「ゼロのしもべ10」(2007/11/05 (月) 22:53:01) の最新版変更点
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午後の授業は無事終わった。
いや、授業とは無事終わるのが普通なんだが、普通のことが起こらないゆえにゼロの名を冠しているのだろう。
なんだか禅問答のようだがとにかく授業は終わり楽しい放課後である。
食事に関してはマルトーが今日のお礼だといって保障をしてくれた。これで食事抜きということはなくなったし、あのスープとパンという
19世紀の囚人のような扱いをされることはなくなった。
ルイズは「うちの使い魔を甘やかさないでください!」と不満そうだったが、マルトーの耳打ちで素直に方針を転換した。
バビル2世は聞いていた。「胸の大きくなる特別料理を毎食サービス」という甘言を。
男なら(不適切なため削除)が大きくなる料理をサービスする、と言われるようなものである。断る人間など居るはずがない!
なにしろ(不適切な表現のため削除)は大事な息子である。
というわけで主従ともどもスペシャルな料理を振舞われることとなった。
バビル2世が一番気に入ったのは元の世界で言うカルパッチョと、たたきを混ぜたような料理であった。
スズキに似た味の魚を薄く切る。
それを遠火で軽く炙る。
上に、酸味のある果物を凍らせたものをたまねぎの千切りのように切って、かける。
そこに醤油によく似た調味料を元に作ったソースをかければ「トツァカッツォ」の完成である。
これの一晩かけて良く冷やしたものは、焼酎によくあい絶品なのだが、残念だがバビル2世は未成年であるし焼酎は存在していない。
「これは旨い!旨いですな!」
単純な料理であるため誤魔化しが効かず、ほんの少しでも身が厚すぎたり炙りすぎたりすれば味が変わってしまう。
「これは白いご飯にも合いそうだな。」
舌鼓を打つバビル2世。
ルイズはというと、先ほどから一種類の料理だけをおかわりしつづけている。非常にわかりやすい。
食後、
「あれだけ食べたんだから明日にでも効き目があるわよね!」
と言っていたが、ないんじゃなかろうか。
「ん?」
洗濯を終えて戻ってくると、部屋の前になにやら赤い物体がうずくまっていた。
バビル2世に気づくと顔を上げ、てててと近づいてくる。
「たしかこれはキュルケの使い魔の、フレイム……うわっ!」
とびかかってこられて、思わず精神動力で弾き返してしまう。
廊下に転がったフレイムが何が起こったのかと目をパチクリさせてこちらを向きなおす。
「あ、しまった。」
だが懲りずにまたすぐ寄ってきたところを見ると気にしていないようである。ただたんに何が起こったのか理解していないだけ
かもしれないが。
ズボンを咥えて引っ張る動作をするフレイム。
「ついて来いと言っているのか?」
相手はサラマンダーである。心を読んでも何を言いたいのかわかるはずもないだろう。
使い魔同士の夜の懇談会でもあるのだろうか?
「ルイズの友人の使い魔だ。別に不審なことはないだろう。」
素直についていくことに決めた。
「うん?」
連れられて訪れた部屋は妙に暗かった。
床には火のついた蝋燭が幾本か燃え、壁にゆらゆらとバビル2世の影法師が映し出されている。
全体に甘い香りが漂う。どことなく女性の体臭も混じっている。
「いらっしゃい」
なまめかしい声。聞き覚えのある声だ。
闇になれた目に飛び込んできたのは扇情的な格好をした女性。
キュルケであった。
「げえっ、キュルケ!」
むむむ、と汗を流すバビル2世。
「そんな孔明を見た仲達みたいな反応をしないでよ、ダーリン。ようこそ、私たちのスイートルームへ、ビッグ・ファイア…………。
ギロチン大王だったかしら?」
どこをどうすればそんな間違いをするのだろうか。
「ギロチン大王は違うんじゃないかな?」
「あら、そうだったかしら?わかったわ、ビッグ・ファイア……」
髪をかきあげ、なまめかしい視線を送る。
「いけないことだとは思うわ。でもわたしの二つ名は『微熱』。たいまつみたいに燃え上がりやすいの。」
「ふむ」
つまり、ぼくは誘惑われているのだな。のんびりと確信するバビル2世。
戦闘の場数は踏んでいても恋愛の場数は踏んでいないのが弱点である。ヨミ様に教えたい。
「おわかりにならない?恋してるのよ、アタシ!貴方に!」
妙に芝居がかった仕草をするキュルケ。バビル2世によりかかり、首に手を回してしなだれかかる。
「貴方がギーシュを倒したときの姿……かっこよかったわ。あれを見て微熱のキュルケは情熱のキュルケになってしまったの……」
身体を密着させてくる。学生服のボタンを一つ一つ丁寧に外していく細い指。
吐息が耳にかかり、言葉が直接耳をくすぐる。
されるがままのバビル2世。ようやく、
「じゃ、じゃあ外の彼は誰だい?」
「……え?」
窓へ振り向くキュルケ。
それとほぼ同時に、
「キュルケ!」
と叫ぶ男の声。
ふわふわと宙に浮いて、窓の外に男がいた。
「待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば!………ってあれ?」
キュルケの奥にいるバビル2世に気づいたのだろう。「げぇっ!関羽!」と言い出さんばかりの表情で驚く。
「君は……昼に広場で決闘をしていた。」
ずかずかと乗り込んでくる男。
「いや、会えて光栄だよ。僕の名前はスティックス。以後お見知りおきを。」
腕を出し握手をねだる。バビル2世も握手を返す。
「いやあ、驚いたよ。ドットクラスが操っていたとはいえ、まさかゴーレムを触りもせずに手玉にとるなんて。」
熱っぽく語りだすスティックス。目がきらきら輝いている。
「君はエルフらしいが、よほど場数を踏んでいるんだろうね。僕も将来は魔法衛士隊を目指している身。ぜひとも教えを請いたいと
思っていたところなんだ。なに、そのうち模擬実戦を一手お手合わせ願いたいと思い……」
「キュルケ!」
別の声が窓の外からする。
「その男たちは誰だ!今日は僕と激しく燃え上がるはずだったのに複数にも興味が出てきたのか!混ぜるんだ!」
なぜか服を脱ぎながら入ってくる。何か大きく勘違いをしているようだ。
「「「キュルケ!」」」
今度は3人だ。
「「「恋人はいないって言ったじゃないか!」」」
一斉に強引に入ろうとするため窓で閊えている。なんとか部屋に入ってきたがすでにボロボロだ。
「キュルケ!どういうことな「いつが空いている?そういえば明後日は虚「僕はどこを使えばいいんだ?口でもい「なんなんだこいつらはいった
いどういうこ「落ち着け、これは孔明の罠「君の主人には僕が許可をと「裏切ったな!父さんと一緒で僕を裏「実は後ろの穴にも興味が「キュ…
「フレイム!」
サラマンダーがキュルケの命令で炎を吐く。炎と一緒に外へ投げ出される5人。
「さあ、邪魔者はいなくなったわ……」
目をギラリと光らせて、獲物を狙う虎のように迫るキュルケ。
その迫力に、修羅場馴れしているバビル2世が思わず後ずさる。史上最強の敵に違いない。
ガルルルルルと唸り声を上げ、ついにバビル2世を壁際まで追い詰めた。
「愛してるわ……ビッグファイア……」
「ま、待つんだ。ぼくはまだ使い魔としての用事が。」
「ほっときなさいよ……ゼロのルイズなんかよりアタシのほうがよっぽどいいわよ……」
目と目の距離が近づく。唇と唇が今まさに交差しようとするそのとき―――
「キュルケ!」
バタン、とドアを開ける音でキュルケの野望は阻止された。
「あら?」
「る、ルイズ。」
姿を現した少女の背中に、後光が見えた。
「取り込み中よ、ヴァリエール。」
「ツェルプストー、誰の使い魔に手を出してるのよ。」
ずかずかと部屋に入ってくるルイズ。両者の空間がねじれ、歪む。
フレイムが怯えて部屋の隅で縮こまり、丸まっている。
ガルルルル、ギシャーと威嚇しあう二人。まるで犬とサル、ハブとマングース、ゴジラとデストロイヤーである。
この後のことをあえて記述する必要はないだろう。
爆発と炎が学院を揺らし、寝入りばなの教師生徒をたたき起こした。
オスマンは曖昧なまま徘徊しはじめ、使い魔はふたたび混乱して暴れまわった。
学院が落ち着きを取り戻したのはすでに日も高くなってからで、その惨状は寄宿舎がほぼ半壊、負傷者12名、壊れたアイテムが7個、
セクハラの被害者2名、マルトーの抜け毛13本という惨憺たるものであった。
むろん、その日の授業が取りやめになったことは言うまでもない。
また、キュルケの部屋が消滅したため、キュルケはタバサの部屋へ移動のうえ2ヶ月の異性交流禁止がかせられた。
ルイズとバビル2世は、バビル2世がガンダールヴかもしれないということで厳重警戒中につき、寄宿舎の瓦礫撤去で済んだ。
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午後の授業は無事終わった。
いや、授業とは無事終わるのが普通なんだが、普通のことが起こらないゆえにゼロの名を冠しているのだろう。
なんだか禅問答のようだがとにかく授業は終わり楽しい放課後である。
食事に関してはマルトーが今日のお礼だといって保障をしてくれた。これで食事抜きということはなくなったし、あのスープとパンという
19世紀の囚人のような扱いをされることはなくなった。
ルイズは「うちの使い魔を甘やかさないでください!」と不満そうだったが、マルトーの耳打ちで素直に方針を転換した。
バビル2世は聞いていた。「胸の大きくなる特別料理を毎食サービス」という甘言を。
男なら(不適切なため削除)が大きくなる料理をサービスする、と言われるようなものである。断る人間など居るはずがない!
なにしろ(不適切な表現のため削除)は大事な息子である。
というわけで主従ともどもスペシャルな料理を振舞われることとなった。
バビル2世が一番気に入ったのは元の世界で言うカルパッチョと、たたきを混ぜたような料理であった。
スズキに似た味の魚を薄く切る。
それを遠火で軽く炙る。
上に、酸味のある果物を凍らせたものをたまねぎの千切りのように切って、かける。
そこに醤油によく似た調味料を元に作ったソースをかければ「トツァカッツォ」の完成である。
これの一晩かけて良く冷やしたものは、焼酎によくあい絶品なのだが、残念だがバビル2世は未成年であるし焼酎は存在していない。
「これは旨い!旨いですな!」
単純な料理であるため誤魔化しが効かず、ほんの少しでも身が厚すぎたり炙りすぎたりすれば味が変わってしまう。
「これは白いご飯にも合いそうだな。」
舌鼓を打つバビル2世。
ルイズはというと、先ほどから一種類の料理だけをおかわりしつづけている。非常にわかりやすい。
食後、
「あれだけ食べたんだから明日にでも効き目があるわよね!」
と言っていたが、ないんじゃなかろうか。
「ん?」
洗濯を終えて戻ってくると、部屋の前になにやら赤い物体がうずくまっていた。
バビル2世に気づくと顔を上げ、てててと近づいてくる。
「たしかこれはキュルケの使い魔の、フレイム……うわっ!」
とびかかってこられて、思わず精神動力で弾き返してしまう。
廊下に転がったフレイムが何が起こったのかと目をパチクリさせてこちらを向きなおす。
「あ、しまった。」
だが懲りずにまたすぐ寄ってきたところを見ると気にしていないようである。ただたんに何が起こったのか理解していないだけ
かもしれないが。
ズボンを咥えて引っ張る動作をするフレイム。
「ついて来いと言っているのか?」
相手はサラマンダーである。心を読んでも何を言いたいのかわかるはずもないだろう。
使い魔同士の夜の懇談会でもあるのだろうか?
「ルイズの友人の使い魔だ。別に不審なことはないだろう。」
素直についていくことに決めた。
「うん?」
連れられて訪れた部屋は妙に暗かった。
床には火のついた蝋燭が幾本か燃え、壁にゆらゆらとバビル2世の影法師が映し出されている。
全体に甘い香りが漂う。どことなく女性の体臭も混じっている。
「いらっしゃい」
なまめかしい声。聞き覚えのある声だ。
闇になれた目に飛び込んできたのは扇情的な格好をした女性。
キュルケであった。
「げえっ、キュルケ!」
むむむ、と汗を流すバビル2世。
「そんな孔明を見た仲達みたいな反応をしないでよ、ダーリン。ようこそ、私たちのスイートルームへ、ビッグ・ファイア…………。
ギロチン大王だったかしら?」
どこをどうすればそんな間違いをするのだろうか。
「ギロチン大王は違うんじゃないかな?」
「あら、そうだったかしら?わかったわ、ビッグ・ファイア……」
髪をかきあげ、なまめかしい視線を送る。
「いけないことだとは思うわ。でもわたしの二つ名は『微熱』。たいまつみたいに燃え上がりやすいの。」
「ふむ」
つまり、ぼくは誘惑われているのだな。のんびりと確信するバビル2世。
戦闘の場数は踏んでいても恋愛の場数は踏んでいないのが弱点である。ヨミ様に教えたい。
「おわかりにならない?恋してるのよ、アタシ!貴方に!」
妙に芝居がかった仕草をするキュルケ。バビル2世によりかかり、首に手を回してしなだれかかる。
「貴方がギーシュを倒したときの姿……かっこよかったわ。あれを見て微熱のキュルケは情熱のキュルケになってしまったの……」
身体を密着させてくる。学生服のボタンを一つ一つ丁寧に外していく細い指。
吐息が耳にかかり、言葉が直接耳をくすぐる。
されるがままのバビル2世。ようやく、
「じゃ、じゃあ外の彼は誰だい?」
「……え?」
窓へ振り向くキュルケ。
それとほぼ同時に、
「キュルケ!」
と叫ぶ男の声。
ふわふわと宙に浮いて、窓の外に男がいた。
「待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば!………ってあれ?」
キュルケの奥にいるバビル2世に気づいたのだろう。「げぇっ!関羽!」と言い出さんばかりの表情で驚く。
「君は……昼に広場で決闘をしていた。」
ずかずかと乗り込んでくる男。
「いや、会えて光栄だよ。僕の名前はスティックス。以後お見知りおきを。」
腕を出し握手をねだる。バビル2世も握手を返す。
「いやあ、驚いたよ。ドットクラスが操っていたとはいえ、まさかゴーレムを触りもせずに手玉にとるなんて。」
熱っぽく語りだすスティックス。目がきらきら輝いている。
「君はエルフらしいが、よほど場数を踏んでいるんだろうね。僕も将来は魔法衛士隊を目指している身。ぜひとも教えを請いたいと
思っていたところなんだ。なに、そのうち模擬実戦を一手お手合わせ願いたいと思い……」
「キュルケ!」
別の声が窓の外からする。
「その男たちは誰だ!今日は僕と激しく燃え上がるはずだったのに複数にも興味が出てきたのか!混ぜるんだ!」
なぜか服を脱ぎながら入ってくる。何か大きく勘違いをしているようだ。
「「「キュルケ!」」」
今度は3人だ。
「「「恋人はいないって言ったじゃないか!」」」
一斉に強引に入ろうとするため窓で閊えている。なんとか部屋に入ってきたがすでにボロボロだ。
「キュルケ!どういうことな「いつが空いている?そういえば明後日は虚「僕はどこを使えばいいんだ?口でもい「なんなんだこいつらはいった
いどういうこ「落ち着け、これは孔明の罠「君の主人には僕が許可をと「裏切ったな!父さんと一緒で僕を裏「実は後ろの穴にも興味が「キュ…
「フレイム!」
サラマンダーがキュルケの命令で炎を吐く。炎と一緒に外へ投げ出される5人。
「さあ、邪魔者はいなくなったわ……」
目をギラリと光らせて、獲物を狙う虎のように迫るキュルケ。
その迫力に、修羅場馴れしているバビル2世が思わず後ずさる。史上最強の敵に違いない。
ガルルルルルと唸り声を上げ、ついにバビル2世を壁際まで追い詰めた。
「愛してるわ……ビッグファイア……」
「ま、待つんだ。ぼくはまだ使い魔としての用事が。」
「ほっときなさいよ……ゼロのルイズなんかよりアタシのほうがよっぽどいいわよ……」
目と目の距離が近づく。唇と唇が今まさに交差しようとするそのとき―――
「キュルケ!」
バタン、とドアを開ける音でキュルケの野望は阻止された。
「あら?」
「る、ルイズ。」
姿を現した少女の背中に、後光が見えた。
「取り込み中よ、ヴァリエール。」
「ツェルプストー、誰の使い魔に手を出してるのよ。」
ずかずかと部屋に入ってくるルイズ。両者の空間がねじれ、歪む。
フレイムが怯えて部屋の隅で縮こまり、丸まっている。
ガルルルル、ギシャーと威嚇しあう二人。まるで犬とサル、ハブとマングース、ゴジラとデストロイヤーである。
この後のことをあえて記述する必要はないだろう。
爆発と炎が学院を揺らし、寝入りばなの教師生徒をたたき起こした。
オスマンは曖昧なまま徘徊しはじめ、使い魔はふたたび混乱して暴れまわった。
学院が落ち着きを取り戻したのはすでに日も高くなってからで、その惨状は寄宿舎がほぼ半壊、負傷者12名、壊れたアイテムが7個、
セクハラの被害者2名、マルトーの抜け毛13本という惨憺たるものであった。
むろん、その日の授業が取りやめになったことは言うまでもない。
また、キュルケの部屋が消滅したため、キュルケはタバサの部屋へ移動のうえ2ヶ月の異性交流禁止がかせられた。
ルイズとバビル2世は、バビル2世がガンダールヴかもしれないということで厳重警戒中につき、寄宿舎の瓦礫撤去で済んだ。
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