「ゼロのイチコ04」(2008/02/28 (木) 17:56:58) の最新版変更点
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「ちょっとタバサを驚かそうと思っただけだったんだけどね、ごめんなさい」
と笑顔で謝るキュルケとその横に立っているタバサ。キュルケのその態度はあまり反省してるように見えなかった。
三者三様、それぞれに非のある事もあったため。部屋の穴の修理費は三等分になった。
私の部屋の香水やランプなども被害にあったが、あまりツェルプトーに金を出してもらうのも癪であったため断った。
タバサも自分の部屋の修理は自分で金をだすらしい。
「ごめんなさい」
とタバサが頭を下げる。
「いいのよ、あなたはどちらかというと被害者だし」
今回の元凶はキュルケで、実行犯がイチコになる。
イチコは部屋の隅で足を折りたたんで座る、彼女が言うには「正座」という座り方、をしている。
昨夜にみっちり叱りつけたので反省しているようだ。
今日は虚無の日、授業は休みなのでみんな思い思いに過ごす日だ。
私はと言うと普段は部屋で本を読んだり、郊外で魔法の練習をしたりするのだけれど。
部屋の修理のため今日は部屋にいるわけにもいかない。
それに香水とランプを買いに街までいかないといけない。
私はイチコを連れて街に出かけることにした。
トリステインの城下町は今日も大勢の人間でごった返していた。
ここは貴族も平民も入り乱れ生活している。さすがに位の高い貴族はこんなところには来ないが、家名の低い貴族は平民と変わらない生活をしている者たちもいる。
「あの、ご主人様……」
「あによ?」
「なんだか、周りから見られているように思うのですが」
「そりゃ、杖も持ってない変な格好の人間が浮いてたら不信に思うわよ」
ふと間違えればエルフが街に紛れたと思う――慌て者はさすがに居ないにしても、さすがに不審者には見えると思う。
だからと言って、使い魔を留守番させてては意味が無い。常に主人のそばを付き従うのが使い魔だ。
別にやましい事をしているわけじゃないのだから、堂々としてれば良いのだ。
仮に兵士がやってきたとしても説明すれば分かってくれる、と思う。たぶん。
「やっぱり、わたし歩きましょうか?」
「周りの目なんか気にしなくて良いわよ、浮いてたほうが楽なんでしょう?」
歩くことはできる、というよりは足を動かして歩いている振りが出来るのだ。
だけれども、そんな事をしたらせっかくゴーストを使い魔として従えてるのに普通の人間を呼び出したみたいで嫌だ。
ほとんど見得なのだけれど、初めて成功した魔法なのだ。このぐらいは誇示したいと思う。
「あら、おかしいわね。ランプ屋は確か……」
この通りにあると聞いたのだけれども見当たらない、見過ごしたのだろうか。
キョロキョロと見回す。イチコも少し浮き上がって周囲を見渡している。
そこでピンと思いついた。
せっかく召喚した使い魔を使わないでおく事は無い。
「イチコ、あなた飛べるのだからランプ屋と香水を売ってる店を探してきなさい」
「あ、はい。分かりました」
ふわふわと浮き上がるイチコ、まる見えになる純白のパンツ。
「待ちなさい!」
「はい? どうしました」
「やっぱり二人で探しましょう」
「は、はぁ?」
主人の恥は使い魔の恥、逆もまたしかり。
イチコに無闇に高く浮き上がらないように言いながら街の散策を続ける。
その後、ランプ屋は簡単に見つかったのだが香水がなかなか見つからない。
いや、香水自体は露天などにも売っているのだが。普段使っているモノが見つからない。
家に居た頃は買い物などは使用人の仕事であったし、学院にも定期的に必要な雑貨は送られてくる。
今回のような事故など起こらなければわざわざ買い物など来なかったのだが。
一瞬学院のメイドに頼もうかと思ったが、あれの雇い主は学院長のオスマン氏となっている。
学生としての領分を越えた頼みは出来ない。
たまに無茶を頼む学生もいるとは聞くが……
「おい、そこの嬢ちゃん。どうだ、何か買っていかねぇか?」
歩き疲れた頃、そう声をかけられた。
振り返るとそこは武器店だった。姿は見えないが中から声はする。
「おいっ! デル公、勝手に喋るなっつってるだろ!」
と奥から店主らしき男が出てきた。
その男はこちらに気づくと
「これは貴族様、とんだ失礼を」
と似合いもしない笑顔をこちらに向けた。
それよりも最初にわたしたちに声をかけた人間の姿が見えない。
イチコを見ると、彼女もわたしのほうを向いた。よく状況が分からないといった顔だ。
「おう、ココだココ。どうだ、貴族っつっても剣が使えて損はねぇぞ」
よく聞くとその声は無造作に木桶につっこまれた剣の一つから発せられていた。
なるほど、インテリジェンスソードだったのか。
「こらっ、黙ってろっつっただろ。大体お前みたいな大剣を扱えるわけ無いだろ!」
確かに護身用よりは実戦用の大きな剣だった。
女性に扱えるようには見えない。
「商売ベタのオマエさんの変わりに客引きしてやってるんじゃねぇか。どうせヒマなんだろ」
確かに店内はガランとしてる。といっても戦争が無い時期は普通こういうものなんじゃないだろうか。
「ぇええ?! 剣が喋ってます、お化け?!」
「お化けはアンタでしょ!」
イチコが随分と反応遅れて驚いていた。
「へぇ、お化けに取り憑かれている貴族様とは珍しいな」
と、その剣は失礼なことを言った。
「この子はわたしの使い魔よ」
「あ、でも憑いてるというのもあながち間違ってない気がしますね。幽霊になって日も浅いですからうっかりご主人様を呪い殺してしまわないかと最近不安で不安で」
何か恐ろしいことを言っている。だがこの底抜けに明るい幽霊が呪いとか言ってもまるで緊張感が無かった。
「どうも、はじめまして。わたくし高島一子と申しまして。訳あって幽霊しながらご主人様の使い魔などをさせてもらっています」
「おぅ、俺の名前はデルフリンガー。デルフとでも呼んでくれや」
「はい、デルフさん」
幽霊と剣が目の前で交友を深めている。シュールだった。
ふと目を逸らすと店主と目が合った。
「それで貴族様、剣などのご入用はございませんでしょうか? いえ、もちろん魔法があれば剣など入用では無いかもしれませんが……」
魔法があれば、という所が引っかかる。だがわざわざ自分から魔法が使えないとも言えない。
店主は装飾として杖としての剣も取り揃えている、などとと熱心に説明をしている。
しかし私は剣を買う気など毛頭無かった。
「そうです、いかがですか使い魔の方にも剣を持たせると見栄えが上がりますよ」
「悪いけどあの子幽霊だからモノが持てな――」
「本当に重いですね、う、腕が……」
「ま、お嬢ちゃんの手には余るわなぁ……って嬢ちゃん使い手か?」
モノが持てないはずのイチコが剣を持ち上げていた。
あまりの出来事に言葉を失くす、武器屋の主人はそんな私を首をかしげて見ていた。
「……イチコ」
「は、はい。ななんで、しょう。ご、しゅじんさ、ま」
インテリジェンスソードが重いのか、プルプルと震えながら話す。
「取りあえずソレを置きなさい」
「は、はぃ」
元の木桶の中に剣を戻す。そして改めて向き直った。
「なんでしょう、ご主人様?」
「アンタ、なんで剣が持てるの?」
「いえいえ、あれは重くて重くて持てるものではありませんでした。やっぱり少しは鍛えないといけませんねぇ」
「そうじゃなくて、なんで生き物じゃないものが触れるのよ」
「……あれ?」
振り返って手じかにあった棚を触ろうとする、しかし手がすり抜ける。剣を取ろうと手を伸ばすが突き抜ける。
順々に触れるものは無いかと探って横移動、何をしてるのかと呆然としていた店主に行き当たって握手をする。何をしているのか。
そうして店を一周して再びインテリジェンスソードの所まで戻った。
柄に触れるが突き抜けない、そのままガシリと持つと不安定ながらも持ち上げた。
「えぇ?! なんで持てるんですか? はっ、もしや私ついに幽霊としてパワーアップを成し遂げたのでしょうか?
しかし、そうなるといよいよご主人様を呪い殺してしまわないか心配になってきますね。でもでも、触れるようになったのは大変喜ばしいことですし。
なにより、ご主人様のお世話が出来るようになるかもしれませんし」
う~ん、と悩みはじめるイチコ。
幽霊としてパワーアップ?
そうじゃないと思う、だったら他の剣にも触れるようになって無いとおかしい。
さっき私は「生き物ではない」と言った。
しかしインテリジェンスソードは無生物だろうか、それとも生き物だろうか。
もしかしてインテリジェンスソードは生き物だから触れたのではないだろうか。
「ねぇ、この店にあるインテリジェンスソードはあれ一本なの?」
「へ、へぇ。すいやせん。インテリジェンスソード自体が希少なもので」
それもそうだ、実際剣が喋っても得なことなどほとんど無いのだ。
実験的に作られはしたものの需要が少なくほとんど量産されなかったのだ。
この機会を逃せばインテリジェンスソードなんてほぼ見つからない。
「分かった。それじゃ、あの剣を買うわ」
使い魔は主人を守るもの。
せっかく使える武器を見つけたのだから買っておいて損は無い。
重さに問題がありそうだけど、練習次第でどうにかなるだろう。
「へぇ、まいどありがとうございます」
もともと腰が低かった店主の腰がさらに低くなった。
さっさと支払いをすませると私は背中に剣を背負って、まだ悩んでるイチコを伴って外に出た。
ちなみにやっぱり重かった。肩が痛い。
「す、すいませんご主人様。一子はご主人様を呪い殺してしまうかもしれません」
「アンタまだそこで思考が止まってたの」
馬を駈けて街を出てからやっと悩んでいたイチコが出した台詞がこれだった。
この暴走思考はきっと頭をすげかえでもしない限り治らないのだろうと思う。
「アンタ用の剣を買っておいたから、せめて振れるようにしておきなさいよ」
「はい? 剣ですか?」
まさかとは思ったけれど、剣を買った事すら気がついていなかった。
「おぅ、よろしくな相棒」
「デルフさん。なぜそのような所に?」
「いいかげん店の中飽きたんで適当な奴に買ってもらおうかと考えてたが、使い手に出会えるたぁ俺も運がいいねぇ」
とこの喋る剣はよく分からない事を口にした。
「あの、ご主人様」
「なによ?」
「香水は買ったんですか?」
「あ……」
馬の頭を反転させた。
#navi(ゼロのイチコ)
「ちょっとタバサを驚かそうと思っただけだったんだけどね、ごめんなさい」
と笑顔で謝るキュルケとその横に立っているタバサ。キュルケのその態度はあまり反省してるように見えなかった。
三者三様、それぞれに非のある事もあったため。部屋の穴の修理費は三等分になった。
私の部屋の香水やランプなども被害にあったが、あまりツェルプトーに金を出してもらうのも癪であったため断った。
タバサも自分の部屋の修理は自分で金をだすらしい。
「ごめんなさい」
とタバサが頭を下げる。
「いいのよ、あなたはどちらかというと被害者だし」
今回の元凶はキュルケで、実行犯がイチコになる。
イチコは部屋の隅で足を折りたたんで座る、彼女が言うには「正座」という座り方、をしている。
昨夜にみっちり叱りつけたので反省しているようだ。
今日は虚無の日、授業は休みなのでみんな思い思いに過ごす日だ。
私はと言うと普段は部屋で本を読んだり、郊外で魔法の練習をしたりするのだけれど。
部屋の修理のため今日は部屋にいるわけにもいかない。
それに香水とランプを買いに街までいかないといけない。
私はイチコを連れて街に出かけることにした。
トリステインの城下町は今日も大勢の人間でごった返していた。
ここは貴族も平民も入り乱れ生活している。さすがに位の高い貴族はこんなところには来ないが、家名の低い貴族は平民と変わらない生活をしている者たちもいる。
「あの、ご主人様……」
「あによ?」
「なんだか、周りから見られているように思うのですが」
「そりゃ、杖も持ってない変な格好の人間が浮いてたら不信に思うわよ」
ふと間違えればエルフが街に紛れたと思う――慌て者はさすがに居ないにしても、さすがに不審者には見えると思う。
だからと言って、使い魔を留守番させてては意味が無い。常に主人のそばを付き従うのが使い魔だ。
別にやましい事をしているわけじゃないのだから、堂々としてれば良いのだ。
仮に兵士がやってきたとしても説明すれば分かってくれる、と思う。たぶん。
「やっぱり、わたし歩きましょうか?」
「周りの目なんか気にしなくて良いわよ、浮いてたほうが楽なんでしょう?」
歩くことはできる、というよりは足を動かして歩いている振りが出来るのだ。
だけれども、そんな事をしたらせっかくゴーストを使い魔として従えてるのに普通の人間を呼び出したみたいで嫌だ。
ほとんど見得なのだけれど、初めて成功した魔法なのだ。このぐらいは誇示したいと思う。
「あら、おかしいわね。ランプ屋は確か……」
この通りにあると聞いたのだけれども見当たらない、見過ごしたのだろうか。
キョロキョロと見回す。イチコも少し浮き上がって周囲を見渡している。
そこでピンと思いついた。
せっかく召喚した使い魔を使わないでおく事は無い。
「イチコ、あなた飛べるのだからランプ屋と香水を売ってる店を探してきなさい」
「あ、はい。分かりました」
ふわふわと浮き上がるイチコ、まる見えになる純白のパンツ。
「待ちなさい!」
「はい? どうしました」
「やっぱり二人で探しましょう」
「は、はぁ?」
主人の恥は使い魔の恥、逆もまたしかり。
イチコに無闇に高く浮き上がらないように言いながら街の散策を続ける。
その後、ランプ屋は簡単に見つかったのだが香水がなかなか見つからない。
いや、香水自体は露天などにも売っているのだが。普段使っているモノが見つからない。
家に居た頃は買い物などは使用人の仕事であったし、学院にも定期的に必要な雑貨は送られてくる。
今回のような事故など起こらなければわざわざ買い物など来なかったのだが。
一瞬学院のメイドに頼もうかと思ったが、あれの雇い主は学院長のオスマン氏となっている。
学生としての領分を越えた頼みは出来ない。
たまに無茶を頼む学生もいるとは聞くが……
「おい、そこの嬢ちゃん。どうだ、何か買っていかねぇか?」
歩き疲れた頃、そう声をかけられた。
振り返るとそこは武器店だった。姿は見えないが中から声はする。
「おいっ! デル公、勝手に喋るなっつってるだろ!」
と奥から店主らしき男が出てきた。
その男はこちらに気づくと
「これは貴族様、とんだ失礼を」
と似合いもしない笑顔をこちらに向けた。
それよりも最初にわたしたちに声をかけた人間の姿が見えない。
イチコを見ると、彼女もわたしのほうを向いた。よく状況が分からないといった顔だ。
「おう、ココだココ。どうだ、貴族っつっても剣が使えて損はねぇぞ」
よく聞くとその声は無造作に木桶につっこまれた剣の一つから発せられていた。
なるほど、インテリジェンスソードだったのか。
「こらっ、黙ってろっつっただろ。大体お前みたいな大剣を扱えるわけ無いだろ!」
確かに護身用よりは実戦用の大きな剣だった。
女性に扱えるようには見えない。
「商売ベタのオマエさんの変わりに客引きしてやってるんじゃねぇか。どうせヒマなんだろ」
確かに店内はガランとしてる。といっても戦争が無い時期は普通こういうものなんじゃないだろうか。
「ぇええ?! 剣が喋ってます、お化け?!」
「お化けはアンタでしょ!」
イチコが随分と反応遅れて驚いていた。
「へぇ、お化けに取り憑かれている貴族様とは珍しいな」
と、その剣は失礼なことを言った。
「この子はわたしの使い魔よ」
「あ、でも憑いてるというのもあながち間違ってない気がしますね。幽霊になって日も浅いですからうっかりご主人様を呪い殺してしまわないかと最近不安で不安で」
何か恐ろしいことを言っている。だがこの底抜けに明るい幽霊が呪いとか言ってもまるで緊張感が無かった。
「どうも、はじめまして。わたくし高島一子と申しまして。訳あって幽霊しながらご主人様の使い魔などをさせてもらっています」
「おぅ、俺の名前はデルフリンガー。デルフとでも呼んでくれや」
「はい、デルフさん」
幽霊と剣が目の前で交友を深めている。シュールだった。
ふと目を逸らすと店主と目が合った。
「それで貴族様、剣などのご入用はございませんでしょうか? いえ、もちろん魔法があれば剣など入用では無いかもしれませんが……」
魔法があれば、という所が引っかかる。だがわざわざ自分から魔法が使えないとも言えない。
店主は装飾として杖としての剣も取り揃えている、などとと熱心に説明をしている。
しかし私は剣を買う気など毛頭無かった。
「そうです、いかがですか使い魔の方にも剣を持たせると見栄えが上がりますよ」
「悪いけどあの子幽霊だからモノが持てな――」
「本当に重いですね、う、腕が……」
「ま、お嬢ちゃんの手には余るわなぁ……って嬢ちゃん使い手か?」
モノが持てないはずのイチコが剣を持ち上げていた。
あまりの出来事に言葉を失くす、武器屋の主人はそんな私を首をかしげて見ていた。
「……イチコ」
「は、はい。ななんで、しょう。ご、しゅじんさ、ま」
インテリジェンスソードが重いのか、プルプルと震えながら話す。
「取りあえずソレを置きなさい」
「は、はぃ」
元の木桶の中に剣を戻す。そして改めて向き直った。
「なんでしょう、ご主人様?」
「アンタ、なんで剣が持てるの?」
「いえいえ、あれは重くて重くて持てるものではありませんでした。やっぱり少しは鍛えないといけませんねぇ」
「そうじゃなくて、なんで生き物じゃないものが触れるのよ」
「……あれ?」
振り返って手じかにあった棚を触ろうとする、しかし手がすり抜ける。剣を取ろうと手を伸ばすが突き抜ける。
順々に触れるものは無いかと探って横移動、何をしてるのかと呆然としていた店主に行き当たって握手をする。何をしているのか。
そうして店を一周して再びインテリジェンスソードの所まで戻った。
柄に触れるが突き抜けない、そのままガシリと持つと不安定ながらも持ち上げた。
「えぇ?! なんで持てるんですか? はっ、もしや私ついに幽霊としてパワーアップを成し遂げたのでしょうか?
しかし、そうなるといよいよご主人様を呪い殺してしまわないか心配になってきますね。でもでも、触れるようになったのは大変喜ばしいことですし。
なにより、ご主人様のお世話が出来るようになるかもしれませんし」
う~ん、と悩みはじめるイチコ。
幽霊としてパワーアップ?
そうじゃないと思う、だったら他の剣にも触れるようになって無いとおかしい。
さっき私は「生き物ではない」と言った。
しかしインテリジェンスソードは無生物だろうか、それとも生き物だろうか。
もしかしてインテリジェンスソードは生き物だから触れたのではないだろうか。
「ねぇ、この店にあるインテリジェンスソードはあれ一本なの?」
「へ、へぇ。すいやせん。インテリジェンスソード自体が希少なもので」
それもそうだ、実際剣が喋っても得なことなどほとんど無いのだ。
実験的に作られはしたものの需要が少なくほとんど量産されなかったのだ。
この機会を逃せばインテリジェンスソードなんてほぼ見つからない。
「分かった。それじゃ、あの剣を買うわ」
使い魔は主人を守るもの。
せっかく使える武器を見つけたのだから買っておいて損は無い。
重さに問題がありそうだけど、練習次第でどうにかなるだろう。
「へぇ、まいどありがとうございます」
もともと腰が低かった店主の腰がさらに低くなった。
さっさと支払いをすませると私は背中に剣を背負って、まだ悩んでるイチコを伴って外に出た。
ちなみにやっぱり重かった。肩が痛い。
「す、すいませんご主人様。一子はご主人様を呪い殺してしまうかもしれません」
「アンタまだそこで思考が止まってたの」
馬を駈けて街を出てからやっと悩んでいたイチコが出した台詞がこれだった。
この暴走思考はきっと頭をすげかえでもしない限り治らないのだろうと思う。
「アンタ用の剣を買っておいたから、せめて振れるようにしておきなさいよ」
「はい? 剣ですか?」
まさかとは思ったけれど、剣を買った事すら気がついていなかった。
「おぅ、よろしくな相棒」
「デルフさん。なぜそのような所に?」
「いいかげん店の中飽きたんで適当な奴に買ってもらおうかと考えてたが、使い手に出会えるたぁ俺も運がいいねぇ」
とこの喋る剣はよく分からない事を口にした。
「あの、ご主人様」
「なによ?」
「香水は買ったんですか?」
「あ……」
馬の頭を反転させた。
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