「ゼロの答え-02」(2008/10/28 (火) 07:28:20) の最新版変更点
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「何ですって――――っ!!」
その日のルイズの目覚めは最悪だった。
昨日召喚した使い魔、デュフォーが夢の中に出てきて『お前頭が悪いな』と連呼してきたのだ。
ムカついてぶん殴ろうとしてもひょいひょいと避けられて『お前頭が悪いな』といい続けられ、とうとう怒りが限界に達したところでルイズは目が覚めた。
(夢だったけど、現実のあいつをぶん殴らないと気が収まらないわ。うん、昨日の分の借りもあるし、これは正当な報復よ)
幸いなことにデュフォーはまだ寝ていた。
ご主人様より後に起きるなんて使い魔のくせに生意気だ、とルイズは思った。気持ちよさそうに寝ているのが更に腹立たしい。
ルイズはゆっくりと床で寝てるデュフォーに近くと、体重を乗せて踏みつけた。
起きた気配がしたことに気づかないフリしてそのままうりうりと踏みつける。昨日の分の怒りも込めて、思いっきり。
調子に乗ってしばらくそのままでいると足を掴まれる。バランスを崩してルイズは尻餅をついた。打った尻が痛いのかルイズの目に涙が浮かんだ。
「ちょっとなにするのよ!」
「重い。邪魔だ」
「だ、誰が重いのよ!言っておくけどわたしは」
そこまで言ったところで、ルイズはあることに気がついた。乙女の直感といってもいい。
―――ここで話を切らないとこいつはわたしの体重を言う。
「わ、わたしはー、な、何でもないわ。そんなことより起きたんなら早く着替えさせなさい」
ルイズ自身、我ながら苦しいなーと思ったが、デュフォーはそれ以上この件に追求してくる様子はなかった。
(よし、上手くごまかせた)
デュフォーによる着替えはやたらと上手く、ルイズが自分で着替えるよりも遥かにスムーズだった。
だがそこでルイズは下着をしまってある場所を教えていないのに、迷いもせず下着をしまっている引き出しを開けて下着を出していたことに気がついた。
そのことについてルイズが追求すると「お前頭が悪いな。下着をどこにしまっているかの『答え』もわかるからアンサー・トーカーだ」との返事がきた。デュフォーに対して殺意が沸きあがる。
とりあえず今日は朝食抜きにしてやるとルイズは決意した。
朝食抜きとルイズに告げられたため、デュフォーは下着の洗濯を先に終わらせることにした。
部屋から出たときはルイズと一緒だったが、赤い髪の女に挨拶をされてルイズは足を止めたので、そのまま無視して水汲み場へと向かった。待つ理由もない。
横を通り過ぎる際、赤い女の使い魔であるサラマンダーを見る。だが火を吐く大蜥蜴という感じで元居た世界で見た魔物の子に比べれば大したことはなかった。
洗濯物を持って下の水汲み場までいき、洗濯を済ませるとルイズが食事を終えるまで時間が空く。
暇なので同じようにそこらにいる使い魔たちを見ていた。
(珍しいのは風韻竜くらいか……)
他の使い魔にも元居た世界では架空の生物に属するものも多く居たが、この世界では特に珍しいといえるものではなかった。
それに加え、元居た世界でも100人の魔物の子の戦いにパートナーとして参加していたこともあるデュフォーにとっては、架空の生物というだけでは特に驚くようなことではない。
暇つぶしになるような相手も他に居ないので、風韻竜(シルフィードと名付けられているようだ)にでも話かけてみるかとデュフォーが考えたとき、後ろから声がかかった。
「どうなさいました?」
振り返ると怪訝な表情でメイドの格好をした少女がデュフォーを見つめていた。
不審者だと思われたのかもしれない。学院の中に格好からして明らかに学院の関係者でもない人間が居れば不審に見えるだろう。
「朝食を抜かれて暇だから使い魔を見物していた」
「え?」
予想外の言葉が返ってきたためか少女は戸惑いの言葉をあげる。
「えーと、そのあなたは「デュフォー!」」
少女の質問はルイズの怒鳴り声によって途中でかき消された。
少女が怒声の方向を見ると、ルイズが全身から怒っていますという気配を発散しながら大股でデュフォーへと近づいていくところだった。
「あ、あんたね、使い魔がご主人様を無視して先に行くってどういうこと!あんまり自然に歩いていくから居ないのに気がつかなくて恥かいたじゃない!」
「何故俺も立ち止まる必要がある?目的地が違うんだ、俺が先に行こうが関係ないだろう」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!こ、この馬鹿使い魔!ごごご、ご主人様に向かってその態度はなによ!謝りなさい!今すぐ!擦り切れるまで頭を地面に擦り付けて!」
「ああああ、あの、ミス・ヴァリエール落ち着いて、どうか落ち着いてください!」
完全にキレて怒り狂うルイズ。突然修羅場に巻き込まれてどうすればいいのかわからず必死でルイズを宥めようとうろたえているメイド服の少女。そしてただ一人平然としているデュフォー。
その場を見たあるものは後日こう言った。
「いやぁ、あれは凄かったよ。温度差が高―中―低と傍から見てもはっきりしててさ」
結局、そろそろ教室に行かないと遅刻するぞ、との外野からの声で一先ずその場は収まることとなった。
ルイズが教室に入ると先に教室に入っていた生徒たちが一斉に振り向き―――そして静まり返った。
誰が見てもわかる。もう噴火寸前を通り越して噴火していると。
少し前まではルイズのことで雑談していただろう生徒も、今のルイズを見てちょっかいをかけるような度胸はなかった。
ルイズは無言で席への一つに座った。口を開けば爆発してしまうのか『使い魔は床に座れ』と顎で指す。ついでに殺気をこめて睨みつけた。
デュフォーは何も言わず、それに従い床に座った。
ルイズから放たれる一触即発の雰囲気に教室は支配されていた。
(ねぇ、なんなの、この空気?)
(恐らくあの使い魔と何かあった)
小声でひそひそと話をしていた人間もいたが、ルイズにギラリと睨まれて話を止めた。
教室に居る人間が一部を除いて重い空気に押しつぶされそうになったとき、扉が開いて先生が入ってきた。
のちにその場にいた生徒は語る。『こんなに授業が始まるのが待ち遠しかったのは初めてだった』と。
授業が始まったもののルイズから放たれる殺気は一向に静まることはなかった。
先生―――ミセス・シュヴルーズが一度いらないことを言って逆鱗に触れかけたが、先生に怒りをぶつけるのは拙いと理解できるだけの理性は残っていたらしい。
そして何事もなく講義は進み、事件は起こった。シュヴルーズがルイズから放たれている殺気をやる気だと勘違いしてしまったのだ。
そのためルイズに『錬金』を実演するよう指名してしまった。
ルイズもルイズで成功して生意気な使い魔を見返してやるとばかりに周りの静止などまったく聞かず、いつも以上に気合を入れて呪文を唱え、杖を振り下ろした。
結果は爆発。気合を入れていた分だけ凄い爆発だった。爆心地の机と石は一瞬で消し飛んでいる。
爆風をもろに受け、シュヴルーズとルイズが吹き飛ぶ。二人とも黒板に叩きつけられ、倒れたまま起き上がる気配はない。時々痙攣はしているから死んではいないのだろう。
爆発で驚いた使い魔たちが暴れだし、教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
軽く溜息をつくと、デュフォーは煤だらけで気絶しているルイズのところへと歩いていった。流石に暴走した使い魔に踏み潰させるわけにはいかないと思ったからだ。
呪文を唱え。杖を振る。―――爆発。
また呪文を唱え。杖を振る。―――爆発。
何度でも呪文を唱える。何度でも杖を振る。その度に起こるのは望んだ魔法ではなく―――爆発。
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
何千、何万回繰り返しただろう。それでもたった一度。使い魔の召喚の儀式のときを除いて爆発しか起こらなかった。
ゼロのルイズと呼ぶ級友たちの声が聞こえる。
魔法成功率ゼロ、使える魔法ゼロ。だからゼロのルイズだと。
認めたくなくて必死で叫んだ。
―――違う、違う、違う!わたしはゼロなんかじゃない!
声はそれに反論する。
―――じゃあ何か魔法が使えるのかよ。
何も言えなくなった。努力はしている。自画自賛でなくそう思う。魔法を使えるようになるため必死で勉強した。
だけど未だに何も使えない。
悔しくて、悲しくて、涙が溢れて。
……そこで目が覚めた。
寝ながら泣いていたらしい。目をこすりながら起き上がる。あんな夢を見たのは使い魔を見返してやろうと思ったのに失敗したからかもしれない。
「やっと起きたか」
デュフォーの声が聞こえた。声のした方向を見ると寝ていたところのすぐ近くにデュフォーが居た。
泣いているのを見られた!?と思い身構えたが、思いなおす。別に泣いているのを見られてもこいつが何か反応するはずないと。
そこでもう昼休み間近であることに気がついた。朝の一件から結構時間が経っている。
「ひょっとしてわたしが起きるまで傍にいたの?」
正直かなり意外だったのでそう聞いてみる。昨日からの一日足らずの付き合いだが、気絶している人間の傍についているなんて思いやりがあるなんて思わなかった。
「いやついさっきこの教室の片づけが終わっただけだ」
「……予想通りの返事をありがとう。そうよね、あんたに思いやりを期待したわたしが馬鹿だったわ」
#navi(ゼロの答え)
「何ですって――――っ!!」
その日のルイズの目覚めは最悪だった。
昨日召喚した使い魔、デュフォーが夢の中に出てきて『お前頭が悪いな』と連呼してきたのだ。
ムカついてぶん殴ろうとしてもひょいひょいと避けられて『お前頭が悪いな』といい続けられ、とうとう怒りが限界に達したところでルイズは目が覚めた。
(夢だったけど、現実のあいつをぶん殴らないと気が収まらないわ。うん、昨日の分の借りもあるし、これは正当な報復よ)
幸いなことにデュフォーはまだ寝ていた。
ご主人様より後に起きるなんて使い魔のくせに生意気だ、とルイズは思った。気持ちよさそうに寝ているのが更に腹立たしい。
ルイズはゆっくりと床で寝てるデュフォーに近くと、体重を乗せて踏みつけた。
起きた気配がしたことに気づかないフリしてそのままうりうりと踏みつける。昨日の分の怒りも込めて、思いっきり。
調子に乗ってしばらくそのままでいると足を掴まれる。バランスを崩してルイズは尻餅をついた。打った尻が痛いのかルイズの目に涙が浮かんだ。
「ちょっとなにするのよ!」
「重い。邪魔だ」
「だ、誰が重いのよ!言っておくけどわたしは」
そこまで言ったところで、ルイズはあることに気がついた。乙女の直感といってもいい。
―――ここで話を切らないとこいつはわたしの体重を言う。
「わ、わたしはー、な、何でもないわ。そんなことより起きたんなら早く着替えさせなさい」
ルイズ自身、我ながら苦しいなーと思ったが、デュフォーはそれ以上この件に追求してくる様子はなかった。
(よし、上手くごまかせた)
デュフォーによる着替えはやたらと上手く、ルイズが自分で着替えるよりも遥かにスムーズだった。
だがそこでルイズは下着をしまってある場所を教えていないのに、迷いもせず下着をしまっている引き出しを開けて下着を出していたことに気がついた。
そのことについてルイズが追求すると「お前頭が悪いな。下着をどこにしまっているかの『答え』もわかるからアンサー・トーカーだ」との返事がきた。デュフォーに対して殺意が沸きあがる。
とりあえず今日は朝食抜きにしてやるとルイズは決意した。
朝食抜きとルイズに告げられたため、デュフォーは下着の洗濯を先に終わらせることにした。
部屋から出たときはルイズと一緒だったが、赤い髪の女に挨拶をされてルイズは足を止めたので、そのまま無視して水汲み場へと向かった。待つ理由もない。
横を通り過ぎる際、赤い女の使い魔であるサラマンダーを見る。だが火を吐く大蜥蜴という感じで元居た世界で見た魔物の子に比べれば大したことはなかった。
洗濯物を持って下の水汲み場までいき、洗濯を済ませるとルイズが食事を終えるまで時間が空く。
暇なので同じようにそこらにいる使い魔たちを見ていた。
(珍しいのは風韻竜くらいか……)
他の使い魔にも元居た世界では架空の生物に属するものも多く居たが、この世界では特に珍しいといえるものではなかった。
それに加え、元居た世界でも100人の魔物の子の戦いにパートナーとして参加していたこともあるデュフォーにとっては、架空の生物というだけでは特に驚くようなことではない。
暇つぶしになるような相手も他に居ないので、風韻竜(シルフィードと名付けられているようだ)にでも話かけてみるかとデュフォーが考えたとき、後ろから声がかかった。
「どうなさいました?」
振り返ると怪訝な表情でメイドの格好をした少女がデュフォーを見つめていた。
不審者だと思われたのかもしれない。学院の中に格好からして明らかに学院の関係者でもない人間が居れば不審に見えるだろう。
「朝食を抜かれて暇だから使い魔を見物していた」
「え?」
予想外の言葉が返ってきたためか少女は戸惑いの言葉をあげる。
「えーと、そのあなたは「デュフォー!」」
少女の質問はルイズの怒鳴り声によって途中でかき消された。
少女が怒声の方向を見ると、ルイズが全身から怒っていますという気配を発散しながら大股でデュフォーへと近づいていくところだった。
「あ、あんたね、使い魔がご主人様を無視して先に行くってどういうこと!あんまり自然に歩いていくから居ないのに気がつかなくて恥かいたじゃない!」
「何故俺も立ち止まる必要がある?目的地が違うんだ、俺が先に行こうが関係ないだろう」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!こ、この馬鹿使い魔!ごごご、ご主人様に向かってその態度はなによ!謝りなさい!今すぐ!擦り切れるまで頭を地面に擦り付けて!」
「ああああ、あの、ミス・ヴァリエール落ち着いて、どうか落ち着いてください!」
完全にキレて怒り狂うルイズ。突然修羅場に巻き込まれてどうすればいいのかわからず必死でルイズを宥めようとうろたえているメイド服の少女。そしてただ一人平然としているデュフォー。
その場を見たあるものは後日こう言った。
「いやぁ、あれは凄かったよ。温度差が高―中―低と傍から見てもはっきりしててさ」
結局、そろそろ教室に行かないと遅刻するぞ、との外野からの声で一先ずその場は収まることとなった。
ルイズが教室に入ると先に教室に入っていた生徒たちが一斉に振り向き―――そして静まり返った。
誰が見てもわかる。もう噴火寸前を通り越して噴火していると。
少し前まではルイズのことで雑談していただろう生徒も、今のルイズを見てちょっかいをかけるような度胸はなかった。
ルイズは無言で席への一つに座った。口を開けば爆発してしまうのか『使い魔は床に座れ』と顎で指す。ついでに殺気をこめて睨みつけた。
デュフォーは何も言わず、それに従い床に座った。
ルイズから放たれる一触即発の雰囲気に教室は支配されていた。
(ねぇ、なんなの、この空気?)
(恐らくあの使い魔と何かあった)
小声でひそひそと話をしていた人間もいたが、ルイズにギラリと睨まれて話を止めた。
教室に居る人間が一部を除いて重い空気に押しつぶされそうになったとき、扉が開いて先生が入ってきた。
のちにその場にいた生徒は語る。『こんなに授業が始まるのが待ち遠しかったのは初めてだった』と。
授業が始まったもののルイズから放たれる殺気は一向に静まることはなかった。
先生―――ミセス・シュヴルーズが一度いらないことを言って逆鱗に触れかけたが、先生に怒りをぶつけるのは拙いと理解できるだけの理性は残っていたらしい。
そして何事もなく講義は進み、事件は起こった。シュヴルーズがルイズから放たれている殺気をやる気だと勘違いしてしまったのだ。
そのためルイズに『錬金』を実演するよう指名してしまった。
ルイズもルイズで成功して生意気な使い魔を見返してやるとばかりに周りの静止などまったく聞かず、いつも以上に気合を入れて呪文を唱え、杖を振り下ろした。
結果は爆発。気合を入れていた分だけ凄い爆発だった。爆心地の机と石は一瞬で消し飛んでいる。
爆風をもろに受け、シュヴルーズとルイズが吹き飛ぶ。二人とも黒板に叩きつけられ、倒れたまま起き上がる気配はない。時々痙攣はしているから死んではいないのだろう。
爆発で驚いた使い魔たちが暴れだし、教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
軽く溜息をつくと、デュフォーは煤だらけで気絶しているルイズのところへと歩いていった。流石に暴走した使い魔に踏み潰させるわけにはいかないと思ったからだ。
呪文を唱え。杖を振る。―――爆発。
また呪文を唱え。杖を振る。―――爆発。
何度でも呪文を唱える。何度でも杖を振る。その度に起こるのは望んだ魔法ではなく―――爆発。
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発
何千、何万回繰り返しただろう。それでもたった一度。使い魔の召喚の儀式のときを除いて爆発しか起こらなかった。
ゼロのルイズと呼ぶ級友たちの声が聞こえる。
魔法成功率ゼロ、使える魔法ゼロ。だからゼロのルイズだと。
認めたくなくて必死で叫んだ。
―――違う、違う、違う!わたしはゼロなんかじゃない!
声はそれに反論する。
―――じゃあ何か魔法が使えるのかよ。
何も言えなくなった。努力はしている。自画自賛でなくそう思う。魔法を使えるようになるため必死で勉強した。
だけど未だに何も使えない。
悔しくて、悲しくて、涙が溢れて。
……そこで目が覚めた。
寝ながら泣いていたらしい。目をこすりながら起き上がる。あんな夢を見たのは使い魔を見返してやろうと思ったのに失敗したからかもしれない。
「やっと起きたか」
デュフォーの声が聞こえた。声のした方向を見ると寝ていたところのすぐ近くにデュフォーが居た。
泣いているのを見られた!?と思い身構えたが、思いなおす。別に泣いているのを見られてもこいつが何か反応するはずないと。
そこでもう昼休み間近であることに気がついた。朝の一件から結構時間が経っている。
「ひょっとしてわたしが起きるまで傍にいたの?」
正直かなり意外だったのでそう聞いてみる。昨日からの一日足らずの付き合いだが、気絶している人間の傍についているなんて思いやりがあるなんて思わなかった。
「いやついさっきこの教室の片づけが終わっただけだ」
「……予想通りの返事をありがとう。そうよね、あんたに思いやりを期待したわたしが馬鹿だったわ」
#navi(ゼロの答え)
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