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「月が二つあるんだな」
「何当たり前のこと言ってるのよ」
「いや、俺のいたところじゃ一つしか無かったもんでな」
どうやらここがルイズの部屋らしい。学園の寮だけあって質素なモノではあるが、
カズマがかなみと住んでいたうち捨てられた診療所跡に比べれば雲泥の差である。
ルイズはベッドに腰掛け、カズマは床にあぐらをかいて向かい合っていた。
「はぁ、ロストグラウンドって言ったっけ? 一体どんな田舎なんだか」
隆起して本土からは隔絶してしまっていたが、元々は横浜を中心とした
半径約30キロメートル程度の場所であるし、市街の復興具合は本土と変わらないのであるから、
田舎と言われるのは心外である。なんてことをインナー育ちのカズマが知るわけも考えているわけもなく華麗にスルー。
とりあえず、ここまでにカズマが説明されたこととしては、
・ここはハルケギニアにあるトリステイン王国のトリステイン魔法学院
・魔法が使える貴族と、そうではない平民がいる
・学院の生徒は当然魔法の使える貴族の子弟である←のでちゃんと礼儀正しく行動しろ
・学院では2年生になるとメイジが一生をともにする使い魔を召喚する儀式を行う
・使い魔は主人であるメイジの目となり耳となる存在である
・それ以外に魔法の触媒を探してきたり、主人の身を守ったりする←前者には期待しないが
後者くらいはヘンテコな鎧を身につけていたくらいだからやってもらう
・ルイズが儀式を行ったところカズマが召喚された←のでちゃんと使い魔らしく行動しろ
・平民が使い魔というのは気に入らないが、契約を解除する方法も、送り返す方法も知らないし、
再度召喚できるのは使い魔が死んだとき
などなどであるが、適当な相づちだけを打って右から左に聞き流していたのは言うまでもない。
正直なところカズマが考えていたのは昼間ルイズが笑われていたときのことであった。
『なんでこいつはあの時に【反逆】しなかった』
それがカズマの中にある。だからこそルイズに声をかけたのだ。もうちょっと言い方は
考えた方がよかったと思う人が多いだろうが。
ふとかなみを思い出す。今でこそカズマを尻に敷くほどしっかりしてきたが、
約2年前に拾ったときには反逆するすべなど何も持たずに泣くしかない子供であった。
ルイズはかなみよりは年上らしいにもかかわらず笑われるがまま、
あまつさえ逃げるような行動をとろうとしたように見えた。
カズマはそれが気に入らない。
だからここにいる。【反逆】するために。
さて次の日の朝。
ルイズもカズマもくーかくーか寝ている。もちろん、ルイズはベッドで、カズマは床で。
…ところで、ルイズに起こせと言われなかったのだろうか、カズマさん。
そして、
ドンドンドンドンドン!
扉を叩く者がいた。
「ルイズ、ルイズったら! まだ寝てるの?」
キュルケである。
ツェルプストー家とヴァリエール家の因縁やら何やら有るが、キュルケ個人としては
ルイズのことは気に入っている。魔法の成功確率こそ“ゼロ”であるものの、
それを補うために必死で勉強していることは承知しているし評価もしている。
当然当人には言いはしないが。なによりこんなおちょくり甲斐のある遊び相手はいない。
それに昨日召喚された平民をじっくり観察できていないし自分が召喚した使い魔の自慢もしていない。
どんなに悔しがるか見てやろうと思ったのに何の返事もない。
「心配?」
「あのねタバサ、そうじゃなくて」
そのうち、中からドタバタ言う音や、「着替え」だの「下着」だのあまつさえ「手伝え」などと言う声が聞こえてきて、
隣のタバサとチラリと見てやれやれと肩をすくめることになる。
さてさて、部屋の中では大騒ぎがあったものの何とか朝食には間に合うように部屋を出られたようだ。
「ルイズ、あなたってばこの・・・平民?」
「カズマだ」
「カズマに着替え手伝わせたの?」
「使用人がいるのに貴族が自分で着替えるわけないでしょ」
「でも男よ? ヴァリエールのお嬢様ったら慎みが足りないんじゃないですこと?」
「ただの使い魔よ! それにアンタに慎みがどうとか言われたくないわね、ミス・ツェルプストー」
口げんかをしている、と言うよりはじゃれ合っている二人の後ろについていくカズマに、
珍しいことにタバサが話しかける。
「手伝ったの?」
「ん? あぁ。いつもかなみの着替え手伝ってやってたからな、なんてことねぇ」
「かなみ?」
「・・・まぁいいじゃねぇか」
帰る手だてがなければ当然二度と会うこともできない。心配ではあるが考えても詮無いことなので、
かなみのことはできるだけ考えない努力をしていた。
ふと前に目を向けるとルイズとキュルケが二人して振り返っているではないか。そんなに珍しかったのだろうか。
さて、身の回りの世話と言うことで、昨晩洗濯までカズマに押しつけようとしたルイズではあったが、
「やらねぇ」「無理」「破れても知らんぞ」とひたすら拒否されたので、この方法で上下関係をしつけるのはあきらめ、別の方法を考えていた。
「カズマ、ここが食堂。本来は貴族専用なんだけど、アンタは私の使い魔だから、特別にはいることを許可してあげ・・・、あれ?」
「いないわね?」
またも作戦失敗のようだ。
「たぶん、使用人のところ」
「え? なんで? なんでタバサが知ってるの?」
微妙に『言ってもいいのかな?』と言うとまどいがなんとなくにじみ出ている気がするが、
ご主人様の威厳発動失敗状態のルイズはそれに気づかず問いただす。
「・・・洗濯、頼める人を聞かれたから」
なんと。
「ルイズ、あなたに足りないのは慎みだけじゃなくて恥じらいもなんじゃない?」
「大きなお世話よ!」
やはりお怒りなのだった。
ちなみにそのころ、カズマはちゃっかり賄いまでごちそうになっていたそうな。
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「月が二つあるんだな」
「何当たり前のこと言ってるのよ」
「いや、俺のいたところじゃ一つしか無かったもんでな」
どうやらここがルイズの部屋らしい。学園の寮だけあって質素なモノではあるが、
カズマがかなみと住んでいたうち捨てられた診療所跡に比べれば雲泥の差である。
ルイズはベッドに腰掛け、カズマは床にあぐらをかいて向かい合っていた。
「はぁ、ロストグラウンドって言ったっけ? 一体どんな田舎なんだか」
隆起して本土からは隔絶してしまっていたが、元々は横浜を中心とした
半径約30キロメートル程度の場所であるし、市街の復興具合は本土と変わらないのであるから、
田舎と言われるのは心外である。なんてことをインナー育ちのカズマが知るわけも考えているわけもなく華麗にスルー。
とりあえず、ここまでにカズマが説明されたこととしては、
・ここはハルケギニアにあるトリステイン王国のトリステイン魔法学院
・魔法が使える貴族と、そうではない平民がいる
・学院の生徒は当然魔法の使える貴族の子弟である←のでちゃんと礼儀正しく行動しろ
・学院では2年生になるとメイジが一生をともにする使い魔を召喚する儀式を行う
・使い魔は主人であるメイジの目となり耳となる存在である
・それ以外に魔法の触媒を探してきたり、主人の身を守ったりする←前者には期待しないが
後者くらいはヘンテコな鎧を身につけていたくらいだからやってもらう
・ルイズが儀式を行ったところカズマが召喚された←のでちゃんと使い魔らしく行動しろ
・平民が使い魔というのは気に入らないが、契約を解除する方法も、送り返す方法も知らないし、
再度召喚できるのは使い魔が死んだとき
などなどであるが、適当な相づちだけを打って右から左に聞き流していたのは言うまでもない。
正直なところカズマが考えていたのは昼間ルイズが笑われていたときのことであった。
『なんでこいつはあの時に【反逆】しなかった』
それがカズマの中にある。だからこそルイズに声をかけたのだ。もうちょっと言い方は
考えた方がよかったと思う人が多いだろうが。
ふとかなみを思い出す。今でこそカズマを尻に敷くほどしっかりしてきたが、
約2年前に拾ったときには反逆するすべなど何も持たずに泣くしかない子供であった。
ルイズはかなみよりは年上らしいにもかかわらず笑われるがまま、
あまつさえ逃げるような行動をとろうとしたように見えた。
カズマはそれが気に入らない。
だからここにいる。【反逆】するために。
さて次の日の朝。
ルイズもカズマもくーかくーか寝ている。もちろん、ルイズはベッドで、カズマは床で。
…ところで、ルイズに起こせと言われなかったのだろうか、カズマさん。
そして、
ドンドンドンドンドン!
扉を叩く者がいた。
「ルイズ、ルイズったら! まだ寝てるの?」
キュルケである。
ツェルプストー家とヴァリエール家の因縁やら何やら有るが、キュルケ個人としては
ルイズのことは気に入っている。魔法の成功確率こそ“ゼロ”であるものの、
それを補うために必死で勉強していることは承知しているし評価もしている。
当然当人には言いはしないが。なによりこんなおちょくり甲斐のある遊び相手はいない。
それに昨日召喚された平民をじっくり観察できていないし自分が召喚した使い魔の自慢もしていない。
どんなに悔しがるか見てやろうと思ったのに何の返事もない。
「心配?」
「あのねタバサ、そうじゃなくて」
そのうち、中からドタバタ言う音や、「着替え」だの「下着」だのあまつさえ「手伝え」などと言う声が聞こえてきて、
隣のタバサとチラリと見てやれやれと肩をすくめることになる。
さてさて、部屋の中では大騒ぎがあったものの何とか朝食には間に合うように部屋を出られたようだ。
「ルイズ、あなたってばこの・・・平民?」
「カズマだ」
「カズマに着替え手伝わせたの?」
「使用人がいるのに貴族が自分で着替えるわけないでしょ」
「でも男よ? ヴァリエールのお嬢様ったら慎みが足りないんじゃないですこと?」
「ただの使い魔よ! それにアンタに慎みがどうとか言われたくないわね、ミス・ツェルプストー」
口げんかをしている、と言うよりはじゃれ合っている二人の後ろについていくカズマに、
珍しいことにタバサが話しかける。
「手伝ったの?」
「ん? あぁ。いつもかなみの着替え手伝ってやってたからな、なんてことねぇ」
「かなみ?」
「・・・まぁいいじゃねぇか」
帰る手だてがなければ当然二度と会うこともできない。心配ではあるが考えても詮無いことなので、
かなみのことはできるだけ考えない努力をしていた。
ふと前に目を向けるとルイズとキュルケが二人して振り返っているではないか。そんなに珍しかったのだろうか。
さて、身の回りの世話と言うことで、昨晩洗濯までカズマに押しつけようとしたルイズではあったが、
「やらねぇ」「無理」「破れても知らんぞ」とひたすら拒否されたので、この方法で上下関係をしつけるのはあきらめ、別の方法を考えていた。
「カズマ、ここが食堂。本来は貴族専用なんだけど、アンタは私の使い魔だから、特別にはいることを許可してあげ・・・、あれ?」
「いないわね?」
またも作戦失敗のようだ。
「たぶん、使用人のところ」
「え? なんで? なんでタバサが知ってるの?」
微妙に『言ってもいいのかな?』と言うとまどいがなんとなくにじみ出ている気がするが、
ご主人様の威厳発動失敗状態のルイズはそれに気づかず問いただす。
「・・・洗濯、頼める人を聞かれたから」
なんと。
「ルイズ、あなたに足りないのは慎みだけじゃなくて恥じらいもなんじゃない?」
「大きなお世話よ!」
やはりお怒りなのだった。
ちなみにそのころ、カズマはちゃっかり賄いまでごちそうになっていたそうな。
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