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「『使い魔くん千年王国』 第三章 異世界」(2007/11/06 (火) 00:36:56) の最新版変更点
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「異世界というのは、やはり本当にあったのか…」
春の夜空に浮かぶ二つの月が、(月並みに)ここが異世界であることを松下に教える。
あの後、気絶したルイズを抱えてコルベールが飛び上がり、他の生徒たちも飛翔して学院へ戻っていった。
残念ながら松下は単独では空を飛べない。魔法のホウキは持ってきていない。
コルベールは「悪魔だから飛んできて追いつくだろう(なんか怖いし)」と判断し、彼を広場に置いてきたのだ。
マイペースな松下は、見物がてら地上を歩き回り、夕方になってようやく学院に到着した。
そして、二つの月を見たのである。
「それで、ぼくが帰る方法はないのですか?」
ルイズは治療が終わり、自分の部屋に寝かされているらしい。
松下は先ほどの禿頭(コルベール)を探し出し、この世界の詳しい事情を根掘り葉掘り聞き出す。
情報は最大の武器だ。
「いまのところ、見つかっていないね。
サモン・サーヴァントの魔法は召喚だけで、送還することはできないんだ」
「むむむむ……」
コルベールをなかなかの実力者と見抜いた松下は、一応敬語で話している。
もといた世界――――昭和40年頃の地球で、「石油王サタン暗殺犯」「狂人」「危険思想者」
「大衆煽動者」として告発され、ついに抹殺された『悪魔くん』。
父の会社は自分の召喚した悪魔にのっとられ、別荘だった古代都市遺跡も爆撃を受けて崩壊した。
使徒の残党はいるだろうが、もはや帰る場所はない。
だが、彼には帰らなくてはならない理由が、使命があった。
それは、世界人類が平等に暮らす理想の楽園「千年王国」の建設。
『生まれるとき神が殺しそこねた』奇形的天才児に、神が与えた使命であった……!!
「だからぼくは、そこへ帰らねばならないのです」
「ま、まあ、帰る方法が見つかるまで、しばらくここにいてもいいじゃないか。
いかに東方の魔法が使えるとはいえ、まだ10歳にもならないのだし、どこかへ行くあても、
食も住処もお金もないのだろう?」
千年王国とやらは、きっと世の中のことがよく分からん子供の夢物語だ。
ただ、現実問題として彼は困っているし、ルイズのせっかくの使い魔をなくすわけにはいかない。
コルベールは松下をここへ引き止めることにした。
「しかし、その右手のルーンは珍しいな。ちょっとスケッチさせてくれないか」
魔法が使える……とはいっても、松下の「魔法」の実力は、
何十年と修行を積んだ魔法使いに敵うものでは、まだない。
せいぜい幻術を使ったり、局地的な天候を操ったり、精霊や魔獣を召喚して使役したり、
敵の魔法や魔術的な罠を見破ったり、といった程度なのだ。(充分な気もするが)
彼の恐ろしさは、その魔力に加えて、「凡人を猫とすれば、悪魔くんは人間」と評されるほどの知力。
目的のためには手段を選ばず、容赦のない性格と行動力。
「ソロモンの笛」を始めとする魔法のアイテム(と財力)。
および使役される「十二使徒」達の実力によるところが大きい。
だが後者2つは、今はないのだ。
(と、なると……だ)
松下は、コルベールの提案を受諾した。
そして自分なりに現状の解決方法を計画する。
まずはこの魔法学院で知識と力を蓄え、仲間(使徒)を増やす。
聞けば貴族の子弟が通う、高等・高級な学校だという。
平和ボケした奴を何匹か締め上げれば、富と手下は楽に手に入るだろう。
強力な魔法の知識や道具が手に入るのも、なかなか魅力的だ。
異世界の魔法体系は地球とは違うだろうから、覚えるのに時間はかかるかも知れないが、
召喚魔法を覚えて、自分の使い魔も作ってしまおうか。
また、少数の貴族が平民を踏みつけて、甘い汁ばかりをすするという、この世界の階級制度は実に良くない。
準備ができ次第、すみやかに人民革命を起こして、富も地位も平等に分配しなくては。
「人間は国境からは生まれてこない」のだから、国境病にかかったバカな軍隊や国家も解体しよう。
地球に帰っても、どうせやるべきことは同じだ。
世界がひとつになり、貧乏や不幸のない理想郷を作ることは、遅かれ早かれ誰かが手をつけなければならない、
あらゆる人類の宿題なのだ。
キリストも釈迦もマルクスもそう考えたのだ。
だから、ぼくが「この世界」を統一しなければ……。
その頃、自分の部屋で寝ていたルイズは、とてつもなく魘されていた。
それはもう、この上なく。
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「異世界というのは、やはり本当にあったのか…」
春の夜空に浮かぶ二つの月が、(月並みに)ここが異世界であることを松下に教える。
あの後、気絶したルイズを抱えてコルベールが飛び上がり、他の生徒たちも飛翔して学院へ戻っていった。
残念ながら松下は単独では空を飛べない。魔法のホウキは持ってきていない。
コルベールは「悪魔だから飛んできて追いつくだろう(なんか怖いし)」と判断し、彼を広場に置いてきたのだ。
マイペースな松下は、見物がてら地上を歩き回り、夕方になってようやく学院に到着した。
そして、二つの月を見たのである。
「それで、ぼくが帰る方法はないのですか?」
ルイズは治療が終わり、自分の部屋に寝かされているらしい。
松下は先ほどの禿頭(コルベール)を探し出し、この世界の詳しい事情を根掘り葉掘り聞き出す。
情報は最大の武器だ。
「いまのところ、見つかっていないね。
サモン・サーヴァントの魔法は召喚だけで、送還することはできないんだ」
「むむむむ……」
コルベールをなかなかの実力者と見抜いた松下は、一応敬語で話している。
もといた世界――――昭和40年頃の地球で、「石油王サタン暗殺犯」「狂人」「危険思想者」
「大衆煽動者」として告発され、ついに抹殺された『悪魔くん』。
父の会社は自分の召喚した悪魔にのっとられ、別荘だった古代都市遺跡も爆撃を受けて崩壊した。
使徒の残党はいるだろうが、もはや帰る場所はない。
だが、彼には帰らなくてはならない理由が、使命があった。
それは、世界人類が平等に暮らす理想の楽園「千年王国」の建設。
『生まれるとき神が殺しそこねた』奇形的天才児に、神が与えた使命であった……!!
「だからぼくは、そこへ帰らねばならないのです」
「ま、まあ、帰る方法が見つかるまで、しばらくここにいてもいいじゃないか。
いかに東方の魔法が使えるとはいえ、まだ10歳にもならないのだし、どこかへ行くあても、
食も住処もお金もないのだろう?」
千年王国とやらは、きっと世の中のことがよく分からん子供の夢物語だ。
ただ、現実問題として彼は困っているし、ルイズのせっかくの使い魔をなくすわけにはいかない。
コルベールは松下をここへ引き止めることにした。
「しかし、その右手のルーンは珍しいな。ちょっとスケッチさせてくれないか」
魔法が使える……とはいっても、松下の「魔法」の実力は、
何十年と修行を積んだ魔法使いに敵うものでは、まだない。
せいぜい幻術を使ったり、局地的な天候を操ったり、精霊や魔獣を召喚して使役したり、
敵の魔法や魔術的な罠を見破ったり、といった程度なのだ。(充分な気もするが)
彼の恐ろしさは、その魔力に加えて、「凡人を猫とすれば、悪魔くんは人間」と評されるほどの知力。
目的のためには手段を選ばず、容赦のない性格と行動力。
「ソロモンの笛」を始めとする魔法のアイテム(と財力)。
および使役される「十二使徒」達の実力によるところが大きい。
だが後者2つは、今はないのだ。
(と、なると……だ)
松下は、コルベールの提案を受諾した。
そして自分なりに現状の解決方法を計画する。
まずはこの魔法学院で知識と力を蓄え、仲間(使徒)を増やす。
聞けば貴族の子弟が通う、高等・高級な学校だという。
平和ボケした奴を何匹か締め上げれば、富と手下は楽に手に入るだろう。
強力な魔法の知識や道具が手に入るのも、なかなか魅力的だ。
異世界の魔法体系は地球とは違うだろうから、覚えるのに時間はかかるかも知れないが、
召喚魔法を覚えて、自分の使い魔も作ってしまおうか。
また、少数の貴族が平民を踏みつけて、甘い汁ばかりをすするという、この世界の階級制度は実に良くない。
準備ができ次第、すみやかに人民革命を起こして、富も地位も平等に分配しなくては。
「人間は国境からは生まれてこない」のだから、国境病にかかったバカな軍隊や国家も解体しよう。
地球に帰っても、どうせやるべきことは同じだ。
世界がひとつになり、貧乏や不幸のない理想郷を作ることは、遅かれ早かれ誰かが手をつけなければならない、
あらゆる人類の宿題なのだ。
キリストも釈迦もマルクスもそう考えたのだ。
だから、ぼくが「この世界」を統一しなければ……。
その頃、自分の部屋で寝ていたルイズは、とてつもなく魘されていた。
それはもう、この上なく。
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