハンカチでふいてから、芝居がかった風に、ギーシュが言った。
そして、剣崎のほうを見る。
「君が軽率に、香水の壜なんかを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「どうするって。悪いのは二股してたお前だろ?」
ギーシュの友人たちが、どっと笑った。
「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」
ギーシュがわずかに赤くなる。
「いいかい?給仕君。僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき、知らないフリをしたじゃないか。話を合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」
「どっちにしろ、あれじゃあ、ばれてただろ。それに、あの子たちだって、かわいそうだ」
「給仕君、いいかい?」
ギーシュの言葉を遮るように、剣崎は言う。
「あと、俺は給仕じゃない」
「ふん・・・。ああ、君は・・・ゼロのルイズが呼び出した、平民じゃないか。そんな平民に機転を期待した僕が間違っていた」
「そうかよ」
いちいち癇に障るヤツだ。
軽く睨みつけると、ギーシュの目が光った、
「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「そんなの知るか」
「よかろう、君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ」
ギーシュは立ち上がった。
こういう捻くれたやつは再教育の必要がある。少しばかり痛い目を見てもらうとしよう。しかも、二股なんて羨ましい。許せない。
剣崎も袖をまくり、臨戦態勢になる。
ルイズに怒られたら、主人の名誉を守るためやった、とでもいえばいいだろう。例え、メシ抜きにされても、今はシエスタという大きなバックがついているのだ。恐れるものはなにもない。
「では、ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終えたら、来たまえ」
ギーシュはくるりと身を翻すと、食堂を出て行く。
ギーシュの友人たちが、わくわくした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。
一人だけ残っている。どうやら、剣崎が逃げださないように見張るらしい。
シエスタがぶるぶる震えながら、剣崎を見つめている。剣崎は軽く笑ってみせる。
「あんなやつ、すぐ倒せるって。心配ないよ」
「あ、あなた、殺されちゃう・・・」
「なんで?」
「貴族を本気で怒らせたら・・・」
シエスタはだーっと走って逃げてしまった。
そんなに強いのか、あのギーシュは。
後ろからルイズが駆け寄ってきた。
「あんた!勝手に何してんのよ!」
「ああ・・・ルイズか」
「ルイズか・・・じゃないでしょ!なに決闘の約束なんかしてるの!」
「いや・・だって、あいつは二股してたから・・・」
私怨も混じっているが。
「謝っちゃいなさいよ」
「どうしてだよ?」
「怪我したくなかったら、謝ってきなさい。
今なら許してくれるかもしれないわ」
「いや、それは無理だって」
「無理じゃない!いいから、早く謝ってきなさい!!!」
有無を言わせないルイズに、剣崎が悪戦苦闘していると、男子生徒が血相を変えて食堂内に走ってきた。
「どうしたんだ?」
生き絶え絶えなその生徒に、剣崎は話かける。
「広場が大変なことになってるんだ!!」
「大変なこと?」
ルイズが訝しげに呟く。
「赤い服の、見慣れないヤツがいきなり出て来て、ギーシュとあと何人かで決闘を・・・」
「・・・赤い服?」
剣崎の脳裏にカテゴリーKが思い浮かぶ。まさか、あいつがこの世界に来ているのか。
こっちにくる寸前までは、あいつと戦っていた。可能性はゼロじゃない。
「ルイズ、そこまで案内してくれ!」
「え、ええ?分かったわ」
すでに男子生徒の会話を聞きつけた何人もの生徒が広場へ向かっている。
その波をかき分けるように、剣崎とルイズは走った。
広場には、食堂で決闘の話を聞いていた生徒と、先ほどの話を聞いて集まった野次馬でごった返していた。
「どいてくれ!」
剣崎が強引に先頭へ出ると、そこで倒れている数人の生徒の姿があった。
そしてギーシュと、それを守るようにしてたたずむ甲冑を着た女戦士を見た。
ギーシュが向かいあう先には、予想通り、キングが立っている。
「あれ?僕に礼儀を教えてくれるんじゃなかったっけ?早く、教えてよ」
キングは、携帯電話をギーシュに向けながら、笑っている。
「キング!!」
剣崎はギーシュを庇うように、キングに殴りかかった。
しかし、それも当たる寸前で突如出現した盾に阻まれてしまう。
「なんだ。ブレイド。もう来ちゃったのか」
キングがつまらなそうに呟く。
「それより、なぜお前がこの世界にいる!」
「知らないよ。君と同じで気づいたらこの世界にいたんだ。
だから、暇つぶしにこいつらの相手をしてたってわけ」
キングは携帯をいじったままだ。
「でも、もう、いいや。ブレイド、たまには本気で相手してやるよ」
携帯をパチン、と閉じ、ポケットにしまうと、パンッと、キングが手を打った。それと同時に、
「ッ・・・!!」
10メートルは距離が離れていたであろう、ギーシュのいた空間にさっきの盾が出現し、弾き飛ばしていた。
ギーシュはそのまま数メートル、ごろごろと転がると、ぴくりとも動かなくなった。
近くにいた生徒が悲鳴をあげる。
「お前・・・!」
「はは!やっぱり、この世界でも人の強さってのは変わらないね!
何人かは、周りから妙な攻撃を仕掛けてきたけど、全部たいしたことなかったよ」
どうやら生徒の中には、キングを攻撃した者もいるらしい。
けど、こいつはきっとその全てをあの盾で防ぎきったのだろう。
キングを倒すには、まずあの盾をどうにかする必要がある。
ブレイバックルに、カテゴリーAのカードを挿入し、ベルト・シャッフルラップが腰に巻かれる。
「ちょっと待ってて!せ、先生呼んでくるから!
無理しないで、危なくなったら逃げなさいよ!」
少し混乱したルイズと何人かの生徒がばたばたと走り去って言った。
先生の早い到着を願いつつ、剣崎はターンアップハンドルを引いた。
「変身!!」
『Turn up』
機械音と共に、ブレイドアーマーを分解したオリハルコンエレメントが展開する。
剣崎はその光のゲートに向かって走り出す。
その先には、いつもと同じく余裕の態度の王がいた。
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