『Regret d'agonie』



【但し書き】

  • ↓の話は~ コールドブラッド~の二次創作的な何かです
  • 設定の一部を使わせて頂いてますが完全に踏襲しているわけでもないです
  • ~コールドブラッド~を好きな方は不快に思われるかもしれません
 前もってお断りしておきます
  • ~コールドブラッド~なにそれ?未読だけど何か面白そうという方は回避されることを一応推奨しておきます




いたい……くるしいよ
いたい……だれかたすけて

…わたしに手を差し伸べてくれる「人間」なんかこの世界にいやしない
そんなことはわかってる
それがわかったからこんなことをしたんだ

でも…みじめだよ
苦しいよ
だれにも望まれずこの世界に生まれてきた
自分では望んでいない「力」の所為で振り回されて生きてきた
そして最後はこんな暗闇で一人苦しみながら死んでゆくなんて

ねえサブリーダーさん
あなたが自分の命を賭けてまで倒そうとした「吸血鬼」はまだくたばってませんよ
お堅いリーダーさん
どんな任務も完璧に果たしてきたあなたらしくないじゃないですか
「人類」の敵を殲滅するのがあなたのご立派な使命なんでしょう
さあ憎むべき「吸血鬼」にとどめを刺してくださいよ


声も出ないや
そうだよね
わかってる
あの二人がミスってわたしが生きているのを見落とすはずがない
情けをかけて見逃してくれたわけでもない
わたしはもう助からない
そんなことわかり過ぎるくらいにわかってるんだ


わたしは「吸血鬼」だ
ノーマルの人間では有り得ない身体能力と超感覚を持っている
物理的なダメージにも強い
ちょっとぐらいの傷なら超速再生していくしほんと
どこの破面(アランカル)だってぐらいのものよ
我が名は第6エスパーダ、コハルーノ・クスミリエなりってなぐらいのものよ

わたしは「吸血鬼」だ
普通の人間では私の肉体は壊せない

でも痛いんだ
この痛みは肉体が感じている痛みなのかそれとも心が感じている痛みなのか

わたしは「不死者」だけど「最強」ってわけでもないし「無敵」の存在なんかでもない
闘争に負けることもあるし、その結果徹底的なダメージを与えられたら死ぬこともあり得る
その相手が脆弱な「人間」などでなく同じ「吸血鬼」だったら

あの人はわたしを斃すために「人間」としての生を捨てた
そして手にした「吸血鬼」の力で抉られた心臓を再生するのはさすがのノーライフキングでも無理みたいだ


わたしが意識を保てているのは復活する兆しじゃない
「吸血鬼」の生命力があまりにも強靭すぎるから
即死している筈の傷を負っても惨めったらしく魂だけがこの世界にしがみついてるんだ
身体のそこここに残っている命の絞りかすがわたしに最後の夢を見させてるんだ
最低最悪の悪夢ってやつを


…ふん
それとも
もしかしてこれは仲間を裏切って殺めたわたしへ神さまが与えた罰?
いつ終わるとも知れない痛みの煉獄で苦しめとでも?
もしそうなら神さま
あんたはとことん間違っているよ

確かにわたしは「リゾナンター」のみんなを裏切ったかもしれない
でも、でも、でも、でも最初に裏切られたのはわたしのほうなんだ
わたしは「吸血鬼」として「人間」を狩っていくつもりなんてなかった
「人間」の「血」を欲する本能を抑えて「リゾナンター」として生きていくつもりだった
普通の「人間」に紛れて生きていくことは困難でも「リゾナンター」の「仲間」となら生きていけると思ってた
でもそれは間違っていた

結局、誰かが他の誰かと完全にわかり合えることなんてありえない
それはサイコフォース「リゾナンター」として戦ってきた日々が教えてくれた
「リゾナンター」の目的は普通の「人間」では扱い難い犯罪者を摘発検挙粛清することだった
その対象は普通の「人間」とは異なる能力者であったり、人知を超えた化け物であったわけだけどそれらですべてってわけじゃなかった


偏執的な妄想に捉われたシリアルキラー
原理的な教義に殉じたカルト
「リゾナンター」の任務の対象は実のところ、生物学的には普通の「人間」の方が多かった
でも「人間」である彼らに「人間」の言葉は届かなかった
自分の中に築かれた価値観ですべてを判断し、他者の価値観など一瞥だにしない。

同じ「人間」同志であってもそうだった
だから「人間」とは異なる種族の「吸血鬼」のことなんて最初からわかろうともしない
「吸血鬼」が何者を愛し、何者を憎み、何を欲し、何に怯えるのか
そんな考えが頭を過ることもなく平気で駆逐していく

わたしの身体に「吸血鬼」の血が流れていると知ったらあの人たちは平気でわたしのことを駆除しただろう
わたしが笑っていたって怒りを見せたって涙を流したってその意味をわかろうともせず

だからそうなる前にわたしの方から仕掛けたんだ
自分の「生」を全うするために
与えられた「吸血鬼」としての生命を最後の最期まで生き抜くためにわたしは動いたんだ

これまでに「人間」はどれだけの種類の生命を根絶やしにしてきたんだろう
百?千?万?
だったらいいじゃん
万物は流転するんだよ
今度はあんたら「人間」が泣く番だよ
だからわたしは悪くない
悪くないわたしがこんなに苦しむなんて間違ってるよ


痛っ

あ痛っ

あー痛っ

あー痛いっ

あ、痛たたたたたたた

誰か助けて! ヘルプミー!!

ホントまじ痛い

指先一本動かないのに痛みだけ増していくって感じ
これはやっぱ助からないかな
痛みで覚めた時は結構期待したんだけどな
一度は諦めたワンピースの最終回を読めるかなと思ったんだけどな
まあどうせこれまでの冒険で出会った仲間たち、経験の全てが一つながりの財宝だ(ドン!!
みたいなオチだとは思うけど
やっぱ想像するのと自分の目で確かめるのとは違うし

痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛っ




ほんとうは居場所が欲しいだけだった
誰かにこんなあたしでも生きていていいって声をかけて欲しかった
ただそれだけ


もっと違うやり方があったんじゃないかな
あの人たちの前から姿を消して
あの人たちの目の届かない場所で生きていくって選択だってあった

でも私は確かめたかった
「吸血鬼」に堕ちた仲間を救う道をあの人たちが選ばないか
もしも選べなくても仲間だった「吸血鬼」の粛清を一瞬でも躊躇わないかってこと

結局わたしの身勝手でみんな死んじゃったんだね
わたしが「人間」を否定するのも「人間」がわたしを否定するのもおんなじだ
わかってたはずなのに

取り返しのつかない過ちを犯してしまった
あやまったって許してもらえるはずもないけど

ご…め・んな…

へぇあなたは生き延びたんですか
どう考えたってろくでもない未来しか待ち受けてるように思えないですけど

      • 一人になったね






投稿日:2015/03/26(木) 12:14:05.61 0





















最終更新:2015年03月28日 00:01