□ ダークオブダーク ‐金子りえ- □
「何っ!また脱走だと!?」
「逃がすな!これ以上”不要な番号”を野に放つことは許されん!!」
けたたましいサイレン、赤色灯。
暗闇のあちこちから、怒号が響く。
闇を切り裂くように、組織の収容所を駆け抜ける少女が一人。
自らの決意を示すようにばっさり切った髪の毛が、走る風に靡く。
逞しい体が、冷たいコンクリートの上を躍動する。
紅潮するふくよかな頬、吐く白い息、いつもは柔和にすら見える表情も今は苦痛に歪む。
何より、前を見据える瞳は闇にまみれていた。
何が彼女をここまで追い込んだのか。
何が彼女をここまで、狂わせたのか。
答えはすべて、闇の中。
許さない。あいつらだけは、絶対に。
口を真一文字に結び、少女 ‐金子りえ- はひたすら走り続ける。
彼女を捕えようとする輩はすべて、闇に沈んでゆく。
自由への、復讐への逃走を阻めるものなどこの収容所には存在しない。
「りっちゃん。離れ離れになっても、仲間だから。」
「朱莉はぜったいに忘れないから!」
あの言葉は全部、嘘だった。
今ならそう理解できる。
虚構を吐くものに制裁を。
裏切り者に、鉄槌を。
それしか、いや、それだけはやらなければならない。
この収容所でなされた”実験”、重ねるたびに恨みは深くなる。
色濃い恨みは、心を闇に沈ませるほどに。
駆け抜けた先に、光が見える。
なのに。
りえの心には光は差さない。
すべては、闇に帰す。
「私が味わったものを、あんたたちにも味あわせてあげるから。」
復讐と言う名の闇に溺れた心は。
共に闇に沈む生贄だけを、求めていた。
投稿日:2013/11/24(日) 01:05:51.49 0
最終更新:2013年11月27日 10:47