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「ワイルドの使い魔-2」(2007/07/09 (月) 00:32:02) の最新版変更点
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夜になるのは早かった。
お互いの話がすれ違ったままの会話って、こんなに無意味に時間が過ぎる物なんだ・・・
結局、僕にわかったのはこれが夢じゃなくて、その上で月が二つもある異世界にこのルイズって女の子に呼び出された事。
元の世界に帰る手段を僕を呼び出したルイズ自身も知らない事。
そして、この頭の固い女の子が僕のご主人様になった事、かな。
平民とか貴族とか魔法使いとかの話は、まぁどうでもいいし気にしない。
ましてや貴族様の家の確執とか何処かの家が痴女の一族とかも、ほんとどうでもよかった。
魔法の世界の人だから科学とかの話が全く通じないのもある意味予想通りだったし。
「いい?アンタは平民で何の力も無いんだから、せめて召使みたいに働きなさい!」
その『ご主人様』は、最後に僕に下着の洗濯を押し付けるとさっさとベッドに入ってしまった。
・・・いいのかな?これ、僕が洗濯して・・・
別に変な趣味は無いから、『これ』をどうこうする気はないけど。
僕、全自動洗濯機以外の洗濯の方法知らないんだよね。
そもそも、僕は何が出来るんだろう?
使い魔の能力として教えられた事は殆ど出来ない。
感覚の共有はできないし、魔法の材料の調達もこの世界の事がまだ良くわかってないのに出来るわけが無い。
ましてや主人を守る事なんて、魔法が支配するこの世界ではたぶん無理だ。
剣道や陸上、泳ぎにはそれなりに自信はあるけど、それが通用するとは思えないし。
使い魔としては、失格だよね。
元の世界に帰るって気は余りなかった。
あの日、ムーンライトブリッジで家族を全員失ってから、僕には帰る家って物が無くなったから。
親戚筋をたらい回しにされるのにはもう飽きたし、引越しが続いた所為で親しい友達も殆ど出来なかったし。
月光館学園にいこうと思ったのも、学費の援助と寮生活が出来るからだったから。
なら、この世界で使い魔として生きるのも別にいいんじゃないか・・・そうも思える。
(何より、決定的な破滅を迎えずに済むしね)
・・・何だろう?空耳かな?誰かの声が聞こえた気がしたけど・・・
まぁ、どうでもいい。今は寝よう。
召使のように働かないといけないなら、明日は早くに起きないといけないだろうから。
『主人の情け』とやらで下着と一緒に押し付けられた毛布に包まって、僕は目を閉じた。
「ちょっと聞いていいかな?洗濯の道具ってどこにあるのか教えて欲しいんだけど」
次の日、まだ日も昇っていない時間に、僕は洗濯場を探して歩いていた。
多分あのルイズの事だから、目が覚める目に洗濯を終えてないと何をされるか。
一応魔法使いらしいし、お仕置きとかされたくないな。
あと、誰かにこっちの世界の洗濯方法を教えてもらわないといけない。
そう思ってふらふら歩いていて・・・見つけたのが、今声をかけたメイドさんだった。
「洗濯道具ですか? 構いませんが、貴方はどなたですか?」
僕と同じくらいの年頃だろうか?黒髪のショートが可愛い。
流石に急に声をかけられて訝しげで、僕の顔をじっと見つめてくる。
「僕はキタロー。今度、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールって女の子の使い魔ってのになったみたいなんだ」
「ああ、貴方が噂の平民の使い魔さんですか?ミス・ヴァリエールの?」
「うん。でも、使い魔ってよりも召使のほうが近いかも・・・」
だって、他の使い魔はファンタジー物でよく出てくるモンスター達が勢ぞろい。
ただの学生だった僕じゃ、そんなすごいモノと同じとは到底言えないよね。
「じゃぁ、私と同じですね。私はシエスタ。この学園でメイドをしているのよ」
「シエスタさん・・・うん、よろしく」
僕の正体がわかったのか、このメイドさん・・・シエスタさんの態度が柔らかくなる。
召使に近い、というのが親近感に繋がったのかな?妙にうちとけた、というか先輩っぽく振舞ってる。
「よろしくね、キタロー君。それで、どうして洗濯道具を探してるの?」
「えっと、僕のご主人が・・・これを洗っておけって・・・」
そういって見せたのは、ルイズが昨日着ていた服。当然下着も入ってる。
「あら、まぁ・・・」
「正直、僕が洗っていいのかも判らなくて・・・それで、洗濯とかに詳しい人に色々聞きたかったんです」
「分かったわ。それじゃ、案内してあげる。他にも何か困った事があったら私に何でも聞いてね?」
僕の困っている理由を理解したのか、シエスタさんは服の塊を手にすると歩き出す。
その後洗濯が終わるまでの間、僕はシエスタさんに色々な話を聞けたのだった。
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