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「ワイルドの使い魔-6」(2007/08/06 (月) 21:39:15) の最新版変更点
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気がつくと、僕はあの青い部屋に居た。
イゴールとエリザベスが僕とテーブルを挟みたたずんでいる。
「また、お目にかかりましたな」
・・・あれ?僕はどうして此処に居るんだろう?
確か、ギーシュに負けを認めさせて・・・そうだ、シエスタさんにちゃんと謝るように約束させた後、ルイズが急に駆け寄ってきたんだ。
確か『その力は何だ』とか、『なんで力を持ってた事を言わなかったのか』とか問い詰められたんだっけ。
そうこうしてる内に急に眠たくなって・・・
「そうですな、貴方様は再び意識と無意識の狭間に参られた。初めてのペルソナの発動の後は皆様同じような体験をなさいます」
・・・その口ぶり、あの力・・・ペルソナの事を知っているんだね。
そう、あの無数に浮かんだビジョンの中には、この部屋も混ざっていた。
心の海から浮かび上がるペルソナ・・・僕はここで無数の自分と向き合った。イゴールの手を借りて。
そして、エリザベス。彼女のビジョンは幾つもの意味で強烈だ。
いまこうして視線を向けると、微かに微笑まれた気がする。
このビジョンに関係あるのだろうか?
「・・・さて、貴方様には、どうやらペルソナについての詳しい説明は不要のご様子だ。ならば早速これと・・・お預かりしていた品々をお返しいたしましょう」
・・・?そう言って手渡されたのは、この部屋のような深い青色の鍵。そして、無数の統一性の無い物の数々。
これは、手製のチョーカー?車の鍵にバイクの鍵、何かの賞状や認定書みたいなものもある。
なんだろう・・・見てると、さっきみたいにビジョンが浮かんでくる。
暖かい親愛の心、かけがえの無い友達、別れ、約束、誓い・・・それに、愛しさ。
なんだろう・・・触れるだけで、何かが湧き上がって来る気がする。
「その鍵は、このベルベットルームのお客人である証。それらの品は、貴方様がかつて最後の時を迎える際に此処へ残されたものです。
再びこの部屋に立ち入られた貴方様にとって、必ずや必要となるものでしょう」
その言葉を聞くと同時に、また意識が遠くなる。
以前ここに来た時のように。
「今度は貴方様の意思で此処へ立ち寄られる事でしょう。その時をお待ちしておりますぞ」
薄れる意識の中で、イゴールの言葉は消える事無く心へ届いていた。
「・・・ん・・・?」
「っ!?」
まぶしい光を感じて寝返りを打つと、隣から驚いた様な気配が伝わってきた。
何だろう?軽く目を開けると、ぼんやりする光の中で、ルイズが慌てたように突っ伏す姿が辛うじて見えた。
・・・?何をしてるんだろう?
はっきりとしない意識でそんな事を思って、ようやく自分が固い床じゃなくてベッドに寝ている事に気がつく。
あれ?このベッドはルイズの・・・?何で僕がベッドでねてて、ルイズがベッドの横の椅子に座って寝たフリをしているんだろう?
心底不思議でルイズを眺めていると、ドアが開いてメイド服のお姉さんがやってきた。
「・・・シエスタさん?」
「キタロー君、目は覚めた?」
優しげに微笑んでるメイドさんは、確かにシエスタさんだ。
手にはトレイ。パンや軽いサラダといった食事が乗っている。
「昨日は急に倒れたから心配したんですよ?」
「・・・あ・・・うん、何だか急に眠たくなったから・・・つい寝ちゃって」
「困った子ね。でも、怪我がなくてよかったわ」
まぁ、決闘自体はお互い怪我は無かったけど、酷く疲れたのは確かだったなぁ。
やっぱり、あのビジョンのように・・・ペルソナを呼ぶなら、銃のようなアレを使ったほうがいいのかな。
そんな風に物思いにふけっていると、ベッドの隣の小机に朝食を並べながら、シエスタさんはルイズを一瞥して、不意に僕の耳元に唇を寄せて囁いてきた。
「ありがとう、ね。キタロー君」
「え?」
「あの後ね、あの貴族のギーシュ様が謝りに来てくれたの。『動転していたとは言え、女性に向ける暴言ではなかった。どうか許して欲しい』って」
「・・・ギーシュ、約束・・・守ったんだ」
決闘の目的が果たせたなら、今の今まで眠る事になったのも許せるかな・・・
耳朶をくすぐる吐息にくすぐったさを感じながら、そんな事を思って。
「でも、私、キタロー君にも謝ってもらわないといけないわ」
「・・・え・・・!?」
続けて告げられた思いもよらない言葉に絶句した。
「だって、キタロー君は平民じゃなくてメイジなんでしょう?私に嘘をついたわ」
ああ、そういう事か。
確かに、あの力・・・ペルソナは、普通じゃないのはたしかだよね。
メイジの魔法の一種と思っても不思議じゃないかもしれない。
「違うよ。僕は・・・魔法は使えない。あれは僕にも良くわからない力なんだ」
これは嘘じゃない。いくつかのビジョンを見た後でも、あの力・・・ペルソナ能力が何なのかといわれれば、僕は答える事が出来ない。
心の力・・・そう答えるのが精一杯だと思う。
「でも、あんな力があるって先に言ってくれれば、私だってあんなに心配はせずに済んだわ。反省してください」
「いや、僕もアレを使ったのは昨日が「言い訳しない!」「ごめんなさい」
あ、胸をそらして腰に手を当てた『怒ってるぞ』ポーズだ。
でも、そのポーズ・・・スタイルいい人がやると目のやり場に困るなぁ・・・
「うぅ・・・反省してます」
「ダメ、ゆるしてあげません」
うわ、ホントに怒ってる?機嫌直してほしいなぁ・・・正直、シエスタさんには嫌われたくないし。
これは逆らわない方が懸命だよね。
「本当に反省してるなら、私の言う事を一つだけ聞く事。いい?」
「・・・な、何かな・・・?」
な、何を言われるんだろう?イモの皮むき?洗濯の手伝い?それくらいなら・・・
え?な、何!?何で僕を引き寄せるの?なんで僕の首に腕を回して・・・っ!?
「私のこと、これから・・・シエスタって呼んで・・・ね?」
「・・・何、調子に乗ってんのよ・・・人の頭の上でぇぇぇっ!!!」
うわ!そういえばルイズが居たんだった!!
地獄の底から響くような声出してゆっくり身体を起こしてる・・・目が完全に据わってるし!?
何か蛇でも髪に仕込んでるみたいにウネウネ動いてるけど、それってもしかして魔法!?魔法なの!?
「ひ、ひぇぇぇぇっ!?」
「ル、ルイズ・・・落ち着こう。落ち着こうよ・・・そうだ、素数を「やかましぃぃぃぃ!!!」
直後起こった爆発は、僕をベッドごと中庭まで吹き飛ばしていた。
咄嗟にかばえたシエスタさんは無事だし、僕はペルソナのお陰か無傷だったのが救いとは言え、お陰で朝食は黒コゲ。
午前は空腹と戦うことになりそうだった。
そんな調子で始まったキタローの一日は、昨日とは大きく変わっていた。
主な要因は、やはり決闘で見せたあの力だ。
貴族達は彼を一種のエルフの亜種とでも思ったのか、只の平民扱いはしなくなった。
その代わりに、決闘を幾人かが申し込んできた。どうやらギーシュに勝ったキタローを倒して名を上げたいらしい。
「疲れるし、どうでもいい」
もっとも、そういった決闘の申し込みにキタローは一切応じなかったが。
変わったと言えば、昼食も大きく変貌を遂げていた。
シエスタに招かれるままに向かった厨房で
「俺は貴族と魔法は大嫌いなんだ!」
「はぁ・・・」
「お前さんは魔法みたいな力を使ったな?」
「そ、そうだけど・・・」
「だが、お前さんは平民のシエスタの為に命さえ張ってくれた。だから、ワシはお前さんのことは気に入った!」
厨房を預かるマルトー親父にいたく気に入られたらしく、腕によりをかけた料理を振舞ってもらえるようになった。
正直、昨日から考えれば2食ほど抜いていた事になるので非常にありがたい。
本能のままに食べていると、今度はその食べっぷりを気に入られたらしく、妙に意気投合してしまう。
「で、この料理だけど・・・こんな調理法は出来る?」
「ほう?そりゃ聞いた事無いやりかただが・・・面白いな」
元の世界の料理を幾つか教えてしまったりもした。
余談だが、これが後にトリスティン料理と呼ばれる新しい料理の形を生むことになる。
そして午後の授業があり、その夜。
キタローは学園から少し離れた砂地に立っていた。
古く半ば崩れた城砦が取り囲むそこは、攻撃的な魔法の訓練を行う際に使われる演習場だった。
二つの月が淡い光で照らす中、佇むのは二つの影。
「・・・こんな所でしか話せない話って、何ですか?」
「正確には話ではないのだけれどもね。私は、生徒のためにも君のことを知る必要がある」
既に揺らめく幻影・・・オルフェウスを呼び出したキタローと。
杖を手に、既にかつての異名・・・炎蛇を無数に呼び出した教師コルベールと。
さらには崩れ落ちた城砦の影から、二人を見つめる二つの視線。
その時、その地に集まった者たちだけが、ゼロと呼ばれた少女が一体『何』を呼び出したのか・・・知る事になる。
気がつくと、僕はあの青い部屋に居た。
イゴールとエリザベスが僕とテーブルを挟みたたずんでいる。
「また、お目にかかりましたな」
・・・あれ?僕はどうして此処に居るんだろう?
確か、ギーシュに負けを認めさせて・・・そうだ、シエスタさんにちゃんと謝るように約束させた後、ルイズが急に駆け寄ってきたんだ。
確か『その力は何だ』とか、『なんで力を持ってた事を言わなかったのか』とか問い詰められたんだっけ。
そうこうしてる内に急に眠たくなって・・・
「そうですな、貴方様は再び意識と無意識の狭間に参られた。初めてのペルソナの発動の後は皆様同じような体験をなさいます」
・・・その口ぶり、あの力・・・ペルソナの事を知っているんだね。
そう、あの無数に浮かんだビジョンの中には、この部屋も混ざっていた。
心の海から浮かび上がるペルソナ・・・僕はここで無数の自分と向き合った。イゴールの手を借りて。
そして、エリザベス。彼女のビジョンは幾つもの意味で強烈だ。
いまこうして視線を向けると、微かに微笑まれた気がする。
このビジョンに関係あるのだろうか?
「・・・さて、貴方様には、どうやらペルソナについての詳しい説明は不要のご様子だ。ならば早速これと・・・お預かりしていた品々をお返しいたしましょう」
・・・?そう言って手渡されたのは、この部屋のような深い青色の鍵。そして、無数の統一性の無い物の数々。
これは、手製のチョーカー?車の鍵にバイクの鍵、何かの賞状や認定書みたいなものもある。
なんだろう・・・見てると、さっきみたいにビジョンが浮かんでくる。
暖かい親愛の心、かけがえの無い友達、別れ、約束、誓い・・・それに、愛しさ。
なんだろう・・・触れるだけで、何かが湧き上がって来る気がする。
「その鍵は、このベルベットルームのお客人である証。それらの品は、貴方様がかつて最後の時を迎える際に此処へ残されたものです。
再びこの部屋に立ち入られた貴方様にとって、必ずや必要となるものでしょう」
その言葉を聞くと同時に、また意識が遠くなる。
以前ここに来た時のように。
「今度は貴方様の意思で此処へ立ち寄られる事でしょう。その時をお待ちしておりますぞ」
薄れる意識の中で、イゴールの言葉は消える事無く心へ届いていた。
「・・・ん・・・?」
「っ!?」
まぶしい光を感じて寝返りを打つと、隣から驚いた様な気配が伝わってきた。
何だろう?軽く目を開けると、ぼんやりする光の中で、ルイズが慌てたように突っ伏す姿が辛うじて見えた。
・・・?何をしてるんだろう?
はっきりとしない意識でそんな事を思って、ようやく自分が固い床じゃなくてベッドに寝ている事に気がつく。
あれ?このベッドはルイズの・・・?何で僕がベッドでねてて、ルイズがベッドの横の椅子に座って寝たフリをしているんだろう?
心底不思議でルイズを眺めていると、ドアが開いてメイド服のお姉さんがやってきた。
「・・・シエスタさん?」
「キタロー君、目は覚めた?」
優しげに微笑んでるメイドさんは、確かにシエスタさんだ。
手にはトレイ。パンや軽いサラダといった食事が乗っている。
「昨日は急に倒れたから心配したんですよ?」
「・・・あ・・・うん、何だか急に眠たくなったから・・・つい寝ちゃって」
「困った子ね。でも、怪我がなくてよかったわ」
まぁ、決闘自体はお互い怪我は無かったけど、酷く疲れたのは確かだったなぁ。
やっぱり、あのビジョンのように・・・ペルソナを呼ぶなら、銃のようなアレを使ったほうがいいのかな。
そんな風に物思いにふけっていると、ベッドの隣の小机に朝食を並べながら、シエスタさんはルイズを一瞥して、不意に僕の耳元に唇を寄せて囁いてきた。
「ありがとう、ね。キタロー君」
「え?」
「あの後ね、あの貴族のギーシュ様が謝りに来てくれたの。『動転していたとは言え、女性に向ける暴言ではなかった。どうか許して欲しい』って」
「・・・ギーシュ、約束・・・守ったんだ」
決闘の目的が果たせたなら、今の今まで眠る事になったのも許せるかな・・・
耳朶をくすぐる吐息にくすぐったさを感じながら、そんな事を思って。
「でも、私、キタロー君にも謝ってもらわないといけないわ」
「・・・え・・・!?」
続けて告げられた思いもよらない言葉に絶句した。
「だって、キタロー君は平民じゃなくてメイジなんでしょう?私に嘘をついたわ」
ああ、そういう事か。
確かに、あの力・・・ペルソナは、普通じゃないのはたしかだよね。
メイジの魔法の一種と思っても不思議じゃないかもしれない。
「違うよ。僕は・・・魔法は使えない。あれは僕にも良くわからない力なんだ」
これは嘘じゃない。いくつかのビジョンを見た後でも、あの力・・・ペルソナ能力が何なのかといわれれば、僕は答える事が出来ない。
心の力・・・そう答えるのが精一杯だと思う。
「でも、あんな力があるって先に言ってくれれば、私だってあんなに心配はせずに済んだわ。反省してください」
「いや、僕もアレを使ったのは昨日が「言い訳しない!」「ごめんなさい」
あ、胸をそらして腰に手を当てた『怒ってるぞ』ポーズだ。
でも、そのポーズ・・・スタイルいい人がやると目のやり場に困るなぁ・・・
「うぅ・・・反省してます」
「ダメ、ゆるしてあげません」
うわ、ホントに怒ってる?機嫌直してほしいなぁ・・・正直、シエスタさんには嫌われたくないし。
これは逆らわない方が懸命だよね。
「本当に反省してるなら、私の言う事を一つだけ聞く事。いい?」
「・・・な、何かな・・・?」
な、何を言われるんだろう?イモの皮むき?洗濯の手伝い?それくらいなら・・・
え?な、何!?何で僕を引き寄せるの?なんで僕の首に腕を回して・・・っ!?
「私のこと、これから・・・シエスタって呼んで・・・ね?」
「・・・何、調子に乗ってんのよ・・・人の頭の上でぇぇぇっ!!!」
うわ!そういえばルイズが居たんだった!!
地獄の底から響くような声出してゆっくり身体を起こしてる・・・目が完全に据わってるし!?
何か蛇でも髪に仕込んでるみたいにウネウネ動いてるけど、それってもしかして魔法!?魔法なの!?
「ひ、ひぇぇぇぇっ!?」
「ル、ルイズ・・・落ち着こう。落ち着こうよ・・・そうだ、素数を「やかましぃぃぃぃ!!!」
直後起こった爆発は、僕をベッドごと中庭まで吹き飛ばしていた。
咄嗟にかばえたシエスタさんは無事だし、僕はペルソナのお陰か無傷だったのが救いとは言え、お陰で朝食は黒コゲ。
午前は空腹と戦うことになりそうだった。
そんな調子で始まったキタローの一日は、昨日とは大きく変わっていた。
主な要因は、やはり決闘で見せたあの力だ。
貴族達は彼を一種のエルフの亜種とでも思ったのか、只の平民扱いはしなくなった。
その代わりに、決闘を幾人かが申し込んできた。どうやらギーシュに勝ったキタローを倒して名を上げたいらしい。
「疲れるし、どうでもいい」
もっとも、そういった決闘の申し込みにキタローは一切応じなかったが。
変わったと言えば、昼食も大きく変貌を遂げていた。
シエスタに招かれるままに向かった厨房で
「俺は貴族と魔法は大嫌いなんだ!」
「はぁ・・・」
「お前さんは魔法みたいな力を使ったな?」
「そ、そうだけど・・・」
「だが、お前さんは平民のシエスタの為に命さえ張ってくれた。だから、ワシはお前さんのことは気に入った!」
厨房を預かるマルトー親父にいたく気に入られたらしく、腕によりをかけた料理を振舞ってもらえるようになった。
正直、昨日から考えれば2食ほど抜いていた事になるので非常にありがたい。
本能のままに食べていると、今度はその食べっぷりを気に入られたらしく、妙に意気投合してしまう。
「で、この料理だけど・・・こんな調理法は出来る?」
「ほう?そりゃ聞いた事無いやりかただが・・・面白いな」
元の世界の料理を幾つか教えてしまったりもした。
余談だが、これが後にトリステイン料理と呼ばれる新しい料理の形を生むことになる。
そして午後の授業があり、その夜。
キタローは学園から少し離れた砂地に立っていた。
古く半ば崩れた城砦が取り囲むそこは、攻撃的な魔法の訓練を行う際に使われる演習場だった。
二つの月が淡い光で照らす中、佇むのは二つの影。
「・・・こんな所でしか話せない話って、何ですか?」
「正確には話ではないのだけれどもね。私は、生徒のためにも君のことを知る必要がある」
既に揺らめく幻影・・・オルフェウスを呼び出したキタローと。
杖を手に、既にかつての異名・・・炎蛇を無数に呼び出した教師コルベールと。
さらには崩れ落ちた城砦の影から、二人を見つめる二つの視線。
その時、その地に集まった者たちだけが、ゼロと呼ばれた少女が一体『何』を呼び出したのか・・・知る事になる。
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