「雪風のパレット」(2007/08/14 (火) 20:30:59) の最新版変更点
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「――正直、難しいだろうな。
例え記憶が喪われたとしても、わずかなりにでも意思疎通が可能なら、
それを足がかりにする事が出来たのだが……」
「――ふぅ。わかった、引き受けよう。君には私の母共々とても大きな借りがあるしな。
だが、話を聞く限りでは、どうやらまずは理性を持たせるところから始めなければならないようだ。
相当な長丁場になることだけは、覚悟しておいてくれ」
27 days
あら珍しい、お客様かしら? うふふ、ようこそ可愛らしいお嬢さん。
何にも無い処だけれど、ゆっくりしていらしてね。
――ほら、シャルロットもご挨拶なさい。
…………あらあら。ごめんなさいね、この娘ったら人見知りが激しくて……。
――あら? お茶とケーキだわ。まあ、丁度三人分。きっとベルスランが気を利かせてくれたのね。
さぁお嬢さんも一緒にどうぞ。
せっかく久しぶりにいらしてくれたお客様ですもの、もっとお話したいわ。
このケーキは甘さ控えめで、シャルロットの大好物なの。私もよくシャルロットに作ってあげてるのよ。
まぁ、しばらくこの近辺に滞在なさるのね。
ええ、もちろん大歓迎よ。自分の家だと思っていつでもいらっしゃいな。
――ああ、その代わりシャルロットのお友達になってあげてくれないかしら?
近くに年の近いお友達がいなくて寂しい思いをしているのよ。この頃はすっかり引っ込み思案になっちゃって。
――まぁ、ありがとう! 貴女みたいな良い娘になら、この娘もきっと心を開いてくれると思うわ。
――あら、もうこんな時間だわ。残念ね、もっとお話を聞かせていただきたかったのに。
ここは本当に人が来ないから……。
今度は私の手作りのケーキを振舞って差し上げるわ。
だからまたお話しにいらして頂戴ね。
28 days
あら! こんにちわお嬢さん、こっちにいらっしゃいな。今日は昨日と違うケーキがあるのよ。
このケーキは私の好みなのだけれど、シャルロットには甘過ぎるみたいであんまり食べてくれないの。
はしばみ草のサラダとかが好物なのよ、この娘。まだ子供なのに、渋い味覚をしていると思わない?
――でしょう! やっぱり貴女くらいの女の子なら、甘い物が好きなものよねぇ。
それにしても、今朝はケーキを焼いてみようと思ったのに、厨房が見当たらないの。
おかしいわねぇ。こんなに小さな自分のお家で迷うなんて。
――え? どれくらいの間、ここで暮らしているのかって?
……どれくらい、でしょうね。もう随分長い間ここで時間を過ごしているような気がするわ……。
……え?
……ええ……こちらから誘っておいて御免なさいね。すこし、気分が優れなくて……。
32 days
あらお嬢さん、こんにちわ。今日も外はいい天気ね。
今日のお茶請けはクックベリーのパイよ。今日も話し相手になって頂戴な。
シャルロットも貴女のお話は毎日、すごく楽しみにしているのよ。勿論私もね。
それにしても、幾ら探しても厨房が見当たらないのよね。
ベルスランに尋ねてみても、よくわからなかったし……。
今日こそ二人に手作りのケーキを食べてもらおうと思っていたのに。
――え? この部屋から出たのか、ですって?
うふふ、いやぁねお嬢さん。私だってずうっと部屋に篭りっきりって訳じゃないわよ。
でも、そうね。確かに部屋から出たのは久しぶりかしら。おかげで少し迷っちゃったわ。
――でも、色々と懐かしい物が見つかったわ。本当に懐かしかった。
何で、こんなにも色々な事を忘れてしまっていたのかしら。
ついつい思い出にふけっちゃって、気がつけば日が沈んでしまっていたのよ。
ふふっ、ベルスランが探してくれなかったら、危うく自分の家で遭難するところだったかもね。
部屋に戻ったらシャルロットは泣いてしまうし、昨夜は本当に大変だったわ。
このお屋敷は私たちだけで暮らすには少し、広すぎるわね。
――そうだわ! 貴女もここで寝泊りなさいな。もうしばらくこのあたりにいるのでしょう?
あら、遠慮なんかしなくていいのよ。どうせ、部屋の殆どは全然使われていないんだから。
――決まりね! ほら、シャルロットも喜んでるわ!
それにしても、結局、厨房はどこにあるのかしら……?
40 days
ああお嬢さん、聞いて頂戴!
ついに厨房を見つけたのよ!
――それが部屋から全然すぐ近くだったの。
本当に、どうしてあんな何でもない場所を見つけられなかったのかしら……?
でもほら、見て頂戴! ほらっ、手作りのケーキよ!
やっと約束どおり、二人に食べさせてあげられるわ。
――え? その両手は大丈夫か……って?
あ、あら、やっぱり気付かれちゃうわよね。
随分久しぶりだったから、いざ作ろうとしたら、何だかその、調理器具や火を扱うのがすごく怖くなっちゃって……。
つい手が震えて何度か滑らせちゃったの。
ああでも大丈夫よ! すぐに勘は取り戻したし、怪我も大したことは無いから。
杖さえあればこんな傷、魔法ですぐに治せるわ。
さ、食べて頂戴!
本当に美味しそうに食べてくれたわね、お嬢さん。見ていて嬉しくなっちゃった。
でもやっぱりシャルロットは、このケーキは苦手みたいね。
――え? いつか必ず食べてくれる?
……そう、ね。その通り、だわ。
ええ、大丈夫。私は大丈夫よ。
42 days
昨日、部屋でとても懐かしいものを見つけたわ。とてもとても懐かしいもの。
ずっと傍にあったのに、どうして見つける事が出来なかったのかしら……。
何だかとても長い間、悪い夢を見ていたみたい……。
いえ、悪い夢ではなかったわ。とても甘美で優しい夢……。
……聞いていい、お嬢さん? 私はどれくらいの間、夢を見ていたのかしら。
――そう。あれから、もうそんなにも……。
――え? 私に会わせたい人がいる?
…………ええ、会わせて頂戴。
大丈夫。もう、貴女の力を借りなくても、自分ひとりで現実と向き合えます。
向き合って、みせます。
今まで、本当にありがとう……。
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――――
「そういえば……まだ貴女のお名前を伺っていませんでしたね。聞かせていただけませんか?」
「……ああ、私の名前は――――」
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