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「男達の使い魔 第一話」(2009/06/15 (月) 21:18:04) の最新版変更点
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#navi(男達の使い魔)
「おお。もう蕾がついとるやないか。」
「しかし、わしらがここに入ってからもうすぐ一年がたつのか。
なんか感慨深いのう。」
いわゆる学ランを着た体格のいい男達が話している。
時は三月、世間一般で言う卒業の季節だ。
一年間の出来事を思い返すのに、これほど良い季節もあるまい。
「……ああ。」
何か思うことでもあったのだろうか。
学帽を被っていた男、富樫が目元を隠すように深く被りなおす。
「……辛気臭くしてたらあいつらに笑われちまうぞ。
『まだまだ修行が足りませんね。君たちは』とか言ってな」
もう一人の男、虎丸はわざとかん高い声を作り、かつてのマジシャンの物真似をする。
「そうだな。今度入ってくる新入生のことでも考えるか。」
季節はもうすぐ春。
出会いの季節でもあるのだ。
キリキリキリ……
弓を引く音がする。
巨漢の壮年が、回転する的に向かって弓を射ろうとしていた。
髪の毛こそないものの、その体は鍛え抜かれており、一種の美さえも感じさせる。
覇気に満ちたそのたたずまいは、とても60を過ぎているとは思えない。
彼こそが、男塾全塾生の生殺与奪の権すら持つ、
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
地を震わせる豪声と共に矢が放たれる。
一瞬の後、的に突き立った。
「ほう。今日はこれか。」
そばにいた髭を生やした教官が確認に走るよりも早く、江田島は己が射た的を
その鋭い視力で確認していた。
「起立っ!!」
授業の掛け声に、学生たちは勢いよく立ち上がる。
掛け声をあげたのは、メガネをかけた田沢である。
「本日でいよいよ今年度最後の授業となる。
そこで、本日の科目は塾長がじきじきに選ばれた。
速やかにグラウンドに整列し、心して拝聴するように!!」
鬼ヒゲという仇名の通りの姿をした教官が声を張り上げる。
「なんだかごっつい嫌な予感がするのう。」
「まったくだぜ。」
頭の頂上部と左右のみにパーマをかけた松尾と、リーゼントで矮躯の秀麻呂がそのような会話を交わしながら
移動を開始した。
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
その大音声に、この一年間でなれたはずの猛者たちが泡を吹いてひっくり返る。
一方教官たちの中には、感涙の涙をこぼしている者すらいた。
(不思議なものだ。時々この声を聞かないと落ち着かなくなるなんてな)
一号生筆頭剣桃太郎は柄にもなくそんなことを考えていた。
「本日は直進行軍を行う!全員直ちに回れ右し、前進せよ!」
珍しく塾長が直々に指示を出す。
その言葉通り、一号生たちは行動を開始した。
その日平賀才人は浮かれていた。
つい、目の前に浮かび上がった、不思議な白い光に入ろうとするくらいに。
いよいよ飛び込もうと心を決めたその時、地響きがするのが聞こえた。
(うるさいな!何だよ!)
せっかく入ろうとしたのを邪魔されて、少し不機嫌になった才人は、文句を
言おうと後ろを振り返り、
……そして迷わず道を譲った。
やけに体格のいい、学ランを着込んだ男達が、ハンマーなど思い思いの獲物を手に持ち
障害物を粉砕しながら迫ってきたのだ。
(いくらなんでもこんな集団には近寄りたくない)
才人の本音である。
その男たちは、白い光の前で立ち止まった。
「押忍!!教官殿質問があります。ここに不審な光があるのですが、どのようにすればよろしいでしょうか。」
先頭近くにいた田沢が、飛行帽を被った教官に声をかけた。
するとその教官はその男を怒鳴りつけた。
「貴様ら前回を忘れたのか!!何があろうとも、前進以外に道はない!!
何じゃその目は!私怨などないわ!
ええぃ。桃よ、一号生筆頭として手本をみせてやれ!!」
その声に、指名された桃は、押忍と短く声をあげると、迷わず飛び込んだ。
しかし、それはただの不審な光ではなかった。
いつまでたっても桃がその光から出てくる様子はない。
それどころか光が段々と弱まっているではないか。
これが尋常の事態であるはずがない。
そう判断した伊達は行動することにした。
「仲間を見捨てるな!全員桃に続け!」
その声に、固まっていた男たちは、弾かれたように直進を開始した。
「待て!お前達!」
飛行帽がそう叫ぶも、時既に遅し。
光は消え、飛行帽と才人以外の誰もそこには残っていなかった。
爆発が起きる。
しかし、先ほどまでとは違う手ごたえを感じていた少女は、己の召喚が成功したことを確信していた。
(やったのよ。ついに召喚に成功したわ。これでゼロなんて、もう誰にも言わせない!)
生徒達が騒ぐ中、その少女-ルイズは、ニヤニヤしそうになるのを必死にこらえながら、
煙が晴れるのを凝視していた。
そして目を見開いて口を大きく開けてしまった。
淑女としてあるまじき行為ではあるが、とがめるものは誰もいない。
みな、同じような姿をしていたからだ。
煙が晴れたあとには、むさ苦しい男達が何十人も折り重なっていたからだ。
男達の使い魔 第一話 完
NGシーン
雷電「こ、これはまさか!」
虎丸「知っているのか雷電!」
雷電「これぞまさしく、中国において六千年前より伝わる神隠死!」
神隠し。この言葉は日本でよく使われているが、実は起源は中国にあることを知るものは多くない。
古代中国において、春家義弐亞と戦斗千尋という男達がいた。この二人は拳の道においてのライバル
であった。ついに長年の決着をつけようと、二人は決闘をすることになった。
互いに一歩も引かず、まさしく死闘を繰り広げる両者。最後の力を振り絞り、一撃を繰り出そうとした時
激しい光がその場に溢れた。
観客が目を見開いたとき、その場からは二人の姿だけが消えていたという。
後年、この片方の戦斗千尋が見つかった。本人はボロボロになっていたが、意識ははっきりしていたという。
そこで、春家義弐亞の行方を尋ねたところ、悔しそうに
「あいつは武離箕琉の盾となって死んだ」と意味不明の発言をしたという。
この逸話が日本に伝わり、突然消えた人間が帰ってくる話として
千と千尋の神隠し、となったのは実に興味深いことである。
余談ではあるが、近年の研究によって、この春家義弐亞という男の名前こそが、ハルケギニアという名称の
基となったのではないか、という説が支配的になってきた。このことからも分かるように、この二人は、
何者かによってハルケギニアに召喚された、と考えるのが一般的である。
民明書房刊「考察!千と千尋の神隠死」(平賀才人著)
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「おお。もう蕾がついとるやないか。」
「しかし、わしらがここに入ってからもうすぐ一年がたつのか。
なんか感慨深いのう。」
いわゆる学ランを着た体格のいい男達が話している。
時は三月、世間一般で言う卒業の季節だ。
一年間の出来事を思い返すのに、これほど良い季節もあるまい。
「……ああ。」
何か思うことでもあったのだろうか。
学帽を被っていた男、富樫が目元を隠すように深く被りなおす。
「……辛気臭くしてたらあいつらに笑われちまうぞ。
『まだまだ修行が足りませんね。君たちは』とか言ってな」
もう一人の男、虎丸はわざとかん高い声を作り、かつてのマジシャンの物真似をする。
「そうだな。今度入ってくる新入生のことでも考えるか。」
季節はもうすぐ春。
出会いの季節でもあるのだ。
キリキリキリ……
弓を引く音がする。
巨漢の壮年が、回転する的に向かって弓を射ろうとしていた。
髪の毛こそないものの、その体は鍛え抜かれており、一種の美さえも感じさせる。
覇気に満ちたそのたたずまいは、とても60を過ぎているとは思えない。
彼こそが、男塾全塾生の生殺与奪の権すら持つ、
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
地を震わせる豪声と共に矢が放たれる。
一瞬の後、的に突き立った。
「ほう。今日はこれか。」
そばにいた髭を生やした教官が確認に走るよりも早く、江田島は己が射た的を
その鋭い視力で確認していた。
「起立っ!!」
授業の掛け声に、学生たちは勢いよく立ち上がる。
掛け声をあげたのは、メガネをかけた田沢である。
「本日でいよいよ今年度最後の授業となる。
そこで、本日の科目は塾長がじきじきに選ばれた。
速やかにグラウンドに整列し、心して拝聴するように!!」
鬼ヒゲという仇名の通りの姿をした教官が声を張り上げる。
「なんだかごっつい嫌な予感がするのう。」
「まったくだぜ。」
頭の頂上部と左右のみにパーマをかけた松尾と、リーゼントで矮躯の秀麻呂がそのような会話を交わしながら
移動を開始した。
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
その大音声に、この一年間でなれたはずの猛者たちが泡を吹いてひっくり返る。
一方教官たちの中には、感涙の涙をこぼしている者すらいた。
(不思議なものだ。時々この声を聞かないと落ち着かなくなるなんてな)
一号生筆頭剣桃太郎は柄にもなくそんなことを考えていた。
「本日は直進行軍を行う!全員直ちに回れ右し、前進せよ!」
珍しく塾長が直々に指示を出す。
その言葉通り、一号生たちは行動を開始した。
その日平賀才人は浮かれていた。
つい、目の前に浮かび上がった、不思議な白い光に入ろうとするくらいに。
いよいよ飛び込もうと心を決めたその時、地響きがするのが聞こえた。
(うるさいな!何だよ!)
せっかく入ろうとしたのを邪魔されて、少し不機嫌になった才人は、文句を
言おうと後ろを振り返り、
……そして迷わず道を譲った。
やけに体格のいい、学ランを着込んだ男達が、ハンマーなど思い思いの獲物を手に持ち
障害物を粉砕しながら迫ってきたのだ。
(いくらなんでもこんな集団には近寄りたくない)
才人の本音である。
その男たちは、白い光の前で立ち止まった。
「押忍!!教官殿質問があります。ここに不審な光があるのですが、どのようにすればよろしいでしょうか。」
先頭近くにいた田沢が、飛行帽を被った教官に声をかけた。
するとその教官はその男を怒鳴りつけた。
「貴様ら前回を忘れたのか!!何があろうとも、前進以外に道はない!!
何じゃその目は!私怨などないわ!
ええぃ。桃よ、一号生筆頭として手本をみせてやれ!!」
その声に、指名された桃は、押忍と短く声をあげると、迷わず飛び込んだ。
しかし、それはただの不審な光ではなかった。
いつまでたっても桃がその光から出てくる様子はない。
それどころか光が段々と弱まっているではないか。
これが尋常の事態であるはずがない。
そう判断した伊達は行動することにした。
「仲間を見捨てるな!全員桃に続け!」
その声に、固まっていた男たちは、弾かれたように直進を開始した。
「待て!お前達!」
飛行帽がそう叫ぶも、時既に遅し。
光は消え、飛行帽と才人以外の誰もそこには残っていなかった。
爆発が起きる。
しかし、先ほどまでとは違う手ごたえを感じていた少女は、己の召喚が成功したことを確信していた。
(やったのよ。ついに召喚に成功したわ。これでゼロなんて、もう誰にも言わせない!)
生徒達が騒ぐ中、その少女-ルイズは、ニヤニヤしそうになるのを必死にこらえながら、
煙が晴れるのを凝視していた。
そして目を見開いて口を大きく開けてしまった。
淑女としてあるまじき行為ではあるが、とがめるものは誰もいない。
みな、同じような姿をしていたからだ。
煙が晴れたあとには、むさ苦しい男達が何十人も折り重なっていたからだ。
男達の使い魔 第一話 完
NGシーン
雷電「こ、これはまさか!」
虎丸「知っているのか雷電!」
雷電「これぞまさしく、中国において六千年前より伝わる神隠死!」
神隠し。この言葉は日本でよく使われているが、実は起源は中国にあることを知るものは多くない。
古代中国において、春家義弐亞と戦斗千尋という男達がいた。この二人は拳の道においてのライバル
であった。ついに長年の決着をつけようと、二人は決闘をすることになった。
互いに一歩も引かず、まさしく死闘を繰り広げる両者。最後の力を振り絞り、一撃を繰り出そうとした時
激しい光がその場に溢れた。
観客が目を見開いたとき、その場からは二人の姿だけが消えていたという。
後年、この片方の戦斗千尋が見つかった。本人はボロボロになっていたが、意識ははっきりしていたという。
そこで、春家義弐亞の行方を尋ねたところ、悔しそうに
「あいつは武離箕琉の盾となって死んだ」と意味不明の発言をしたという。
この逸話が日本に伝わり、突然消えた人間が帰ってくる話として
千と千尋の神隠し、となったのは実に興味深いことである。
余談ではあるが、近年の研究によって、この春家義弐亞という男の名前こそが、ハルケギニアという名称の
基となったのではないか、という説が支配的になってきた。このことからも分かるように、この二人は、
何者かによってハルケギニアに召喚された、と考えるのが一般的である。
民明書房刊「考察!千と千尋の神隠死」(平賀才人著)
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