「真赤な使い魔」(2007/09/22 (土) 02:10:33) の最新版変更点
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濃霧が辺りに立ち込めていた。
地面に仰向けに倒れた、白いマントの老人。
立派な口髭を生やしているが、エレガントな服装は爆炎に破れて煤け、
胸には穴が空き、両腕も喪われていた。全身から煙が立ち昇り始め、体が気化していく。
それでも老人は自嘲気味に笑い、そばに立つ自分の子孫に語りかける。
「“蛾”は“蛾”なりに…光の周りを飛べて満足したぞ…」
「その程度で満足するから、貴様は“蝶”になれなかったんだよ」
老人と子孫は、似て非なる存在であった。たった今、子孫は老人を倒したのだ。
「…最期に一つだけ、教えてやる…貴様が蝶として、より高みへ翔ぶためのヒント…」
薄れ行く視界。自分を超えた子孫を愛おしむように、彼は遺言を残す。
「今から起こるであろう“彼”とあの少年戦士の、戦いを見逃すな…
どうやら…この百年の間に、私の…知らない…動きが…あった…様だ……」
ボシュウウウウと老人の体は、周囲の白い霧と同化するように煙となる。
屋内。廊下を一組の少年少女が疾走している。少女はなぜか学ランを纏い、
ボロボロになった少年は闘志を瞳に宿し、背丈ほどもある奇怪な大槍を持っていた。
「どこへ行くカズキ!」
「ここだ!」
少年はダンと床を踏みしめ、天井に槍の穂先を向けた。
「ここ?」
「エネルギー、全・開ッ!!」
彼が叫ぶや、槍の飾り布は山吹色の光となり、激しいエネルギーの奔流と化す。
そして少年は天井を突き破り、建物の屋上に鎮座する機械へ突進した!!
「貫けェェエエッ!!!」
「!」
「!!」
「!?!」
だがそこには、銀色に輝く“鏡”があった―――――!!!
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!
神聖で、美しく、生命力に満ち、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ! 今度こそ、わが導きに応えなさい!」
ルイズの召喚はもはや七十回目に到達していた。激しい土煙の中、
彼女は自分の起こす爆発に倒れ伏しても、いつまでも諦めずに立ち上がり、挑戦し続けた。
「大きな力の壁にぶつかっても、絶対に負けない者を…“貴族”と呼ぶのよッ!!」
その叫びは、人々の魂を揺さぶった。
そんな彼女に、いつしか観衆の生徒たちから大声援が湧き起こる。
「今の、ちょっとカッコ良かったよ―――!」
「ごめんなさい! 私、あなたを見下してた! 本当にごめんなさい!」
「頑張れ“ゼロ”…じゃなくてルイズ・フランソワーズ――――!」
「俺たちみんなが、“お前の味方”だぜ!」
コルベール先生も感激の涙を流している。こんなに一致団結して彼女を応援するなんて、いままで考えられなかった。
(大丈夫! なんだか私、今までで一番、力が湧いてきている!!)
「エネルギー、全・開ッ!!」
ルイズの雄叫びとともに、何もない空間で爆発が起こり…その爆煙の中に、黒い人影が現れた。
「だ…誰!? 何者なの!?!」
それは、長身長髪の、人間の男らしかった。
しかし、帯びる雰囲気は明らかに異質だ。亜人であろう。
爆煙が晴れて、男が姿を現す。
上半身は裸で、下は素足。腰に蛮族のような布の褌を締め、袴に似た長ズボンを履いてはいたが、
内腿まで裁ち開かれ、褌を締めた尻が見える異常なデザイン。
リストバンドとズボンの裾、それに褌の前面には、豹の斑紋か薔薇のような模様があしらってあった。
淡く光る蛍火の髪! 熱を帯びた赤銅の肌!
筋肉で固めた二メイル超の巨躯!
コイツが―――――私の呼び出した、“使い魔”!?
「おはよう…キミは誰だ?」
彼、“ヴィクター・パワード”は、どこか懐かしい声で、ルイズに挨拶をした――――
その周りでは、観衆たちが“力を吸い取られた”かのように、倒れ出していた。
(つづきません)
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