※ 鈴仙視点で鈴仙いぢめ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「何これ?」
夕食時―――
師匠が食卓に並べた器の1つを見るなり、姫様がそう言い放った。
師匠が食卓に並べた器の1つを見るなり、姫様がそう言い放った。
「…………?」
確かに『何これ?』と言いたくなる。
他の器は見慣れた食物……肉や青物(野菜)に彩られているのに、
明らかに1つだけ周りから浮いている器がある。
それは、赤くてやや直方体に近い“何か”が大量に入っていた。
他の器は見慣れた食物……肉や青物(野菜)に彩られているのに、
明らかに1つだけ周りから浮いている器がある。
それは、赤くてやや直方体に近い“何か”が大量に入っていた。
私も姫様のように、器に顔を近づけて食い入るように見つめてみる。
どうやら赤いのは表の方だけで、裏はややピンク色の白らしい。
が、それ以上の情報は得られず、やはり師匠の言葉を待つ他なかった。
どうやら赤いのは表の方だけで、裏はややピンク色の白らしい。
が、それ以上の情報は得られず、やはり師匠の言葉を待つ他なかった。
「もう一度訊くけれど、何これ?」
「さあ……何でしょう」
「……いや、『何でしょう』じゃなくて……」
「さあ……何でしょう」
「……いや、『何でしょう』じゃなくて……」
少なくとも器に入れて食事として出された以上、師匠はこれが何であるか
分かっているはずなのだが、師匠はあっけらかんとそう答えてくれた。
もしかして、本当に何か知らないまま器に盛り付けたのだろうか。
分かっているはずなのだが、師匠はあっけらかんとそう答えてくれた。
もしかして、本当に何か知らないまま器に盛り付けたのだろうか。
「永琳が買ってきたんじゃないの?」
「今日はその辺りのイナバを捉まえて、夕食の材料を買いに行かせたのです。
すると何を間違ったのか、これが買い物袋に入っていたとか……」
「あら……間違って買ってしまったのかしら?」
「いえ、本人曰く『買った覚えが無い』そうですよ」
「買った覚えの無い物がどうして……」
「店の者が袋に入れ間違えたとか、幻想入りした物が偶然袋に入ったとか、そういった可能性も否定できませんから」
「今日はその辺りのイナバを捉まえて、夕食の材料を買いに行かせたのです。
すると何を間違ったのか、これが買い物袋に入っていたとか……」
「あら……間違って買ってしまったのかしら?」
「いえ、本人曰く『買った覚えが無い』そうですよ」
「買った覚えの無い物がどうして……」
「店の者が袋に入れ間違えたとか、幻想入りした物が偶然袋に入ったとか、そういった可能性も否定できませんから」
先程から議論の中心になっている“それ”は、いまだ誰にも手を付けられることなく食卓に鎮座している。
表面が水で潤っているらしく、若干の輝きを見せているが、逆に不気味な事この上ない。
表面が水で潤っているらしく、若干の輝きを見せているが、逆に不気味な事この上ない。
「そもそも……これは食べ物なの? 見たところ、綺麗な石だと思えなくもないのだけれど」
「今日、イナバに買いに行かせたのは食材ばかりですよ。つまり、食べ物以外が買い物袋に入る余地はありません」
「ああ、食物だからとりあえず器に盛り付けてみたのね? 流石に石を買ったりはしないでしょうしねぇ」
「その盛り付けの際に触った時は柔らかかったので、少なくとも石では……」
「今日、イナバに買いに行かせたのは食材ばかりですよ。つまり、食べ物以外が買い物袋に入る余地はありません」
「ああ、食物だからとりあえず器に盛り付けてみたのね? 流石に石を買ったりはしないでしょうしねぇ」
「その盛り付けの際に触った時は柔らかかったので、少なくとも石では……」
姫様はふぅん、と納得したような素振りを見せたが、
結局正体は分からないので頭の疑問符は残ったままのご様子。
結局正体は分からないので頭の疑問符は残ったままのご様子。
「匂いとかは?」
「匂い、ですか……それなら私より、うどんげの方が鼻が利きますよ」
「ええ!?」
「匂い、ですか……それなら私より、うどんげの方が鼻が利きますよ」
「ええ!?」
どちらかと言えば耳の方が敏感なのが兎の特徴だ。まさかここで話が振られるとは思ってもみなかった。
しかし師匠はともかく、姫様に期待の眼差しで見つめられている。ここは無理を承知でやらざるをえないだろう。
まあ、人間であるお2人より鼻が利くのは確かだ。それに何も成果が出ないとは限らないし。
しかし師匠はともかく、姫様に期待の眼差しで見つめられている。ここは無理を承知でやらざるをえないだろう。
まあ、人間であるお2人より鼻が利くのは確かだ。それに何も成果が出ないとは限らないし。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
かなり微小だけど、塩気がある。あと、生臭い魚の匂い……いや、臭いがする。
魚だって言って違ったら大恥だし、余計なことは言わず、分かったことだけ伝えれば良いか。
魚だって言って違ったら大恥だし、余計なことは言わず、分かったことだけ伝えれば良いか。
「どうかしら?」
「……うーん、駄目です。魚介類の何かだってことくらいしか……」
「……うーん、駄目です。魚介類の何かだってことくらいしか……」
申し訳なさそうに言ってみる。しかし意外なことに、師匠にとってはそれだけでも十分だったらしい。
つまり、店で売っているような赤い直方体を持つ魚介類、というだけで師匠にはこれが何か分かったのだ。
少しばかり機嫌の良くなった師匠は、私の頭をなでなでしてくれた。
つまり、店で売っているような赤い直方体を持つ魚介類、というだけで師匠にはこれが何か分かったのだ。
少しばかり機嫌の良くなった師匠は、私の頭をなでなでしてくれた。
「……見当はつきました。食べても問題なさそうです」
「あら、もう分かったの? 結局、これは何?」
「多分これは、『カニ』です」
「あら、もう分かったの? 結局、これは何?」
「多分これは、『カニ』です」
カニ? カニは知識でしか知らないが、少なくともこんな小さい器に盛られるようなものではなかったはずだ。
横目で見ると、姫様は可愛らしく小首を傾げていた。
横目で見ると、姫様は可愛らしく小首を傾げていた。
「あら? 姫様はカニをご存知ありませんか?」
「えっと……あれよね? カニ鍋パーティの時の」
「ええ、そうです。カニの味も知っているはず」
「えっと……あれよね? カニ鍋パーティの時の」
「ええ、そうです。カニの味も知っているはず」
待って師匠、何それ。私は知らない。
そう言いたかったけど、姫様は納得してるし、水を差すようで悪いかと思って押し止めておく。
そう言いたかったけど、姫様は納得してるし、水を差すようで悪いかと思って押し止めておく。
「あれは美味しかったわねぇ」
「そうですね。ですがそれよりも、私にとっては直にカニを見られたことが大きな収穫でした。
月では海に生物が住めませんし、かと言って知識だけだとあまりにお粗末ですから。ねぇ、うどんげ?」
「え……あ、あはは、そうですね! 私も勉強になりました!」
「そうですね。ですがそれよりも、私にとっては直にカニを見られたことが大きな収穫でした。
月では海に生物が住めませんし、かと言って知識だけだとあまりにお粗末ですから。ねぇ、うどんげ?」
「え……あ、あはは、そうですね! 私も勉強になりました!」
ごめんなさい、知識だけです。カニ鍋パーティって何ですか? どうして私は呼ばれていないんですか?
……これは、後で聞いた話だけど……一度だけ、幻想郷入りしたカニを食する機会に見舞われたらしい。
具体的に何があったかは知らないけど、ともかく永遠亭でカニ鍋パーティが開かれたことがあったそうだ。
具体的に何があったかは知らないけど、ともかく永遠亭でカニ鍋パーティが開かれたことがあったそうだ。
ところが私は当日風邪をひいていて、そのカニ鍋パーティには呼ばなかったんだとか。
確かに、『知ってて行けない』のは『知らずに行かない』のよりも辛いとは思う。けど、知った後はもっと辛いよ……
姫様も師匠も、みんなで囲んで食べた印象が強すぎて、私が欠席していたことなんて忘れていたんだろう。
てゐやイナバ達も参加したのかな。美味しかったのかな。そう考えると、ちょっと泣きそうになった。
確かに、『知ってて行けない』のは『知らずに行かない』のよりも辛いとは思う。けど、知った後はもっと辛いよ……
姫様も師匠も、みんなで囲んで食べた印象が強すぎて、私が欠席していたことなんて忘れていたんだろう。
てゐやイナバ達も参加したのかな。美味しかったのかな。そう考えると、ちょっと泣きそうになった。
……その話は置いといて、“これ”はカニなのかという話。
「う~ん……確かに言われてみれば、カニの切り身に見えなくもないけど……」
なるほど、あの甲羅に覆われた体の中の切り身か。それならこの形や大きさも納得できる。
でも、これは包丁で切ったにしてはあまりにも切り口が綺麗すぎるし、
海に生息する生物のはずなのに塩の香りがほとんど感じられない。どういうことだろう。
でも、これは包丁で切ったにしてはあまりにも切り口が綺麗すぎるし、
海に生息する生物のはずなのに塩の香りがほとんど感じられない。どういうことだろう。
「形や匂いはどうあれ、カニで間違いないでしょう。イナバに買いに行かせた場所……
大方、魚屋あたりで紛れ込んだのね。試しに食べてみれば分かるわ」
「……まあ、それもそうね。仮に毒だとしても、私達は死なないわけだし」
「そういうことです」
大方、魚屋あたりで紛れ込んだのね。試しに食べてみれば分かるわ」
「……まあ、それもそうね。仮に毒だとしても、私達は死なないわけだし」
「そういうことです」
毒だと下手をすると、私はその人生の幕を閉じることになってしまうが、
姫と師匠が乗り気になっているのに『自分は遠慮する』などとはとても言えなかった。
姫と師匠が乗り気になっているのに『自分は遠慮する』などとはとても言えなかった。
「いただきます」
「いただきます」
「い……いただき、ます……」
「いただきます」
「い……いただき、ます……」
とはいえ、私もまだ命を散らせたくはなかったので、とりあえずお2人に毒見をしていただくことにした。
自分が仕える人達を毒見に使うなどあるまじき事だが、この時の私の胸中は察して欲しい。
自分が仕える人達を毒見に使うなどあるまじき事だが、この時の私の胸中は察して欲しい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
やがて、お2人が黙々と食事を続ける様を見て、私もそれを1ついただくことにした。
こういうのは思い切りが大事だと、意を決して口に放り込む。
こういうのは思い切りが大事だと、意を決して口に放り込む。
もそもそと咀嚼すると、魚のような生っぽい、どこか覚えのある味が口の中に広がった。これは……
「……ね、カニでしょう?」
「え? あ、はい、カニですね、カニの味がします」
「え? あ、はい、カニですね、カニの味がします」
師匠は私が食べるかどうか見ていたらしい。私が遠慮したがっているのを見て、気を遣ってくれたらしい。
カニ鍋パーティに参加していない私はカニの味を知らなかったが、
師匠の気分を害することも無いかと思い、とりあえず相槌を打っておいた。が。
カニ鍋パーティに参加していない私はカニの味を知らなかったが、
師匠の気分を害することも無いかと思い、とりあえず相槌を打っておいた。が。
「異議あり」
このまま“カニ”を愛でつつ、いつもの食卓の光景が繰り広げられるのかと思いきや、
突然の姫様の申し立て。箸を持ったまま固まる師匠と私。
突然の姫様の申し立て。箸を持ったまま固まる師匠と私。
「駄目だわ。こんなものは、本当のカニじゃない」
「え…………?」
「姫、何を……」
「え…………?」
「姫、何を……」
普段滅多なことでは直情的にならない姫様が、少し怒った素振りで、
しかも自信を持って言う様に、私達はただ唖然とさせられた。
しかも自信を持って言う様に、私達はただ唖然とさせられた。
「だって……明らかに、口にした時の感触が違うじゃない」
「感触?」
「………………」
「感触?」
「………………」
師匠が少し俯いた。どうにも師匠も気になっていたらしい。
私はカニ自体が分からないので比較のしようが無いけど。
私はカニ自体が分からないので比較のしようが無いけど。
「確かに……味はカニのようですが、この舌触りがあの時のカニとは明らかに違います……
ですが、赤と白の色彩、魚介類、味などを考えると、やはりカニ……正確には茹でたカニ以外の何物でも無いと」
「その固定観念がいけないのよ。私は、カニとは別の“何か”だと考えるけれど」
ですが、赤と白の色彩、魚介類、味などを考えると、やはりカニ……正確には茹でたカニ以外の何物でも無いと」
「その固定観念がいけないのよ。私は、カニとは別の“何か”だと考えるけれど」
カニとは別の“何か”、という奇妙な物言いではあったが、カニっぽいところもある以上、
そのような言い方をせざるを得ないのだろう。しかし、師匠はその意見を認めたくないらしい。
そのような言い方をせざるを得ないのだろう。しかし、師匠はその意見を認めたくないらしい。
「では姫は、これを何だと思われるのですか?」
「……そう言われると、分からないのよね」
「それなら、カニに一意に定まるのではありませんか?」
「だから違うって言ってるでしょう。そもそもカニがまた幻想入りしてくるとは思えないもの」
「確率論的に言えば、一度あったから二度目は無いということは無いはずです。
それともカニとは別の“何か”なら、幻想入りする確率がより高いと?」
「そうは言ってないわよ。でも、その“何か”は幻想郷で作られたものかもしれないじゃない」
「それなら幻想郷に住んで長い私たちが知らない訳も無いのでは? 姫自身がよくご存知でしょう」
「傲慢よ。私たちにだって知らないことくらいあるわ」
「人里で買えるものくらいなら、十分に把握しているつもりです」
「月の頭脳と言われた八意永琳も、地上の情報には精通しているとは言い難いんじゃない?」
「そうだとしても姫よりは屋外に出ておりますので、姫よりは詳しいと思いますが」
「……そう言われると、分からないのよね」
「それなら、カニに一意に定まるのではありませんか?」
「だから違うって言ってるでしょう。そもそもカニがまた幻想入りしてくるとは思えないもの」
「確率論的に言えば、一度あったから二度目は無いということは無いはずです。
それともカニとは別の“何か”なら、幻想入りする確率がより高いと?」
「そうは言ってないわよ。でも、その“何か”は幻想郷で作られたものかもしれないじゃない」
「それなら幻想郷に住んで長い私たちが知らない訳も無いのでは? 姫自身がよくご存知でしょう」
「傲慢よ。私たちにだって知らないことくらいあるわ」
「人里で買えるものくらいなら、十分に把握しているつもりです」
「月の頭脳と言われた八意永琳も、地上の情報には精通しているとは言い難いんじゃない?」
「そうだとしても姫よりは屋外に出ておりますので、姫よりは詳しいと思いますが」
あれ? と思った時にはもう遅かった。お2人は喧嘩腰で、お互いを挑発していたのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その後も烈火の如く言い合う様はまさに売り言葉に買い言葉で、私が仲裁できる雰囲気じゃなかった。
私はお2人のどちらかが気を収めて下さるのを待つことしかできなかった。
私はお2人のどちらかが気を収めて下さるのを待つことしかできなかった。
「……いいでしょう。それなら、私が今からこの“カニ”の成分を分析します。
これをカニのデータと照合すれば、カニかどうかの判定は容易でしょう」
「そうね。それなら罰でも考えましょうか。永琳は身の程をわきまえていないようだし、お仕置きが必要よね」
「姫こそあのような物言いをされるところを見ると、あなたの家庭教師が誰だったかをお忘れなのでは?」
「とっくに忘れたわよ、そんなの。それより罰の内容。永琳も考えていいわよ? 公平じゃないとねぇ?」
「これはこれは、お気遣いありがとうございます」
これをカニのデータと照合すれば、カニかどうかの判定は容易でしょう」
「そうね。それなら罰でも考えましょうか。永琳は身の程をわきまえていないようだし、お仕置きが必要よね」
「姫こそあのような物言いをされるところを見ると、あなたの家庭教師が誰だったかをお忘れなのでは?」
「とっくに忘れたわよ、そんなの。それより罰の内容。永琳も考えていいわよ? 公平じゃないとねぇ?」
「これはこれは、お気遣いありがとうございます」
私は、師匠が本気で怒るのは何度かは見たことがある。
高い薬が入っていたフラスコを割った時、凄く怒られた。自分の部屋でこっそり泣いた。
私が蓬莱の薬を飲みたいと言いだした時、師匠は激怒した。トラウマ。
師匠はそうやって、本心から私のことを怒ってくれる人だ。
高い薬が入っていたフラスコを割った時、凄く怒られた。自分の部屋でこっそり泣いた。
私が蓬莱の薬を飲みたいと言いだした時、師匠は激怒した。トラウマ。
師匠はそうやって、本心から私のことを怒ってくれる人だ。
そんな人がこんな皮肉たっぷりの言葉を発するのを聞くのは初めてだった。
そういう意味では、これこそが『本気で』怒った師匠なのかもしれない。
そういう意味では、これこそが『本気で』怒った師匠なのかもしれない。
「それじゃ、カニとは別の“何か”だったら、明日から“レイセン”の名前を“鈴仙・イナバ”にするわ」
姫様もまた随分と嫌味のような罰を考えられる。私に与えられた“鈴仙・優曇華院・イナバ”という名前は、
決して私1人のものではない。地上で生きていく為に、師匠に“優曇華院”、姫様に“イナバ”を与えられたからだ。
決して私1人のものではない。地上で生きていく為に、師匠に“優曇華院”、姫様に“イナバ”を与えられたからだ。
その片割れを消そうというのだ。私の名前が勝手に改名されることも悲しいが、
姫様が師匠を少なからず憎んでいることが分かってしまうのがもっと悲しい。どうしてこんなことに……
姫様が師匠を少なからず憎んでいることが分かってしまうのがもっと悲しい。どうしてこんなことに……
「いいでしょう。ですがもしカニだったら、明日から“レイセン”の名前を“鈴仙・優曇華院・ディグダ”にします」
……私はしばらく、“鈴仙・優曇華院”じゃないんだ、などと呑気な事を考えていた。
絶対に看過してはならない問題に気付くまでには、少し考える時間が必要だったのだ。
絶対に看過してはならない問題に気付くまでには、少し考える時間が必要だったのだ。
「……え? ディ、ディグダ!?」
「ええ」
「ど、どうしてですか!?」
「どうしてって……なんとなく」
「ええ」
「ど、どうしてですか!?」
「どうしてって……なんとなく」
どうせ名前を変えさせるなら、いっそ消してくれた方がマシだった。
なんとなくディグダにされてはたまらない。明日から地中で過ごせというのだろうか。
ただの月の兎である私には、天才と呼ばれる師匠の思考回路はいまだに理解できなかった。
なんとなくディグダにされてはたまらない。明日から地中で過ごせというのだろうか。
ただの月の兎である私には、天才と呼ばれる師匠の思考回路はいまだに理解できなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
結論から言えば、“あれ”はカニであったし、またカニではなかった。
魚のすり身か何かと、カニの成分を両方つめこんだものだったらしい。
……それだけのことで、お2人は関係を壊す程にまで争ってしまった……
魚のすり身か何かと、カニの成分を両方つめこんだものだったらしい。
……それだけのことで、お2人は関係を壊す程にまで争ってしまった……
と思ったら、翌日。そこには仲良くお喋りをするお2人の姿が。
「もう喧嘩なんてしないわよ」
とか。非常に人騒がせな人達だ。私はあの場にいて寿命が縮まる思いだったというのに。
よく考えたら、億単位で生きてるあの人たちが、一時の争いで険悪になるような
脆い精神を持ち合わせているわけはなかったのだ。
よく考えたら、億単位で生きてるあの人たちが、一時の争いで険悪になるような
脆い精神を持ち合わせているわけはなかったのだ。
そんな波乱があったにもかかわらず、私の名前は変わらないままだった。両方勝ちか両方負けにしてしまうと
名前が“鈴仙・ディグダ”になってしまうので、私は全力で無効試合にすることを提唱した。
私は割と必死だったが、お2人は笑いながらそれを受け入れてくれた。
昔、私がここに匿ってくれと言った時もそうだった。この人達はあの時からまったく変わらない。
名前が“鈴仙・ディグダ”になってしまうので、私は全力で無効試合にすることを提唱した。
私は割と必死だったが、お2人は笑いながらそれを受け入れてくれた。
昔、私がここに匿ってくれと言った時もそうだった。この人達はあの時からまったく変わらない。
「それにしても、結局あれは何だったの?」
「ですから、魚のすり身と……」
「そういうことじゃなくて、あの食物の名前とか」
「ですから、魚のすり身と……」
「そういうことじゃなくて、あの食物の名前とか」
名前……名前は大事だ。姫様や師匠の指示とあらば改名でもするが、あの名前はちょっと困ったし。
「魚のすり身……ということは、カマボコってことですよね?」
「まあ、そう言って差し支えないと思うわ」
「じゃあ……カニ味のカマボコだから、カニカマボコですね」
「まあ、そう言って差し支えないと思うわ」
「じゃあ……カニ味のカマボコだから、カニカマボコですね」
姫様と師匠は一瞬きょとんとした後、苦笑しながら、
「ふふっ、そのままじゃない」
「まったく、これだからうどんげは」
「まったく、これだからうどんげは」
と仰られた。私の付けた名前は、お2人のお気には召さなかったらしい。名前って難しい。
畳の上にごろんと横になる姫様と、はしたないですよと諫める師匠。
永遠亭ではよく見られる光景だけど、私が永遠亭に来る前からずっと繰り返されてきたのだろう。
そんな何でもないようなことが嬉しくて、私もまた、自然と笑みを浮かべていた。
永遠亭ではよく見られる光景だけど、私が永遠亭に来る前からずっと繰り返されてきたのだろう。
そんな何でもないようなことが嬉しくて、私もまた、自然と笑みを浮かべていた。
――― おわり ―――
- いや、鈴仙関係ねぇだろww
とにかく和んだ。 -- 名無しさん (2009-07-26 18:00:43) - 鈴仙虐めってことは兎肉を喰わせるのかと思ったけど予想と全く違った
まぁ 和んだからいいんだがw -- 名無しさん (2009-07-26 22:56:57) - ガチいじめの中にほんのり登場するギャグ系いじめ
それがこれだな -- 名無しさん (2009-07-26 23:39:59) - カニカマかw -- 名無しさん (2009-07-29 04:31:07)
- ディグダwww -- 名無しさん (2009-07-29 07:10:58)
- 鈴仙・優曇華院・ディグダwwww -- 名無しさん (2009-11-20 17:32:14)
- もう笑うしかないなwww -- 名無しさん (2009-11-20 19:43:04)
- ダグトリオに進化するのか -- 名無しさん (2010-03-14 20:22:52)
- ↑土の中から三体の鈴仙が頭を出している図を想像したら吹いたww -- 名無しさん (2010-03-14 22:20:00)
- なにそれかわいい -- 名無しさん (2010-03-15 19:28:21)
- ダグトリオに進化すると狂気の眼の効果が三倍になります -- 名無しさん (2011-11-21 21:07:29)
- ↑それなんてスリーオブアカインド -- 名無しさん (2011-12-02 22:14:54)
このwikiの更新情報RSS