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ゼロの使い-11 - (2008/12/17 (水) 19:29:04) のソース
#center(){[[前ページ>ゼロの使い-10]]/[[ゼロの使い]]/[[次ページ>ゼロの使い-12]]} ---- 「閣下。ただいま、兵の準備が整いました。」 「いつもながら仕事が速いな。どこかの花火とは大違いだ。」 「全てはレコン・キスタの悲願成就のため、ひいては閣下のため。」 「どうだかな。君は所詮、あの方の命で余の部下になっているに過ぎない。 役に立たぬと判断したら、忠義者の仮面を脱ぎ、反逆者へとはや代わりするのであろう?」 「・・・」 「まあよい・・・少なくとも君如きでは余に指一本触れることは出来ぬのだから・・・」 「仰るとおりで。」 「では始めるか・・・我らが目的・聖地奪還の第一歩となる・・・聖戦を・・・」 閣下と呼ばれた男の右薬指にはめられた指輪が、禍々しく輝いた・・・ トリスタニア宮殿に凶報がもたらされたのはそれから間も無くの事であった。 「アルビオン王国が神聖アルビオン共和国と名を変え、我が国に出撃! 恐ろしい数と速度で、まっすぐこのトリスタニアを目指しているとの情報です!!」 「な・・・何だと・・・」 「すぐに姫とミスタ・メディルに連絡だ!それと軍の高官を緊急招集!!」 「皇太子殿は、申し訳ありませんが、地下牢へお隠れを。」 「我ら二人がお供します。」 「かたじけない。」 三人に、情報が伝わったのはその十分後だった。 「そんな・・・幾らなんでも早すぎるわ・・・」 「恐らくグレートライドンが一枚噛んでいるのだろう。」 「そうか・・・あの技で兵をかき集めて・・・」 「とにかく、王室へ戻りましょう。」 王室へ戻ると、そこには気位ばかり高そうな高官達が雁首揃えて待っていた。 「状況は?」 「敵軍到着まで、残り2時間程かと。」 「奴ら・・・布告も無しに仕掛けるとは・・・貴族の魂を捨てた外道め・・・」 「戦にルールなど無い。あるのは殺すか殺されるかと言う真実だけだ。」 「貴様、何を・・・」 「布告があって挑まれるのなら満足か?ルールの下殺されるならそれでいいのか? 戦などと言うものに、正当性を求める方がどうかしている。」 「黙れ!!一貴族の使い魔の分際で!!」 「口を慎め!!ミスタ・メディルはこの戦局を左右し得る、最重要人物の一人なのだぞ!!」 マザリーニが一喝し、先程の高官を黙らせる。 「しかし、不思議だ。幾らなんでも敵の到着が早すぎる。」 彼らは知るはずもないが、敵軍は異世界の加速魔法を使い、速度を限界まで上げていたのであった。 「誰か、ミスタ・コルベールの元へ行ってくれませんか?彼の研究がこの国を救うことになるかもしれないのです。 本意ではありませんが、いざとなったら強行手段に出ることを許可します。」 「分かりました。すぐに部隊を編成します。」 と言って、高官の一人が退室する。 「ミスタ・メディル、勝算はありますか?」とマザリーニ。 「あの魔法を試す格好の的だ。」 その場の全員がメディルの物言いに戦慄を覚えた。 彼の言葉がハッタリではなく本心だと言うことは子供にでも分かるほどだ。 夥しい数の軍勢を試し撃ちの的呼ばわりとは・・・ 「陛下、お願いがあるのですが。」 「何でしょう?」 「念の為、魔力・・・否、こちらでは精神力か。それを回復する薬を用意していただきたいのです。」 「あんたが精神力の残量を心配するような魔法ってどんだけよ・・・」 ルイズは未だかつて、メディルが精神力切れを起こした所を見たことが無かった。 90分後・・・ レコン・キスタ進軍に備え、学生を除く(ルイズは例外)、国中のほぼ全てのライン以上のメイジと兵士が配備されたが、その数は数千とあまりにも頼りなかった。 一応メディルが召喚した魔物もいるが、その数は100匹ほどだった。彼とて僅かな時間で大群を用意する事は無理なようだ。 「全てはメディル殿の双肩にかかっていると言うわけか・・・」 「コルベールの協力次第では、頭数くらいは埋められるはずだがな。」 その頃、魔法学院のコルベールの研究所の表では派遣された部隊とコルベールがもめていた。 「貴殿も分からぬ人だ!!今は非常時なのだぞ!!」 大声で怒鳴るのは、この部隊の女隊長アニエス。剣と銃の扱いにおいて、彼女の右に出るものはそういないと評される人物だ。 「いかに国民を守るためとはいえ、あれを戦に使用すれば、将来その何倍もの人が血を流すことになる!! こんな簡単な事が何故分からないんだ!!」 「拒むのならば仕方が無い。貴殿を国家反逆罪で逮捕・処刑するがそれでも良いか!?」 「やれるものならやってみなさい。この『炎蛇』、一度は戦場を退いたとはいえ、そう簡単には・・・」 言いかけてコルベールは後方へ跳んだ。 派遣された部隊が一瞬で炎に包まれ、消し炭と化した。 「流石に勘がいいな。炎蛇。会えて嬉しいぞ」 燃え盛る炎の奥に見えたのはオークやオーガ等を50程侍らせた筋骨隆々とした白髪の男だった。 それはコルベールの見知った人物だったが、その人物ではあり得ない特徴を持っていた。 「メンヌヴィル・・・貴様・・・どうして・・・」 彼の名はメンヌヴィル。『白炎』の二つ名を持つ元下級貴族の火の傭兵メイジで、かつてコルベールの隊で副官を務めていた者だ。 「どうして?決まってるだろ隊長殿。お前の肉が焼ける臭いを嗅ぎたいからだ。」 「そうではない・・・貴様の両の眼は確かにこの私が奪ったはず。それが顔の火傷諸共消えているのはどういうわけだと聞いている!!」 コルベールの問いに、メンヌヴィルは笑いながら答えた。 「知りたいか?簡単な事だ。俺はレコン・キスタの守護神に魂を売ったのさ。 お陰で顔の傷も両目も元通り。低賃金のトリステインを裏切った甲斐があったというものだ。」 「貴様・・・」 怒りに燃えるコルベールを見ても、依然態度を変えぬまま、配下に指示を出した。 「お前達、手出しはするな。代わりに学院の生徒共を好きなだけ可愛がってやれ。 ここはお前達のために用意されたバイキングだ!」 「させるか!!」 「それはこっちの台詞だ!!」 白炎が炎蛇に向けて炎を放つが、容易く防がれる。 「邪魔をするな!!」 「もう手遅れだ。」 「何!!?」 「既に亜人達の小隊が学院の中にいくつか侵入している。オールド・オスマンも終わりだ。」 「そう簡単に彼を討ち取れるとでも?」 「取れるさ。奴の担当は間抜けな亜人共ではない。 レコン・キスタで最も恐るべき、最凶最悪の部隊・・・その名も・・・」 オールド・オスマンはまだ気づいていない。学院の中に亜人が入り込んだことに。 学院長室の窓から射す日差しの下でのんびりと昼寝している。 彼は気付かない。部屋の扉が音も無く開いたことに。 誰も気付くはずがない。誰もいないようで、実は音も無く部屋に入った者がいることになど。 オスマンはまだ眠っている。音も無く見えない刃が振り下ろされようと言うのに。 しかし、斬られたのは彼が座っていた椅子だけだった。 そして見えない敵の真横から強烈なファイアボールがヒットし、そいつは音も無く倒れた。 「どんなに姿や音、殺気を隠しても、このわしを暗殺するなど到底無理な話じゃ。年じゃからちと反応は遅れたがの。」 「ほう・・・流石だな・・・遅ればせながら自己紹介と行こう。我らはレコン・キスタに仇なすものを影から消し去る、 沈黙と闇の軍勢・・・その名も・・・」 「レコン・キスタ暗殺剣士隊だ!!」 解説 レコン・キスタ暗殺剣士隊 光を屈折させる魔法のかかった鎧・ステルスメイルをまとい、レコン・キスタの邪魔者を暗殺するだけでなく、 時として裏切り者や失敗者の処刑を行う本作オリジナルの軍団。 剣等の武器も同じ魔法がかかっている。 武器・鎧にはサイレントの魔法がかけてあり、移動や暗殺の際に音が出ない仕組み。 また風の魔法が内部にかけてあり、隙間の無い鎧の着用者には絶えず酸素が供給されている。 隙間が無いのは、敵に気付かれないようにするため。 兜にも隙間が無い構造だが、マジックミラーの様に内部からは外の光景が見えるし、鎧を着けた者同士も見えるようになっている。 隊員達は一筋の光も射さない闇の中でも獲物を殺せるよう、殺気を最大限に隠せるよう訓練を受けている。 メイジは魔力を察知されると言う理由で入隊は不可能である。 彼らに狙われた者は犬のように臭いで追うか、蛇のように体温で追うか等して、彼らの存在を知り、 返り討ちにしない限り次の朝日を拝むことは出来ない。 なお、サイレントのかかった鎧を着用しているのに、どうして声が出せるのかは突っ込んではいけない。 フィクションにご都合主義は付き物である。 #center(){[[前ページ>ゼロの使い-10]]/[[ゼロの使い]]/[[次ページ>ゼロの使い-12]]} ----