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「ゼロの使い魔消失事件-解決編」(2007/08/11 (土) 17:04:15) の最新版変更点
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「謎は全て解けたわ……」
ルイズの発言を受け、場の緊張がより一層高まった。
普段とは違う雰囲気をまとったルイズに、教師であるコルベール、キュルケやタバサといった実力者達でさえも呑まれていた。
誰が使い魔なのか。どんな理由で隠れているのか。一瞬にしてどうやって隠れたのか。謎が謎を呼ぶ。
ルイズが人差し指を天へ向け、間を置かずに振り下ろした。その指はある人物へ向けられている。
「使い魔はあなたよ!」
その指差された先にいた人物は、ギーシュ・ド・グラモン。
「そ、そんな! 何を言うんだルイズ! ぼ、ぼ、ぼくが君の使い魔だと!?」
「何を勘違いしているのギーシュ。わたしはあなたが使い魔だなんて言ってない。わたしの使い魔はあなたの隣にいる……」
ギーシュの右手にはモンモランシー、そして左手に抱かれるのは青ざめた顔で小刻みに震える……。
「ケティ!」
ルイズの宣言を否定するでもなく、燠火のケティがガタガタと震えていた。
「な、何を言うんだ! レディに対して使い魔とは失礼じゃないか!」
「その子が本物のケティならね……」
「どういうことだ!?」
「その子のマント、一年生のカラーに見えるけど……なぜ一年生がこの場にいるのかしら」
ああっ! そういえば!
あまりにも大胆、それでいて緻密なルイズの推理に、一同得心顔を隠せない。
ギーシュとモンモランシーがさっと一歩退き、従うように周囲の人間も後ろへ下がった。
ケティ――と思われていた何か――の周りを囲むようにして人の壁が作られた。
「やっぱり……やっぱり本物の魔法使いを騙すことなんてできっこないんだ……」
力なくうなだれ、その手に見合う小さな樫の杖がカラリと落ちた。
「お願いです……許して……許してください……」
ただでさえ小さな体をさらに縮ませ、哀れっぽく懇願するその姿は、数分前まで恐怖の対象だった謎の使い魔とも思えない。
怒りよりも憐憫を強く寄せ、生徒達は少女の姿をした使い魔を見ていた。
「許す許さないはこれから決めることよ」
人垣の中からルイズが一歩進み出た。彼女に限っては同情のどの字も無い。
「とりあえずわたしの質問に答えることね。あんた名前は?」
「私の名前はマジック三井……マジシャンです」
マジシャン? メイジのようなものか。それならばこれらのことも納得できる。ルイズは頷いた。
「で、ミツイはどうやって見たこともない女の子に変身していたの?」
「そんな! 変身だなんて……そんな大それたことができるわけないじゃないですか」
「それじゃ何をしたのよ」
「そこの少年の頭の中を読みとってケティさんの肉体をコピーし、自分は精神体になってそのコピーに憑依しました」
「そっちの方がすごいと思うけど……ふむ。あなた少なくともトライアングル……いや、スクウェアクラスらしいわね」
ルイズは、コホン、と小さく咳払いを入れ、例の「何も見ていない眼」で使い魔を睨みつける。
視線を浴びた儚げな少女は身も凍りつかんばかりに震え上がった。
「わたしはね。今すごく怒っているの。なぜかわかる?」
「さ、さあ」
「なんで隠れたりするのよ! わたしの使い魔になるのがそれほど不満だっていうの!?」
怒りのルイズに対し、使い魔は頭を抱えた。
「わ、私のようにつまらない人間が使い魔として召喚されたなんてがっかりすると思ったんです」
「いやあんたのしたこと普通にすごいし。ていうか召喚失敗の方ががっかりするから」
ルイズなりの褒め言葉だったのだが、使い魔は力なくくず折れた。
「ううっ……いっそがっかりして召喚しなおしてくれればいいのに」
「なによ。やっぱりわたしの使い魔になるのが嫌だったんじゃない!」
「だ、だって……使い魔って一日おにぎり一つだけで地獄のような労働をさせられるんでしょう?」
「そんなことしないわよ! あなた貴族をなんだと思ってるの! ほら、さっさと契約させなさい!」
「や、やめて! 横暴だ! 使い魔なんてなりたくなーい!」
先程まで恐怖のどん底に置かれていた反動もあり、少女二人の争いは眼に優しく、微笑ましいものに思えた。
皆が皆、人騒がせをぼやきつつも、童女がじゃれ合うような掴み合い、そこから生じる可愛らしい官能に心を和ませていた。若干一名を除き。
その若干一名であるマリコルヌ。彼は召喚したばかりの自分の使い魔を横目で見ていた。
少女二人のキャットファイトは彼の大好物であり、砂被りの席で食い入るように見倒してやるところなのだが、今の彼には自分の使い魔の方が気になった。
正確には使い魔自身よりも着ている服が気になった。
色は紺。シンプル極まりないフォルム。生地は……なんだろうか。よく分からない。
「マリコルヌ君……だっけ?」
不意をつかれた。
「君、ぼくの着ている物が気になっているみたいだね」
使い魔はにこやかな微笑みを崩していない。
「君さえよければ貸してあげてもいいけど……このスクール水着」
スクール水着。初めて耳にした名前の響きさえもがマリコルヌの心を惹きつけた。
「代わりと言うわけじゃないけど……君にも頼みたいことがあるんだ」
頭に女性の下着をかぶった熊。頬はまん丸、瞳はつぶら。ユーモラスそのものといった見目なのに、どこか歪んでいる。
「学院内の覗きポイント……君、知っているよね?」
使い魔と主とは密接な関係がある。とすれば、この熊は最も自分に合った使い魔ということになる。
「教えてもらえたら嬉しいんだけど」
自分に合った使い魔。その性質については考えるまでもない。
「いい所に呼び出されたよ。かわいい女の子はたくさんいるし、すぐ警察に通報する探偵はいないし」
マリコルヌは覚悟を決めた。元より失うものなど無いに等しい。ならばこの使い魔の薫陶を受け、一流のへ……紳士になってやろう。
二人の少女が歴史的な邂逅を果たした影で、二人の紳士がひっそりと出会った。
以上です。ヤンデレは俺も好きです。元ネタはギャグマンガ日和です。
分からない方が多いようなのでキャラの解説だけ。
・マジック三井
気弱さに反して厨スペックの超能力者。
地球の数倍もある隕石をはじき返す念力をはじめとした数々の超能力を操る。
・クマ吉
変態という名の紳士を標榜する熊の小学生。
何か事件があったらまずこいつが犯人で間違いない。
それではおまけの[[終末編>ゼロの使い魔消失事件-終末編]]です。
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