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(カァカァ ギャアギャア ギャア ギャアギャア……)
(カランコロン カランコロン カラン コロン)
やあ、人間の皆さん、今晩は。松下一郎です。昨夜はテラカオスで失礼しました。
今宵も変わらずのご盛況、なにより乙でございます。
……って、いきなり死んでるッ!!? さらば、大亜門!(違う人)
さて、『使い魔くん千年王国』第一部終了ということで、最終の投下に参りました。
思えば初投下が八月の下旬。時の過ぎるのは早いもので、彼岸花が満開ですよ。
ところで彼岸花って、有毒でお墓の周りに咲くから、『死人花』『地獄花』とも、言うんですねぇ……。
(ギャアギャア カァカァ ギャア ギャアギャア……)
「こ……これは、何事です!? 何が、ここで起きたのですか!?」
翌日の午後。アンリエッタ王女は、ユニコーンに跨り魔法衛士隊を率いて、ようやくタルブに到着した。
そこで彼女が見た物は、完全に焦土となったタルブの村であった。
その跡地にいくつか天幕が張られ、生き残った者たちが治療を受けていた。
キュルケが彼女の姿を見かけ、声をかける。
「あなたは、アンリエッタ王女! よくぞお出で下さいました!!
あの、あちらで、ルイズたちが治療を受けています」
「ええっ、ルイズが!? な、なぜ、どうしたのですか!!?」
「彼女たちの活躍で、アルビオン艦隊は跡形もなく全滅したのですよ。
お見せしたかったといいますか、ご覧にならなくてよろしかったといいますか……」
あの光景を見たキュルケの顔は、なお蒼白だった。
王女は急いで馬を降り、教えられた天幕へ駆けつける。そこには、力尽きて昏睡しているルイズと松下がいた。
「あ、ああ……ルイズ!!! それに、使い魔さん!」
「いいえ、彼は『メシア』ですわ、王女様」
傍で看護している少女が、毅然とそう言った。
「あの……貴女は、どなた?」
「お初にお目見えいたします。トリステイン魔法学院の使用人、シエスタでございます」
王女は戸惑った顔を見せたが、魔法衛士隊や追って来た重臣たちを集めると、
アルビオンとの緒戦に勝利した事を力強く宣言する。
「我々は、彼女たちの活躍と始祖ブリミルの加護により、奇跡的に敵艦隊を『追い払う事』に成功しました。
とりあえず、今回の戦いで犠牲になられた方々に、黙祷と哀悼の意を捧げます」
丁重に王宮に運ばれたルイズと松下は、三日三晩昏睡状態にあった。
そして四日目の朝、二人は同時に目を覚ました。
「ふわぁぁあああああ、ああ、よく、寝た」
「ええ、よおおおく寝たわ。かつてなくバッチリの気分よ!」
付きっ切りで看護していたシエスタや『信者』、タルブの村人は、歓呼の声を挙げる。
「メシア! ああ、『我らのメシア』が復活されたわ!!」
「「メシア万歳!! 千年王国万歳!!」」
「「AMEN!! AMEN!! AMEN!!」」
「な、何? いきなり吃驚するじゃない、シエスタ」
「ああ、きみたちか。どうやらアルビオン艦隊は殲滅出来たようだね。
だがきみたち、今日のところは『トリステイン王国万歳』と唱えたまえ。
これでアルビオンも、しばらくこの国に手を出そうとは思わないだろうから」
騒ぎを聞きつけ、アンリエッタ王女もいそいそと駆けつけた。
「ああ、ルイズ! ミスタ・マツシタ! やっとお目覚めですね! 本当に……心より感謝いたします。
あなた方は、『救国の英雄』ですよ!!」
「姫様! わ、私……無我夢中で、何がなんだか、さっぱり」
「姫殿下、ご無事でなにより。今度の褒賞は、この国でもよろしいですか?」
松下は相変わらず、松下だ。
その翌朝。
論功行賞の結果、ラ・ロシェールの町の収入の十分の一がルイズに、タルブの村一帯の領地が松下に与えられた。
もっとも両方とも手ひどく破壊されたため、復興が急務である。
なにより国防最前線の軍港として、もっと大きくする必要もあった。松下は地図を貰い、シムシティ気分で大張り切りだ。
「早速、復興事業を始めよう。発注業者の入札制度はあるようだ。
ほとんどの家屋と森林が失われたから、かえって再建が早くなるな。貴族から絞り取った余剰資金を投入しよう。
住民は今回の件の難民に加えて、国内の商人やあぶれメイジや盗賊・傭兵などを掻き集め、
厳しい法律と教義で鍛えて、ぼくの私兵集団とする。税金はしばらく免除だ。
ラ・ロシェール空港のバックアップも行えるようにして、将来は国際的なハブ(主軸)空港としての役割を担わせる。
竜や『魔女のホウキ』の発着場も作っておこうか?」
お付きの文官連中を率い、8歳の領主さまは様々な青写真を描く。
「……役所をここに建てて、軍港にふさわしい施設と、銀行に病院に歓楽街。
ファウスト博士とムラシゲルの銅像も、地域の功労者として立派な物にしてやろう。
そうだ、今回の記念に、ぼくやルイズやシエスタ、ミスタ・コルバアルや火竜たち、
それに『地獄の門』の銅像も建てておくかな。慰霊碑と戦勝記念碑も必要だ。記念館もあとで建てよう」
「コルバアルって誰よ。コルベール先生でしょ」
つっこみどころはそこだけか、ルイズ。
「それで、結局何がどうなったの? そろそろ説明してよ」
「ぼくは『地獄の門』を呼び出し、きみと協力して悪魔の大群を召喚したのだ。
ちとやりすぎたかな。本来悪魔が十数体程度で良かったのだが、きみの潜在魔力は予想外のものだったよ。
やはりきみの系統は、失われた『虚無』だったのだ。ぼくを呼び出しただけのことはある。
流石にあれほどの大軍団は召喚できないだろうが、幾柱かの悪魔とはコンタクトが可能になった。
……もっとも、いちいちタルブの山奥まで行かねばならないから、
もっとコンパクトな召喚方法はないか、と思っているがね。連れ歩くのも面倒だし」
数日後、タルブの村に復興の槌音が響き始めた。
松下が陣頭指揮を取り、ルイズが呆然と眺めている。王女も『前線基地』を視察に来た。
「やあ姫殿下、ご機嫌麗しゅう。時に今回、あつかましくももう一つお願いがあるのですが」
「まあ、何かしら? ご恩には報いなければなりませんが、この国は差し上げませんよ」
コロコロと王女が笑う。腹黒さではいい勝負かもしれない。この『ビッチ』め。
「ははは、流石にまだ早いですよ。戦争も始まったばかりですから。
そこでお願いなのですが、戦争に勝利したら『アルビオン全土』をぼくに下さい。
ぼくでダメなら、誰か高名で誠実な無能者をアルビオンに立てて頂けばよい。
不肖このぼくが、その者の黒幕としてかの地を支配しましょう。ルイズなどはどうです?」
腹黒王女も絶句する。ここまで図々しい『お願い』があるか。
「……ふふ、考えておきますわ。でも、アルビオンはそのうち王政復古をさせたいのです。
『レコン・キスタ』との戦争が終結すれば、その国内に貴族として封建するかも知れませんが、何年かかるやら」
「それでもよろしい、言質はとりましたぞ。あと、ぼくはトリステイン王国にではなく、
今のところは『ルイズに』仕えているという事を、お忘れなく」
互いに『にこやかに』笑い、会談は終了した。
「マツシタ! まさかあんたまた、姫様に変なお願いしたんじゃあないでしょうね!!」
ルイズが鋭く感づき、松下に詰め寄る。
「大体あんた、とうとう領地なんか貰って、これからどうする気?」
松下は、至極冷静に、今後の活動方針を語る。
「そうだなあ、手始めにアルビオン全土を掌握して、やがてはトリステインから正式に独立し」
「それから空軍力でガリアを辺境から蚕食するか、戦力が充実していれば直接王都を空襲して降伏させ」
「ガリアの有力貴族やゲルマニアは、賄賂や手紙やこの『魔酒』で結束を弱めておき」
「各地に諸侯を分立させ、国内がガタガタになるほど揺さぶった後」
「平民や下級貴族たちには、宣教と『白い粉』で革命に賛同させて、流言蜚語で上層部を混乱させ」
「そして『悪魔』の力で一気に無政府状態を作り、最小限の流血を以って、『汎大陸人民革命』を成就させる」
「ぼくは『メシア』となり、きみは『聖母』となるだろう!」
「なあ、ぼくの忠実なる『第一使徒・ルイズ』よ」
ルイズは、がっくりと崩れ落ち、頭を抱えた。
ああ……やっぱりこいつ…………『悪魔』だわ。
(第一部・完)
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(カァカァ ギャアギャア ギャア ギャアギャア……)
(カランコロン カランコロン カラン コロン)
やあ、人間の皆さん、今晩は。松下一郎です。昨夜はテラカオスで失礼しました。
今宵も変わらずのご盛況、なにより乙でございます。
さて、『使い魔くん千年王国』第一部終了ということで、最終の投下に参りました。
思えば初投下が八月の下旬。時の過ぎるのは早いもので、彼岸花が満開ですよ。
ところで彼岸花って、有毒でお墓の周りに咲くから、『死人花』『地獄花』とも、言うんですねぇ……。
(ギャアギャア カァカァ ギャア ギャアギャア……)
「こ……これは、何事です!? 何が、ここで起きたのですか!?」
翌日の午後。アンリエッタ王女は、ユニコーンに跨り魔法衛士隊を率いて、ようやくタルブに到着した。
そこで彼女が見た物は、完全に焦土となったタルブの村であった。
その跡地にいくつか天幕が張られ、生き残った者たちが治療を受けていた。
キュルケが彼女の姿を見かけ、声をかける。
「あなたは、アンリエッタ王女! よくぞお出で下さいました!!
あの、あちらで、ルイズたちが治療を受けています」
「ええっ、ルイズが!? な、なぜ、どうしたのですか!!?」
「彼女たちの活躍で、アルビオン艦隊は跡形もなく全滅したのですよ。
お見せしたかったといいますか、ご覧にならなくてよろしかったといいますか……」
あの光景を見たキュルケの顔は、なお蒼白だった。
王女は急いで馬を降り、教えられた天幕へ駆けつける。そこには、力尽きて昏睡しているルイズと松下がいた。
「あ、ああ……ルイズ!!! それに、使い魔さん!」
「いいえ、彼は『メシア』ですわ、王女様」
傍で看護している少女が、毅然とそう言った。
「あの……貴女は、どなた?」
「お初にお目見えいたします。トリステイン魔法学院の使用人、シエスタでございます」
王女は戸惑った顔を見せたが、魔法衛士隊や追って来た重臣たちを集めると、
アルビオンとの緒戦に勝利した事を力強く宣言する。
「我々は、彼女たちの活躍と始祖ブリミルの加護により、奇跡的に敵艦隊を『追い払う事』に成功しました。
とりあえず、今回の戦いで犠牲になられた方々に、黙祷と哀悼の意を捧げます」
丁重に王宮に運ばれたルイズと松下は、三日三晩昏睡状態にあった。
そして四日目の朝、二人は同時に目を覚ました。
「ふわぁぁあああああ、ああ、よく、寝た」
「ええ、よおおおく寝たわ。かつてなくバッチリの気分よ!」
付きっ切りで看護していたシエスタや『信者』、タルブの村人は、歓呼の声を挙げる。
「メシア! ああ、『我らのメシア』が復活されたわ!!」
「「メシア万歳!! 千年王国万歳!!」」
「「AMEN!! AMEN!! AMEN!!」」
「な、何? いきなり吃驚するじゃない、シエスタ」
「ああ、きみたちか。どうやらアルビオン艦隊は殲滅出来たようだね。
だがきみたち、今日のところは『トリステイン王国万歳』と唱えたまえ。
これでアルビオンも、しばらくこの国に手を出そうとは思わないだろうから」
騒ぎを聞きつけ、アンリエッタ王女もいそいそと駆けつけた。
「ああ、ルイズ! ミスタ・マツシタ! やっとお目覚めですね! 本当に……心より感謝いたします。
あなた方は、『救国の英雄』ですよ!!」
「姫様! わ、私……無我夢中で、何がなんだか、さっぱり」
「姫殿下、ご無事でなにより。今度の褒賞は、この国でもよろしいですか?」
松下は相変わらず、松下だ。
その翌朝。
論功行賞の結果、ラ・ロシェールの町の収入の十分の一がルイズに、タルブの村一帯の領地が松下に与えられた。
もっとも両方とも手ひどく破壊されたため、復興が急務である。
なにより国防最前線の軍港として、もっと大きくする必要もあった。松下は地図を貰い、シムシティ気分で大張り切りだ。
「早速、復興事業を始めよう。発注業者の入札制度はあるようだ。
ほとんどの家屋と森林が失われたから、かえって再建が早くなるな。貴族から絞り取った余剰資金を投入しよう。
住民は今回の件の難民に加えて、国内の商人やあぶれメイジや盗賊・傭兵などを掻き集め、
厳しい法律と教義で鍛えて、ぼくの私兵集団とする。税金はしばらく免除だ。
ラ・ロシェール空港のバックアップも行えるようにして、将来は国際的なハブ(主軸)空港としての役割を担わせる。
竜や『魔女のホウキ』の発着場も作っておこうか?」
お付きの文官連中を率い、8歳の領主さまは様々な青写真を描く。
「……役所をここに建てて、軍港にふさわしい施設と、銀行に病院に歓楽街。
ファウスト博士とムラシゲルの銅像も、地域の功労者として立派な物にしてやろう。
そうだ、今回の記念に、ぼくやルイズやシエスタ、ミスタ・コルバアルや火竜たち、
それに『地獄の門』の銅像も建てておくかな。慰霊碑と戦勝記念碑も必要だ。記念館もあとで建てよう」
「コルバアルって誰よ。コルベール先生でしょ」
つっこみどころはそこだけか、ルイズ。
「それで、結局何がどうなったの? そろそろ説明してよ」
「ぼくは『地獄の門』を呼び出し、きみと協力して悪魔の大群を召喚したのだ。
ちとやりすぎたかな。本来悪魔が十数体程度で良かったのだが、きみの潜在魔力は予想外のものだったよ。
やはりきみの系統は、失われた『虚無』だったのだ。ぼくを呼び出しただけのことはある。
流石にあれほどの大軍団は召喚できないだろうが、幾柱かの悪魔とはコンタクトが可能になった。
……もっとも、いちいちタルブの山奥まで行かねばならないから、
もっとコンパクトな召喚方法はないか、と思っているがね。連れ歩くのも面倒だし」
数日後、タルブの村に復興の槌音が響き始めた。
松下が陣頭指揮を取り、ルイズが呆然と眺めている。王女も『前線基地』を視察に来た。
「やあ姫殿下、ご機嫌麗しゅう。時に今回、あつかましくももう一つお願いがあるのですが」
「まあ、何かしら? ご恩には報いなければなりませんが、この国は差し上げませんよ」
コロコロと王女が笑う。腹黒さではいい勝負かもしれない。この『ビッチ』め。
「ははは、流石にまだ早いですよ。戦争も始まったばかりですから。
そこでお願いなのですが、戦争に勝利したら『アルビオン全土』をぼくに下さい。
ぼくでダメなら、誰か高名で誠実な無能者をアルビオンに立てて頂けばよい。
不肖このぼくが、その者の黒幕としてかの地を支配しましょう。ルイズなどはどうです?」
腹黒王女も絶句する。ここまで図々しい『お願い』があるか。
「……ふふ、考えておきますわ。でも、アルビオンはそのうち王政復古をさせたいのです。
『レコン・キスタ』との戦争が終結すれば、その国内に貴族として封建するかも知れませんが、何年かかるやら」
「それでもよろしい、言質はとりましたぞ。あと、ぼくはトリステイン王国にではなく、
今のところは『ルイズに』仕えているという事を、お忘れなく」
互いに『にこやかに』笑い、会談は終了した。
「マツシタ! まさかあんたまた、姫様に変なお願いしたんじゃあないでしょうね!!」
ルイズが鋭く感づき、松下に詰め寄る。
「大体あんた、とうとう領地なんか貰って、これからどうする気?」
松下は、至極冷静に、今後の活動方針を語る。
「そうだなあ、手始めにアルビオン全土を掌握して、やがてはトリステインから正式に独立し」
「それから空軍力でガリアを辺境から蚕食するか、戦力が充実していれば直接王都を空襲して降伏させ」
「ガリアの有力貴族やゲルマニアは、賄賂や手紙やこの『魔酒』で結束を弱めておき」
「各地に諸侯を分立させ、国内がガタガタになるほど揺さぶった後」
「平民や下級貴族たちには、宣教と『白い粉』で革命に賛同させて、流言蜚語で上層部を混乱させ」
「そして『悪魔』の力で一気に無政府状態を作り、最小限の流血を以って、『汎大陸人民革命』を成就させる」
「ぼくは『メシア』となり、きみは『聖母』となるだろう!」
「なあ、ぼくの忠実なる『第一使徒・ルイズ』よ」
ルイズは、がっくりと崩れ落ち、頭を抱えた。
ああ……やっぱりこいつ…………『悪魔』だわ。
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