「三人02」(2009/04/08 (水) 08:10:42) の最新版変更点
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アルヴィーズの食堂には、三人の特別席が用意された。
一段高いその席は、十派一絡げの生徒達とは一線を画す装飾がなされ、
テーブルの上も一段と高価な特別料理が並んでいるようだ。
あの後詳しい事情を聞き出した結果、三人のうち少なくとも二人はメイジであることが判明した。
そうであるならば粗略に扱うわけにはいかない、というのが学院長の決定であったが…
その決断の早さにはおそらく三人の容姿が関係しているのだろう、と、誰もがそう思った。
誰も言わなかったが。
ルイズはそもそも元から粗末に扱うつもりはなかったのだが、
こうも使い魔を特別扱いするのは何だか違う気がした。
「ねえ、あの特別扱いはちょっと違うと思わない?」
ルイズは隣に座ったマリコルヌに同意を求めるように、そう言ってみる。
しかし、マリコルヌは熱に浮かされたような燃え滾る瞳で、その言葉を激しく否定した。
「何を言うんだ!使い魔とはいえ、あの素晴らしいレディにはあれですら足りないと思うぞ、僕は!」
顔を紅潮させ、手を振り回して喋りだすマリコルヌに面食らったルイズは、正直にこう答える。
「ねえ、あんた変じゃない?何かあったの?」
ルイズのその問いに、マリコルヌは満面の笑みを浮かべて語りだした。
「コントラクト・サーヴァントの瞬間、今までの僻み根性に溢れたマリコルヌは死んだ!今ここにいるのは、
ミス・コノエを護る愛の騎士!言うなればそう、僻み根性を克服したマリコルヌと呼んでいただこう!」
きもい、デブ、臭いからよらないでなどと女子からさんざんな評価を受けてきたマリコルヌにとって、
嫌がりもせず、ええよ?と答えてコントラクト・サーヴァントを受け入れてくれた木乃香は、刺激が強すぎた。
マリコルヌは一瞬にして虜となり、本気で『この娘は僕の女神様だ』とまで思い込むようになっていたのだ。
その刷り込みはもはや『狂信』に近い、かなりの重傷であった。
「はあ…使い魔と主人が逆じゃない…」
ルイズは諦め顔でそう呟くと、当の三人のテーブルに目を向ける。
三人のうちの二人、オーサカとハヤテがなにやら話し込んでいるのが見えた。
「知らんかったー。魔法てほんまにあるもんなんやなー」
「そやね、少なくとも私の出身地は日本なんよ?あゆむちゃんと同じ日本かどうかはわからんけど」
自分と似たような少女、しかも同じ日本から来た少女が魔法使いであることに関心を示した大阪は、
しきりに魔法に関する話を聞き出そうとした。大阪に自分と共通する何かを感じたはやても、
その問いに積極的に答えているようだ。
ふいに、大阪が手を前に繰り出して、『私の考えたかっこええポーズ』を披露しだした。
「えたーなるフォースブリザードー。相手は死ぬー。へやー」
しかし、その必殺の魔法も現実にはそよ風一つ吹かせられない。
「なんも出んー」
「あゆむちゃん、それじゃあなんも出んよー」
笑うはやてに大阪はむー、と不満げな顔を見せると、手をぶんぶん振り回して唸った。
「わたしも魔法使いたいー」
「わからんけど、可能性はあるかもしれんな」
「ほんまにー?」
「ふふっ、もし私の世界に来るようなことがあれば、何とかなるかも知れんよ?」
「何とかなるー?ほんまに魔法つかえるー?」
「才能と、努力しだいやけどな。…厳しい訓練教官が、優しく指導してくれる」
「訓練教官…地獄のブートキャンプやー」
「地獄かどうかはともかく…まあ、もし帰れたら、の話やけどな。そん時はよろしくな」
「よ、よろしゅーたのみまんがなー」
こうして、はやて部隊長は大阪を手に入れた…
「うー、遅刻遅刻ー」
寝過ごした近衛木乃香は、少し遅れて『三人』の特別席に向かっていた。
その足元に、何かの小瓶の感触が伝わってくる。
ウホッ、いい小瓶…
「落ちたよー」
貴重なもののようなので、落とし主と思われる男子に手渡し、そのまま、三人専用の席へ急ぐ。
男子達が何かはやし立てているようだが、特に気になるようなことはなかった。
「おはようさん」
木乃香は二人と挨拶を交わし、席に座る。
すると大阪が木乃香に向き直り、話しかけてきた。どうやら矛先を変えたようだ。
「このちゃんあのなー、このちゃんは魔法使えるやん」
「使えるよー」
「私も何か魔法使いたいねん」
「あんなー、ウチもこの世界の魔法はようわからんし…」
そんな会話を続ける三人に、先ほどの男子…ギーシュが近寄り、声をかける。
「先ほどの件で少々話したいことがあるんだが…」
「なんやー?」
「なにー?」
「なんです?」
ほぼ同時に振り向いた三人に、ギーシュは思わず硬直した。
三人はもともと顔のつくりや雰囲気が似通っている上に、口調まで似ている。
それに加えてギーシュは…日本人の顔を区別する事ができなかったのだ!
「こ、この小瓶を拾ってくれたのは、誰かと思ってね…」
「知らんよー」
「知らんなあ」
「ウチも知らんえ」
そう言われては、ギーシュに返せる言葉はない。
そもそも、この三人のような掛け値なしに美しい女の子を問い詰める事はギーシュの趣味に反する。
「わ、わからないならいいんだ…うん、悪いのは僕なんだから、はは…」
そう言って、ギーシュは自分の席に戻った。もちろん、決闘騒ぎなど起こるはずもない。
魔法学院は今日も平和だった。
#navi(三人)
アルヴィーズの食堂には、三人の特別席が用意された。
一段高いその席は、十派一絡げの生徒達とは一線を画す装飾がなされ、
テーブルの上も一段と高価な特別料理が並んでいるようだ。
あの後詳しい事情を聞き出した結果、三人のうち少なくとも二人はメイジであることが判明した。
そうであるならば粗略に扱うわけにはいかない、というのが学院長の決定であったが…
その決断の早さにはおそらく三人の容姿が関係しているのだろう、と、誰もがそう思った。
誰も言わなかったが。
ルイズはそもそも元から粗末に扱うつもりはなかったのだが、
こうも使い魔を特別扱いするのは何だか違う気がした。
「ねえ、あの特別扱いはちょっと違うと思わない?」
ルイズは隣に座ったマリコルヌに同意を求めるように、そう言ってみる。
しかし、マリコルヌは熱に浮かされたような燃え滾る瞳で、その言葉を激しく否定した。
「何を言うんだ!使い魔とはいえ、あの素晴らしいレディにはあれですら足りないと思うぞ、僕は!」
顔を紅潮させ、手を振り回して喋りだすマリコルヌに面食らったルイズは、正直にこう答える。
「ねえ、あんた変じゃない?何かあったの?」
ルイズのその問いに、マリコルヌは満面の笑みを浮かべて語りだした。
「コントラクト・サーヴァントの瞬間、今までの僻み根性に溢れたマリコルヌは死んだ!今ここにいるのは、
ミス・コノエを護る愛の騎士!言うなればそう、僻み根性を克服したマリコルヌと呼んでいただこう!」
きもい、デブ、臭いからよらないでなどと女子からさんざんな評価を受けてきたマリコルヌにとって、
嫌がりもせず、ええよ?と答えてコントラクト・サーヴァントを受け入れてくれた木乃香は、刺激が強すぎた。
マリコルヌは一瞬にして虜となり、本気で『この娘は僕の女神様だ』とまで思い込むようになっていたのだ。
その刷り込みはもはや『狂信』に近い、かなりの重傷であった。
「はあ…使い魔と主人が逆じゃない…」
ルイズは諦め顔でそう呟くと、当の三人のテーブルに目を向ける。
三人のうちの二人、オーサカとハヤテがなにやら話し込んでいるのが見えた。
「知らんかったー。魔法てほんまにあるもんなんやなー」
「そやね、少なくとも私の出身地は日本なんよ?あゆむちゃんと同じ日本かどうかはわからんけど」
自分と似たような少女、しかも同じ日本から来た少女が魔法使いであることに関心を示した大阪は、
しきりに魔法に関する話を聞き出そうとした。大阪に自分と共通する何かを感じたはやても、
その問いに積極的に答えているようだ。
ふいに、大阪が手を前に繰り出して、『私の考えたかっこええポーズ』を披露しだした。
「えたーなるフォースブリザードー。相手は死ぬー。へやー」
しかし、その必殺の魔法も現実にはそよ風一つ吹かせられない。
「なんも出んー」
「あゆむちゃん、それじゃあなんも出んよー」
笑うはやてに大阪はむー、と不満げな顔を見せると、手をぶんぶん振り回して唸った。
「わたしも魔法使いたいー」
「わからんけど、可能性はあるかもしれんな」
「ほんまにー?」
「ふふっ、もし私の世界に来るようなことがあれば、何とかなるかも知れんよ?」
「何とかなるー?ほんまに魔法つかえるー?」
「才能と、努力しだいやけどな。…厳しい訓練教官が、優しく指導してくれる」
「訓練教官…地獄のブートキャンプやー」
「地獄かどうかはともかく…まあ、もし帰れたら、の話やけどな。そん時はよろしくな」
「よ、よろしゅーたのみまんがなー」
こうして、はやて部隊長は大阪を手に入れた…
「うー、遅刻遅刻ー」
寝過ごした近衛木乃香は、少し遅れて『三人』の特別席に向かっていた。
その足元に、何かの小瓶の感触が伝わってくる。
ウホッ、いい小瓶…
「落ちたよー」
貴重なもののようなので、落とし主と思われる男子に手渡し、そのまま、三人専用の席へ急ぐ。
男子達が何かはやし立てているようだが、特に気になるようなことはなかった。
「おはようさん」
木乃香は二人と挨拶を交わし、席に座る。
すると大阪が木乃香に向き直り、話しかけてきた。どうやら矛先を変えたようだ。
「このちゃんあのなー、このちゃんは魔法使えるやん」
「使えるよー」
「私も何か魔法使いたいねん」
「あんなー、ウチもこの世界の魔法はようわからんし…」
そんな会話を続ける三人に、先ほどの男子…ギーシュが近寄り、声をかける。
「先ほどの件で少々話したいことがあるんだが…」
「なんやー?」
「なにー?」
「なんです?」
ほぼ同時に振り向いた三人に、ギーシュは思わず硬直した。
三人はもともと顔のつくりや雰囲気が似通っている上に、口調まで似ている。
それに加えてギーシュは…日本人の顔を区別する事ができなかったのだ!
「こ、この小瓶を拾ってくれたのは、誰かと思ってね…」
「知らんよー」
「知らんなあ」
「ウチも知らんえ」
そう言われては、ギーシュに返せる言葉はない。
そもそも、この三人のような掛け値なしに美しい女の子を問い詰める事はギーシュの趣味に反する。
「わ、わからないならいいんだ…うん、悪いのは僕なんだから、はは…」
そう言って、ギーシュは自分の席に戻った。もちろん、決闘騒ぎなど起こるはずもない。
魔法学院は今日も平和だった。
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