理論派保守step4-1

『法学 (ヒューマニティーズ) 』 (中山竜一:著 (2009年))

《目次》
1. 法学はどのようにして生まれたか(なぜ法の歴史について学ぶ必要があるのか (西洋法の歴史 ほか)
2. 生きられる空間を創る―法学はどんな意味で社会の役に立つのか(法に期待される役割と背景にある思想 (活動促進と紛争解決―民事法の役割 ほか)
3. 制度知の担い手となる―法学を学ぶ意味とは何か(法学を学ぶ意味とは? (法的思考のいくつかの特徴―哲学との対比 ほか)
4. 法学はいかにして新たな現実を創り出すのか―法学と未来 (法的思考で現実は変えられるか、難事案をどのように判断するか(一)―ドゥオーキンの構成的解釈 ほか)
5. 法学を学ぶために何を読むべきか (BOOK GUIDE)
ドイツ系(大陸系)哲学をベースにした従来の観念論的な「法哲学」ではなく20世紀後半以降に大発展した英米系分析哲学をベースとする「法理学」への扉を開く一冊。左右の全体主義に陥らない法学基礎理論の第一歩として非常にお勧め。
なお、これとの対比で従来型の特定の観念・思想ゴリオシ型の「法哲学」の教科書として、笹倉秀夫『法哲学講義 』を挙げておくので、興味のある人はこの両者の法理論を比較してみられるとよい。(笹倉秀夫氏は丸山眞男の弟子で、同書も強度の左翼思想と自虐的史観に満ちており、現在の目で見ると明らかに特定思想のゴリオシが目立ち失笑ものである)
『二十世紀の法思想』 (中山竜一:著 (2000年))

《目次》
第1章 20世紀法理論の出発点―ケルゼンの純粋法学
第2章 法理論における言語論的転回―ハートの『法の概念』
補論 ハート理論における「法と道徳」
第3章 解釈的実践としての法―ドゥオーキンの解釈的アプローチ
第4章 ポストモダン法学―批判法学とシステム理論
補論 脱構築と正義―デリダ「法の力」
第5章 むすび
『法学(ヒューマニティーズ)』と併せて読んで欲しい。20世紀後半に起こった、ケルゼンに代表されるドイツ系(大陸哲学系)法学から、ハートに代表される英米系(分析哲学系)法学へのパラダイム・シフト(法理論における言語論的転回)に焦点を当てた好著。なお20世紀哲学の最大事件「言語論的転回」については『分析哲学講義』(青山拓央:著) が分かり易い。
『現代法理学』 (田中成明:著 (2011年))

《目次》
序論 法理学の学問的性質と役割
第1編 法動態へのアプローチ(第1章 法への視座、第2章 法システムの機能と構造、第3章 法の三類型モデル)
第2編 法システムの基本的特質(第4章 自然法論と法実証主義、第5章 法と道徳、第6章 法と強制)
第3編 法の基本的な概念と制度(第7章 権利と人権、第8章 犯罪と刑罰、第9章 裁判の制度的特質と機能)
第4編 法の目的と正義論(第10章 法と正義、第11章 実践的議論と対話的合理性、第12章 現代正義論の展開)
第5編 法的思考と法律学(第13章 裁判過程と法の適用、第14章 戦後の法解釈理論の展開、第15章 法的思考・法的議論・法律学、第16章 法的正当化の基本構造)
憲法その他の実定法をいかなる思想を持って定立すべきかを、かってのドイツ系の「法哲学(legal philosophy)」の立場からでなく、英米系の「法理学(jurisprudence)」の立場から考える重要な一冊。著者・田中成明氏は前記の中山竜一氏の師にあたる法理学者であり、本書は現在の日本の法理学(法哲学)の一応の最高到達点を示している(※但し、佐藤幸治氏と同じく京都学派に当たる田中氏は政治的スタンス分析では中間派に該当し、その主張内容には残念ながら些か中途半端で不徹底な所がある)。
『自由の条件』(全3巻) (F.A.ハイエク著(1960))

《目次》
第一部:自由の価値
第二部:自由と法
第三部:福祉国家における自由
自由主義の真髄を解き明かしてM.サッチャー(英元首相)のバイブルといわれた名著であり、自由と法の関係についてきちんとした知識を持つ上で必読の3巻本。続編の『法と立法と自由 』も3巻本で、一冊一冊が高価だが、図書館などで見つけて目を通して欲しい。論旨明快なため、内容はさほど難しくないはず。
『法の概念』 (H.L.A.ハート著(1961年))
20世紀後半の法理論に大転回をもたらした記念碑的な一冊であり、現在の法を学ぶ者は避けては通れない名著
しかし一般向けにも興味深いテーマを多く扱っており、また用語も難解でないので読みやすい。
法学徒は必読だろうが、そうでない普通の人にもオススメできる。

《以下概要》
本書では、まず「法は威嚇による命令である」という説を批判する。
その上で、法を第一次的ルールと第二次的ルールとに分ける。
第一次的ルールとは、制裁をもってして何らかの行動を強制するものである。
第二私的ルールとは、法として有効である権能を与える(契約・立法・裁判など)ものである。
法は不確定性をともなうので、法の周縁部においては常に解釈がともなう。他。
『公正としての正義 再説』 (J.ロールズ著 (2004年))

《目次》
第1部 基礎的諸観念(政治哲学の四つの役割 (公正な協働システムとしての社会 ほか)
第2部 正義の原理 (三つの基本的な要点、正義の二原理 ほか)
第3部 原初状態からの議論 (原初状態―その構成、正義の環境 ほか)
第4部 正義に適った基本構造の諸制度 (財産私有型民主制―序論、政体間の基本的対比 ほか)
第5部 安定性の問題(政治的なものの領域、安定性の問題 ほか)
J.ロールズ著『正義論 』といえば自虐的史観ではないマトモな左翼(=リベラル左派)のバイブル的基礎理論書であるが、本書は『正義論』以降の思想的発展を綴ったロールズ晩年の草稿を弟子エリン・ケリーがまとめたエッセンス本である。現代リベラル思想を代表するロールズの理論は難解だが、左派系の政治思想・法思想を押さえ的を外さずに批判・論撃する上で本書を批判的に読み込んでおく必要がある。

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最終更新:2019年12月22日 15:28