「ゼロのトランスフォーマー6」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ゼロのトランスフォーマー6」(2007/08/25 (土) 21:45:41) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
何かと謎の多い少女であるタバサ。その使い魔、シルフィードは、雌の韻竜である。
韻竜とは、現在では絶滅種とされる古代ドラゴンで、魔法やブレス能力の高さは素より、
人語を理解する上に、自らも巧に人語を操る等、幻獣としては最強クラスの能力を備えており、
実の所、ルイズのスタースクリームと同様、或いはそれ以上に注目されてもいい使い魔なのである。
が、人々はシルフィードの事を‘えらく能力の高い風竜’程度に捉えており、
その理由は、使い主であるタバサ本人が、シルフィードが韻竜である事は隠しているからだった。
何故隠しているかと言うと―
「面倒くさい」
「お姉さま? どうしたの? 何が面倒なの?」
「別に」
今日は学院の授業が無い、虚無の曜日。
タバサにとって、それは格好の読書日和の日でもあった。
授業がある日だと、殆ど把握してる様な魔法の授業に、わざわざ出席せねばならないし、
かと言って図書室で頻繁にサボると、後が五月蝿い。
たまに、ルイズが錬金の魔法に失敗し、授業が強制的に終了する日などは堂々とサボれるので、
ルイズには毎日失敗してもらえないかと、タバサは密かに思っていたりする。
ちなみに先日は、ルイズの使い魔、スタースクリームが授業中、見事に爆発をやらかしたので、
タバサは広場で風に当たりながら、ゆっくりと読書する事ができた。
「きゅいきゅい。つまんないの。
ただでさえ普段から無口なのに、お休みになったら部屋に閉じこもって本の虫だもん」
タバサの自室の窓から、青く巨大な顔を突っ込ませて文句を垂れるシルフィード。
しかし、ベッドの上に腰掛けて無表情のまま本のページを捲るタバサは、それに一切反応しない。
シルフィードも、一方的に喋りかけるのも少々疲れたか、部屋にはしばしの沈黙が流れた。
その間、タバサは本を10ページ程読み進み、次の第3章へと取り掛かろうとした時、
シルフィードが何かに気付いたか、突っ込んでいた頭を外に戻した。
「きゅー! スタースクリーム様! スタースクリーム様ですわ!!」
興奮したシルフィードの声。
タバサが、ちらりと窓の外を見た。
スタースクリームF-22形態が、機体に風呂敷袋を括り付けて、こちらに向かって飛んでくるのが確認できる。
恐らく先日の、ゆかいな蛇君改造大失敗の罰に、町に御使いに行かされていたのであろう。
スタースクリームは方向転換し、この宿舎の、ルイズの部屋の窓へと回った。
間もなく、部屋越しに怒鳴り声が聞こえてきた。
「スタァァ!! ブラシを買い忘れてるじゃない! 買い物すらマトモにできないの!?」
『あ、しまった! お許し下さい、直ちに買いに戻りますゆえ!!』
「当たり前でしょ! 早く行きなさい、この短足! 怖い顔!」
直後、俺だって昔はスタイル抜群でイケメンだったんだよぉぉぉ! と叫びながら、F-22が空へと消えていく。
誰も乗せていない状態なので、最高速度マッハ2以上の飛翔で、文字通り一瞬にして眼中から消え去った。
シルフィードがスタースクリームに惚れ込んでる理由はそこにあった。
「きゅぅん、相変わらずかっこいいですわぁ…。ねー、お姉さま?」
その爬虫類系の顔に付いた、巨大且つ純粋無垢な瞳が、眩しいほどに輝いている。
「速い」
「お姉さまもわかるのですね、スター様の魅力が! わたし、うれしい! きゅいきゅい!
なのに、あの桃色使い主ったら! スタースクリーム様の素晴らしさを理解してないんだわ!」
いや、ルイズ自身は十分スタースクリームにぞっこんなのだが、
如何せん例の大失敗事件以来、冷たい態度になっていたのだった。
「ねーねー、お姉さまー、スタースクリーム様って何が御好きなのかしら?」
「知らない」
「じゃあ、スタースクリーム様の事を、よーく知ってる方はいないかしら?」
「スタスク」
「答えになってないよー。スター様に直接聞くだなんて、は、恥ずかしい」
「ルイズ」
「あの桃色さんにだけに聞くのは絶対嫌! 何か負けた気がしちゃう」
「デルフリンガー」
「そうでしたわ! 最近、スター様の傍らに纏わり付いてる方! 希望が湧いて来ましたわ!
一生のお願いですお姉さま! デルフリンガーさんにスター様の好みをお聞き願います!」
「やだ」
「ひどいわひどいわお姉さま。私はお姉さまと2人きりでいる時以外は、喋っちゃ駄目なのにー、にー」
「変身」
「やだやだやだー! 人間に化けるの絶対やだー!」
先住魔法と呼ばれる能力を持つシルフィードは、
人間に変化できると言う、この世界でも類を見ない魔法を使えるの…だが、当の本竜はそれを嫌がってる。
「ね、ね、お姉さま、これまた一生のお願いです、デルフリンガーさんとお話させて下さい!
ちゃんと、デルフさんが1人でいる時を見計らうからー。
…やっぱり駄目かな」
「ガーゴイル」
「へ?」
「あなたは竜型ガーゴイル」
「その手がありましたわ! さすがお姉さま、大好き! きゅいきゅい!」
翌日
やあ、皆の超絶大人気者、デルフリンガー様だヨ!
フレン…って言った奴は目ん玉引っこ抜いて微塵切りにしてじっくり煮込んで美味しく食っちまうぞ!
さてさて、俺様が古き友人スタースクリームの優秀なる武器として生活を送るようになって早ウン日、
今住み着いている、このトリステイン魔法学院って所はこの世の天国だ! ウルトラヘブン!!
今日も今日とて、ルイズっつうヒステリック少女の部屋を抜け出して学院探索だぜ! 可哀相な相棒!
さあ、今日はどんな娘ッ子に出会えるのかなー! 楽しみだぜクキャキャキャ!!
てな具合に、デルフリンガーは今、走馬灯に浸っていた。
超ロボット生命体トランスフォーマーの動力源であるエネルゴン。ハルケギニアには、んな物は無いので、
これまでデルフリンガーは、水を飲み、それを謎のトランスパワーでなんとかエネルゴンに近い成分に変換し、
どうにか生き抜いてきたが、最近は水だけでは無理が生じ、ついにエネルギーが底を尽きかけていたのだ。
よくもまぁそれで6000年持ったなぁとデルフは自画自賛し(その内何千年かは眠ってたが)、
食堂の厨房前にて、ついに力尽きる。
そして運良く、たまたま通りかかった心優しき黒髪の少女に拾われ、
これまた運良く、厨房内にて赤ワインを摂取したデルフは完全復活を果たしたのだった。
「おうおぅ、なんなら好きなだけ飲んでくれ。いくらでもあるからな」
コック長マルトーは、この生意気ながらもファイトのある小人に、好意的に接していた。
やはりあのギーシュ・ド・グラモンを倒し(てはいないが)たと言う話は、
普段からギーシュを始め、各貴族達をよろしく思ってない、ここの下働き達にとって感激感涙で、
デルフリンガーは一挙にして厨房の人気者となった。
気を良くしたデルフは、一体その小さな体の何処に入るんだと言う勢いでワインを樽飲みし、
あまりの豪快な飲みっぷりに、厨房内は大いに沸いた。
その後、ぐでんぐでんに酔っ払ったデルフ昆虫人形態は、
酔い覚ましにヴェストリの広場を千鳥足で散歩していた。
広場に人影は無い。生徒達は授業中で、この広場は今だけデルフリンガー貸切となっている。
しかし、人間の飲む赤ワインが、よもや完全にエネルゴンの代わりになるとは、
デルフ自身も予想だにしなかったが、かつて飲んだエネルゴンキューブの懐かしい味を思い出し、
大いにご機嫌であった。そう言えば、味だけでなく、色なんかも微妙に似てた気もする。
散歩にも飽きたか、その場にこてんと座り込むデルフ。
いい天気だクキャァ、昼寝でもしようか。と、空を見上げたその時だった。
「こんにちはー、デルフリンガーさんですね? スタースクリーム様の事、いっぱい教えてくださーい!」
突如として、デルフリンガーの目の前に、今がその時だと確信したシルフィードが風と共に舞い降りた。
して、デルフリンガーの反応は
『……ぎいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ダダダダダダダダダダダダダダダ、ダイノボットどぅぉぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
「だいのぼっと?」
『来るな!! 迫るな!! 近寄るなああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
かつてデルフリンガーは、竜の姿を象った敵ロボットに恐怖心を植え付けられた事があり、
それと似たような姿であるシルフィードを目の当たりにし、
デルフの脳内でトラウマが蘇ったかのか、酔いは吹っ飛び、一目散に逃げ出した。
しかし、たとえ素早いデルフリンガーが全速力で走った所で、飛ぶ風韻竜から逃げきれる術は無きに等しく、
あっと言う間に、上半身を丸ごとぱくりと銜えられてしまった。
「んもー、逃げないで下さいよー、もごもご」
『アバババディセプティオプティウィトウィッキィィィィ!!』
悲鳴にもならない奇声を上げながら、どうにかシルフィードの口から逃れるデルフであったが、
力果てその場に身を崩し、4つの眼光が消える。
「わーん、まだ何も聞いてないわよー!」
おおよそその見た目からは考えられない、豊かな表情で悲しみを表現するシルフィード。
とそこに、授業中であるはずのタバサがやって来た。
校舎からは黒い煙が立ち昇っている。どうやら、またルイズかスタースクリームかが何かやらかしたらしく、
その隙にこっそりとここに訪れた様だ。
「あ、お姉さま! デルフさんが死んじゃいましたわ! どうにかしてー」
シルフィードの懸命の訴えに、まるで反応しないタバサ。
「ひどい! お姉さま! ひどい! 人でなし! ろくでなし! 胸なし! あ!」
さすがに最後のは言い過ぎたかと、慌てて口を手を押さえるシルフィードだが、
タバサはそれにも気に留めない様子で、泡吹いて倒れているデルフの元に近寄る。
しゃがんで、杖で頭をこんこんと叩くが、反応は無い。
「デルフリンガー」
ようやく口を開くタバサだが、これにも反応無し。
「フレンジー」
『俺様をその名前で呼ぶなぁぁぁぁぁ!!!』
蘇生、成功。
蘇生後、デルフリンガーは有りっ丈の文句と愚痴と脅迫と悲観を、タバサに訴え続けたが、
表情はおろか、しゃがんだ姿勢も目線も微動だにしない彼女に諦め付いたか、珍しく落ち着いた口調で話しだす。
『…で、その青いダイノボ…ドラゴンはなんなのさ?』
「私の使い魔。風竜型ガーゴイル」
「そ、そうでーす、ガーゴイルのシルフィードでーす」
『クケェーッ、やっぱりダイノボットそのものじゃねーか。で、なんの御用で?』
「スタースクリーム様の事、よーく知ってますよねー? 好きな物とか、解りますか?」
『ああ、相棒と俺は長い付き合いだ、大概の事なら解んぞ』
「きゅいきゅい! それでそれで、スター様のだーいすきな物とは!?」
『反逆』
その夜
「ねー、お姉さまー、ハンギャクってなんなんですのー?」
「謀反。背く。反骨精神の延長」
これで今日だけで通算27回目の、ハンギャクについての質問及び回答の流れである。
タバサは寝間着姿でベッドに腰掛、睡眠前の読書に没頭しているが、
窓から頭を突っ込ませたシルフィードは、眠たい素振りを微塵も見せない。
「ちがうちがーう! スター様がそんな物騒な事お考えになるはずがありませんわ!
きっと何か別のハンギャクなのですわ」
「勝手に考えてなさい」
一瞬、シルフィードは凍りつく。
そして、あちゃー、ついにお姉さまを怒らせちゃった、ごめんなさい! お姉さま!
と、舌を可愛らしくぺロリと出した後、そそくさと自らの寝床へと帰っていった。
ようやく部屋に静寂が戻り、えんえんずーっと続いたシルフィードの質問攻めから開放されたタバサ。
しかし、彼女とて、おかげで面白い反応は見れたが、デルフリンガーの言った事は気になる。
が、今はまだその答えを導き出せないだろう。デルフも、『反逆』と発言してからは、
スタースクリームの話題を、一切出そうとしなかった。それに関してはあまり話したくは無いらしい。
それだけ考えた後、タバサは本を読み終え床に就いた。
一方、寝床のシルフィードは、相も変わらずハンギャクがなんであるかを、寝ようともせず考え込んでいた。
「卵を硬くなりすぎない程度に煮る……ちがうちがう、それハンジュク」
シルフィードの長い夜が始まった。
長い夜。それは、日夜内部情報戦が絶えない、浮遊大国アルビオンも同様だった。
戦力的に圧倒的に不利な王族派と、最早1つの軍事組織として成り立ちかけている貴族派。
今宵も貴族派が、王族派から横領した土地に建てた軍事施設内で、軍議を行っていたが、
どうやら今回は早めに切上げられたらしい。
今会議室内には、緑色のローブを身に着けた金髪の男と、何故かトリステインの魔法衛士隊の制服姿の男がいる。
金髪の男は、この王族派を牛耳る総司令官である元司教、オリヴァー・クロムウェル。
そしてもう1人。深く被った帽子から見える髭面顔が勇ましいこの男こそが、
クロムウェルの腹心的存在、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドである。
「閣下。失礼ながら、そろそろ‘トラファルガー号’の重要性を教えていただきたい。
でなければ、他の同胞達の士気に係わるのです」
この情報戦は、両派ともが予測していた以上に、長期間引き続いている。
それは、クロムウェルが王族派の所有するトラファルガー号を、執拗に求める所に、戦いが長引く原因があった。
しかしクロムウェルは、何故そうまでしてトラファルガー号を要求するのかを、部下にすら一切口に出してない。
いい加減それに痺れを切らしたワルドが、会議後、直接クロムウェルに問い質したのだった。
「…うむ。ワルド子爵、きみになら話しても構わないだろう。ちなみに、口の硬度の程は?」
「堅い方だと自負しております」
「では…子爵。あのトラファルガー号が、変身するフネであると発表したとして…子爵は信じるかね」
「それは面白い。
戦力強化を考慮しての変身ならば、その様なフネが新開発されていたとしても不思議は無いですな」
「ならば、‘ガンダールヴ戦記’と言う書物を存知てるかね」
「はっ。なかなか興味深い書物でありましたが、かなり妄想も入り混じった内容でもありました」
「あの書物に記されていた、巨大な変身するフネ。それが、トラファルガー号なのだ。
目下の王族との戦いなど、トラファルガー号を得る為だけの争いにすぎんのだよ」
「…?」
一瞬、ワルドの細い目付きが疑問の目に変わったのを、クロムウェルは見逃さなかった。
「どうしたかね? 子爵」
「閣下。その、それは、詰る所、あの本に書かれている事を全て鵜呑みに…」
「している。だから余は‘褐色のスコーピス’も探し求めているのだ。阿呆らしいかね? 余に失望したかね?
だから他人には、あまり話したくは無かったのだがね」
「とんでもない。むしろ、凡人の私には到底想い付けない考証をなさる閣下に、より一層感服いたしました」
深々と頭を下げるワルド。
「一応、褒め言葉として捉えておこうか。して、子爵。その褐色のスコーピスの探索の進み具合は」
「目下の所、私が知る中で、最も実力のある盗賊が調査中にございます」
「そうそう、会った事は無いが‘土くれ’とか言ったかね。期待しているよ。今度余に紹介願おうか」
「喜んで」
「この戦い、急ぐ事は無い。両方とも確実に手に入れるまで、ゆっくりと頃合を窺うのだ。
さすれば‘聖地’は我等‘レコン・キスタ’のモノになるであろう。では、余は眠らせてもらうぞよ」
「勝利の確証の程は」
会議室から退出しようとするクロムウェルに、ワルドが最後の質問をする。
「本に書いていただろう。トラファルガー号と褐色のスコーピスが出会った時。それは‘恐怖大帝’…あいや、
ガンダールヴ復活の証だと。始祖ブリミルの使い魔が我等の味方となれば、負ける方が困難であろうて」
「御尤も。では閣下、良き夜を」
「うむ。子爵も、明日は早朝出発であろう? 十分に睡眠をとるが良い」
軽く手を振り、会議室を後にするクロムウェル。1人会議室に残ったワルドは、戸締りをした後、屋外へと出る。
外では、貴族派の介子達が、施設を交代制で警護しており、
さらにその傍らでは、鎖に繋がれた彼の使い魔であるグリフォンが、羽を休めていた。
「お前も今夜はよく休め。明日は長旅になるぞ」
グリフォンがグゥと唸る。ワルドは笑みをグリフォンに送った後、寝室へと帰って行ったのだった。
おまけ
『やはりチョココロネパンは尻尾から齧るに限るな。ねー、ルイズ様?』
「ちょこころねぱん? なにそれ」
すた☆すく
『よっしゃああ!! ついに出来たぞぉぉ!! これで退屈な時間が減る』
「出来たって、なにが?」
『見て判らないんですか、ルイズ様? ゲームですよ! 電子ゲームに決まってるじゃないですか!
その名も、‘オプティマスプライムの謎’! さっそくやってみてくだせぇ!』
てってってってってっ… ピーピー!
てーれれーれれー ピーッ!
ちゃーらーらららららー ちゃーらーらららららー ぼーん
てーれれーれれー ピーッ!
ちゃーらーらららららー ちゃーらーらららららーららー ぼーん
てーれれーれれー ピーッ!
ちゃーらーらららららー ちゃーらーらららららーららー ちゃーらー ぼーん
てってれってれー てれててーてれーて!
「始まるなりいきなり爆発して終わるんだけど」
『あれ、変だな、どこで間違えた?』
続くかも
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: