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#navi(とある魔術の使い魔と主)
当麻の手伝いもあって、作業は順調に進んだ。
そんな中、ちょうどケーキを渡そうとしたとある貴族のポケットから、何かが落ちた。それが紫色の液体が入ったガラスの小壜と気付いたのは、当麻とシエスタだけであった。
当の本人――ギーシュは周りの仲間達と会話に夢中であり、気付く様子はない。
どちらが拾うかという状況になったが、シエスタは当麻にウインクをとると、はさみをトレイに置く。
スッとしゃがみ込み、小鬢を拾い、「落とし物でありますよ」と添えて、ギーシュの近くに置いてあげる。ギーシュはシエスタの行動に気付くと、小壜を押しやった。
「これは僕のじゃない。他人の物ではないのか?」
何を言っているんだ? と、当麻は言おうとしたが、その前に周りの友人達が大声で騒ぎ始めた。
「おお! その香水はモンモランシーのじゃないか!?」
「そうだ! その鮮やかな紫色はモンモランシーしか調合できない香水だぞ!」
「それがお前のポケットから落ちて来たって事は」
「「お前は今! モンモランシーと付き合っている事だな!?」
友人の声がハモる。しかし、ギーシュはいたって冷静に、
「違うぞ。いいかい? 彼女の名誉のために言っておくが……」
言いかけようとした時、後ろのテーブルに座ってた茶色のマントを着た少女がドン! と叩き、勢いよく立ち上がるのに全員の視線が向かれる。
栗色の髪をした、可愛い少女がコツコツとギーシュの元へと歩き、
「ギーシュさま……」
ボロボロと泣き始める。
「やはり、ミス・モンモランシーと……」
「そんなわけないだろケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは君だけ――
バチーン、と気持ちいい音が響く。ケティと呼ばれた少女は、思いっきりギーシュの頬をひっぱたいた。
「その香水が証拠ですわ! さようなら!」
ぷんぷんという擬音が似合うように去っていく。すると、それと入れ代わるような形で、巻き髪の女の子が歩いてくる。
何やらバックに炎が似合うように、いかめしい顔つきでギーシュの席までやってくる。
「モンモランシー、誤解だ。彼女とはただいっしょに、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで……」
ギーシュは冷静な態度でモンモランシーを宥めようとする。
しかし、
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」
「お願いだよ。『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔をそのような怒りで歪ませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか!」
ギーシュの必死な叫びへの返答として、モンモランシーはワインの壜を掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけ、
「うそつき!」
と、怒鳴って去っていった。
沈黙が流れる。その重苦しい空気に耐えられない当麻は、シエスタの肩をちょんちょんと突き、行こうぜ、と指で合図をする。
ギーシュはハンカチを取り出し、ゆっくり顔を拭く。
そして、再び歩きだした当麻とシエスタを呼び止める。
「そこのメイド、待ちたまえ」
シエスタの肩がビクッ! と震え、恐る恐るギーシュの方へと振り向く。
「君が軽率に香水の壜なんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「あ……えと……す、すみません!」
シエスタはペコペコと何度も謝る。が、当麻は当然の疑問を述べた。
「いや、ここは二股をかけてたお前が悪いんじゃないのか?」
ギーシュの友人が、どっと笑った。
「確かに、そりゃ当然だ!」
「何を言っている給仕君。君達が壜を放置してればよかっただけじゃないか」
「そんなフラグ聞いた事はありませんって。落とし物を拾ったら二股フラグでバッドエンド直行とかレア過ぎる体験普通は知らないっつーの」
「君は僕を馬鹿にしてるのかい? いいのだよ、そこのメイドの代わりに決闘をしても」
「はぁ? 何なんですか一体。こんなんで決闘どうのこうの言ってたら毎日が決闘三昧、朝、昼、晩に一回どうですか? とか冗談じゃねぇよ」
そう言ってシエスタの背中を押す。当麻としてはさっさとこの場から去りたい一心であった。ギーシュに背を向け「でも」と言いたげなシエスタを歩かせる。
「あぁ、思い出した。君は確かあのゼロのルイズが呼び出した平民だったな。成る程、役立たずの主に役立たずの使い魔とはよくいった物だな」
ピタッ、と当麻の足が止まる。
「役立たず、……だと?」
ギーシュが不適な笑みを浮かべる。
「あぁ、魔術を成功した事もない貴族などいなくても同然だろ? そいつを役立たずと言って何が悪い?」
その時、当麻の中で何かがキレた。
「テメェ……今の言葉撤回しやがれ」
怒りを込めた口調に、ギーシュは怯える様子もない。
「おや、事実を突き付けられて怒ってるのかい? 撤回して欲しければ僕に勝ってからにしてみな」
「……あぁ、構わないぜ」
ギーシュは立ち上がる。
「よかろう、ではヴェストリの広場で待っている。さっさと来たまえ」
くるりと体を翻し、コツコツと歩き出す。ギーシュの友人たちが、周りの貴族たちが、わくわくしながらギーシュの後を追った。
シエスタが、ぶるぶる震えながら、当麻を涙目で見ている。
「あの……えと……私のせいで……」
「あー心配すんな、シエスタは気にしなくていいよ。俺の問題だし」
「でも……殺されちゃいます。貴族を本気で怒らせちゃったら……」
自分の仕出かした重圧に耐えられなかったのか、走って逃げてしまった。
あー、ケーキ任せようと思ったのに、と当麻は呟いた。どうしようもないがとりあえずトレイを机に置く。すると、後ろからルイズが駆け寄ってくる。
「あんた! 何してんのよ!」
「何って……決闘?」
「馬鹿! 勝手に約束してんじゃないわよ!」
と言われてもなぁ……と、返答に悩み、髪をかく。そんな当麻を見てルイズはため息をつくと、やれやれと肩を竦めた。
「謝っちゃいなさいよ、今ならまだ許してくれるかもしれないから」
「……それは無理だわ」
「あのね? 平民はメイジに絶対勝てないの。下手したら怪我以上の目に合うんだから!」
「あー悪い、ヴェストリの広場って何処でしょうか?」
ルイズの言葉を無視し、ギーシュの友人であろう貴族に聞く。
「こっちだ」
「あぁもう! なんで勝手な事をするのかしら!」
ルイズは後を追いかけた。
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