■ アバウトイシカワリカ -   X石川梨華- ■



■ アバウトイシカワリカ -   X石川梨華- ■

「うっぷ…むぐっ…おえっ…おえぇぇっ…」
「高橋!またなのアンタ!」
「ハァハァ…だっ…だいじょう…ぶです…」
「ケケケなんら?こいつ。」
「【読心術】やろ?戦場の殺意濃すぎて酔ってるんやて、なっさけな。」
「そこのふたり!ちょっとだまって!…ったく!いいわ!この作戦中【読心術】はセーブしておきなさい。」
「えっでも…」
「1班は作戦通り、2班の前衛はアタシが出ます。高橋と新垣はアタシの後ろにつきなさい!」

――――――――

「【念動力】…ですか?」

何重もの隔壁に守られた、秘密の地下施設。
そこに集うは、新垣里沙、そして8人の新しきリゾネイター。
学校終わり、放課後、喫茶リゾナントを愛佳たちお姉さんチームに任せ、
折を見てはこうした時間が設けられていた。

「そう、【念動力】、それも、とてつもなく強力な、ね」

【念動力(サイコキネシス;psycho kinesis)】

「効果範囲は、最大で、およそ十数メートル。
パワーは…そうね、自動車ぐらいなら軽く持ち上げちゃって、
潰したり、ねじ切ったり、もー、けちょんけちょんよ。
当然、人間なんかひとたまりもないのよ。」

破壊と防御。
強大な、見えない、巨大な力。


それが石川梨華の【能力】。

――――――――

閃光。

衝撃波。
無数のボールベアリング。

轟音。
そして爆炎。

恐怖、硬直、混乱。

なにもわからない。
身体が、動かない。

何も見えない。
ただ、網膜に写るだけ。

一瞬で呑み込まれる。
黒煙に、あの人の背中が…

ただ、写るだけ。
その腕に輝くエンブレム『有棘鉄球に鎖』、ただ、それだけが。

停止。

無数の、ボールベアリング。


炎と煙、その中に。
中空に浮かぶ、小さな鉄球群。
ゆっくりと蠢き、そして、バラバラと落ちていく。

「高橋!新垣!被害報告っ!」

何も聞こえない。
ただ、鼓膜を揺らすだけ。

「新垣!…新垣!…マメ!」
「……はっ!ハイッ!」
「被害報告!」
「あっ…ありません…被害ありませんっ!」
「なら後方警戒っ!」
「ハイっ!」

――――――――
「いやもー、強いなんてもんじゃないのよ!そりゃーもーなのよ。」

人差し指を立て、額にしわを寄せる

「でも、もともとの強さ以上に厄介なのが、
いまのあたしたちにとって、石川さんは、
あまりに『相性』が悪い、ってことよ。」

「『相性』が悪い?」

「ほーなのよ、今のあたしたちには…」


あたしたちには、愛ちゃんが、いない


――――――――

破壊、破壊、破壊。
その発射音の軽さからは想像もできぬ破壊力。
タイルが割れ、モルタルが飛び、コンクリートが削り取られる。
次々と頭上を脅かす、無数の風切音。

「石川さん…血が!」
「大したことはないわ。さっき『ちょっと広げすぎた』だけ。」
「『広げ?』…」
「無駄口叩いてんじゃないわよ。
新垣、さっき重機(関銃)の位置は『見た』わね。
ならあなたの【能力】で、あれ黙らせなさい。
あの火力はちょっと煩いわ…
『出来る』わね?」
「はっハイッ!」
「重機が沈黙したら残りはアタシが潰します。
高橋は新垣を守りつつ援護。
いい?じゃあ新垣!やんなさい!」

――――――――

「『石川梨華の【念動力】には、濃度のようなものがある…』そう感じたのよ。」
「濃度…ですか?」
「そう…濃くて強い所と、薄くて弱い…ううん、隙間のように何もない所。
その事実に気づいたからこそ、あの時、愛ちゃんたちは…」


――――――――

「がはっ!高橋っ…あんた…」
「あのときのあーしは何も気づかなかった。
でも、今ならガキさんの言ったことがわかる…はっきりと…」
「まさか…あのときに…」
「…あの作戦から帰還した後…ガキさんが言ってたんです。
「『石川さんの【念動力】には濃い所と薄い所が…『隙間がある』と…」
「そう…気づいて…いたのね…」
「石川さん、あーし達は先へ進みます…ガキさんは…返してもらう!」

――――――――

「【瞬間移動】と【読心術】、この二つの能力を一人で持つ愛ちゃんだからこそ、
石川さんを倒すことができた。
でも、田中っちのついた愛ちゃんでも、
石川さんに肉薄するほどのチャンスは一度しか作れなかった。」


沈黙、その場を重い空気が支配する。

「見えない力…巨大な、見えない力…」
鞘師がつぶやく。
ウチなら、どうする?ウチなら、何ができる?

「…さって、ここからが本題。
もし、みーんなだけで、石川さんと遭遇することがあったら、どう戦うか…」

それが現実…

「まず、最初にやるべきこと…」

冷徹なる、その事実。

「『逃げ』なさい。全力で。」

そう

逃げなさい!



                              【index】





投稿日:2015/02/27(金) 00:16:35.93 0

























最終更新:2015年02月27日 13:22