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第02話 交わされるもの
ルイズは恐る恐るといった面持ちで、目の前の亜人達に近付いて行った。
コルベールは例外を認めない、と言った。ならばどちらかと契約を交わすほか無いだろう。
(……やってやろうじゃないの!女は度胸よ!)
もう形振り構ってはいられない。両手で顔を思い切り引っ叩き、前を見据えた。
そしてゆっくりとその女性達に近寄り、声を掛けた。
「あなた達、名前は?」
辺りを見回しながら座っていたカルラとトウカには、たった今自分達に掛けられた少女の声に聞き覚えがあった。
「カミュ殿?」
「カミュ?」
「質問を質問で返すなー!って言うかカミュって誰よーっ!!」
だってくぎみーだしとか聞こえて来た気がしたが、今それは特に関係無い。
良く見てみれば、髪の色も違う、羽根も生えていない、それにボリュームが違いすぎる。
人違いだと言う事を瞬時に悟ったカルラは、意に介さず返答した。
「単なる人違いですわ。それはそうと、相手の名を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀ではなくて?」
相手がただの平民ならば……特に気にする事無く、質問攻めを行っただろう。
しかし目の前に居るのは「亜人」、しかもどこか気品がある上に言っている事は正論だ。
その状況で反論する余地も無く、ルイズはあっさりと折れた。
「そ、それもそうね……。いいわ、私の名前はルイズ。で、あなた達の名前は?」
「わたくしの名前はカルラ。そっちがトウカですわ」
そう言って彼女は、自身と隣の女性を指さした。
一先ず安心した。そうそう気性が激しそうでは無いし、礼儀も弁えている。
これで安心して、契約できる。そう考えたルイズは目を瞑り、杖を掲げた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
そう叫ぶと、目を瞑ったままカルラに顔を近付けて行く。
「使い魔」というセリフから、カルラは直感で理解した。これが契約の為のキスだと言う事を。
(あるじ様以外とキスする気も、契約する気もありませんのに……)
カルラはあくまで冷静に、しかし素早くこの状況を脱する術を模索する。
ふと、前にハクオロから聞いた苦い思い出の話が脳裏によぎった。
(トウカには悪いけど……あの技を使わせて貰おうかしらねー……イメージは良くありませんけど)
そう考えると、カルラは「あの技」を実行に移した。
ルイズが口付けをする寸前、カルラは即座に身を引く。
横に居るトウカを引っ掴み、思い切り前方に押し出し固定する。
そして―――叫んだ。
「 ト ウ カ 防 壁 ! 」
この間、僅か一秒。
カルラの行動を認識する事など、不可能であった。
当のルイズは困惑していた。頭に浮かぶのは何故?やどうして?といったフレーズのみ。
(あ……ありのまま今起こったことを話すわ!
『私はカルラと契約をした、と思ったらいつの間にかトウカと契約をしていた』
な、何を言ってるか判らないと思うけど
私も何をされたか判らなかった……
頭がどうにかなりそうだったわ……
間違えたとか、避けられたとか
そんなチャチなものとは断じて違う
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……)
ふと前を見ると、カルラが妖艶に笑い……呟いた。
「わたくし、同姓と口付けする趣味はありませんの」
ルイズが地面に膝を着くのと、トウカが叫び声を上げるのは、ほぼ同時だった。
「カールーラーァァァァッ!!!!」
「良いじゃありませんの、減るものじゃありませんし」
「だからといって某を盾にするなぁぁぁぁ」
トウカは既に、泣いていた。
矢継ぎ早にカルラに苦言を呈していくが、カルラに一切の効果は無い。
「大体カルラ!お前は某をからかって何が楽しいん……熱ッ」
興奮冷めやらないトウカの口を止めたのは、当然熱くなった全身。
トウカは訳の判らないまま、身体を抑えて蹲り、ルイズに向かって叫んだ。
「貴様!某の身体に何をしたッ!!」
「つ、使い魔のルーンが刻まれてるだけ。大丈夫よ、すぐ済むから」
その剣幕に内心動揺しつつも、ルイズは表面上は冷静に返答した。
ルイズのその言葉通り、徐々に熱は収まっていった。
コルベールがトウカに近寄り、ルーンの刻まれた場所を覗き込む。
「ふむ、珍しいルーンだな……」
トウカの右手の甲には見たことも無い文字が躍っていた。
コルベールはそのルーンをスケッチすると、遠巻きにその場を見ている生徒達に向かって言った。
「さてと……じゃあ皆、教室に戻るぞ!」
そう言ってコルベールは宙に浮いた。
他の生徒も同様に宙に浮き、校舎の方に向かって飛んでいく。
流石のカルラもこれには驚きを隠せず、トウカは唖然とした表情で生徒達の飛んでいった方向を見つめていた。
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第02話 交わされるもの
ルイズは恐る恐るといった面持ちで、目の前の亜人達に近付いて行った。
コルベールは例外を認めない、と言った。ならばどちらかと契約を交わすほか無いだろう。
(……やってやろうじゃないの!女は度胸よ!)
もう形振り構ってはいられない。両手で顔を思い切り引っ叩き、前を見据えた。
そしてゆっくりとその女性達に近寄り、声を掛けた。
「あなた達、名前は?」
辺りを見回しながら座っていたカルラとトウカには、たった今自分達に掛けられた少女の声に聞き覚えがあった。
「カミュ殿?」
「カミュ?」
「質問を質問で返すなー!って言うかカミュって誰よーっ!!」
だってくぎみーだしとか聞こえて来た気がしたが、今それは特に関係無い。
良く見てみれば、髪の色も違う、羽根も生えていない、それにボリュームが違いすぎる。
人違いだと言う事を瞬時に悟ったカルラは、意に介さず返答した。
「単なる人違いですわ。それはそうと、相手の名を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀ではなくて?」
相手がただの平民ならば……特に気にする事無く、質問攻めを行っただろう。
しかし目の前に居るのは「亜人」、しかもどこか気品がある上に言っている事は正論だ。
その状況で反論する余地も無く、ルイズはあっさりと折れた。
「そ、それもそうね……。いいわ、私の名前はルイズ。で、あなた達の名前は?」
「わたくしの名前はカルラ。そっちがトウカですわ」
そう言って彼女は、自身と隣の女性を指さした。
一先ず安心した。そうそう気性が激しそうでは無いし、礼儀も弁えている。
これで安心して、契約できる。そう考えたルイズは目を瞑り、杖を掲げた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
そう叫ぶと、目を瞑ったままカルラに顔を近付けて行く。
「使い魔」というセリフから、カルラは直感で理解した。これが契約の為のキスだと言う事を。
(あるじ様以外とキスする気も、契約する気もありませんのに……)
カルラはあくまで冷静に、しかし素早くこの状況を脱する術を模索する。
ふと、前にハクオロから聞いた苦い思い出の話が脳裏によぎった。
(トウカには悪いけど……あの技を使わせて貰おうかしらねー……イメージは良くありませんけど)
そう考えると、カルラは「あの技」を実行に移した。
ルイズが口付けをする寸前、カルラは即座に身を引く。
横に居るトウカを引っ掴み、思い切り前方に押し出し固定する。
そして―――叫んだ。
「 ト ウ カ 防 壁 ! 」
この間、僅か一秒。
カルラの行動を認識する事など、不可能であった。
当のルイズは困惑していた。頭に浮かぶのは何故?やどうして?といったフレーズのみ。
(あ……ありのまま今起こったことを話すわ!
『私はカルラと契約をした、と思ったらいつの間にかトウカと契約をしていた』
な、何を言ってるか判らないと思うけど
私も何をされたか判らなかった……
頭がどうにかなりそうだったわ……
間違えたとか、避けられたとか
そんなチャチなものとは断じて違う
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……)
ふと前を見ると、カルラが妖艶に笑い……呟いた。
「わたくし、同姓と口付けする趣味はありませんの」
ルイズが地面に膝を着くのと、トウカが叫び声を上げるのは、ほぼ同時だった。
「カールーラーァァァァッ!!!!」
「良いじゃありませんの、減るものじゃありませんし」
「だからといって某を盾にするなぁぁぁぁ」
トウカは既に、泣いていた。
矢継ぎ早にカルラに苦言を呈していくが、カルラに一切の効果は無い。
「大体カルラ!お前は某をからかって何が楽しいん……熱ッ」
興奮冷めやらないトウカの口を止めたのは、当然熱くなった全身。
トウカは訳の判らないまま、身体を抑えて蹲り、ルイズに向かって叫んだ。
「貴様!某の身体に何をしたッ!!」
「つ、使い魔のルーンが刻まれてるだけ。大丈夫よ、すぐ済むから」
その剣幕に内心動揺しつつも、ルイズは表面上は冷静に返答した。
ルイズのその言葉通り、徐々に熱は収まっていった。
コルベールがトウカに近寄り、ルーンの刻まれた場所を覗き込む。
「ふむ、珍しいルーンだな……」
トウカの右手の甲には見たことも無い文字が躍っていた。
コルベールはそのルーンをスケッチすると、遠巻きにその場を見ている生徒達に向かって言った。
「さてと……じゃあ皆、教室に戻るぞ!」
そう言ってコルベールは宙に浮いた。
他の生徒も同様に宙に浮き、校舎の方に向かって飛んでいく。
流石のカルラもこれには驚きを隠せず、トウカは唖然とした表情で生徒達の飛んでいった方向を見つめていた。
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