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#navi(ゼロの少女と紅い獅子)
トリステイン魔法学院、学院長室。院長のオールド・オスマンは野外の喧騒も何処吹く風と言わんばかりに
使い魔のモートソグニルに餌をやりながらくつろいでいた。
もっとも、現在学院の教職員の中でこれほど落ち着き払っているのは彼のみである。他の職員は先程突然姿を現した
謎の竜モドキのもたらした被害や生徒の安否の確認に奔走していた。それは彼の秘書であるミス・ロングビルも例外ではなく
彼女も今は席を外していた。
その学院長室にノックの音が響く。
「あいとるよ」
顔を上げる事もなくオールド・オスマンが応じる。
「失礼します、オールド・オスマン。報告したい事が」
入ってきたのはコルベールであった。
「明日の朝、緊急の職員会議を行うのはしっとると思うがの。それとも、それ程緊急かね?」
「先にお耳に入れておいたほうが何かと都合がよろしいかと」
その台詞に、オールド・オスマンが顔を上げる。この老人の顔から感情を読み取る事は難しい、クソ真面目な顔をして
平気で女性の尻を撫で回したりする。もっとも、今回はそれなりに話を聞く気はあるらしいが。
「君は現場にいたそうじゃな。君があの竜を追い払ったとは思えんのだがね」
「お察しの通りです。あの二匹の竜を追い払ったのはミス・ヴァリエールの使い魔です」
オールド・オスマンは無言で先を促す。
「正直、私もまだ疑い半分ですが。上空のゲートから突然飛び出してきて竜を圧倒すると、ミス・ヴァリエール
を守るように立ち回りました。あぁ、因みにその時は赤い球だったのですが、いつの間にかコントラクト・サーヴァント
が終わっておりその時には人の姿をしておりました」
聞き入っていても、オールド・オスマンの表情は変わらない。
そして頭を一かきして、
「とり合えず、竜は勝手に消えうせたという事にしとこうかの。教員達には流石に説明せねばなるまいが、生徒達の
不安を無暗に煽る事はなかろう。王室の方はわしが適当に誤魔化しておく。一応ミス・ヴァリエールは事情聴取じゃの、使い魔と一緒に」
そう言って、椅子に身を預けるオールド・オスマンであった。
一方その頃、ルイズは自室でゲンと向き合っていた。生徒達には万一に備えて自室から出ないようにとお達しが出ていたので、夕食代わりに
厨房から失敬してきたパンをかじっている。
「どう見ても、普通の人間よね。それも平民」
ルイズがゲンをまじまじと見つめる。ゲンの今の格好は、平均的なトリステインの一平民青年の服装である。
「えっと、えむ……。何だっけ?」
「M78星雲、そこから来た。まあ、正確には敵を追っていたんだが」
「敵ってさっきのブサイクドラゴン?」
「そうだ、アレはレッドギラスとブラックギラス。だがアレはおまけだ、黒い球がいただろう。奴が俺の目標だ」
「何者なの? って言うかあの黒いのも貴方くらいの知能があるわけ?」
ゲンは頷いて続ける。
「マグマ星人、それが黒い球の正体だ。狡猾で冷酷、自分の欲望のためなら何でもする奴だ」
「そう言うのを追っ掛けてるって事は、ゲンは衛兵か何かなの?」
ルイズの質問にゲンは暫らく考えて、
「と言うより自警団かな。規模は随分大きいけどね」
ふうん、と返すルイズ。まさか宇宙全域をその警備対象にしているとは夢にも思わないだろうが。
「でさ、その、まぐませーじん、が何かしたの。て言うか、ここで何かする気?」
「分からない」
ゲンの即答にルイズは一瞬ポカンとする。そして気を取り直すと、
「はぁ? じゃあ貴方は何をしたか分からない人をおっかけたの。そりゃ誰だって逃げるんじゃない?」
「奴らは一族郎党で既に幾つもの星を侵略し蹂躙している、そしてこれからもだ」
「星って、あの空の星の事?」
ルイズが今一ゲンの言う事を理解してなさそうなので、彼は説明を変えた。
「君たちの価値観で言うなら奴一人で、そうだな……王国を幾つも蹂躙している。支配するでもなくただ破壊するためだけに」
その言葉でやっと理解したか、ルイズは途端に顔色を変えた。
「そ、そんなのが来ちゃったの!? なら、王国に知らせないと!」
だが、慌てるルイズとは対照的にゲンは落ち着いている。
「傲慢な言い方だが、君らの力ではどうしようもない。君たちの魔法と言うのがどれ程の力を秘めているか俺は知らないが
かつてマグマが現れた世界はここより文明が進んでいた、にも拘らず奴には手も足も出なかった」
「そんな……」
「それに気になることがある。奴はここに来るときゲートを何処に繋がっているか分かったような動きをしていた、
もしこの世界の侵略が目的ならとっくに始まっているはずだ。俺に追われて慌てていたにしても妙だ」
「そんな事に頭が回らなかっただけじゃないの?」
ルイズが気のない返事を返す。
「だといいんだが、とにかく下手に動いて刺激したくない。穏便と言うのも変な話だが、とにかく出方を待つ」
「うん、まあ、それは良いんだけどさ」
ルイズはそわそわしている。
「私の話もしていいかしら?」
「うん? ああ、すまない。えっと、俺は君の使い魔ということだったな。具体的に何をすればいいんだ」
ルイズはコホンと似合わない咳払いをすると説明を始める。
「使い魔には、三つの能力を持つとされてるわ。まず一つは主の目となり耳となること
「つまり俺の見たもの聞いたものが君にも見えたり聞こえたりすると。で、どうなんだ」
途端に渋い顔を浮かべるルイズ。
「何も見えないわね……まあ良いわ。次に使い魔は主の望むものを見つけてくるのよ、例えば秘薬ね。コケとか硫黄とか何だけど」
そこで、彼女は言葉を切ってゲンに向き直る。
「……無理、よね。幾らなんでも」
「時間がかかるな。ここの言葉、口語は不思議と理解できてるが文字は何を書いてるかあまり分からん」
そう言いながらゲンは机の上にあった本に手を伸ば表紙の文字を読み出した。
「ええっと、基の、礎の理を論ずる……」
「『系統魔法の基礎理論』よ。何よ読めるんじゃない」
ルイズが少し驚いてみせる。
「意味が分かるまでは時間がかかるな、勉強すれば何とか……。まあ、それは一まず置いといて、もう一つは?」
促されて、ルイズが頷く。
「うん、コレが一番大事なんだけど。使い魔はその身を挺して主を守ること。……ねえ、あの赤い球が貴方の本当の姿?」
「いや、あれは移動形態だ。今の姿では君らと基本的には変わらない、むしろ魔法と言うアドバンテージがある分君らの方が
有利かもしれんな」
「ん、まあメイジ同士が戦う事になる事は当分なさそうだし。今のままでも……」
そう言いながらルイズはゲンの方を見る。
決して筋骨隆々と言うわけではないが、服の上からでも無駄のない引き締まった体であろうことが分かる。十分に
力を発揮できないと言っても歴戦と自称するなら自信があるのだろう。
「十分強そうだしね」
「まあ、暴漢の撃退くらいなら任せてくれ」
微妙な回答だったがそれでもルイズは頷くと、ベッドに向かった。
「ま、護衛が必要な事なんてまず無いわ。だから貴方には当分雑用をやってもらうけど、いいわね」
「世話になるのだから仕方ないな」
満足げに頷いて彼女は続ける。
「朝は私より早く起きて、水を汲んでくること。部屋の掃除、衣類の洗濯、出来るわよね?」
「まるで召使だな……ここは学校だろう。不服は無いが、そう言ったことは自分でするんじゃないか?」
「貴族はそんな事しないわよ」
さも当然と言った風なルイズの回答に一瞬ゲンは複雑な表情を浮かべたが、ルイズがその表情を確認する前に真顔に戻った。
「それにしても……、よく俺の話を信じる気になったな。普通なら俺の頭が疑われるんだが」
「目の前に貴方だけ来たなら、貴方は今頃牢獄の中だったでしょうね」
そう言ってルイズは毛布に包まって、思い出したように顔を出して、
「リネン室にいけばシーツとマット位はあると思うわ。それじゃ、お休みなさい」
ルイズが寝息を立てだしたのを確認して、ゲンはそっと部屋を出た。別にリネン室に行くわけではない、彼はそのまま
寮の外へ出た。
空を見上げる。満天には無数の星と大きな二つの月、彼はそれを暫らくじっと睨んでいたが、
「やはり、異世界か……」
と、小さく呟いた。
宇宙のあらゆる場所からでも星の位置さえ見れば大体の場所は把握できるが、今見上げたのはまったく見た事の無い
星空であった。
それでも彼は次の行動に移る。腕を高々と上げると光の球を大空に飛ばした。球は空のかなたに消えた後、彼にしか見えない
文様を天に写した。宇宙規模で情報を送るウルトラサインである。
これが光の国に届く確証は無かったが、できる事はやっておきたかった。
「それにしても……」
まさか年端も行かない女性の召使い、いや彼女らに言わせれば使い魔か、に成るとは思いもよらなかった。美山家の三人や
トオルと同じように接するわけにはいかなさそうだ。
――トオル、元気でやってるか? 俺はまた居候だよ――。
ゲンはそのまま夜風に吹かれていた。
さて、生徒達は外出禁止、教員も対応に追われているとなれば自然と校内の見回りはなおざりになっていた。おまけに夜ともなれば
もともと真面目に見回りをする宿直もいないため。学院一帯はひっそりと静まり返っていた。
その静かな闇夜にまぎれて、本塔に忍び寄る影が一つあった。
「一仕事終わったついでによってみたは良いけど、無駄足だったね」
土くれのフーケ。現在トリスタニア全域を荒し回っている盗賊である。つい先程、トリスタニアの貴族宅で仕事を終え
ついでに怪獣の被害を受けた魔法学院に目をつけて現れたのだった。
彼女は丹念に宝物庫付近の壁をヒビでも入ってないかと調べていたのだが、ふぅと小さくため息をついた。
「そう上手い事宝物庫を壊してはくれないか。ま、いいさね。ゆっくり頂こうじゃないか」
そう呟いて再び闇夜にまぎれて消える、つもりだった。だがこの余りの有利さに油断があったか、本塔一階つまり食堂入り口で
問答する二人に気が回っていなかった。
「ああ、シエスタ! その美しい黒い髪が、魅惑の肢体が、僕を惑わせる! どうか僕の愛に応えてくれたまえ!」
「あ、あの、ミスタ・グラモン……お気持ちは嬉しいのですが、あの、その、仕込みを終わらせないと皆さんの明日の朝食が……」
「恥ずかしいのかい? 大丈夫、僕に任せてくれたまえ。ボクは君のその可憐な動作全てが愛しい!」
『アルヴィーズの食堂』の入り口で問答していたのは女好きで有名なギーシュとメイドのシエスタであった。以前から狙っていた
――彼に言わせれば愛を振りまこうと思っていた――のだが昼は両者とも忙しく、またギーシュはモンモランシーを初めとする
何人かの女性の(彼に言わせれば)誤解を招きかねないので接点が無かったのだが、今回の騒動による静かな夜を好機と見たギーシュは
シエスタに愛を振りまこうとここで待ち構えていたのだった。
ただし暇なのはギーシュだけであり、シエスタは今この時もまだ仕事が残っているのだが。
「ああ、君の仕事の邪魔をしたくないんだ。しかし君の美しさがボクをたぶらかすのさ! ああ、なんと言うことだ!」
ギーシュがクネクネしながら言葉を続ける。シエスタはもう困惑してると言うより引いているのだが、貴族相手に余り
強気に出るわけにもいかずほとほと弱っていた。
どうしよう、ひっぱたいてでも退散してもらおうかしら? でもそんな事して怒らせたら……。ああ、どうすれば……。
そう悩むシエスタともう聞かれてもいないのにひたすら言葉を続けるギーシュの直ぐ後ろに一人の人物が降り立つ、言うまでも無く
土くれのフーケであった。
ギーシュの背後に降りたため位置的にシエスタと目が合う。
「え、えぇ?」
「ちっ、こんな所で何を……」
「ああ、シエス……ん?」
三者三様の反応、沈黙は一瞬だった。
「な、何奴? 賊か!」
ギーシュがとっさに杖を抜く。フーケも同時に杖を抜いたが直ぐにそれを折りたたむと踵を返して駆け出した。
フーケにしてみれば魔法でギーシュを倒す事など造作も無いが、土系の盗賊が出たとなればフーケ参上でございと宣伝する
ようなものである。既にトリスタニアで仕事をした後ここに訪れたとあっては仕事がしにくくなるのは必定、フーケの
望むところではなかった。それでも一応牽制用に呪文は唱えておく。
「おのれ、逃がすか! シエスタ君は衛兵を呼んでくれたまえ。僕は奴を追いかける」
「そんな、危ないですよ! 何かあったらどうするんですか」
「心配してくれるとは嬉しいよシエスタ。だが、背を向けて逃げるメイジに遅れを取る僕ではない!」
まったく根拠の無い自信だったが、それだけ言うとギーシュも駆け出した。
「ああ、と、とにかく衛兵の人たちに知らせなくちゃ」
ギーシュに確たる勝算があるかと言えば応えは否である。だが、シエスタの手前逃げ出すわけには行かなかったし、
意外にも敵は逃亡した。これがギーシュのいつもは燻ってる勇気に無駄に火をつけることになった。
「男を上げるチャーンス!!」
軽い興奮状態の今の彼に冷静な判断は少し難しいのであった。
ゲンがぼんやり夜風に当たっているところに、それは現れた。
「何だってんだい一体、化け物が現れたってのに!」
校舎の方から走ってきたフーケは一人毒づくと懐から短剣を取りだし、速度を緩めぬままゲンに突っ込む。
「怪我したくなきゃどきな!」
その切っ先を余裕を持って交わすゲン、続けて手刀を手首に叩き落す。堪らず短剣を落とすフーケ、だがもう片手に
握りっぱなしの杖を短く振るった。
「何だ、これは!?」
ゲンの足に土で出来た手が絡みつく。その手をもう片方の足で蹴り砕くものの、その隙にフーケは一目散にその場を
離れた。
その時になって、先程フーケが走ってきた方から今度はギーシュが走ってきた。彼は息を切らせながらゲンに尋ねる。
「君、怪しい者が走ってこなかったかい? フードを深く被った奴だ」
「ああ、あっちの方に走っていったが」
ゲンが指で示し応える。
ギーシュは礼を言って再び走り出した。が、突然止まるとゲンの方に向き直った。
「君、見ない顔だな。平民のようだが何者だ?」
「おれはおおとりゲン。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールに召喚された使い魔だ」
ゲンがありのままに応えるがそれは逆効果だった。
「ハッ、バカも休み休みに言いたまえ! 幾ら彼女が魔法の才能が絶望的だからといって、幾らなんでも平民を
呼び出すわけが無いじゃないか。何処で彼女の事を知らないが、そのような嘘ではこのギーシュ・ド・グラモンは騙されんぞ!」
薔薇の造花の杖を振るいギーシュが叫ぶ。多少自己陶酔が入っているが本人は気にしない。
「いや、嘘じゃないんだが。ほら、この左手を見てくれ」
「いい加減にしたまえ、それ位はどうにでもなる。さあ、ここで何を……。ん、まてよ」
そこでギーシュは言葉を切り暫らく黙考した。そして、
「そうか、貴様がさっきの悪漢だな! そうやって通りすがりの平民を装えば何とか成ると思ったか! だが
相手が悪かったな!」
「話を聞いてくれ、俺はさっきの奴とは別人だ!」
ゲンが弁解するが、ギーシュはもう聞く耳を持たない。
「問答無用! おとなしく縄につくか、ボクに成敗されるか……」
彼がそう言いながら杖を振るう。千切れた造花がみるみる内に変化していき、やがて一体の女戦士の像が現れる。
「選びたまえ!」
ギーシュの掛声とともにワルキューレがゲンに襲い掛かる、繰り出される鉄拳を瞬時に交わすゲン。
「えぇぇい!」
そのまま反射的に下から拳を胴に叩き込む。ワルキューレが一瞬浮き上がるほどの衝撃だったが、痛みを感じない青銅の戦士は
続けて合わせた拳を振り下ろす。クロスガードで辛うじて受け止めると、ゲンは今度は正面から蹴りを入れて相手を吹っ飛ばした。
「くっ、や、やるじゃないか! ワルキューレ出ろ!」
振るわれた造花が舞い散り青銅の戦士が現れる。都合七体のワルキューレの登場である。
「さあ、どうする! まだやるか」
「お願いだ! 話を聞いてくれ!」
「断る! 言っておくが手加減できないぞ!」
ワルキューレ一体では相手にならなかったのがショックだったか、ギーシュには焦りが見える。だがそれ故ゲンを倒せば
手柄になるとの考えもあった。
ゲンはジリジリと詰まる間合いを計りながら考える。怪我をさせるわけにはいかない、だがこの数では手加減は無理だ。吹き飛ばして
ギーシュを巻き込まないとは言い切れない。さりとてつかまれば面倒な事になる。もう十分面倒な状況ではったが。
せめて武器があれば。ふとそう思い、慌てて懐に手を伸ばすとそれはあった。
マックナイフ、ハイマンガンスチール製の特殊戦闘用ナイフだ。かつて彼が所属したチームの標準装備である。
(これでいけるか……)
ゲンはマックナイフを懐で握り締める。すると突然左手に刻まれたルーンが輝きだした、同時にナイフが手に吸い付くように
なじみ始める。
「何だ!?」
「ルーンが光っている……まさか」
二人が一瞬あっけに取られたがそれのつかの間。ギーシュのワルキューレが仕掛ける、正面から迫るワルキューレの顔面に蹴りを叩き込み、
続けて側面から伸びた突きを交わすと、その肘にナイフを振るって破壊する。更に逆手に持ち帰ると背後に迫ったワルキューレの胴体に
再びナイフを突き立て動きを封じた。
「イィヤァァ!!」
「こ、この……ワルキューレ、集まれ!」
気合の雄叫びを上げるゲンと、残ったワルキューレを密集させるギーシュ。次の動きで勝負が決まるのは両者理解している、互いの緊張が
最高潮になった次の瞬間、
「動くなあ!! 大人しくしろ!」
ようやく、学園の衛兵が駆けつけてきたのだった。衛兵は槍を構えるとゲンを取り囲んだ。
ワルキューレ四体に訓練された衛兵数名。今の状態でもゲンならば全力で戦えば負けることは無いが、それはもう
一撃必殺で相手を倒す必要があった。
ゲンは手を高々と掲げた。
「ミスタ・グラモン、大丈夫ですか!?」
シエスタが遅れて到着するのを見て、ギーシュが緊張を忘れてクネクネと動き出す。
「ああ、いとしのシエスタ! この窮地に駆けつけてくれるなんて! 素晴らしい! 素晴らしいよ!!」
「あああああの、とにかく泥棒が捕まって良かったです……」
その時、校舎の方から騒ぎを察知したか何人かが駆けつけてきた。その中には桃色がかったブロンドの少女もいる。
「ゲン!? ちょっとなにやってんのよ。アンタ達、すぐに槍を下ろしなさい! ギーシュ、これはどういう事!」
ルイズが血相を変えて駆け寄ってきて、すぐさまギーシュを問いただす。
「な、その男は、本当に、君の、その、使い魔なのか?」
「だったら何! 早くワルキューレを仕舞いなさいよ。って言うかゲン! アンタもいきなり何やってんの!?」
「スマン、騒動に巻き込まれてしまった」
その時になって人垣を分けてコルベールがやってきた。
コルベールは当事者達を落ち着き払って見渡して、
「ふむ、事情を説明してもらえるかな?」
第二話 終わり
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