■ サイドスタブ -飯窪春菜・石田亜佑美X萩原舞- ■
「なに?こんな目の前でこしょこしょ話?もー、この際なんでもいいけどさぁ」
萩原舞が、一歩、また一歩近づいてくる。
「…ええっ!そんなのダメ!」
『だって、保証はないじゃないですか!ここで止めないと!
大丈夫、ちょっと説明している暇ないですけど、私は大丈夫なんですからっ』
「ほんとに?ほんとに大丈夫なの?」
『で、ですから声が大きいですって…いいですか!私の目を見てください!』
沈黙。
「……その目は、本気の目ね!」
石田亜佑美が勢いよく立ちあがる。
「よし!その作戦でいきましょう!」
『さ、作戦とか言わなくていいですからっ!』
なんでわざわざ、相手に警戒させるような事言っちゃうかなぁ!
ほんのちょっとだけイラっとする。
飯窪がイラっとすることなど、めったにない事なのだが。
「はん?なんなの?作戦?あほみたいなドチビ能力者とド素人女で作戦?
だから何って話っしょ!、っていうか、だから何?」
「見せてやるよ!ウチらの作戦は!これだぁッ!」
【空間跳躍】
一瞬にして二人がその場から消えうせる。
? ? ?
「はぁっ?!逃げるって何?つか、めんどくせー!ああー!めんどくせってば!
もういい!舞はいい!22号をもって帰るからね!22号を…」
そこには、そこには。
「あ…あああああっ!」
そこには、横たわる22号、その傍らには『ドヤ顔』の石田亜佑美!
「ちょっ!待てっ!」
2人の少女が一瞬で消える。【空間跳躍】
だが…
ガタン!
「うわぁっ!」
「そっちかぁ!」
音のする方へ向かって萩原舞が走り出す!
廊下を曲がると、突きあたりのドアを開け、22号を引きずる『ドヤ顔』女が!
「てめ!待てこらぁ!」
ドアを蹴り開ける。
萩原の目に、
22号を床にそっと置く『ドヤ顔』女が映る。
腰のホルスターから、機関拳銃を抜き、躊躇せず発砲する!
「死ねアホ!」
撃ちまくる萩原舞。
【空間跳躍】
「のやろ!」
どうせ死角に出現するんだろ!
「ぎゃっ!」
清涼飲料かなにかの山積みケースの裏側から悲鳴。
全部舞の読み通りなんだよドチビ!
沈黙。
そしてそれきり、現れない。
当たったのか?どうでもいいや。
もうほとほとメンドクサイ。
はやく帰りたい。
機関拳銃を腰に戻し、代わりに携帯を取り出す。
足元に横たわる、22号の脇にしゃがみこみ、小脇に抱える。
「はーおわった。ちょっといま、何時~?」
パウッ!
は?
銃声。
パウッ、パウッ、パウッ!
合計4発、それが、彼女の覚悟だった。
「が…がはっ…な、なん、で?」
萩原舞にはわからない。なぜ、22号、工藤遥が目を覚ましているのか。
萩原舞にはわからない。なぜこいつが銃を持っているのか。
なによりわからない。なぜ、自分は撃たれているのか。
自分に向けて撃ちこまれた弾丸はすべて自動で跳ね返る。
それは、つまり、
「やっぱり、思った通り、でし、た……ね。かはっ!」
ああ、その声は。工藤遥が、発したその甲高い声は。
「お、お前、ド素人女!」
「やっぱりそうだった、攻撃は軌道を変えて戻っていくんでしょ?
だったら、変わる前の、『軌道そのもの』をあなたの体の中に通せばいい……」
だから、密着させた。
銃口をその体側に密着させ、直接体内に弾丸を叩きこんだ。
撃ちこまれた弾丸は、萩原舞の、その体内を、破壊し、貫通し、
その軌道を変え……、
だが、そんな事をすれば、そんな事をすれば。
飯窪春菜の【偽装幻視】が解ける。
―確かにそれは、情けない恰好だった―
視覚は完璧に偽装する、だが感触を工藤と同じにするには、これしかない。
ショーツとスカートを膝までおろし、捲りあげた上着は、脱ぎかけのまま、両肘あたりにひっかかっている。
そう、確かに、情けない恰好だ。
だが、
4発。
自らが撃たれながら、それでも尚、引き金を引き続けた、その回数。
4発。
「お前、ケツ丸出し…、ってか素人が、なんで銃もってんだよ、
ってか、なんで撃ち方知ってんだよ……、なんで……なんで……」
萩原舞が崩れ落ちる。
「ふぎっ…素人だって『安全装置を外してから』撃つぐらいのこと、知ってるんです。
マンガで、読みましたから……、し、しろうと、なめん、な……」
こんな恰好で死ぬなんて恥ずかしい。
でも、これで、二人を助けられる。
最後の力を振り絞る。とどめを、刺さなければ。
その銃口を、萩原舞の、口の、中に……。
「ぎっひぎっ!ひゃへろ!ひゃへ…ひゃへへぇ!」
引く。私は、殺す。引き金を……引き金を!
刹那。
再び出現した石田亜佑美が叫ぶ、飯窪春菜を抱き、叫ぶ。
「馬鹿ぁっ!バカ飯窪っ!バカっ!バカっ!」
銃声は鳴る事無く
【空間跳躍】
今度こそ、二人は、その場から――
投稿日:2013/10/15(火) 19:22:28.89 0
最終更新:2013年10月15日 23:49