■ イデオットフォア -石田亜佑美- ■



 ■ イデオットフォア -石田亜佑美- ■

「にぃちゃんそれなに?」
「バカにはわかんねーよーだ。父さんの研究手伝ってんの。」
「えーおとーさんのおてつだいってかいしゃのはかせとかしかできないんだよー」
「バカだなー。兄ちゃん天才だから出来るんだよ。」
「あゆみもするーっ」
「バカには無理ですよーっ。」
「ウソだねっ!あゆみもできるもん!」
「はい、じゃあ100ひく22は?」
「あ…う…ご…50?」
「ぶっひゃ本気かよそれwやっぱだめじゃんw算数も出来ないのに『おてつだいするーっ』てw無理無理w」
「うー!にぃちゃんのばか!いじわる!ばかばかばか!」
「って!いって!そうやってすぐ暴力振るうとこもバカまるだしだぞ!脳みそ筋肉かバカw」
「ばかばか!ばかばかばか!」

――――

「に…げろ亜佑美。これ、持って…早…く……」
「やだよっ!兄ちゃん!いっしょに!はやくっ…」
「バカだな。この出血みろよw普通に考えて…無理だろw」
「ウチなら逃がせる!ウチの【力】ならっ!」
「おまえ、ハムスター運ぶのですら失敗してたろwもう忘れたのかバカだなw」
「ばかじゃない!ばかじゃ……」
「いいかバカ。こいつを、だれにも渡すんじゃない。お前よりバカな奴らに、父さんと兄ちゃんの……」
「うう、にぃちゃぁ……」
「こいつはもうお前に適応処理してある…あとは『契約』するだけだ…。バカにもわかる…ように…作って…。」
「いやだぁ…いやだぁ…」
「はやく…バカ…点いたり消えたりすんのだけが、取り柄だろ?それで逃げろ、さぁ、ここに手を……」


それは亜佑美の目にのみ映るディスプレイ。

視界の隅に小さな『窓』が開く。
『契約』そう大きく書かれた下に細かくも長い文章がずらずらと並ぶ。

そして最後に『はい/いいえ』

答えは決まってる。


ポーン
その瞬間、亜佑美の視界を無数の『窓』が埋め尽くす。
マニュアル。
そうだ、獣を乗りこなすための、バカにもわかるトリセツ。
未読部分は明るく、既読部分は暗く。
視線の動きに合わせ、一定時間逡巡した所からは注釈と図解が現れる。
読めない漢字があれば一瞬でひらがなに、意味がわからなければ即座に別の単語・別の表現に切り替わる。


すべてが亜佑美のために作られたシステム。

バカにもわかる、システム。

「いたぞっこっちだ!やつの子か?身体を調べろ!何か持ってるはずだ!」

涙をぬぐう。
「か…か…」

逃げる?やだねっ!兄ちゃんの言う事なんか聞かないんだからっ!

突破する!
すべてを撥ね退け、押し通る!

だん!
立ち上がる!
石田亜佑美は、仁王立ちで!
真正面に!真っすぐに!


「ァァァムオン!リィオォォン!!」


来いッ!【幻想の獣】ッ!
ウチがッ、お前たちのッ!ボスだっ!



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投稿日:2013/11/03(日) 13:09:20.63 0









































最終更新:2013年11月04日 10:24