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「もってけ!水兵ふく その後」(2007/08/11 (土) 15:35:01) の最新版変更点
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王都トリスタニア。
かつて水兵ふくの都と呼ばれていたその地は、
異界の使い魔の手により蒔かれた『萌え』という名の種子を順調に発芽させ、育て上げていった。
彼女と彼女の主が在籍するトリステイン学院では、萌えを表現する為の祭典が年に二回、
国際規模で開かれ、その間広大な敷地は人間という人間で埋め尽くされた。
そしてその祭典の内容も壮絶極まりないものだった。
夜を徹して行われる仮装舞踏会では、各々が、物語や伝説の登場人物、
或いは擬人化された動物や魔物を模した格好で、夜明けまで踊り狂った。
可能な限り自身の魅力を引き出しつつ、決して下品にはならないようにするのがポイントらしい。
コンテストも行われており、現在は、吸血鬼の格好に身を扮した赤い髪の見事なプロポーションを持つ女生徒が
連続で優勝を掻っ攫っており、いつしか恍惚と羨望の眼差しと共に『仮装の女王』とまで呼ばれるようになった。
また、より間接的な手段で萌えを表現する者もいた。
多くの生徒は、異界の使い魔が所有していた『コミック』という書物の虜となった。
彼らは自らもコミックを作り出さんと、思い思いの作品を描き、互いに批評し合い、
やがて同じ趣味嗜好を持った者同士が集って一つの本に編纂し、萌えの祭典のときに敷地内の一角で販売されるようになった。
その中で、ある眼鏡をかけた蒼い髪の女生徒は、蛙の軍人が活躍したりしなかったりするその物語を読んだ結果、
彼女の心を凍てつかせていた氷を一瞬で、溶かすを通り越して蒸発させしめた。
以後、彼女はコミックに傾倒し、数々の作品を世に生み出してゆく。
その出来映えは異界の使い魔をして傑作と言わしめるものばかりであり、
萌えの祭典では、彼女の新刊は、必ず一番目立つ場所で大量に置かれていた。
後年、彼女はハルケギニア初の漫画家として、『漫画の神様』とまで呼ばれるようになる。
また、学院から端を発した萌え文化は、世界情勢にも多大な影響を与え歴史を震撼させた。
まず、萌え文化は魔法と違い平民でも参加することができた。
平民であっても、優れた萌えを表現できる者であれば認められ、成功する事が出来たのである。
例えば『暁の四萌士』の一人である、後年『メイドの女神』として崇拝され一大宗教まで創り上げた少女も、元は平民の給仕に過ぎなかった。
その他にも萌えの力は尽く歴史の流れを変えていった。
とある衛士隊長のW氏は、大人だけが立ち入り可能な裏萌えの祭典で入手した、
近○相○母○モノのコミック(題:母さまは人形遊びがお好き 作者:不明)に色んな意味で癒されまくり、それ以降熱烈な愛国の士となる。
そして革命組織レコン・キスタの二重スパイを演じ、これを存分に撹乱し殲滅させることに成功したのだ。
但しそれ以降、彼は任務や萌えイベントのとき以外は殆ど自室に篭りっきりとなる。
それで能力が落ちるという事は無かったが、ある日そんな隊長を心配した部下のひとりが、こっそり彼の留守中、部屋を覗いて見たことがあった。
だがその後、部下はただ一言、「隊長は遠い処に旅立ってしまわれたのだ……」と遠い目で口にしたきり、決して何も語ろうとする事はなかった。
とある大国の王様は、萌え文化に魂までどっぷりと浸かって、心の内に秘めていた世界への復讐とかすっかりどうでも良くなった。
彼は特にフィギュアに傾倒し、自身もフィギュアの製作に(国政そっちのけで)心血を注ぐ事になる。
後年彼は、トリステインの貴族の四男と共に、七体の生きた人形を造ったり造らなかったりして、
遠い未来の遠い世界で一騒動あったりなかったりするのだが、それはまた別の話。
そしてとある大国の王様に仕えていたエルフの青年経由で、萌えの文化はとうとうエルフの居住域にまで波及した。
王様が土産に持ち帰った萌えコミックの、ロリ・眼鏡・無表情の3連萌えコンボに瞬殺され、
何かに目覚めてしまった彼は、すぐさまこの恐るべき情報を本国へ伝えたのだ。
そして――果たして、萌えは人間のみならず、エルフの枯れかけた心にも潤いを与えた。与えまくった。
特に健全なほんのり萌えは、彼らの心の琴線に触れまくること著しく、程なく彼らは独自の萌えを追及するようになってゆく。
そして次第に、彼らは自然との調和とかどうでも良くなっていった。
萌えを足がかりに人間とエルフが手を取り合う日もそう遠くはないだろう。
これらの事象の影には、常に、萌えの開祖たちである『暁の四萌士』の姿が見え隠れしていた、という説もあったが、真相は定かではない。
ともあれ、やがてトリスタニアは、異界の使い魔の、故国の聖地にちなんで名を改める事になる。
萌えの聖地・トリハバラ――と。
(完)
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