マルクス主義2

マルクス主義以外の体制論では、政治体制を、①全体主義体制、②自由民主制、③権威主義体制に3分するのが今日では一般的である。(ポパー、アレント、リンスの研究より)
このうち、①全体主義体制は、<1>共産主義・社会主義体制(マルクス主義体制)と、<2>ファシズム体制、に更に2分される。(ポパー、アレント)
なお、②自由民主制(liberal democracy)については、下記のように「民主主義体制」と表記されることが多いが、democracy の正確な訳語は「民主主義」ではなく「民主制」なので厳密にはこれは正しくない。
以下、日本語版ブリタニカ百科事典より引用。

政治体制
political regime
一定の支配=服従関係を中心とする政治的統一形態。
機能主義的概念として構築された政治システムと区別して用いられる。
全体主義体制、天皇制支配体制などはその例である。
R.A.ダールはポリアーキー概念により「民主主義体制」の相対化と操作化をもたらし、政治体制の比較分析、民主主義体制に至る過程研究の道を開いた。
またJ.J.リンスは現実の政治体制の多くは「全体主義」と「民主主義」の二元論で把握できるものではなく、その中間にある様々なタイプの「権威主義体制」に属するとしている。
現代社会において、支配階級は当の政治体制を維持するための権力装置やイデオロギーを公的権力および普遍的イデオロギーとして正当化しようとする。
それに対し、被支配者側が支配階級と対抗し、変革を志向する場合、体制維持に対して反体制運動、体制イデオロギーに対して反体制イデオロギーを形成する。
本来、体制という概念は社会構成体と同義であったが、それとの相関においてまたその派生体として「政治体制」という概念が成立したと考えられる。
開かれた社会とその敵
The Open Society and Its Enemies
批判的合理主義の代表的思想家であるK.R.ポパーが、ファシズムとマルクス主義という2つの全体主義の思想的源泉を探求した政治哲学書。1945年刊。
ポパーは呪術的でタブーに満ちた「閉じた社会」と、批判的な態度を持ち知性による非暴力的改善を目指す「開かれた社会」とを区別し、前者から後者への移行を押しとどめ閉じた社会にとどまろうする哲学的伝統こそが全体主義をもたらすと批判した。
具体的には、プラトン・ヘーゲル・マルクスがこうした伝統に属する哲学者として厳しく分析されている。
全体主義の起源
The Origins of Totalitarianism
アメリカの政治学者H.アレントの代表的著作。初版1951年。
第2次世界大戦後、最も早い時期に発表された最初の体系的な全体主義研究として知られる。
第一部「反ユダヤ主義」、第二部「帝国主義」、第三部「全体主義」の3部構成。
全体主義運動は階級社会の崩壊を基盤として成立したもので、一定のイデオロギー実現のために、孤立した諸個人をテロルの鉄枷で締め上げるところに、支配の本質がある、と論じ、そのような体制は厳密には①ナチズムと②スターリニズムのみであると主張する。
初版では反ユダヤ主義と帝国主義とを「西洋史の伏流」と捉え、全体主義はその表面化であるとされたが、改訂版以降は、全体主義は西洋史の連続性を切断する現象とされ、前2部との統一性は必ずしも明確ではなくなっている。
全体主義
totalitarianism
個人の利益よりも全体の利益が優先し、全体に尽くすことによってのみ個人の利益が増進する、という前提に基づいた政治体制で、一つのグループが絶対的な政治権力を全体、あるいは人民の名において独占するものをいう。
歴史的には、ナチス・ドイツ、ファシスト・イタリアなどのファシズム政治体制が挙げられるが、スターリニズムや毛沢東主義などを含むこともある。
①一党独裁、②政権の不誤謬性、③議会民主主義の否定、④宣伝機関の独占、⑤経済統制、⑥軍国主義、という共通点がある。
20世紀に出現した現象であり、マス・コミュニケーションと兵器の技術進歩によって、初めて可能となった。
従来の専制政治と異なるのは、大義が強調され、その下に個人の生活全般にまで統制が行われる点である。
権威主義体制
authoritarian regime
スペイン出身の政治学者ホアン・リンスによって唱えられた概念。
従来の民主主義と全体主義の二分法では捉えきれない中間形態を権威主義体制と考え、
「権威主義体制とは、制限されており、しかも責任の所在が不分明な多元主義を持ち、練り上げられた指導的イデオロギーでなく、内容の上でも高度な政治的動因もなく、指導者が形式的には無制限だが、実際には完全に予測可能な範囲内で権力を行使するようなシステム」と定義した。
具体的には、スペインのフランコ体制が出発点となるが、朴・全時代の韓国、マルコス時代のフィリピンなど、経済成長を目指す権威主義体制は、現代的な課題である。
権威主義体制
<ラテンアメリカの>
自発的結社や個人ではなく、国家が許可した少数の主体にのみ政治の実質的関与が限定され、全体主義ほど厳しい統制はないのが最大の特徴である体制。
民主主義に近いコスタリカ、コロンビア、ベネズエラと、全体主義に近いキューバを除いて、程度の差はあるが、
ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルーなど多くの国の軍政時代、及び文民政権のメキシコがこの分類に入る。
経済危機や世辞的要求の高まりから、1980年代に入り、いずれも民主化の課題を抱えることになった。
ファシズム
fascism
狭義には、イタリアで資本主義が全般的危機に陥った第1次世界大戦以降、労働者階級の革命運動の高揚に対抗して登場し、議会制民主主義を否定して反革命独裁を志向したムッソリーニに率いられた「ファシスト党」の運動・体制及びそのイデオロギーをいう。
「ファシズム」の語は「結束」を意味するイタリア語ファッショ fascio がファシスト党の母体である戦闘集団(Fasci de Combattimento)に使用されたことに由来するが、この語はさらに、古代ローマの執政官の権標であった儀式用具ファスケス fasces (斧を中心に木の棒を束ねたもの)にまで遡るという。
一般概念としては、それ以降の類似の現象を指すが、近年、多義的に用いられている。
極右政党・軍部・官僚中の反動分子らによる政治独裁を目指し、自由主義・社会主義を排撃し、全体主義・軍国主義・ナショナリズムの高唱などを特色とする。
具体的には、1920年代から30年代にかけて登場したドイツのヒトラー、スペインのフランコらによって指導された「権威主義体制」の運動及び体制が挙げられる。
このように当初はムッソリーニの運動だけを指す固有名詞であったファシズムは、やがて30年代に入ってヨーロッパを初め各国にそれと類似する運動が勃興するに及び、これらを一般的に総称する名称に転化した。

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最終更新:2011年11月01日 00:45