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「ゼロの双竜-prologue」(2007/08/28 (火) 12:57:57) の最新版変更点
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トリステイン魔法学園、春の使い魔召喚の儀式。
二年に進学した生徒たちが「サモン・サーヴァント」の魔法を用いて己の使い魔となる生物を召喚するという、生徒たちにとって非常に重要な儀式である。
既に一人を残して全ての生徒が思い思いの使い魔を召喚し、ある者はその結果に喜び、またある者は嘆いていた。一部、無表情を貫く者もいたが。
そして、最後の一人である桃色の髪の少女が呪文と共に杖を振り下ろした。
一瞬の閃光と共に、広場の中心に大爆発が巻き起こった。
「あーあ、また失敗だ」
「さすがゼロのルイズね。これで何度目?」
「最初のも含めてきっかり10度目さ。全く、早く帰りたいというのに!」
爆発を見た生徒たちは、皆口々に少女への文句を言っている。
少女の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
通称ゼロのルイズ。
全ての魔法を「爆発」という形で失敗する、「魔法成功確率ゼロ」のルイズだった。
「………また、失敗なの……?」
彼女は絶望していた。
9回も連続で召喚に失敗し、今度こそはと全力を込めて行ったにもかかわらず、ひときわ大きな爆発が起きただけで、結局失敗してしまったのだ。
だが、
「ま…まて、あれは何だ!?」
「え……?」
爆発の煙で覆われる広場の中心を見ていた生徒の一人が声を上げた。
反射的にルイズが顔を上げると、確かに煙の中にいる巨大な影が目に映った。
「うそ……!」
「馬鹿な、ゼロのルイズが成功しただとッ!?」
「しかも、あんな巨大なゴーレムを!?」
時間の経過と共に、次第に煙が晴れてゆく。
そして煙が晴れきった時、そこには青と赤の体を持つ、鋼の巨人が鎮座していた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
ルイズは自らが召喚した巨人の姿を見て驚喜し、すぐさま契約を決意した。
後ろで儀式を見守っていた教師コルベールにレビテーションで巨人の頭部の高さまで浮かべて貰い、契約の言葉を唱えつつ、口に当たるであろう部分にそっと口を付ける。
すると、巨人の左腕の甲と両足の裏のあたりが光り出した。
それを見たコルベールの目が驚愕に染まる。
「なんと、使い魔のルーンが三箇所に刻まれているのか!?」
それに何と珍しいルーンだと言いつつ、コルベールはルーンをスケッチしている。
だが足のルーンは装甲の内側に刻まれたらしく、直接見ることは出来なかったようだ。
ルイズは巨人の肩に立ち、しきりに巨人に話しかけていた。
「ねぇ、貴方の名前は何というの?」
「―――」
「私の名前はルイズ。ヴァリエール家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!ねぇ、貴方の名前は?」
だが、反応はない。
周りの生徒たちの反応も次第に冷めてきている。
それでも話しかけ続けていたルイズは、暫くしてようやく気が付いた。
反応がないのも当然。この巨人の体は朽ち果てていたのだ。
「そ……そんな………」
「なんだ、やっぱりゼロのルイズだ!期待を裏切らない!」
「でかいだけの醜いガラクタ、貴方にお似合いよ!」
ルイズが呼び出した者の正体が分かると、生徒たちは再び悪口を言い始めた。
コルベールは困っていた。
彼の生徒ルイズが呼び出したゴーレムは一向に動く気配を見せない。
ルーンが刻まれたからには彼女の使い魔で間違いないのだろうが、このままでは不憫すぎる。
実際ルイズは今にも泣き出しそうな顔をしている。
「……ミス…ヴァリエールはその場で一端待機。他の生徒諸君は学園へ戻りなさい」
「魔法の使えないゼロのルイズは、後で歩いて帰ってこいよ!」
コルベールの号令で生徒たちは、ルイズを馬鹿にしながらフライを唱えて飛び去っていく。
だが、その場に残る生徒が二人いた。
サラマンダーを召喚したキュルケと、風竜の幼体を召喚したタバサだった。
「ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。貴方達は戻りなさい」
「いいえ、ミスタ・コルベール。もう少し……ここで待ちますわ」
「………」
「そうですか。……わかりました、良いでしょう。私は、とりあえず学園長の指示を仰いできます」
そう言って、コルベールはフライを唱えるために杖を軽く構えた。
巨大なゴーレムの肩の上で、ルイズは涙を堪えていた。
いつもいつもゼロのルイズと馬鹿にされ続け、初めて魔法が成功したと思ったら呼び出した使い魔は巨大なガラクタだったのだ。
巨大なゴーレムを召喚したのだと有頂天になっていた自分が馬鹿らしい。
使い魔はメイジの実力を現す。つまり、自分は結局ゼロだったのだ。
「ねぇ……動いてよ」
それでも、それでもまだ僅かな可能性にすがりつく。
この使い魔はまだ眠っているだけだと、眠っているから声が届いていないだけなのだと。
そんな自分の有様に、ルイズの目の涙が溢れ出す。
それでも、すがらずにはいられなかった。
「動いてよ……起きて、動いてったら………!」
ルイズの目からこぼれ落ちた涙のしずくが、朽ちた装甲に落ちる。
その時、異変が起こった。
「……ぇ?」
涙の落ちた場所から、山吹色の凄まじい光が溢れ出したのだ。
「何よ……あれ……」
「何が起こっているのだ……?」
「………!」
その光は、下にいた三人にもはっきりと確認できた。コルベールは杖を構えた姿勢のまま、キュルケとタバサと共に見入っている。
だが、四人が驚く間にも光は溢れ続け、瞬く間にゴーレムの体を覆ってゆく。
「「「「……なッ!!?」」」」
四人の目が驚愕に染まる。
ゴーレムの光に覆われた箇所が再生しているのだ。
屑鉄と化していた装甲が、磨きたての鋼のような光沢を取り戻してゆく。
「え……えっ、?ちょっ、ぇ…きゃ、きゃああッ!!」
「ルイズッ!?」
「レビテーション……!」
突然の事態に取り乱したルイズが、足を滑らせて落下した。
タバサが瞬時にレビテーションをかけ、救出する。
レビテーションによって宙に浮いたルイズが地面に付いた時には、ゴーレムの体は全身が山吹色の謎の光に包まれ、そして完全に再生していた。
「…………、」
ゴーレムの頭部の目に当たる部分に光が灯る。
そして、ゆっくりと立ち上がると、力強い雄叫びを上げた。
「おおおおおおああああああアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!」
Prologue[次元を越えて]完
Next[その名は超竜神]に、シンメトリカルドッキング承認!
これが勝利の鍵だ![シエスタ]
To be continued...
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