「24の使い魔」(2007/10/06 (土) 22:30:40) の最新版変更点
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「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「おいおい、あんまり召喚が出来ないもんだから、そこらへんの平民を雇ったんじゃないのか?」
失敗に次ぐ失敗を繰り返すこと24回。
ルイズの召喚魔法で現われたのは、ほっそりした黒髪の美人だった。
「ミスタ・コルベール! やりなおしをさせて下さい!」
あまりの事にやりなおしを要求するルイズだったが、コルベール先生はにべもない。
春の使い魔召喚は神聖な儀式だ、やり直しは認められないの一点張り。
「でもっ、平民が使い魔だなんて聞いたことありません!」
「実は私、平民じゃなくて貴族なんです」
「ええっ!?」
「なんですと!?」
召喚された使い魔の突然の発言に驚くルイズとコルベール先生。
貴族を召喚したとなると、場合によっては国際問題にもなりうる大変な事件だ。
「ほ、本当に貴族なのですか?」
「ええ、嘘です」
困惑しながら聞いたコルベール先生に、しれっとした顔で答える女性。
「本当は私、エルフなんです」
「ええええええ、エルフー!?」
ズサッと音をたてて女性から離れるルイズ。
他の生徒も一様に数歩後ろに下がっている。それほどにエルフは恐れられているのだ。
「どどどどどうせまた嘘なんでしょう? だって耳が長くないじゃない!」
「私の父はエルフだったんですが、人間だった母と恋に落ちて、私が生まれたんです。
でも、二人の仲を認めない周囲の人達によって二人は……そして私もあわや……」
「そんな事があったのですか……おかわいそうに、ミス、えーっと……」
「ひとみです」
「ミス・ヒトミ。それでは本当に、あなたはエルフの血を引いているのですね?」
悲痛な表情で同情したようにコルベール先生が言う。
彼は基本的に平民にも分け隔てなく優しい人物だ。
もちろん、ひとみと名乗った女性が美人だからというのも無関係では無いが。
「ええ、もちろん嘘です」
「なんですかそれはーっ!!」
ガクっとこけるコルベール先生。
周囲の生徒達も一気に脱力してしまう。
その中からいち早く立ち直ったのはルイズだった。
「ミスタ・コルベール! やっぱりこんな嘘つきの使い魔なんて嫌です!! やり直しをさせて下さい!」
「ダメですよミス・ヴァリエール。きちんと契約しないと、進級できませんからね?」
「ううううう……仕方ないわ。こうなったらさっさと契約よ」
「契約……さては私にインチキな商品を売りつけて身包みをはがそうという魂胆ですね?」
「そーゆー契約じゃないわよ!」
「そうですか、安心しました。ではこの契約書にサインをお願いしますね」
「えーっと、ここで良いのかしら……って、ちがーう! 貴方が私と契約するんじゃなくて、私が貴方と契約するのよっ!!」
「まぁまぁ、べつにどっちでも良いじゃないですか」
「良くないわよ! 大体何よこの契約書は! 『私は貴方に全財産を譲渡します』? こんな契約するワケないでしょう!」
「ちっ」
「アンタ今『ちっ』て言ったぁ!!」
「しかたありません。お詫びに貴方と契約をしましょう」
「は、はじめっからそうすれば良いのよ」
「そのかわり、私の身の回りの世話と秘薬の原料を探してくる仕事、それと私の護衛は貴方がやって下さいね」
「逆でしょうがソレっ! って言うかなんでそんなに詳しいのよ!」
「ゼロの使い魔は全巻読んでますから」
「ナニよソレ?」
「もちろん嘘です。これなんてエロゲな小説なんか全然読んでません。
12巻なんか覗きとか百合とか大変な事になってるじゃないですか」
「キッチリ読んでるじゃないのーっ!!」
「タバサの冒険の2巻は今月発売なんですよね?
この近くにライトノベルが置いてる本屋さんってありますか?」
「知るかーっ!」
「でもラノベって店員さんにオタクの人が居ないとレーベルの絞りが甘かったり、在庫の揃いが悪くて大変なんですよシャナさん?」
「そーゆーこと言うの禁止! 二重の意味で禁止よっ!」
「うるさい! うるさい! って言ってください。メロンパンあげますから」
「要らないから黙れ!」
「24のひとみ実写ドラマも10月放映なのでお見逃し無く」
「ますます知るかーっ!!」
凄い勢いでボケるひとみと突っ込むルイズ。
「い…いいかげんに……ゼイ……ハァ……そのしょうも……ない発言を、やめ……ハア」
「あら、それじゃあ私は必要ないって事ですよね? では失礼しますねー」
「え!? あ、ちょっと! ハァ、ハァ、ってゆーか、ゼイ、しょうもない発言が、ハァアンタの存在意義なの……?」
ついに息切れしたルイズがゼーハーと息を整え、周囲の誰もがポカーンと呆れているうちに、スタコラと逃げ出してしまった。
既に息が切れて追いかける体力も無いルイズ。
この後当然、クラスメイトから「召喚した使い魔に逃げられた」と馬鹿にされてしまうのだった。
こうしてルイズの春の使い魔召喚儀式は失敗。
失意に崩れ落ちそうな少女は、追い討ちのように学院長室へ呼び出しを受けてしまう。
「ああ、きっと留年を通告されるんだわ……お父さまやお母様やお姉さまになんて言おう……」
思い足取りで階段を登り、いっそこのまま何処か知らない国に出奔してしまった方が楽かと思い悩みながら、
ルイズは学院長室の立派で大きなドアをノックした。
「どうぞ、入って下さい」
中から女性の声が聞こえる。
しかし、それは秘書のミス・ロングビルの声ではなかった。
ついにセクハラに耐えかねて新しい秘書に代わったかと思いながらドアノブに手をかける。
「鍵はかかってますから。あと開けると爆発するトラップが」
「そんなワケあるかー! 見つけたわよ私の嘘つき使い魔!」
蹴破るぐらいの勢いで扉を開け、学院長室へ転がり込むルイズ。
「はい、嘘です」
「なんでこんな所に居るかは聞かないわヒトミ! とにかく私の進級のために契約しなさい!!」
「ダメですよルイズさん。先生をヒトミなんて呼び捨てにしちゃあ」
「誰が先生よ! もうアンタの嘘はお腹一杯なの!」
「いや、ミス・ヴァリエール。それは本当じゃ」
「え?」
ギギギと音がするような動きで首をめぐらせた先に居たのは、学院長のオールド・オスマン。
「ミス・ヒトミは今日から我が学院の教師になった。
それに伴い、ミス・ヴァリエールの進級は特例として認められたので、安心なさい」
優しく言葉をかけてくれる学院長。
しかし、ルイズにとってはもっと気になる部分があった。
「ヒトミ、先生?」
「はい」
あまりの理不尽な展開に目の前が暗くなる。
どうせオールド・オスマンは美人だからとかそんな理由で教師にしてしまったに違いない。
トリステイン魔法学院オワタ。
そう思いながら、ルイズの意識は暗転していった。
「ってお話が冒頭から全部嘘なんですけどね」
そんな声を遠くに聞きながら。
「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「おいおい、あんまり召喚が出来ないもんだから、そこらへんの平民を雇ったんじゃないのか?」
失敗に次ぐ失敗を繰り返すこと24回。
ルイズの召喚魔法で現われたのは、ほっそりした黒髪の美人だった。
「ミスタ・コルベール! やりなおしをさせて下さい!」
あまりの事にやりなおしを要求するルイズだったが、コルベール先生はにべもない。
春の使い魔召喚は神聖な儀式だ、やり直しは認められないの一点張り。
「でもっ、平民が使い魔だなんて聞いたことありません!」
「実は私、平民じゃなくて貴族なんです」
「ええっ!?」
「なんですと!?」
召喚された使い魔の突然の発言に驚くルイズとコルベール先生。
貴族を召喚したとなると、場合によっては国際問題にもなりうる大変な事件だ。
「ほ、本当に貴族なのですか?」
「ええ、嘘です」
困惑しながら聞いたコルベール先生に、しれっとした顔で答える女性。
「本当は私、エルフなんです」
「ええええええ、エルフー!?」
ズサッと音をたてて女性から離れるルイズ。
他の生徒も一様に数歩後ろに下がっている。それほどにエルフは恐れられているのだ。
「どどどどどうせまた嘘なんでしょう? だって耳が長くないじゃない!」
「私の父はエルフだったんですが、人間だった母と恋に落ちて、私が生まれたんです。
でも、二人の仲を認めない周囲の人達によって二人は……そして私もあわや……」
「そんな事があったのですか……おかわいそうに、ミス、えーっと……」
「ひとみです」
「ミス・ヒトミ。それでは本当に、あなたはエルフの血を引いているのですね?」
悲痛な表情で同情したようにコルベール先生が言う。
彼は基本的に平民にも分け隔てなく優しい人物だ。
もちろん、ひとみと名乗った女性が美人だからというのも無関係では無いが。
「ええ、もちろん嘘です」
「なんですかそれはーっ!!」
ガクっとこけるコルベール先生。
周囲の生徒達も一気に脱力してしまう。
その中からいち早く立ち直ったのはルイズだった。
「ミスタ・コルベール! やっぱりこんな嘘つきの使い魔なんて嫌です!! やり直しをさせて下さい!」
「ダメですよミス・ヴァリエール。きちんと契約しないと、進級できませんからね?」
「ううううう……仕方ないわ。こうなったらさっさと契約よ」
「契約……さては私にインチキな商品を売りつけて身包みをはがそうという魂胆ですね?」
「そーゆー契約じゃないわよ!」
「そうですか、安心しました。ではこの契約書にサインをお願いしますね」
「えーっと、ここで良いのかしら……って、ちがーう! 貴方が私と契約するんじゃなくて、私が貴方と契約するのよっ!!」
「まぁまぁ、べつにどっちでも良いじゃないですか」
「良くないわよ! 大体何よこの契約書は! 『私は貴方に全財産を譲渡します』? こんな契約するワケないでしょう!」
「ちっ」
「アンタ今『ちっ』て言ったぁ!!」
「しかたありません。お詫びに貴方と契約をしましょう」
「は、はじめっからそうすれば良いのよ」
「そのかわり、私の身の回りの世話と秘薬の原料を探してくる仕事、それと私の護衛は貴方がやって下さいね」
「逆でしょうがソレっ! って言うかなんでそんなに詳しいのよ!」
「ゼロの使い魔は全巻読んでますから」
「ナニよソレ?」
「もちろん嘘です。これなんてエロゲな小説なんか全然読んでません。
12巻なんか覗きとか百合とか大変な事になってるじゃないですか」
「キッチリ読んでるじゃないのーっ!!」
「タバサの冒険の2巻は今月発売なんですよね?
この近くにライトノベルが置いてる本屋さんってありますか?」
「知るかーっ!」
「でもラノベって店員さんにオタクの人が居ないとレーベルの絞りが甘かったり、在庫の揃いが悪くて大変なんですよシャナさん?」
「そーゆーこと言うの禁止! 二重の意味で禁止よっ!」
「うるさい! うるさい! って言ってください。メロンパンあげますから」
「要らないから黙れ!」
「24のひとみ実写ドラマも10月放映なのでお見逃し無く」
「ますます知るかーっ!!」
凄い勢いでボケるひとみと突っ込むルイズ。
「い…いいかげんに……ゼイ……ハァ……そのしょうも……ない発言を、やめ……ハア」
「あら、それじゃあ私は必要ないって事ですよね? では失礼しますねー」
「え!? あ、ちょっと! ハァ、ハァ、ってゆーか、ゼイ、しょうもない発言が、ハァアンタの存在意義なの……?」
ついに息切れしたルイズがゼーハーと息を整え、周囲の誰もがポカーンと呆れているうちに、スタコラと逃げ出してしまった。
既に息が切れて追いかける体力も無いルイズ。
この後当然、クラスメイトから「召喚した使い魔に逃げられた」と馬鹿にされてしまうのだった。
こうしてルイズの春の使い魔召喚儀式は失敗。
失意に崩れ落ちそうな少女は、追い討ちのように学院長室へ呼び出しを受けてしまう。
「ああ、きっと留年を通告されるんだわ……お父さまやお母様やお姉さまになんて言おう……」
思い足取りで階段を登り、いっそこのまま何処か知らない国に出奔してしまった方が楽かと思い悩みながら、
ルイズは学院長室の立派で大きなドアをノックした。
「どうぞ、入って下さい」
中から女性の声が聞こえる。
しかし、それは秘書のミス・ロングビルの声ではなかった。
ついにセクハラに耐えかねて新しい秘書に代わったかと思いながらドアノブに手をかける。
「鍵はかかってますから。あと開けると爆発するトラップが」
「そんなワケあるかー! 見つけたわよ私の嘘つき使い魔!」
蹴破るぐらいの勢いで扉を開け、学院長室へ転がり込むルイズ。
「はい、嘘です」
「なんでこんな所に居るかは聞かないわヒトミ! とにかく私の進級のために契約しなさい!!」
「ダメですよルイズさん。先生をヒトミなんて呼び捨てにしちゃあ」
「誰が先生よ! もうアンタの嘘はお腹一杯なの!」
「いや、ミス・ヴァリエール。それは本当じゃ」
「え?」
ギギギと音がするような動きで首をめぐらせた先に居たのは、学院長のオールド・オスマン。
「ミス・ヒトミは今日から我が学院の教師になった。
それに伴い、ミス・ヴァリエールの進級は特例として認められたので、安心なさい」
優しく言葉をかけてくれる学院長。
しかし、ルイズにとってはもっと気になる部分があった。
「ヒトミ、先生?」
「はい」
あまりの理不尽な展開に目の前が暗くなる。
どうせオールド・オスマンは美人だからとかそんな理由で教師にしてしまったに違いない。
トリステイン魔法学院オワタ。
そう思いながら、ルイズの意識は暗転していった。
「ってお話が冒頭から全部嘘なんですけどね」
そんな声を遠くに聞きながら。
終わり
週間少年チャンピオン連載の「24のひとみ」から
嘘つき美人教師ひとみ先生召喚でした。
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