「 へぇ、ここが…… 」
妖怪、八雲 紫が「無縁塚」へ足を踏み入れる。
現世との境界が非常に薄くなっているのを感じ取れる。
冥界とも近い為 気が付けば死んでいるかもしれないという生物にとって非常に危険な場所。
紫がこんな場所を訪れた理由は、とある人物に挨拶をしに来たからだ。
無論、それが唯の挨拶である筈も無いが……
現世との境界が非常に薄くなっているのを感じ取れる。
冥界とも近い為 気が付けば死んでいるかもしれないという生物にとって非常に危険な場所。
紫がこんな場所を訪れた理由は、とある人物に挨拶をしに来たからだ。
無論、それが唯の挨拶である筈も無いが……
四季映姫・ヤマザナドゥ
生命の終着点を司る神、閻魔である。
地獄の管理者の神ともあればその力も計り知れないものがあるだろうが、
この頃の紫は 神を超えるだけの力を持っているという 自信があった。
幻想郷の殆どをその手中に収めてきた紫は、ついにその手で地獄をも自分のモノにしたいと考えたのだ。
幻想郷を愛するが故、あらゆる物を自分の物にしてしまいたい。そんな独占欲がどこまでも紫を動かした。
地獄の管理者の神ともあればその力も計り知れないものがあるだろうが、
この頃の紫は 神を超えるだけの力を持っているという 自信があった。
幻想郷の殆どをその手中に収めてきた紫は、ついにその手で地獄をも自分のモノにしたいと考えたのだ。
幻想郷を愛するが故、あらゆる物を自分の物にしてしまいたい。そんな独占欲がどこまでも紫を動かした。
昼間だというのに薄暗く、彼岸花の咲き乱れた なんとも辛気臭い場所だ。
しかし 雄大に咲き誇る「紫色の桜」……それだけは紫の目を掴んで離さなかった。
しかし 雄大に咲き誇る「紫色の桜」……それだけは紫の目を掴んで離さなかった。
「 綺麗…… 」
その美しい桜を目の当たりにした紫は、ますます支配欲に駆られた。
そう、閻魔さえ力で抑え込んでしまえば 地獄やこの桜だって私のモノ。
手を伸ばし、桜に近寄る紫に 声が かけられた
そう、閻魔さえ力で抑え込んでしまえば 地獄やこの桜だって私のモノ。
手を伸ばし、桜に近寄る紫に 声が かけられた
「 紫色は罪の色…… あなたにピッタリの名前ですね 」
「 ! 」
「 ! 」
振り向いた紫に ゴテゴテした帽子と、その体には少し大きめの堅苦しい制服に身を包んだ少女が微笑んでいた。
「 その桜には罪深い人間の霊が宿る。そしてそれに魅入られる貴女もまた、さぞ罪深いのでしょう。
幻想郷の管理者、スキマ妖怪 八雲 紫 でしたか。お噂はかねがね 」
「 貴女は? 」
「 幻想郷担当の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥです。どうぞよろしく 」
幻想郷の管理者、スキマ妖怪 八雲 紫 でしたか。お噂はかねがね 」
「 貴女は? 」
「 幻想郷担当の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥです。どうぞよろしく 」
ぺこりと頭を下げる映姫。
紫は唖然とした。こんな小娘が閻魔とは。
自然と口の端が上がってくる。どうやらここを手に入れるのもそう難しくはなさそうだ と。
紫は唖然とした。こんな小娘が閻魔とは。
自然と口の端が上がってくる。どうやらここを手に入れるのもそう難しくはなさそうだ と。
「 こんな所に生者が訪れるなんて珍しい……来る途中に死神に止められませんでしたか? 」
不思議そうに首をかしげる映姫。 その仕草には毒気を抜かれてしまう。
「 死神? ……いいえ、ここに来るまでには誰にも合わなかったけれど 」
「 まったくもう小町ったら、また昼寝でもしているのかしら?あとでお説教に行かないと 」
「 まったくもう小町ったら、また昼寝でもしているのかしら?あとでお説教に行かないと 」
困った顔をして顔を紅くし、プンプンと怒るその姿からは何の力も感じない。とても神とは思えぬ姿だった。
戦いに向け、久しぶりに本気を出す事になりそうだと気を入れていた自分が馬鹿馬鹿しい。
今日は地獄で この閻魔を椅子にでもしながら 友と酒でも飲もうかしら
などと考えながら さっさと本題に入る事にした。
戦いに向け、久しぶりに本気を出す事になりそうだと気を入れていた自分が馬鹿馬鹿しい。
今日は地獄で この閻魔を椅子にでもしながら 友と酒でも飲もうかしら
などと考えながら さっさと本題に入る事にした。
「 閻魔様。 私、折り入って閻魔様にお願いがあってこちらに来ましたの 」
「 ? 聞きましょう 」
「 ? 聞きましょう 」
何知らぬような顔で見つめる映姫に胡散臭く微笑みつつも、紫は自分の後ろに密かにスキマを開いた。
「 地獄、私のモノにさせて頂きますわ 」
大量の霊力を込めた弾幕を一斉にスキマの中に打ち込み、映姫の背後に開いたスキマを弾幕の出口にして繋げる。
破壊力を重視した為 密度は浅いが、ほぼゼロ距離から さらに背後からの弾幕だ。
先手必勝、避けきれる筈も無い。
破壊力を重視した為 密度は浅いが、ほぼゼロ距離から さらに背後からの弾幕だ。
先手必勝、避けきれる筈も無い。
「 おや 」
呆けた声を出し、攻撃に反応した瞬間 映姫は直撃を受け、その爆風が辺り一帯を吹き飛ばした。
「 あっはっはっはっは……呆気ない呆気ない! 閻魔? 神様? ほんと、名前だけで全然大したこと無いじゃない 」
スキマ能力の真髄はこんな単純な物では無いのだが、それを使うまでも無かった。
自分の力は、まさしく無敵なのだと再確認できる。
自分の力は、まさしく無敵なのだと再確認できる。
「 それはそれは。ご期待に沿えず、申し訳ありません 」
高笑いする紫に対し、煙の中から声が聞こえた。
「 え…… 」
煙の中からトコトコと歩いてきた映姫の体には 傷一つ無かった。
本気を出せば桜も含め、辺りがムチャクチャになってしまうので力を抑えた とはいえ 殺すつもりで放った攻撃だ。
ポンポンっと服についた汚れを手で払いながら、ニコリと笑って語りかける映姫。
本気を出せば桜も含め、辺りがムチャクチャになってしまうので力を抑えた とはいえ 殺すつもりで放った攻撃だ。
ポンポンっと服についた汚れを手で払いながら、ニコリと笑って語りかける映姫。
「 地獄を我が物にーっ ですか。夢を大きく持つのは結構ですが、それには叶えるだけの力が必要ね 」
「 ……ッ 」
「 ……ッ 」
紫が構えなおすと、映姫が異様な迫力を出し始めた。
小さな体の閻魔から来る気迫に思わず後ずさりをしそうになったが 紫のプライドがそれを許さなかった。
小さな体の閻魔から来る気迫に思わず後ずさりをしそうになったが 紫のプライドがそれを許さなかった。
「 やれやれ、体に教えなければ解りませんか……少し 殺りあってみます?
心配はいりませんよ…… 当たっても死なないようにしてあげるから 」
心配はいりませんよ…… 当たっても死なないようにしてあげるから 」
最後の一言が、紫の逆鱗に触れた。
スキマに素早く入り込み、映姫の真横へとワープすると、先ほどより遥かに強烈なエネルギー弾を叩き込んだ。
スキマに素早く入り込み、映姫の真横へとワープすると、先ほどより遥かに強烈なエネルギー弾を叩き込んだ。
無縁塚の上空で行われる神と妖怪の戦い。
その戦いが終わるのに 長い時間はかからなかった。
その戦いが終わるのに 長い時間はかからなかった。
「 ううっ……ぐ……! 」
地面に頬をつけた八雲 紫が、信じられない といった顔で映姫を見上げる。
先ほどまで見下ろしていた閻魔を、今度は足元から見上げる事になるとは。
どれだけ力を込めた攻撃が命中しても 生と死の境界を弄ろうとも、あらゆる手段を持って攻撃しても
映姫は平然とそれに耐えて見せたのだ。
挙句 スキマでの移動先を見切られ、姿を晒した瞬間に
映姫の持っていた棒で何度か叩き伏せられ この有様だ。
どういう訳かその棒の重みは 並の重さではなかった。
先ほどまで見下ろしていた閻魔を、今度は足元から見上げる事になるとは。
どれだけ力を込めた攻撃が命中しても 生と死の境界を弄ろうとも、あらゆる手段を持って攻撃しても
映姫は平然とそれに耐えて見せたのだ。
挙句 スキマでの移動先を見切られ、姿を晒した瞬間に
映姫の持っていた棒で何度か叩き伏せられ この有様だ。
どういう訳かその棒の重みは 並の重さではなかった。
「 神と妖怪の差……それほど簡単に埋まる物では無い。
貴女の力は妖怪の粋をハミ出てはいるけれど、その力の使い道を誤ってはなりません。
幻想郷のバランスを気にかけ、人間に適度に恐怖を与える貴女の行動は 妖怪として模範的と言えましょう。
ですが、貴女は私の判断では 非。つまり 今のままだと地獄に行く事になります。
幻想郷への過剰な愛が貴女の罪……その愛が、妖怪や神相手のトラブルを生む事も少なくない。
そう、貴女は少し独占欲が強すぎる。そもそも愛というのは…… 」
貴女の力は妖怪の粋をハミ出てはいるけれど、その力の使い道を誤ってはなりません。
幻想郷のバランスを気にかけ、人間に適度に恐怖を与える貴女の行動は 妖怪として模範的と言えましょう。
ですが、貴女は私の判断では 非。つまり 今のままだと地獄に行く事になります。
幻想郷への過剰な愛が貴女の罪……その愛が、妖怪や神相手のトラブルを生む事も少なくない。
そう、貴女は少し独占欲が強すぎる。そもそも愛というのは…… 」
今まで勝利のみを掴み取ってきた紫が、床に突っ伏し あろう事か説教を受けている。
ボロボロになった体と服、そしてプライドを見つめ直した時、悔しさからか 何百年かぶりに涙を流しそうになった。
倒れこんだ自分に くどくど説教を続ける閻魔。 紫にとって耳障りな雑音でしかなかった。
そして何より 偉そうなその顔へ怒りがこみ上げてきた。
ボロボロになった体と服、そしてプライドを見つめ直した時、悔しさからか 何百年かぶりに涙を流しそうになった。
倒れこんだ自分に くどくど説教を続ける閻魔。 紫にとって耳障りな雑音でしかなかった。
そして何より 偉そうなその顔へ怒りがこみ上げてきた。
力押しの勝負ではとてもこの女には敵わない。 冷静に事実を受け入れるが、そこで諦める紫ではなかった。
油断した。相手はこんな姿でも 神……
冷静に策を練って戦えば まだ何か勝機がある筈、それだけの能力を、私は持っている。
ここで退くのは敗北ではない。
策を練り、この女への対抗策を見つけるのだ……
冷静に策を練って戦えば まだ何か勝機がある筈、それだけの能力を、私は持っている。
ここで退くのは敗北ではない。
策を練り、この女への対抗策を見つけるのだ……
紫は一度逃れようと、スキマを作るために手を動かしたが……
その瞬間、紫の手首を 映姫のカカトが容赦なく踏み潰した。
その瞬間、紫の手首を 映姫のカカトが容赦なく踏み潰した。
「 うぐぁぁあっ!! 」
「 敗者は大人しく 人の話を聞くものですよ。 私が話をしているというのに 一体どこへ行こうと言うのです? 」
「 敗者は大人しく 人の話を聞くものですよ。 私が話をしているというのに 一体どこへ行こうと言うのです? 」
とても小さな体で踏んだとは思えない程の、尋常ではない痛みを感じた。
「 ぐぅ……っ! ぁあ…… 」
「 言い忘れていたけど 私、人の心を読めるのよ 」
「 言い忘れていたけど 私、人の心を読めるのよ 」
映姫の顔は先ほどまでと打って変わり、まるで能面のような 全くの無表情だった。
しかしその気迫からは明らかに、説教を聞こうとしない 紫への怒りを感じた。
しかしその気迫からは明らかに、説教を聞こうとしない 紫への怒りを感じた。
「 う……うぅ…… 」
紫は改めて、考えなしに閻魔に喧嘩を売った事自体が失敗だったと痛感した。
自分の力を過信しすぎた故の無様な失態。 私らしくもない。
自分の力を過信しすぎた故の無様な失態。 私らしくもない。
「 後悔先に立たず……貴女の頭脳なら、色々な戦い方が出来たでしょうに。
それとも幻想郷で力を振るっている内に、自分に敵う者はいない なんて過信しちゃったのかしら?」
それとも幻想郷で力を振るっている内に、自分に敵う者はいない なんて過信しちゃったのかしら?」
これも心を読まれたのだろうか。
痛い所を突かれ、押し黙るしかない紫。
痛い所を突かれ、押し黙るしかない紫。
「 さっきも言ったけれど、このままでは貴女は地獄行き。
けど貴女に説法を説いても、聞き入れる性格では無いようね……どうしたものかしら 」
けど貴女に説法を説いても、聞き入れる性格では無いようね……どうしたものかしら 」
もちろん聞き入れる気は無い。映姫はそんな紫を見下ろしながら うんうん と唸っている。
何とかしてここから逃げ出さなくては…… そう考えながら、体を起こした。
何とかしてここから逃げ出さなくては…… そう考えながら、体を起こした。
「 あぁ、そうだわ。地獄の罰 少し体験してみますか 」
「 え……? 」
「 え……? 」
フラフラと立ち上がった紫に思わぬ言葉を投げつけ、手元に出した鏡を広げる映姫。
下から ゴボッ という泡のはじける音がしたかと思うと、紫の体が地面へと沈み始めた。
同時に 、紫の足には 腕に掴まれたかのような感触があった。
下から ゴボッ という泡のはじける音がしたかと思うと、紫の体が地面へと沈み始めた。
同時に 、紫の足には 腕に掴まれたかのような感触があった。
「 !? 」
足を見ると、紫の足元一体が血で出来た池のようになっており、
辺りに咲き誇った彼岸花がドロドロと溶けて変貌し、 血で出来た人間の手のような形を取り 足を掴んでいた。
飛んで振り切ろうとするも、足を掴んでいる腕の群れは 想像以上の力だった。
辺りに咲き誇った彼岸花がドロドロと溶けて変貌し、 血で出来た人間の手のような形を取り 足を掴んでいた。
飛んで振り切ろうとするも、足を掴んでいる腕の群れは 想像以上の力だった。
「 その彼岸花にはね……寂しく死んだ者達の魂が沢山宿っているの。貴女の力で振り払うのは 無理よ 」
「 何!? 何なのよこれ!! 」
「 数ある地獄の中で 最も優しい罰……血の池地獄よ。
地獄を軽く見ている貴女のような者には、実際に味わってもらうのが手っ取り早いでしょうし 」
「 じょ、冗談じゃないわ! 離っ…… 」
「 何!? 何なのよこれ!! 」
「 数ある地獄の中で 最も優しい罰……血の池地獄よ。
地獄を軽く見ている貴女のような者には、実際に味わってもらうのが手っ取り早いでしょうし 」
「 じょ、冗談じゃないわ! 離っ…… 」
紫は足を掴んでいる血の腕を攻撃しようとしたが、その前に腕が勢いよく池の中に沈み、
あっという間に紫は 深い血の池の底へと引きずりこまれた。
あっという間に紫は 深い血の池の底へと引きずりこまれた。
「 がぼっ……! う……! 」
とっさに引きずりこまれた為、大量の血液が喉へと流れ込み紫の吐き気を誘った。
人間の血でも 妖怪の血でもない。
あらゆる生物の血が混じり、腐りきったかのような異常な臭いと味だった。
その吐き気のせいで一気に体の空気の殆どを吐き出してしまった。
足を掴んでいる腕の群れは今だ紫を離そうとせず、さらに深く沈んでいく。
このままではマズいと思い、スキマで逃れようと手を伸ばす。が……
人間の血でも 妖怪の血でもない。
あらゆる生物の血が混じり、腐りきったかのような異常な臭いと味だった。
その吐き気のせいで一気に体の空気の殆どを吐き出してしまった。
足を掴んでいる腕の群れは今だ紫を離そうとせず、さらに深く沈んでいく。
このままではマズいと思い、スキマで逃れようと手を伸ばす。が……
スキマが 出ない。
紫の顔が さっ と青ざめた。
紫の顔が さっ と青ざめた。
「 閻魔の裁きから 逃れる事は出来ない…… 」
紫の視界に四季映姫が写った。
足を血の腕に掴ませ、紫と同じように池の中に沈んで入ってきたのだ。
血の池の中で平然とし、どういうワケか声を発している。
足を血の腕に掴ませ、紫と同じように池の中に沈んで入ってきたのだ。
血の池の中で平然とし、どういうワケか声を発している。
しかしそれを気にしている暇も無い。
呼吸が出来ずガボガボと残り少ない息を吐き、苦しみのあまり喉を掻き毟る紫の姿を無表情で見つめていた映姫は
すっ と腕を前に構えた。
呼吸が出来ずガボガボと残り少ない息を吐き、苦しみのあまり喉を掻き毟る紫の姿を無表情で見つめていた映姫は
すっ と腕を前に構えた。
「 ! 」
足を掴んでいる血の腕と同じような手が、紫の周囲に現れ始めた。
池の中の血がどういうワケか固形化し、その一つ一つが鋭く爪を立て 手刀の形を取っている。
まさか……
池の中の血がどういうワケか固形化し、その一つ一つが鋭く爪を立て 手刀の形を取っている。
まさか……
映姫が指をパチン と鳴らすと同時に、大量の手刀が 紫の体を貫いた。
激痛と溺れから来る苦しみが、僅かに残った酸素と冷静さを一気に奪う。
激痛と溺れから来る苦しみが、僅かに残った酸素と冷静さを一気に奪う。
「 が……ごぼっ……! ッ……!! 」
「 おやおや……地獄を我が物にする筈の妖怪が、その程度の痛みで みっともない声を出すものではありませんよ 」
「 おやおや……地獄を我が物にする筈の妖怪が、その程度の痛みで みっともない声を出すものではありませんよ 」
無表情の映姫が口元を歪ませ、血の池の中にいるというのにクスクスと笑って見せた。
同じ池の中にいる紫は 叫び声にすらならない。
手刀が全て紫の体に突き刺さると、突然足を掴んでいた腕が消え去り 体の中に空気が流れ込んできた。
同じ池の中にいる紫は 叫び声にすらならない。
手刀が全て紫の体に突き刺さると、突然足を掴んでいた腕が消え去り 体の中に空気が流れ込んできた。
「 がはっ! はぁッ…… はぁ…… ゲホっ…… 」
激痛と恐怖で膝を付き、体を抱きしめる。全身から止め処なく汗が溢れ出てくる。
今まで絶対的な力で相手を打ちのめしてきた紫にとって、今の様などうしようもない状況は 全くと言っていい程経験が無かった。
把握しきれない力の差が、恐怖となって襲ってくる。
辺りを見ると、そこにあるのは血の池へ変貌する前の 何ら変わりない無縁塚だった。
あれだけ貫かれた体は何ともない。というより 全身を血に沈められた筈の服には
血の一滴さえ 付着していなかった。
今まで絶対的な力で相手を打ちのめしてきた紫にとって、今の様などうしようもない状況は 全くと言っていい程経験が無かった。
把握しきれない力の差が、恐怖となって襲ってくる。
辺りを見ると、そこにあるのは血の池へ変貌する前の 何ら変わりない無縁塚だった。
あれだけ貫かれた体は何ともない。というより 全身を血に沈められた筈の服には
血の一滴さえ 付着していなかった。
幻覚だったのだろうか? しかし 今も体に残るこの痛みは……
紫は自分を囲んでいる彼岸花の群れが 今にも腕へと変貌して動き出すのではないかと怖気づき
花の咲いていない方へと転びそうになりながら、無様な姿で逃げ出した。
紫は自分を囲んでいる彼岸花の群れが 今にも腕へと変貌して動き出すのではないかと怖気づき
花の咲いていない方へと転びそうになりながら、無様な姿で逃げ出した。
「 理解できましたか? それが地獄で行われている罰ですよ 」
ビクリと体が震えた。
声の方向を見ると 爽やかに微笑む四季映姫の顔があった。
声の方向を見ると 爽やかに微笑む四季映姫の顔があった。
「 さっきの罰を、だいたい九百年繰り返す……現状の貴女の罪だとそんな所かしらね 。
今の血の池が 『身体的』 な罰の一例よ。 まぁ身体的に優れた妖怪の貴女にとっては 大した事無かったでしょうけど。
次は 『精神』 の罰……妖怪には大概、こちらの方が効果的なのよね 」
今の血の池が 『身体的』 な罰の一例よ。 まぁ身体的に優れた妖怪の貴女にとっては 大した事無かったでしょうけど。
次は 『精神』 の罰……妖怪には大概、こちらの方が効果的なのよね 」
大した事が無い? 冗談ではない。
楽しそうに手鏡を触って見せる映姫。 この女はまだ何かやるつもりだ。
紫は久しく感じた 恐怖 に耐え切れず、プライドも忘れて懇願した。
楽しそうに手鏡を触って見せる映姫。 この女はまだ何かやるつもりだ。
紫は久しく感じた 恐怖 に耐え切れず、プライドも忘れて懇願した。
「 い……嫌……ご ごめ なさい、助、助けて…… 」
「 言った筈ですが? 後悔先に立たず と。 ふふ、心配はいりません……死にはしませんよ 」
「 ま、待って……! 嫌、やめて……! 」
「 言った筈ですが? 後悔先に立たず と。 ふふ、心配はいりません……死にはしませんよ 」
「 ま、待って……! 嫌、やめて……! 」
パタンッと鏡を閉じる音がしたかと思うと、紫は闇に包まれていた。
自分以外には何も無い空間。 また錯覚なのだろうか? 当然、スキマは出ない。
先ほどの痛みや恐怖を味わうのはもうゴメンだ。
このまま怯えて待っていてもどうにもならない。 冷静さを取り戻そうと呼吸を整えた。
恐怖を押さえ込み、状況を打開しようと頭を回転させ必死に策を練る。
自分以外には何も無い空間。 また錯覚なのだろうか? 当然、スキマは出ない。
先ほどの痛みや恐怖を味わうのはもうゴメンだ。
このまま怯えて待っていてもどうにもならない。 冷静さを取り戻そうと呼吸を整えた。
恐怖を押さえ込み、状況を打開しようと頭を回転させ必死に策を練る。
「 落ち着け、落ち着くのよ……あの女は『精神』の罰と言っていた…… 恐らく錯覚や幻聴の類に違いない…… 」
『 そう、今から見せるのはただの幻覚よ。ただし、近い将来 きっと現実になる物でしょうけど…… 』
闇の中に閻魔の声が響く。
その声に再び冷静さを失いかけたが、これから来るのが幻なのだと解っていればどうという事はない。
そう思った紫に 聞き覚えのある声で絶叫が轟いた。
その尋常ではない叫び声に 紫が飛び上がりそうになると、頬に生暖かい液体が飛び散った。
その液体の臭いは、先ほど池の中で散々味わった 血の臭い……
その声に再び冷静さを失いかけたが、これから来るのが幻なのだと解っていればどうという事はない。
そう思った紫に 聞き覚えのある声で絶叫が轟いた。
その尋常ではない叫び声に 紫が飛び上がりそうになると、頬に生暖かい液体が飛び散った。
その液体の臭いは、先ほど池の中で散々味わった 血の臭い……
「 ひ……! 」
ぼんやりと闇の中から浮かび上がる光景に、紫は言葉を失った。
幻想郷で肩を並べ 友として過ごしている妖怪達が皆、鬼に惨たらしくは殺され 再生し また殺されという凄惨な光景だった。
殺され続ける者達の中には 先にこの世を去っていった かつての仲間も少なくない。
片腕や足を失い、ほどんと原型を留めていない友人達が、紫を虚ろな表情で見つめ 助けてくれと うめき声を上げる。
床を這いながら 友が紫に手を伸ばす。 その手を掴もうと、紫もまた手を伸ばした。 もう幻覚だという事など 考えもしなかった。
その瞬間、友人の顔が鬼の金棒に叩き潰され 鮮血が紫へと飛び散った。
生暖かい血の感触は、とても幻覚とは思えない リアルなものだった。
幻想郷で肩を並べ 友として過ごしている妖怪達が皆、鬼に惨たらしくは殺され 再生し また殺されという凄惨な光景だった。
殺され続ける者達の中には 先にこの世を去っていった かつての仲間も少なくない。
片腕や足を失い、ほどんと原型を留めていない友人達が、紫を虚ろな表情で見つめ 助けてくれと うめき声を上げる。
床を這いながら 友が紫に手を伸ばす。 その手を掴もうと、紫もまた手を伸ばした。 もう幻覚だという事など 考えもしなかった。
その瞬間、友人の顔が鬼の金棒に叩き潰され 鮮血が紫へと飛び散った。
生暖かい血の感触は、とても幻覚とは思えない リアルなものだった。
「 あ……あああ、あ…… 」
轟く絶叫。 無残な光景。
まさに地獄だった。
目を瞑り、耳を塞ぎ その場にうずくまった紫だったが、その幻覚や幻聴は 目を 耳を閉じても脳へと流れ込んでくる
まさに地獄だった。
目を瞑り、耳を塞ぎ その場にうずくまった紫だったが、その幻覚や幻聴は 目を 耳を閉じても脳へと流れ込んでくる
『 幻覚だから耐えられる とでも考えていたのでしょう? けどこれは いずれ貴女に訪れる地獄の光景。
これが『精神』の罰…… そう、大切な者達のそんな姿を見ていたくなければ そもそも地獄に落ちなければ良いのです 』
「 嫌……! もう嫌ぁぁぁぁ……! やめて……やめて! お願い……許して……! 」
これが『精神』の罰…… そう、大切な者達のそんな姿を見ていたくなければ そもそも地獄に落ちなければ良いのです 』
「 嫌……! もう嫌ぁぁぁぁ……! やめて……やめて! お願い……許して……! 」
淡々と話す映姫の口調が、紫にどうしようもない無力さをさらに重く感じさせる。
幻覚だろうと幻聴だろうと、自分の愛する者達の死に続ける姿や悲鳴など、とても聞き続けてはいられない。
映姫の見せた地獄は5分程度の物だったが、紫にはそれが永遠とも思える長い時間に感じられた。
幻覚だろうと幻聴だろうと、自分の愛する者達の死に続ける姿や悲鳴など、とても聞き続けてはいられない。
映姫の見せた地獄は5分程度の物だったが、紫にはそれが永遠とも思える長い時間に感じられた。
「 ……うぅッ …… ひっぐ …… ぁ …… 」
閻魔の見せる地獄が終わっても、あふれ出る涙が止まらない。
幻覚がやっと終わったのだと判断出来る辺り、自分の気が触れていない事に安心した。
幻覚がやっと終わったのだと判断出来る辺り、自分の気が触れていない事に安心した。
「 ……これが 地獄 です。
貴女が考えている程 地獄は甘いものではない。 あの光景を再び味わいたくなければ 善行を積む事です 」
貴女が考えている程 地獄は甘いものではない。 あの光景を再び味わいたくなければ 善行を積む事です 」
心も体も疲れ果てた紫には もう映姫の意見に抵抗する気力は無かった。
頭を回す事でさえ、今はもう したくなかった。
頭を回す事でさえ、今はもう したくなかった。
「 見守る事を覚えなさい……少し家で大人しくしている事、それが貴女に出来る善行よ。
もう帰って休みなさい。ここは生きている者が長く留まるべきではありません 。
貴女が地獄に落ちることがない様、願ってるわ…… 」
もう帰って休みなさい。ここは生きている者が長く留まるべきではありません 。
貴女が地獄に落ちることがない様、願ってるわ…… 」
映姫が背を向けると、瞬く間に姿が見えなくなった。
一人無縁塚に残った紫。 完全な敗北だった。
手も足も出ないとはまさにこの事。傷一つ付ける事もできず、挙句無様な姿を晒す事になった。
先ほどまでの自分を思い出しただけで、激しい自己嫌悪に襲われる。
久しく思い切り泣いた紫だが 全くスッキリした気分にはなれず、沈んだ顔のまま スキマへと消えていった。
無縁塚には 残された彼岸花と紫色の桜だけが、寂しそうに揺れ続けていた。
一人無縁塚に残った紫。 完全な敗北だった。
手も足も出ないとはまさにこの事。傷一つ付ける事もできず、挙句無様な姿を晒す事になった。
先ほどまでの自分を思い出しただけで、激しい自己嫌悪に襲われる。
久しく思い切り泣いた紫だが 全くスッキリした気分にはなれず、沈んだ顔のまま スキマへと消えていった。
無縁塚には 残された彼岸花と紫色の桜だけが、寂しそうに揺れ続けていた。
それ以来、八雲 紫は 異変の時や結界の管理の時、人間達をからかったりする時以外に
殆ど顔を見せる事が無くなった。惰眠を貪る様になったのである。
共に過ごした妖怪達も、少しずつこの世を去っていった。
今地獄ではあの光景が繰り返されているのだろうか?
そう考えた事もあったが 映姫に見せられたイメージを思い出すと、すぐに忘れようにした。
そして時は流れ……
殆ど顔を見せる事が無くなった。惰眠を貪る様になったのである。
共に過ごした妖怪達も、少しずつこの世を去っていった。
今地獄ではあの光景が繰り返されているのだろうか?
そう考えた事もあったが 映姫に見せられたイメージを思い出すと、すぐに忘れようにした。
そして時は流れ……
「 スペルカードルール? 」
博霊の巫女、霊夢が きょとんとした顔で尋ねる。
「 そう。私みたいな力ある妖怪相手なんかに、ただの人間が対等に戦えるような決闘のルール…… 画期的だと思わない? 」
吸血鬼異変が終わりを迎えた、今後の事について妖怪達と巫女が相談していた最中
そのルールを提案した妖怪。勿論、紫であった。
そのルールを提案した妖怪。勿論、紫であった。
「 へぇ…… うん。いいと思うわ。これと言って問題点も見当たらないし…… 」
「 そうでしょ、そうでしょう? 私、一生懸命考えちゃったわぁ 」
「 どうせ今思いついたんでしょ それ 」
「 うふふ、どうかしら 」
「 そうでしょ、そうでしょう? 私、一生懸命考えちゃったわぁ 」
「 どうせ今思いついたんでしょ それ 」
「 うふふ、どうかしら 」
実際に 考えた結果である。
自分はその辺の神に匹敵する力がある事は自覚している。
とはいえ、神の中でも特に力のある存在には やはり種族でどうする事も出来ない壁が存在した。
それは人間が 私を相手にして勝つ事が出来ないように。
では、そのような神を相手に、自分が対等に戦う為に何をすれば良いのか? と考えた末の結論だ。
問題点は、妖精や人間なんかも自分と対等に戦える事になるという事だが。
自分はその辺の神に匹敵する力がある事は自覚している。
とはいえ、神の中でも特に力のある存在には やはり種族でどうする事も出来ない壁が存在した。
それは人間が 私を相手にして勝つ事が出来ないように。
では、そのような神を相手に、自分が対等に戦う為に何をすれば良いのか? と考えた末の結論だ。
問題点は、妖精や人間なんかも自分と対等に戦える事になるという事だが。
しかし、それでも紫には自信があった。
対等な立場ならば…… 頭脳での勝負ならば誰にも負けはしないのだと。
一見フェアな勝負に見えるルールだが、実力でどうしても覆せぬ差が出るであろう事は予想していた。
そして覆らないのは、自分の勝利である事も。
対等な立場ならば…… 頭脳での勝負ならば誰にも負けはしないのだと。
一見フェアな勝負に見えるルールだが、実力でどうしても覆せぬ差が出るであろう事は予想していた。
そして覆らないのは、自分の勝利である事も。
「 夜摩天よりも力があればどうとでもなる…… 本当の力っていうのは やっぱり頭(ブレイン)よね 」
単純な力より 頭を使うほうがやっぱり私には向いている。
幻想郷全体にそのルールが伝わるまで、それほど時間はかからなかった。
八雲 紫は着実にリベンジに向けて計画を進めていた。
いずれ訪れるであろう閻魔との再会に、紫は薄気味の悪い笑みを浮かべていた。
幻想郷全体にそのルールが伝わるまで、それほど時間はかからなかった。
八雲 紫は着実にリベンジに向けて計画を進めていた。
いずれ訪れるであろう閻魔との再会に、紫は薄気味の悪い笑みを浮かべていた。
「 今度は同じ屈辱を 貴女に見せて差し上げますわ 」
その紫を、手の平の上に乗せ 眺める者がいた。
浄頗梨の手鏡で様子を伺っていた四季映姫・ヤマザナドゥである。
浄頗梨の手鏡で様子を伺っていた四季映姫・ヤマザナドゥである。
「 …… 少しはマシな答えを期待していたのに。
残念だわ。心を入れ替えて善行を積んでいるかと思えば、こんなに黒い感情が残っていただなんて 」
残念だわ。心を入れ替えて善行を積んでいるかと思えば、こんなに黒い感情が残っていただなんて 」
机から立ち上がり、幻想郷の方面へと向かっていく映姫に 小町が尋ねる。
「 ありゃりゃ、四季様。寮に戻らないんですか? こんな時間に どこに行かれるんで? 」
「 ありゃりゃ、四季様。寮に戻らないんですか? こんな時間に どこに行かれるんで? 」
「 お説教 」
紫の想定外は、その再会が思ったよりもずっと早く訪れた事であった。
- 能力的にも映姫様>ゆかりんだしな、いいもの見させてもらった -- 名無しさん (2009-05-30 23:34:19)
- うっはこりゃいいwww
ゆかりんもえすwww
ぜひ続ききぼんwww
-- 名無しさん (2009-06-02 21:27:10) - これは普通に面白かった -- 名無しさん (2009-09-12 23:54:29)
- プライドズタズタにされる紫がこんなにいいとは思わなかった
だから紫は映姫様に頭があがらないんですね -- 名無しさん (2009-09-15 15:58:38) - また紫の思惑通り、悪巧みENDか・・・と思いきや
最後の最後までやられっぱなし踊りっぱなしのピエロな紫は珍しいなw -- 名無しさん (2009-09-26 10:10:48) - 紫ざまぁwww
無様なゆかりん可愛いよ! -- 名無しさん (2009-09-26 11:19:04) - えいきっきは強いなー。
流石閻魔。 -- 名無しさん (2009-11-07 12:27:59) - プライドズタズタなゆかりんがいいと思うと同時に、えーき様が図に乗っているだけにも見える
不思議! -- 名無しさん (2009-11-07 17:35:36) - 映姫様は実力派のいじめっこキャラを制裁出来る少ないキャラで
しかも自分自身さえ平等にいじめてるといういぢめスレのヒーローなんだぜ -- 名無しさん (2009-11-07 22:08:01) - ↑なんか吹いたwww -- 名無しさん (2010-02-14 23:49:52)
- ↑上に同じく(爆) -- 外道 (2010-02-15 15:06:38)
- 紫も傍観を決めるって事は、ほんの少しは反省してたんだよね。
本当にほんの少しだろうけどね。 -- 名無しさん (2011-06-06 19:11:51)
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