「るいずととら-6」(2007/06/30 (土) 04:44:10) の最新版変更点
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虚無の曜日。
部屋でキュルケと一緒に座り、静かに読書をしていたタバサは、窓をコツコツと叩く音に本から顔をあげた。
見ると、使い魔のシルフィードがきゅいきゅいと鳴きながら窓を叩いているのだった。
せっかくの虚無の曜日……タバサはシルフィードに『サイレント』の魔法をかけてしまうことも考えたが、途中で思い直して窓を開けた。
「何?」
「きゅいきゅいきゅい……」
シルフィードの言葉に、タバサは軽く頷く。
「あら、どうかしたの?」
先ほどから化粧に余念がなかったキュルケも顔をあげる。
タバサは読みかけの本と杖を手に取った。
「ルイズと使い魔がお出かけ。わたしもついていく」
「なんでよ」
「……恋は盲目」
窓の外では、シルフィードが盛んにしっぽを振りながら、タバサとキュルケをいまかいまかと待ちかまえていた。
キュルケは納得したように、やれやれとため息をつく。
「シルフィードが恋、ねぇ……さすがのあたしも専門外ね」
タバサとキュルケがシルフィードに乗って出発する少し前、ルイズの部屋である。
「武器ぃ? けっ、このわしに武器なんぞ必要かよ」
ルイズが武器を買いに行こうと提案すると、とらはギラリと爪を見せながらそう言った。
字伏たちは強力な牙と鋭い爪を持つ。たてがみも刀のように自在に操れるとらにとっては、全身が武器そのものである。
「ま、まあ、普段はいらないと思うわ、うん。でででも、人間の格好してるときなら、剣とか使えるんじゃない?
あんた、ギーシュの剣使って、あのゴーレムをばらばらにしたじゃない?」
「だがよ……」
そう言いかけて、ふと、とらは左手に刻まれたルーンを見た。ギーシュとの戦いが記憶によみがえる。
(あんときゃ、この呪印が光ってカラダが軽くなったな……術の効果か?)
なるほど、武器を持つことで術の効果があるなら、何か武器があるのも悪くないかもしれないと、とらは思い直す。
とらがそのように告げると、ルイズは喜んだ。
(ちちちょっとは、ご主人様に感謝するかしら?)
実は、ルイズがとらに武器を買ってやろうと思った理由はこれであった。
あのやけにあつかましく胸が不遜に大きい平民のメイドが、自分の使い魔を餌付けするのに対抗しようと、武器を買おうと言い出したのである。
そんなあさましい考えを抱きながら、ルイズはとらに訊いてみた。
「それで……どんな武器がいいの? やっぱり剣?」
「いや……槍、だな」
そう言ったとらが、かすかににやりと笑ったのを見て、何故だかルイズは胸が苦しくなった。
(なにかしら……へんなかんじ……ああもう! わたしのばかばかばか……)
不可解な胸の痛みを、机に頭をぶつけることで紛らわせながら、ルイズはぎゅっと杖を握り締めた……。
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虚無の曜日。
部屋でキュルケと一緒に座り、静かに読書をしていたタバサは、窓をコツコツと叩く音に本から顔をあげた。
見ると、使い魔のシルフィードがきゅいきゅいと鳴きながら窓を叩いているのだった。
せっかくの虚無の曜日……タバサはシルフィードに『サイレント』の魔法をかけてしまうことも考えたが、途中で思い直して窓を開けた。
「何?」
「きゅいきゅいきゅい……」
シルフィードの言葉に、タバサは軽く頷く。
「あら、どうかしたの?」
先ほどから化粧に余念がなかったキュルケも顔をあげる。
タバサは読みかけの本と杖を手に取った。
「ルイズと使い魔がお出かけ。わたしもついていく」
「なんでよ」
「……恋は盲目」
窓の外では、シルフィードが盛んにしっぽを振りながら、タバサとキュルケをいまかいまかと待ちかまえていた。
キュルケは納得したように、やれやれとため息をつく。
「シルフィードが恋、ねぇ……さすがのあたしも専門外ね」
タバサとキュルケがシルフィードに乗って出発する少し前、ルイズの部屋である。
「武器ぃ? けっ、このわしに武器なんぞ必要かよ」
ルイズが武器を買いに行こうと提案すると、とらはギラリと爪を見せながらそう言った。
字伏たちは強力な牙と鋭い爪を持つ。たてがみも刀のように自在に操れるとらにとっては、全身が武器そのものである。
「ま、まあ、普段はいらないと思うわ、うん。でででも、人間の格好してるときなら、剣とか使えるんじゃない?
あんた、ギーシュの剣使って、あのゴーレムをばらばらにしたじゃない?」
「だがよ……」
そう言いかけて、ふと、とらは左手に刻まれたルーンを見た。ギーシュとの戦いが記憶によみがえる。
(あんときゃ、この呪印が光ってカラダが軽くなったな……術の効果か?)
なるほど、武器を持つことで術の効果があるなら、何か武器があるのも悪くないかもしれないと、とらは思い直す。
とらがそのように告げると、ルイズは喜んだ。
(ちちちょっとは、ご主人様に感謝するかしら?)
実は、ルイズがとらに武器を買ってやろうと思った理由はこれであった。
あのやけにあつかましく胸が不遜に大きい平民のメイドが、自分の使い魔を餌付けするのに対抗しようと、武器を買おうと言い出したのである。
そんなあさましい考えを抱きながら、ルイズはとらに訊いてみた。
「それで……どんな武器がいいの? やっぱり剣?」
「いや……槍、だな」
そう言ったとらが、かすかににやりと笑ったのを見て、何故だかルイズは胸が苦しくなった。
(なにかしら……へんなかんじ……ああもう! わたしのばかばかばか……)
不可解な胸の痛みを、机に頭をぶつけることで紛らわせながら、ルイズはぎゅっと杖を握り締めた……。
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