神経・精神・運動4

更新日時 2013-04-15 14:11:52 (Mon)


問題111
交代性片麻痺って病側の脳神経症状+対側の片麻痺ですよね。ということは、
全部交代性片麻痺の起こる疾患としてよいの?
中脳が障害されるWeber症候群、Benedikt症候群、
橋が障害されるFoville症候群、Millard-Gubler症候群、
延髄が障害されるDejerine症候群、Wallenberg症候群

+ ...
解答
解答
中脳が障害される○Weber症候群、○Benedikt症候群、
橋が障害される○Foville症候群、○Millard-Gubler症候群、
延髄が障害される○Dejerine症候群、×Wallenberg症候群
解説
脳幹病巣により障害側の脳神経麻痺などと対側の片麻痺が起こるものはかつて「交代性」片麻痺と呼ばれていた。
神経学用語集改訂第2版(1993)ではこれを「交叉性」片麻痺と呼ぶことにした。
本によっては延髄錐体交叉以下のものを交叉性、それより上を交代性と書いてある。

上交叉性片麻痺(ウェーバー症候群、ベネディクト症候群),中交叉性片麻痺(ミヤール-ギュブレ症候群,フォヴィル症候群,レーモン-セスタン症候群),下交叉性片麻痺(デジュリン症候群,バビンスキー-ナジョット症候群)がある。
ベネディクトは、記載してない本が多いが、上交叉性片麻痺で良いようだ。

(1)上交叉性片麻痺
①ウェーバー症候群は中脳腹内側病巣で同側動眼神経麻痺と対側片麻痺,
②Benedikt症候群は中脳腹内側病巣+赤核病巣で、同側動眼神経麻痺+対側上下肢の振戦+対側の片麻痺
(2)中交叉性片麻痺
①フォヴィル症候群が橋下部背側病巣で同側顔面神経麻痺,注視麻痺と対側片麻痺,
②ミヤール-ギュブレ症候群が橋下部腹側病巣で同側顔面神経麻痺(時に外転神経麻痺)と対側片麻痺,
③レーモン-セスタン症候群が橋上部背側病巣で同側の運動失調,注視麻痺と対側片麻痺,
(3)下交代性片麻痺
①デジュリン症候群が延髄内側病巣で同側舌下神経麻痺と対側片麻痺,
②バビンスキー-ナジョット症候群が延髄半側病巣で同側顔面温痛覚鈍麻,舌咽・迷走神経不全麻痺,小脳性運動失調などと対側片麻痺

Benedictは、ここにも載っていた。
1888年、ウイーン大のベネディクト(Moritz Benedikt, 1835-1920)が、
動眼神経麻痺と対側上下肢の振戦を伴う片麻痺を呈する3例を報告、
中脳に病巣を発見(Wiener Med Wochenschr)。
 1893年にシャルコーが同様の症例をサルペトリエールに発見、
これにベネディクトの名をつけてたたえました。
 この症候群の振戦は赤核振戦であると指摘したのは1904年のHolmes(Brain)とDenny-Brown(1961年の著書)です。
http://www42.atwiki.jp/galeos/m/pages/225.html?guid=on
http://www.nurs.or.jp/~academy/igaku/n/n445.htm

Millard-Gubler症候群(ミヤール・ギュブレ症候群):橋腹側の障害で,病巣側の顔面神経と外転神経の麻痺に加えて反対側の片麻痺をきたしもの

Wallenberg症候群は延髄外側障害で、片麻痺は認めない。
四肢への運動ニューロンは全て脳幹では腹側を通るが、ワレンベルグ症候群の病巣は背外側にあり、
錐体路が障害されないからである。

障害部  脳神経の障害   症状     代表的症候群
……………………………………………………………………………………
中脳   Ⅲ、Ⅳ      内転筋の麻痺   ○Weber症候群(ウェーバー症候群)
              散瞳       ○Benedikt症候群(ベネディクト症候群)
              眼瞼下垂   ) MLF症候群(MLF症候群)
……………………………………………………………………………………
橋    Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷ  顔面の筋麻痺 ) MLF症候群(MLF症候群)
              外転筋の麻痺   ○Millard-Gubler症候群
                       ○Foville症候群
……………………………………………………………………………………
延髄   Ⅸ、Ⅹ、ⅩⅠ、ⅩⅡ嚥下障害   ) Wallenberg症候群
              構語障害   )   〃
              同側舌下神経麻痺 ○Dejerine症候群
○は交代性片麻痺をきたす疾患
問題112
進行性核上性麻痺(PSP)とは、核上とか核性とか、そもそも言葉の意味が不明過ぎる
中枢性なのか脊髄以下の疾患なのか

+ ...
解答
PSPは、定義からいって核上性、中枢性。
解説
眼球運動障害に着目したカナダの医学生が、1964年に、
目を動かす神経核より上位の神経に障害があるという意味で、PSPと命名した。

海外の医学生優秀だな
それに比べ俺たちは…

核上性麻痺:核より上の一次ニューロンの障害によって起こる麻痺
核性麻痺: 神経細胞の核を含む、二次ニューロンの障害による麻痺。
と思う。

進行性核上性麻痺(PSP progressive supranuclea palsy :Steele-Richardson-Olszewski症候群)
パーキンソン症状と認知症を主症状とする疾患で、垂直性核上性眼球運動障害を伴うことが特徴である。
概念:大脳基底核・脳幹を侵す多系統的変性疾患である。

病理:中脳から橋にかけての被蓋部の強い萎縮が特徴である。
また、脳幹の神経細胞内に神経原線維変化を広範に認める。タウ陽性のtuft-shaped astrocyteは本症に特徴的である。
疫学:50歳以降、50~70歳代の男性に好発。
臨床像
(1)項筋の緊張亢進:頭部背屈(項部ジストニー)
(2)核上性外眼筋麻痺(下方注視障害=垂直方向特に下方への眼球運動制限。末期には水平運動も障害)
   このため階段を下りることが難しくなる。 
(3)パーキンソン症状:筋強剛、動作緩徐 *振戦はまれ:後方への転倒傾向が特徴(歩行障害)
(4)精神障害:皮質下性痴呆
(5)偽性球麻痺:構音障害
※頭部MRIでは中脳被蓋部の萎縮が強く矢状断像ではハチドリに似た所見(humming bird sign)
※SPECT:前頭葉の血流低下 ※小脳症状は目立たない。
治療及び経過
L-dopa、ジアゼパムにて、Parkinson様症状(筋強剛)、項部ジストニーは多少改善するが、進行性で数年以内に寝たきりとなり、感染症、衰弱などで死亡する。
問題113
進行性核上性麻痺(PSP)でみられるものを3つ選べ。
1.L-ドーパが著効する。
2.初期から高度の自律神経障害がみられる。
3.下方視が障害される。
4.構音・嚥下障害がみられる。
5.Parkinson様の症状がみられる。

+ ...
解答
正解:345
解説
1と2があったらPSPじゃない(除外診断)
たぶん臨床問題で出るから3と5は絶対覚えておくことにする

パーキンソン病は前屈姿勢
進行性核上性麻痺は後屈姿勢
とはよく言うものの、ただでさえ下方注視麻痺なのに後屈したら視野めっちゃ狭まるやん

筋緊張亢進あり--PSPの項部ジストニーですね。新できった神経の項部ジストニーの絵が忘れられません
MTM予想問題。(106回)パーキンソニズムを来す疾患で進行性核上性麻痺はまだ出てないので要チェック!←的中!!。106回出題された
問題
問題114
一応、交代性片麻痺をかすった出題。
これも必修問題で正答率が51.0%
36歳の男性。急に出現した頭痛と右眼瞼下垂とを主訴に来院した。意識は清明。
右瞳孔は左より大きく対光反射は消失している。最も考えられるのはどれか。
a片頭痛 b脳梗塞 c脳出血 d緊張型頭痛 eくも膜下出血

専門医試験の口頭試問でも出題。
←動眼神経麻痺+対光反射消失で考えられる疾患は?と

+ ...
解答
正解:e
専門医試験では
(1)IC-PC動脈瘤の増大
(2)IC-PC動脈瘤によるくも膜下出血、
(3)脳内占拠性病変によるテント切痕ヘルニアと解答する。
(注:糖尿病による動眼神経麻痺では対光反射は消失しない)
解説
右眼瞼下垂、右散瞳、対光反射消失→右動眼神経麻痺
動眼神経麻痺に急に出現した頭痛を伴う疾患は、IC-PC脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血。
IC-PC動脈瘤が大きくなると、付近にある動眼神経を圧迫して、動眼神経麻痺を来す。
急に出現した頭痛が認められるので、くも膜下出血を来している。

×b動眼神経麻痺をきたす脳梗塞は中脳のWeber症候群であるが、この場合は交代性片麻痺となるから左片麻痺をともなうはず。
×c脳出血では動眼神経麻痺はきたしにくい。中脳出血の可能性はあるが、この場合は意識障害など重篤な状態に陥るはず。

内頚動脈・後交通動脈分岐部動脈瘤(IC-PC aneurysm
①瞳孔散大、対光反射消失し、           (第Ⅲ脳神経麻痺)
 ついで、外眼筋の障害(眼瞼下垂、複視)が出現し、(第Ⅲ脳神経麻痺)
②脳動脈造影にて、IC-PCに血管より突出した腫瘤がみとめられたとき、
  →IC-PC aneurysm と診断する。

動眼神経麻痺を引き起こす脳動脈瘤を考える。動眼神経は中脳腹側より末梢に向かう。
その経路は後大脳動脈と上小脳動脈の間を通り、さらに後交通動脈の下方、内頚動脈の外側を通り
上眼窩裂にはいる。
したがって動眼神経麻痺を引き起こす脳動脈瘤は、
①内頚動脈・後交連動脈分岐部動脈瘤
②脳底動脈・上小脳動脈分岐部動脈瘤となる。

テント切痕ヘルニアもある。
105E30 および106C18に類題。

脳内占拠性病変による脳ヘルニア
動眼神経麻痺はテント切痕ヘルニアですね。
それゆえに中脳が圧迫されている!

問題115
101F53 動眼神経麻痺をきたしやすいのはどれか?
a内頚動脈瘤 b椎骨動脈瘤 c前大脳動脈瘤 d前交通動脈瘤 e中大脳動脈瘤

+ ...
解答
正解:a
解説
○a動眼神経麻痺は、動脈瘤では、内頚動脈・後交通動脈分岐部動脈瘤(IC-PC aneurysm)で見られる。
中脳の大脳脚の脇からでた神経線維は、→脳幹の腹側→後大脳動脈と上小脳動脈の間→内頚動脈のすぐ外側
→拡大した動脈瘤で同神経が圧迫される→動眼神経麻痺を起こす。

破裂してくも膜下出血を起こす前に動眼神経麻痺が初発症状となることがあるため、眼瞼下垂や瞳孔散瞳に注意する。
動眼神経麻痺の画像 41番目参照(CTRLを押しながら左クリックすると別画面で出る)
http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E5%8B%95%E7%9C%BC%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%BA%BB%E7%97%BA#mode%3Ddetail%26index%3D40%26st%3D1510

動眼神経麻痺では、散瞳が先行するとされている。
散瞳している脳動脈瘤は破裂の危険性が高いので、
外来で診察したら、即入院させる。

問題116
Fisher症候群のTriasと治療は?

+ ...
解答
正解:
①Trias:眼球運動麻痺・運動失調・深部反射消失
②治療:血漿交換療法または免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin; IVIG)
(ステロイド単独投与はだめ)
解説
ギラン・バレー症候群GBS(Fisher症候群)フィッシャー症候群治療法、またエビデンス
GBS症候群の診断のポイント
【1】急性に発症する末梢神経障害で、四肢の筋力低下を主症状とし四肢の深部反射は消失ないしは減弱する。
【2】発症の1~3週間前に感染があることが多く,発症後4週間以内に症状はピークに達する。
【3】末梢神経伝導検査で脱髄あるいは軸索障害がみられる。
【4】約6割の急性期血中にIgG抗ガングリオシド抗体がみられる。
【5】髄液で蛋白細胞乖離がみられる。

Fisher症候群はGuillain-Barre症候群(GBS)の亜型であり,
眼球運動麻痺・運動失調・深部反射消失が三徴である。
経過や髄液所見はGBSと同様であるが,四肢の筋力低下はないか軽微なものにとどまる。
IgG抗GQ1b抗体が9割程度の陽性率でみられることが特徴である。

Fisher症候群ではガングリオシド抗体のなかでも抗GQ1b抗体が検出されることが多い.
抗GQ1b抗体は外眼筋麻痺を伴う Guillain-Barre症候群でも検出されることがあり,
同抗体は動眼神経,滑車神経,外転神経の髄外部に結合しやすいのではないかと考えられている.

治療
なるべく早期に血漿交換療法または免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin; IVIG)を施行する.
血漿交換療法は速やかに病因物質(抗ガングリオシド抗体など)を除去することができ,
単純血漿交換療法の有効性は大規模臨床試験で証明されているが,患者に侵襲があるため,
最近では IVIG を用いることが多い.
IVIG がなぜ効果があるのか仮説がいくつかあるが,明らかではない.
IVIG の効果は単純血漿交換療法と同等という大規模臨床試験の結果も出ている.
ステロイド単独投与の有効性は否定されている。
最終更新:2013年04月15日 14:11
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