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七七
学院の正門にたどり着いた君たちふたりに、門番が声をかける。
「ミス・ヴァリエールとその使い魔殿、学院長室まで出頭せよとの指示が出ています」
おおまかな事情説明は先に戻ったキュルケが済ませているだろうが(無口なタバサには期待できない)、事件の関係者で≪土塊のフーケ≫相手に 直接渡り合ったのは君ひとりだけなのだから、詳しい説明を求められるはずだ。
ルイズはまっすぐ学院長室のある本塔へ向かおうするが、君はあわてて引き止める。
月大蛇にかけられた失敗魔法の爆発は、ルイズ自身を傷つけることこそなかったものの、服のあちらこちらを引き裂き、煤と泥、大蛇の緑色の血で彼女を汚してしまっている。
とてもではないが、学院長のオスマン―――伝説的な魔法使いの前に出られる姿ではない。
大急ぎで寄宿舎に戻りルイズを着替えさせ、そのあいだに君は、汚れを拭取るための手拭と水を張ったたらいを用意する。
いちおうの身づくろいを終えた君たちが本塔最上階にある学院長室まで来てみると、中では四人の男女が待っている。
丸椅子に腰掛けたキュルケは、君たちのほうを見ると片手を挙げ、片目をつぶって微笑む。
おなじく丸椅子に座ったタバサは君たちを一瞥するが、すぐに手にした小さな本に視線を戻す。
壁際に置かれた大きな鏡の前に立っているコルベールは、無言で会釈する。
部屋の奥、年代ものの書き物机に向かっている老人は、君が初めて見る人物だ。
老人がゆっくりと顔をあげる。
白く長い髭と髪、黒い長衣に、机に立てかけられた長い木の杖。
まさに、絵に描いたような老賢者だ。
この老人が齢百とも三百とも噂される偉大な魔法使い、トリステイン魔法学院学院長、オスマンその人に違いない。
「ようこそ、ミス・ヴァリエール、それにその使い魔殿。たいそうな骨折りのあと、休む暇もなしに呼びつけてしまい申し訳ないのじゃが、
私の秘書と生徒たちが関わった事件について、詳しいことを聞かせてはもらえんかね?」
やや緊張していた君とルイズは、オスマンの温和な口調にほっと力を抜く。
この老人はかなり穏やかな人物のようだ。
オスマンに促され、君はフーケを追跡するくだりから話し始める。
フーケに追いつくために君が『特殊な道具』を使ったことを聞くと、老人は目を爛と輝かせるが、なにも言わずに先を促す。
話が月大蛇と土大蛇の出現にさしかかったところで、君は考える。
君と七大蛇が因縁浅からぬ関係だということを、この老人に―――ルイズを除く他の三人にも―――説明してもよいものだろうか?
君は言葉をはぐらかすか(二六七へ)?
それとも正直に、怪物どもと過去に闘ったことがあると話すか(二八二へ)?
二八二
フーケと君を襲った怪物どもとは過去に闘い、倒したことがあるという君の言葉を聞いて、ルイズを除いた一同全員が驚く。
タバサでさえ、本から顔をあげて君をじっと見据えるほどだ。
君は、任務と自身が魔法使いであることについては隠しながらも、七大蛇について語ることにする。
その内容はほとんど、バドゥ・バク平原に住む隠者シャドラクからの受け売りなのだが。
かつて、邪悪な大魔法使いが高地の岩屋に住む大ヒドラと闘い、死闘のすえにこれを倒した。
勝ったとはいえ、その恐るべき敵に感服した大魔法使いは、大ヒドラの七つの頭を居城に持ち帰り、黒魔術を用いて翼のある七匹の大蛇として
よみがえらせた。
大魔法使いは信仰する神々のそれぞれに大蛇を一匹ずつ献じ、その見返りとして、神々は自らの力をおぞましい怪物どもに与えることで、
大魔法使いに報いた。
日輪、月、土、水、火炎、風、そして時。
大魔法使い直属の伝令であり刺客でもある七大蛇は、善悪を問わずあらゆる者たちから恐れられたが、大魔法使いの敵である君の手によって、
六匹が打ち滅ぼされ、残る一匹も幽閉された。
「しかし、その全滅した怪物どもがなぜかは知らぬが生き返り、故郷より遠く離れたこのトリステインで跳梁しておったというのじゃな?」
オスマンの言葉に君はうなずく。
「一匹は死に、一匹は逃亡、一匹は幽閉されたまま。残りの四匹もトリステインに来ていると考えたほうがよさそうですな、オールド・オスマン」
コルベールがやや青ざめた顔をして呟く。
「知恵が回り未知の魔法を使う、危険な韻獣が五匹も野放しとはのう。ミスタ・コルベール、王宮に報告に行き、警戒を強めるように要請してはくれんか。
そうでなくとも最近は、猛獣や幻獣、亜人の出没が急増しておる。平和ぼけの王宮の連中、目を覚ましておればよいのじゃが」
コルベールは、オスマンの机の上に置かれた≪エルフの魔法書≫と君の顔を順番に見つめ、名残惜しそうにしていたが
「はい!かしこまりました!」と言うと部屋を出ていく。
その後オスマンは、君とルイズ、キュルケとタバサの四人が、フーケを捕縛し≪エルフの魔法書≫を奪還したことを褒め称え、三人の少女には近々
≪シュヴァリエ≫の爵位が与えられるであろうことを伝えた。
「もっとも、ミス・タバサはすでに≪シュヴァリエ≫の称号を保持しているそうじゃから、今回は≪精霊勲章≫を…」
ルイズとキュルケは驚いてタバサを見るが、当の本人は無言でぼうっと立ったままだ。
どうやら≪シュヴァリエ≫というのは、家柄とは関係なしに純粋な功績で得られる称号らしい。
この若さでその称号を得ているとは、この寡黙な少女は、過去にいったいどのような働きを見せたのだろうか?
降って沸いたような名誉に小躍りしそうになるルイズだが、ふと、君のほうを見て
「オールド・オスマン、彼にはなにも出ないのですか?」と問う。
「すまんが、彼は平民じゃからな。爵位は与えられん」
老人は残念そうに答える。
「さて、今宵はこれまでじゃ。早く休んで傷と疲れを癒せ。≪ユルの曜日≫の≪フリッグの舞踏会≫では、君たちが主役となるじゃろうからな!」
オスマンの言葉に、ルイズたち三人は深々と礼をして退室しようとするが、君が居残っていることに気づいて足を止める。
君は≪エルフの魔法書≫のことで少し学院長と話をしたいと言い、ルイズに先に部屋に戻るよう言う。
しばらく躊躇していたルイズだが、小さく頷き部屋を出ると、扉を閉める。七一へ。
七一
君とオスマンは学院長室にふたりきりになる。
「さて、この≪エルフの魔法書≫について話をしたいというのは、私も一緒じゃ。ミスタ・コルベールから、君がこの本を読めるらしい
ということは聞いておる。よければ、読んで聞かせてはもらえんかね?」と老人は言う。
君は、確かにその本の文章は自分の故郷の文字で記されているが、内容を教えるわけにはいかぬと言う。
「なぜかね?それほどに重要な知識が書き込まれているのか?頼む、少しだけでも…」
君の言葉は、老人の探求心にかえって火をつけてしまったようだ。
オスマンは信頼に値しそうな人物だが、まだ出会ってから一時間あまりしかたっていない。
この老魔法使いを信用して、君が異世界の魔法使いであることと、魔法書の扱いに関する掟を話してしまってもよいものだろうか?
君は、ルイズにしたように真実を打ち明けてもよいし(一○九へ)、とにかく本の内容は教えられないと言い張ってもよい(一四○へ)。
一○九
君はオスマンに、自分は異世界の魔法使いだと告げ、ルイズにしたのと同じように、祖国の危機を救うための任務について語り、
その目の前でいくつかの簡単な術を使って見せる(体力点の減点はしなくてよい)。
「ミス・ヴァリエールが召喚した相手が、まさかメイジじゃったとは…」
オスマンは驚きを隠せない。
「では、あの七大蛇とかいう韻獣も、≪エルフの魔法書≫を持っていたエルフめいた亜人も、何者かが召喚したということかね?」
君は少し考えて、それはありえぬだろうと答える。
それらが君と同じように≪使い魔≫として召喚されたのなら、あのように野放しになるとは思えない。
「ふむ、二つの世界を繋ぐ≪門≫が、あちらこちらに生まれては消えておるのかもしれんな…人為的なものか、自然現象かはわからぬが」
老人が考え込む。
君は≪エルフの魔法書≫に話を戻す。
この本はたしかに魔法書ではあるがエルフとは無関係であり、その正体は、祖国アナランドの魔法書だとオスマンに言う。
広大な学院を設けて、多数の生徒に魔法を教授するこのハルケギニアとは違い、≪旧世界≫ではどの国も自国の魔法の知識は極秘にしており、
その漏洩を避けるため、魔法書の国外への持ち出しは固く禁じられている。
この魔法書は、どうしたわけか渡してはならぬ連中の手に落ち、流れ流れてバク地方あたりの黒エルフのものになったのだろう。
そして、その黒エルフは偶然にもこの世界に来てしまい、そこで命を落としたのだ。
君はオスマンに、アナランドの魔法使いの義務として、この魔法書は破棄せねばならぬと訴える。
もし彼がそれを拒むなら、力づくでもやり遂げねばばならぬ、と。
しばらく机を挟んで睨み合っていた君たちだが、やがてオスマンが
「では、燃やしてしまおう!少々もったいないが、そもそもただで手に入れた物じゃ。新しくできた友と喧嘩をしてまで、
後生大事に守るようなものではない。ミスタ・コルベールは残念がるじゃろうが」と笑いつつ、
本を君に渡す。
君はオスマンに礼を言うと、学院長室の暖炉に魔法書を放り込み、火を点ける。
これでアナランドの魔法の秘密は守られたのだ。
一礼して部屋を出ようとした君に、オスマンが声をかける。
「表向きは魔法使いではない君に爵位は授けられんが、かわりに私からの贈り物を受け取ってはもらえんかね?
宝物庫にしまうほどの貴重品ではない、私の個人的なコレクションじゃが」
そう言うと、机の上に三つの品を並べる。
君はどれかひとつだけを受け取ることにする。
どれを選ぶ?
栓のはまったガラスの小瓶・二二二へ
銀の護符・二一五へ
古ぼけた長剣・一○○へ
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学院の正門にたどり着いた君たちふたりに、門番が声をかける。
「ミス・ヴァリエールとその使い魔殿、学院長室まで出頭せよとの指示が出ています」
おおまかな事情説明は先に戻ったキュルケが済ませているだろうが(無口なタバサには期待できない)、事件の関係者で≪土塊のフーケ≫相手に 直接渡り合ったのは君ひとりだけなのだから、
詳しい説明を求められるはずだ。
ルイズはまっすぐ学院長室のある本塔へ向かおうするが、君はあわてて引き止める。
月大蛇にかけられた失敗魔法の爆発は、ルイズ自身を傷つけることこそなかったものの、服のあちらこちらを引き裂き、煤と泥、大蛇の緑色の血で彼女を汚してしまっている。
とてもではないが、学院長のオスマン――伝説的な魔法使いの前に出られる姿ではない。
大急ぎで寄宿舎に戻りルイズを着替えさせ、そのあいだに君は、汚れを拭取るための手拭と水を張ったたらいを用意する。
いちおうの身づくろいを終えた君たちが本塔最上階にある学院長室まで来てみると、中では四人の男女が待っている。
丸椅子に腰掛けたキュルケは、君たちのほうを見ると片手を挙げ、片目をつぶって微笑む。
おなじく丸椅子に座ったタバサは君たちを一瞥するが、すぐに手にした小さな本に視線を戻す。
壁際に置かれた大きな鏡の前に立っているコルベールは、無言で会釈する。
部屋の奥、年代ものの書き物机に向かっている老人は、君が初めて見る人物だ。
老人がゆっくりと顔をあげる。
白く長い髭と髪、黒い長衣に、机に立てかけられた長い木の杖。
まさに、絵に描いたような老賢者だ。
この老人が齢百とも三百とも噂される偉大な魔法使い、トリステイン魔法学院学院長、オスマンその人に違いない。
「ようこそ、ミス・ヴァリエール、それにその使い魔殿。たいそうな骨折りのあと、休む暇もなしに呼びつけてしまい申し訳ないのじゃが、 私の秘書と生徒たちが関わった事件について、
詳しいことを聞かせてはもらえんかね?」
やや緊張していた君とルイズは、オスマンの温和な口調にほっと力を抜く。
この老人はかなり穏やかな人物のようだ。
オスマンに促され、君はフーケを追跡するくだりから話し始める。
フーケに追いつくために君が『特殊な道具』を使ったことを聞くと、老人は目を爛と輝かせるが、なにも言わずに先を促す。
話が月大蛇と土大蛇の出現にさしかかったところで、君は考える。
君と七大蛇が因縁浅からぬ関係だということを、この老人に――ルイズを除く他の三人にも――説明してもよいものだろうか?
君は言葉をはぐらかすか(二六七へ)?
それとも正直に、怪物どもと過去に闘ったことがあると話すか(二八二へ)?
二八二
フーケと君を襲った怪物どもとは過去に闘い、倒したことがあるという君の言葉を聞いて、ルイズを除いた一同全員が驚く。
タバサでさえ、本から顔をあげて君をじっと見据えるほどだ。
君は、任務と自身が魔法使いであることについては隠しながらも、七大蛇について語ることにする。
その内容はほとんど、バドゥ・バク平原に住む隠者シャドラクからの受け売りなのだが。
かつて、邪悪な大魔法使いが高地の岩屋に住む大ヒドラと闘い、死闘のすえにこれを倒した。
勝ったとはいえ、その恐るべき敵に感服した大魔法使いは、大ヒドラの七つの頭を居城に持ち帰り、黒魔術を用いて翼のある七匹の大蛇として
よみがえらせた。
大魔法使いは信仰する神々のそれぞれに大蛇を一匹ずつ献じ、その見返りとして、神々は自らの力をおぞましい怪物どもに与えることで、大魔法使いに報いた。
日輪、月、土、水、火炎、風、そして時。
大魔法使い直属の伝令であり刺客でもある七大蛇は、善悪を問わずあらゆる者たちから恐れられたが、大魔法使いの敵である君の手によって、
六匹が打ち滅ぼされ、残る一匹も幽閉された。
「しかし、その全滅した怪物どもがなぜかは知らぬが生き返り、故郷より遠く離れたこのトリステインで跳梁しておったというのじゃな?」
オスマンの言葉に君はうなずく。
「一匹は倒され、一匹は逃亡、一匹はおそらく幽閉されたまま。残りの四匹もトリステインに来ていると考えたほうがよさそうですな、オールド・オスマン」
コルベールがやや青ざめた顔をして呟く。
「知恵が回り未知の魔法を使う、危険な韻獣が五匹も野放しとはのう。ミスタ・コルベール、王宮に報告に行き、警戒を強めるように要請してはくれんか。
そうでなくとも最近は、猛獣や幻獣、亜人の出没が急増しておる。平和ぼけの王宮の連中、目を覚ましておればよいのじゃが」
コルベールは、オスマンの机の上に置かれた≪エルフの魔法書≫と君の顔を順番に見つめ、名残惜しそうにしていたが
「はい! かしこまりました!」と言うと部屋を出ていく。
その後オスマンは、君とルイズ、キュルケとタバサの四人が、経過はどうあれフーケを捕縛し≪エルフの魔法書≫を奪還したことを褒め称え、三人の少女には
近々 ≪シュヴァリエ≫の爵位が与えられるであろうことを伝える。
「もっとも、ミス・タバサはすでに≪シュヴァリエ≫の称号を保持しているそうじゃから、今回は≪精霊勲章≫を……」
ルイズとキュルケは驚いてタバサを見るが、当の本人は無言でぼうっと立ったままだ。
どうやら≪シュヴァリエ≫というのは、家柄とは関係なしに純粋な功績で得られる称号らしい。
この若さでその称号を得ているとは、この寡黙な少女は、過去にいったいどのような働きを見せたのだろうか?
降って沸いたような名誉に小躍りしそうになるルイズだが、ふと、君のほうを見て
「オールド・オスマン、彼にはなにも出ないのですか?」と問う。
「すまんが、彼は平民じゃからな。爵位は与えられん」
老人は残念そうに答える。
「さて、今宵はこれまでじゃ。早く休んで傷と疲れを癒せ。≪ユルの曜日≫の≪フリッグの舞踏会≫では、君たちが主役となるじゃろうからな!」
オスマンの言葉に、ルイズたち三人は深々と礼をして退室しようとするが、君が居残っていることに気づいて足を止める。
君は≪エルフの魔法書≫のことで少し学院長と話をしたいと言い、ルイズに先に部屋に戻るよう言う。
しばらく躊躇していたルイズだが、小さく頷き部屋を出ると、扉を閉める。七一へ。
七一
君とオスマンは学院長室にふたりきりになる。
「さて、この≪エルフの魔法書≫について話をしたいというのは、私も一緒じゃ。ミスタ・コルベールから、君がこの本を読めるらしいということは聞いておる。
よければ、読んで聞かせてはもらえんかね?」と老人は言う。
君は、確かにその本の文章は自分の故郷の文字で記されているが、内容を教えるわけにはいかぬと言う。
「なぜかね? それほどに重要な知識が書き込まれているのか? 頼む、少しだけでも……」
君の言葉は、老人の探求心にかえって火をつけてしまったようだ。
オスマンは信頼に値しそうな人物だが、まだ出会ってから一時間あまりしかたっていない。
この老魔法使いを信用して、君が異世界の魔法使いであることと、魔法書の扱いに関する掟を話してしまってもよいものだろうか?
君は、ルイズにしたように真実を打ち明けてもよいし(一〇九へ)、とにかく本の内容は教えられないと言い張ってもよい(一四〇へ)。
一〇九
君はオスマンに、自分は異世界の魔法使いだと告げ、ルイズにしたのと同じように、祖国の危機を救うための任務について語り、その目の前でいくつかの簡単な術を使って見せる(体力点の減点はしなくてよい)。
「ミス・ヴァリエールが召喚した相手が、まさかメイジじゃったとは……」
オスマンは驚きを隠せない。
「では、あの七大蛇とかいう韻獣も、≪エルフの魔法書≫を持っていたエルフめいた亜人も、何者かが召喚したということかね?」
君は少し考えて、それはありえぬだろうと答える。
それらが君と同じように≪使い魔≫として召喚されたのなら、あのように野放しになるとは思えない。
「ふむ、二つの世界を繋ぐ≪門≫が、あちらこちらに生まれては消えておるのかもしれんな……人為的なものか、自然現象かはわからぬが」
老人が考え込む。
君は≪エルフの魔法書≫に話を戻す。
この本はたしかに魔法書ではあるがエルフとは無関係であり、その正体は、祖国アナランドの魔法書だとオスマンに言う。
広大な学院を設けて、多数の生徒に魔法を教授するこのハルケギニアとは違い、≪旧世界≫ではどの国も自国の魔法の知識は極秘にしており、その漏洩を避けるため、
魔法書の国外への持ち出しは固く禁じられている。
この魔法書は、どうしたわけか渡してはならぬ連中の手に落ち、流れ流れてバク地方あたりの黒エルフのものになったのだろう。
そして、その黒エルフは偶然にもこの世界に来てしまい、そこで命を落としたのだ。
君はオスマンに、アナランドの魔法使いの義務として、この魔法書は破棄せねばならぬと訴える。
もし彼がそれを拒むなら、力づくでもやり遂げねばばならぬ、と。
しばらく机を挟んで睨み合っていた君たちだが、やがてオスマンが
「では、燃やしてしまおう! 少々もったいないが、そもそもただで手に入れた物じゃ。新しくできた友と喧嘩をしてまで、後生大事に守るようなものではない。
ミスタ・コルベールは残念がるじゃろうが」と笑いつつ、
本を君に渡す。
君はオスマンに礼を言うと、学院長室の暖炉に魔法書を放り込み、火を点ける。
これでアナランドの魔法の秘密は守られたのだ。
一礼して部屋を出ようとした君に、オスマンが声をかける。
「表向きは魔法使いではない君に爵位は授けられんが、かわりに私からの贈り物を受け取ってはもらえんかね? 宝物庫にしまうほどの貴重品ではない、私の個人的なコレクションじゃが」
そう言うと、机の上に三つの品を並べる。
君はどれかひとつだけを受け取ることにする。
どれを選ぶ?
栓のはまったガラスの小瓶・二二二へ
銀の護符・二一五へ
古ぼけた長剣・一〇〇へ
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