『your side』



鍛錬場から1階に上がってくると、そこにはだれもいなかった。
とっくに閉店時間を過ぎているわけだし、無人であることは想定済みだったとはいえ、なんだか物哀しい空間だ。
月明かりが窓から射し込んでいる。そういえば今日は「中秋の名月」だったっけと鞘師里保はタオルで汗を拭いながら冷蔵庫へと向かう。
ドアを開け、しっかりと整理された具材を眺めつつ、その横にある名前の書かれたヨーグルトやプリン、ジュースに手を伸ばす。
「鞘」と書かれたサイダーを取り出して蓋を回す。

「しゅわしゅわ~。しゅわしゅわ~、ぽんぽんっ」

リズムも歌詞も即興でつくった妙な歌を刻みながら、里保はホールへと向かった。
閉店後の店内は綺麗に整理され、椅子も全て机上に乗せ上げられていた。
まあ当然かと思い、里保はカウンターに座る。
此処に来た当初はずいぶんと高くて座りづらかいと思ったカウンターだが、いまはなんの問題もなく座れる。
成長したんだろうな、体も、心も、なんて何処か冷静に思う。

「かんぱーい」

だれに言うでもなく呟き、里保はサイダーを呷った。
炭酸特有の痛みと甘みが喉を刺激し、通り過ぎていく。
なんだか、鍛錬終わりにサイダーを飲むのが日課になってるなとふと感じた。
先日、鈴木香音の誕生日にも此処でこうして飲んでいた。どうしよう、私将来酒飲みになるかも、と妙な不安を抱く。
ひとりでバーとかに行って、ビールとか呷って、甘いカクテルだけじゃなくて、ギムレットとかいうお酒にハマっちゃったらどうしよう。
いや、ないない。あり得ない。私お酒弱そうだし。たぶん。と強引に納得させながらまたサイダーを飲む。


ふいに壁に掛けられた時計を見た。
まだ日を跨いではいないが、それでも中学生が起きているには「不健全」と言われるような時間だ。
だがなんとなく、早々に寝てしまうのが嫌だった。嫌というより、怖いのかもしれない。
「寝首をかかれる」ような事態が発生しないとは言い切れない状況に自分たちは置かれている。
自分で選んだ路とはいえ、唯一落ち着けるような時間さえも奪われるのはしんどい。
此処に来てから、深い眠りに就くことは少なくなった。1時間に1度は目覚めるし、家鳴りや風の音で目が覚めることもある。
その割に寝坊の回数が多いのはなぜだろうとサイダーの入ったペットボトルを回した。

泡がぽつぽつ浮かぶさまを見ながら、ふと、思考の海に潜った。
生と死という両極端に見える世界は、意外と近くに存在するものだと考える。
液体が生の世界で、泡が死の世界。それでも死は生の中に包括され、死は生を強く引き摺りだそうとしている。
あの夜に香音が捉えた「死を待つ音」は「生を願う音」でもあった。
私は結局、なにもできなかったけど。

「うーあーあーーー」

また、無意味な声を出す。
最近声が低くなった気がする。声変わりなのか、風邪をこじらせたのか、原因がいまひとつ分からない。
まさかサイダーの飲み過ぎで喉をやられたのではないだろうか。それは厄介だなあと里保は苦笑する。
ペットボトルを照明に翳した。
透明の液体がキラキラ光る。
泡が浮かんだそれは、さながら、星空にも見えた。
地元よりも狭い都会の夜空も、いまでは嫌いじゃない。
それよりももっともっと狭いサイダーの夜空は、それでも綺麗だった。

きっと、世界とはこういうものなのだろうと理解する。
液体の「生」と泡の「死」という両極端で表裏的な世界は、複雑で、そして清楚だ。
生も死も、美しい。そこにはそれぞれの、意味がある。と信じたくなる。


月明かりが微かに薄くなる。雲が出てきたのだろうかと考えながら里保はサイダーをテーブルに置いた。
疲れているのに、思考の海を泳ぐのは妙に楽しかった。
死を美化する気はないけれど、それを否定してしまっては、闘う意味が見出せない気がした。
自分が何故この場に居るのか、此処に居る意味を見つけたかった。
「死を待つ音」と「生を願う音」を奏でたあの人になにもできなかった私でも、なにかできることがあると、信じたかった。
それが自己満足だとは分かっていたけど。立ち止まることができないから、前に進むしかない。

サイダーが置かれたテーブルの上を見る。
かちこちと時計の針が部屋を支配する中、微かに炭酸の弾ける音がした。
ふっと目を閉じると、外で啼いている風の音が聴こえた。
窓を小刻みに叩き、生きていることを象徴するようなそれは、「あの人」の生を感じさせた。
あの人はいま、なにをしているのだろう。
去年は地下のプールで私にいろいろと教えてくれたのだけれど、最近はこっちに顔を出す機会が少なくなった。
まあ、鍛錬の一種という名目で地下プールを破壊しつくしてこっぴどく怒られたせいもあるんだろうなと私は理解する。

「強く、なりたいです―――」

だれにともなく想いを呟いたが、風はそんなことなど興味のないように走り去っていった。
カタカタと窓を叩く音が遠くなる。
里保は苦笑し、目を閉じたまま、再び思考の海へと潜った。
時計・炭酸・風・家鳴り・虫の声、さまざまな音が世界を支配する。
生きること、死ぬこと。自分が此処に居る意味。此処で闘いを選ぶ理由。斃すこと。護る意味。
選んだ路をただひたすらに、我武者羅に突き進むこと。
滑稽なまでに無様に、それでも必死に生き抜くことしか、私には出来ない。
まるで手負いの獣のようだ。独りで闇の中を走り回り、出会うもの全てを斬りつける。
ダメだ、いったい何処が成長したというんだろう、これで。こんな、有様で。

月が翳る。夜の闇が深まる。
雲に呑まれた名月の悲鳴が、微かに聞こえた気がした。


「わっ!」

その瞬間、だった。
低い声とともに里保は背後からふわりと抱きしめられた。
びくぅっと体を震わせ、思わず腰のホルダーに手を伸ばそうとした。
しかし、その声の持ち主は、敵ではなかった。

「こんなところで寝ちゃ風邪引くよ?」
「っ、み、道重さんっ―――?!」

里保は彼女―――道重さゆみの腕を掴み振り返った。声が情けないほどに裏返る。
そこには果たして、長い髪を垂らし、柔らかく微笑みかけたさゆみがいた。
戦場に居るときとは違った穏やかな表情に射抜かれる。
この人、こうやって柔らかく笑うんだって、里保が冷静であったらならばそう感じただろうが、いまはそれどころではなかった。

「びびび、ビックリしたー…びっくりしたー……い、いつからっ、いたんですか?!」
「フフ、鞘師落ち着いて。此処に来たのはさっきだよ。ちょっと水飲みたくてさ」

さゆみは里保から腕を外すと冷蔵庫を指差した。彼女が此処に来たのはたまたまらしい。
まさか後ろから抱きつかれるなんて想定もしていなかった。
里保は驚きのあまり中腰のまま暫く突っ立っていたが、急に脱力し、そのまま椅子に凭れ掛かった。がくんと大きく椅子が揺れる。
さゆみは鼻歌交じりに冷蔵庫まで歩き、「さゆみもサイダーにしよっかな」なんて笑っていた。

彼女の姿をぼんやり眺めながら、ゆっくり息を整える。
まだ心臓は高鳴ったままで、落ち着いてくれそうにはない。こんなに焦ったの、久し振りだった。
月がゆっくりと雲から顔を出す。「喫茶リゾナント」のホールに、また光りが射し込んでくる。

「マンガみたいに驚くんだもん。動画撮りたかったなー」

結局さゆみは冷蔵庫からお茶を取り出すと手近のコップに注ぎ、カウンターまで歩いてきた。
里保が自分の左隣の椅子を軽く動かすと「ありがと」と軽く会釈して座る。
微かに、良い香りがした。香水はつけない主義らしいからシャンプーだろうかと里保は推測する。

「てかそんなに驚く?何気にさゆみショックなんですけど」

彼女はコップを傾けて、お茶を飲んだ。こくん・こくんと液体がゆっくりと喉を潤していく。
里保はそれを黙って見つめる。
いまはこんなに近くて、こんなにも彼女を感じている。
だけど、どうしてさっきは、あんなにも「無」だったのだろう。
どうしてさっきは、私はなにもできなかったんだろう。

「なにも、感じなかったから……」

そう口にするとさゆみはこちらを振り返った。
自分でもなにを言っているのだろうと里保は困惑した。
こんなこと口にするつもりなかったのに、気付けば言葉は滑り出ていた。

「道重さんが、此処に、来たことを」

そして、いちど滑り出た言葉は流れる水のように止まらない。
里保が言葉を紡ぐのを、さゆみは不思議そうに眺めた。
彼女がコップをテーブルに置くのと同時に、里保はサイダーのペットボトルを手に取った。
まるで酒飲みのようにくいっと煽る。炭酸特有の刺激が喉を痛めつけた。

気付かなかった。
気付けなかった。
道重さんが、すぐ後ろにいたことに。


「うーんと……どういうことか、もう少し分かりやすく説明してくれる?」

断片的な言葉を拾うだけでは理解できないさゆみは里保にそう訊ねた。
里保はふっと顔を上げ、彼女の黒曜石のような瞳を捉える。映った自らの姿があまりにも幼くて、あまりにも弱々しくて、なんだか笑えてきた。
ああ、ちっとも成長しちゃいない。やっぱり私は、無様なままだ。

「寝てるときでも、気付いていたんです」
「うん」
「人の、気配っていうか、殺気のようなものに。敏感で、必ず分かってたんです。そこにだれかがいることは」

ぐっすりと深く眠れる夜はなかった。
たとえいかなる場所であっても、常に気を張らせ、里保の首を狙う者の存在を把握していた。
里保に向けられた殺意の感情。闇を背負った者の纏った黒い影に、常に里保は気付いていた。
この環境で神経が研ぎ澄まされるせいか、敵味方、あるいは一般人も関係なく、自分の周囲の「存在」すべてに気付いていた。
オーラや気配、その人の持つ独特の匂いを里保は常に感じ取っていた。

「だけどいま、全く気付かなかったんです。後ろに道重さんがいることが」

後ろに居たのがさゆみだったから良かった。
これが敵だったら、里保は間違いなくその首を刈られていた。痛みもなく、一瞬で。泡のように生命は消える。

「気付けないとか、感じないなんて……いままでなかったのに」

里保は両の手を組み、額に合わせた。
さながら研究者のように悩む姿は、さゆみにとっては何処か滑稽にも見えた。

「さゆみが完全に気配を消して近付いたって仮定は?」
「そうなんですか?」
「……違うよ。そんなこと、さゆみにはできないもん」

さゆみが素直に答えると、里保は深くため息を吐いた。
その姿を見ながら、きっと本人にとっては、信じられない出来事だったことをさゆみは悟る。
最前線に立って、生命を削って、この場所の運命を一身に背負う彼女だからこそ、常にアンテナが立ちっ放しであることも分かる。
だけど、だけどさ、鞘師―――

「それって、ダメなことなの?」

逆に言えば、彼女はそれだけ、常に「開きっ放し」なんだ。
外界からの悪意とか、無数の敵意とか、そういうものを洪水のように受け止めている。
それでも必死に刀を地面に突き刺して斃れないように立とうとするから、たぶん、ちゃんと眠れる日なんて、そんなにないはず。

「さゆみの、同じリゾナンターの軽いいたずらの気配に気づけないのは、ダメなことなの?」
「それはっ…」
「さゆみは、鞘師の、敵?」

自分でもずいぶんとムチャクチャなことを言っていることに、さゆみは気付いていた。
だけど、この理屈っぽくて、クソがつくほど真面目な後輩には、こうやって言うしかダメだとも分かっていた。
里保はさゆみの言葉に首を振る。長い髪が綺麗に揺れる。彼女から微かに香った匂いは、なんだろう?

「そうじゃなくてっ……いままでは、敵だけじゃなくて、みんな、リゾナンター皆の気配をっ」

話し始めた里保の言葉を遮るように「キミの言いたいことは分かるけどさ…」とさゆみは被せた。
いま、遮らなきゃダメだ。この子に最後まで、言わせてはいけない。これ以上、彼女を此処で独りにさせてはいけない。
月がいっそう傾き、店内に満ちていく。この明かりはきっと、消えることなく輝きつづける。雨が降ろうと、その雲の上に必ず光は満ちている。

「鞘師はちゃんと、気付いてるよ。私の気配も、皆の気配も。体じゃなく、此処で」

さゆみは右の拳をつくり、とん、と自らの胸を叩いた。
里保はその拳をゆっくりと追い駆け、そして自らの右手を左胸に添えた。とくん、と鼓動が聞こえた。
生きている証が、胸を打つ。此処で必死に、生命を奏でる。

「きっとね、“共鳴”っていうのは、鞘師が考えてるほど複雑なものじゃないんだよ」
「っ、私は……」
「ただそこに想いがあったから。ひとつの想いがあったから集ったんだよ。
“共鳴者”たちは、その想いのもとに無意識化で繋がってる。だから敵の気配みたいに、肌を焦がすような痛みを感じることはないと思うの」

ひと息で言葉を紡ぐさゆみを、里保は黙って見つめた。
さゆみの言葉を噛み砕く里保は、さゆみが少しだけ論点をズラしていることに気付いてしまわないだろうか。そう不安になりながらもさゆみは舌を回す。
無駄に口だけは上手いのだ。その特技をいま活かさないで、いつ活かすのだ。

「安心して、眠って良いんだよ?」
「はい?」
「私たちリゾナンターの、仲間の前だけでは、安心して眠って良いんだよ?」
「いままで……眠れなかったのに?」
「でも、いま、さゆみの前では眠れてたでしょ?」
「考え事をしていただけで、眠ってはいません」

その答え方に、里保は見た目よりもずいぶんと子どもだとさゆみは思う。
ひとりですべてを抱え込めるほど大人じゃないのに、抱え込まざるを得ない環境に放り込まれ、自分を追い詰める。
敵が襲ってきたなら、彼女は必ずひとりで刀を振るい、仲間の盾になる。
自分の方がずっと年上なのに、彼女の背中ばかり、見てしまう。


「私はただ、道重さんの気配を感じ取れなかったことが」
「それだけ、鞘師が此処に居るのが普通になった、ってことじゃないかな」

大人びた表情で笑って見せると、里保はぐっと息を呑んだ。
再三言葉が遮られたが、苛立った表情を一切見せなかった。それが彼女の仮面なのかどうか、さゆみにはまだ判別できない。

「それとも、さゆみといっしょに居るのが普通になった、って言った方が良いかな?」

絆すように、試すように、さゆみは笑った。
が、里保は一瞬の間を開けたものの、「……意味が、分かりません」としっかりと返してきた。
予想通りとはいえ、相変わらずの返答に「ちょっとひどくない?」とおどけてみせる。
里保はそれを見て、先ほどまでの硬い表情をようやく崩した。
目を細めて息を吐く姿は、やっぱりまだ子どもだ。そういえばこの子、まだ中3なんだよねとさゆみは改めて納得する。

「傍にいるのが当たり前になったんだよ。運命共同体っていうか、リゾナンターは……仲間は、自分自身の一部みたいなものなんじゃないかな」
「そうなんでしょうか……」

里保はそう言うとサイダーのペットボトルをくるくる回した。
さゆみの言葉を受け止め、受け入れようとする姿は、また少しだけ大人びる。
大人と子どもを行ったり来たりするこの子は、忙しい。ちょうどいまは、過渡期なんだろうな。と思う。
ホントならもっと子どもでも良いはずなのに、それを環境が許さない。立場が人をつくるとはよく言うが、それが良いばかりとは、さゆみには思えなかった。
自分だって此処に立って初めて、リゾナンターをまとめるという役職の意味を理解したものだけれど。

「鞘師だって聴けるよ、いつか。鈴木が聴きたかった“音”がさ」

その言葉に里保は目を見開いた。
なぜそれを知っているのか?と目で訴えているが、さゆみは答えない。その方が、大人っぽいでしょ?と笑う。
別に無理に聞き出したわけじゃないよ?あ、盗み聞きしたわけでもないからね、念のため弁解するけど。
そんなさゆみの心の声が聞こえたのか、里保は観念したように笑った。あ、やっぱり鞘師は、そういう笑顔の方が似合ってるよ。


「道重さん……」
「うん?」
「いつか、いつか私にも―――」

里保が言葉を紡ごうとした瞬間だった。
風が啼き、窓を叩いた。空気が濁り、血の匂いがする。月がまた微かに雲に隠れる。
さゆみは思わず舌打ちしそうになった。よりによってこのタイミングで、と思っていると、既に彼女は立ち上がっていた。
腰のホルダーに備え付けてあったペットボトルの蓋を開け、ぼたぼたと床に零していく。
その表情は、さゆみの位置からでは見えなかった。もう笑顔は、見えなくなってしまった。

「月から魔物でも降りてきたんですかね」

里保は自嘲気味に笑うと水に手を翳した。静かな詠唱のあと、それはゆっくりと刀と成った。
ああ、私はまた、この子の背中を見ている。どうして、いつも、こうなるんだろう。
さゆみは前髪をかき上げ、コップをテーブルに置いた。ガタガタと窓は鳴りつづける。うるさいなあ、もう。分かった、分かったよ。
里保が刀を構えるそのすぐ横で、さゆみもゆっくり拳を構えた。
その姿に里保は驚いたように顔を上げるが、さゆみは目を合わせずに「視線は向こうだよ」と告げる。

「だいじょうぶだよ」
「え?」
「約束する。絶対、鞘師はだいじょうぶだから」

なにが、どう。だいじょうぶなのか。いったいなにが絶対なのか、さゆみ自身分からなかった。
だが、その言葉は口から滑り出ていた。ただ里保に、伝えたかっただけなのかもしれない。
足手纏いと言われていた自分が、それでもいちばん上に立ってしまった自分が、いま、リゾナンターを支えている彼女に対して。
キミは、決して独りじゃないのだと。


「………居て下さいね」

ガタンと物音がした。
外にいる“なにか”がドアを蹴破って入ってこようとしているようだ。
ドアから目を逸らさずに、さゆみは「え?」と聞き返す。
里保もまた、視線をさゆみに渡すことなく、それでも柔らかく笑って、言った。

「その音が聴こえるまで、傍に居て下さいね―――」

「生」も「死」も、等しく目の前にぶら下がっている。遅いか早いか、ただそれだけのことだ。
表裏一体の世界の中で、闘いの道を歩いていく。もしこの闘いに終末があるとすれば、それはきっと、泡沫のような希望だ。
それでも、それでも私たちは、必死に足掻いてもがいて、生き延びると決意する。


―――喜んで


ドアが蹴破られた。
それと同時に里保とさゆみは一歩踏み出す。風が吹き、雲が流れた。月が三度顔を出す。
真っ黒な闇に呑まれないように、ふたりは抗いの刃を突き立てた。
さゆみのその柔らかい「想い」は、闇に呑まれることなく、真っ直ぐに里保へと届いていた。




投稿日:2013/09/19(木) 21:15:57.47 0














最終更新:2013年09月20日 04:59