「ここは……」
突然の転移に、シュウ・シラカワは驚きを隠せない。
「チカ、空間座標算定を」
「はい!」
クチバシと足を器用に使い、コンソールを操作するファミリア。座標はそちらに任せ、シュウはカメラの目視で周囲を警戒する。
先程までシュウは、ラ・ギアスの空を飛んでいた。
金の鉱脈近くや、かつて高圧高温であった地殻付近でデモン・ゴーレムを作り出すと、金や宝石、或いはレアメタルを多く含んだデモン・ゴーレムが出来上がるので、普通に掘り出すよりも余程簡単に貴金属を採取可能となって非常に有用なのだ。
今日もその一環で近くの鉱脈跡へ向かっていたのだが、いきなり至近に鏡が現れ、回避する間もなくネオ・グランゾンはそこに突っ込んでしまったのだ。
「地平線……ここは地上ですか?」
そこでようやく、シュウはネオ・グランゾンの足下にいる人々が見えた。何やらその周りには地上でもラ・ギアスでもお目にかからないような珍妙な動物が沢山居たが。
「何です?ここは?」
いぶかしみながらも、外部の音声を入れる。
『……でゼロのルイズが!』
『こんなゴーレムを呼び出すなんて……!』
『でっけー!何メイルあるんだ!?』
『どう!これが私の実力よ!』
声を拾い聞きすると、どうも調度目の前に立っている少女が、自分を強制転移させた存在らしい。
「……座標算定はどうです?チカ」
「んー、もう少しかかりますねー」
一応状況を確認すべきか。大気の成分は……問題ない。
コクピットハッチを開放し、表へ出るシュウ。
自分の姿に、ざわざわと地上がどよめく。
「お初にお目にかかります。私の名前はシュウ・シラカワ。そしてこれは、私の愛機ネオ・グランゾンです」
優雅に一礼し自己紹介する。そのままネオ・グランゾンの掌に移り地上へ降りる。
「さて、お話を聞く限りどうやらあなたが私をここへ連れてきたようですが……どういうつもりなのか、聞かせて頂きますよ?返答次第ではタダではおきませんが」
と言いつつ、桃色の髪の少女に鋭い視線を向ける。その鋭さに一瞬腰が引けたが、必死に自尊心をかき集めて正対して見せた。
「……つまり、私はあなたに使い魔として呼び出されたという訳ですね?」
少女と、時たま補足説明をしてくる頭髪の薄い中年男性の説明を聞いたシュウは成る程、と首を縦に振った。
「ええ、そうなるわ。本当なら、平民なんて願い下げだけど、仕方ないし。多分召喚されたのはあんたで、ゴーレムはおまけなんだろうし。まぁまぁ許せるくらいには美形だし……さ、契約をするんだから少しかがみなさい」
少しかがませて、何をしようと言うのかは判らないが、どちらにしろ自分には関わりのないことだ。
「お断りします」
きっぱりとシュウは言い放った。
「な、何ですって!?」
「私に命令を下して良いのは私だけなのです。そして何者も私を利用することは許しません。使い魔などもってのほかです」
手を胸に当て、見下すように言う。
まぁ、正直契約とやらを行っても、ヴォルクルスの支配すら逃れて見せた自分ならば、平気で使い魔としての支配からは逃れられそうだなとは思うが。
「平民のくせに!貴族に逆らう気!?」
「……その言い方、下品ですよ?」
蔑むような目を向けて言う。
「血筋でもって自身の正当性を主張するような感性は、改めた方が良いと思いますがね」
その一言に、今まで少女を嗤ってきた連中の目も、射殺さんばかりにシュウに向けられたが、それを嘲笑で受け流す。
「ともかく、私は使い魔には成りませんし、そもそも使い魔に向いても居ないと思いますから、別な使い魔を召喚する方が早いと思いますよ」
「そうもいかん」
と男が告げる。
「サモン・サーヴァントは神聖なものだ。やり直させる訳にはいかんよ」
「旧習、ということですか」
やれやれとため息をつく。
「どうか、彼女の使い魔に成ってやってくれんか……これが出来なければ、彼女は進級出来ないのだ」
コルベールの言葉に、ふかーくため息をついた。
「それでは、仕方有りませんね……」
顔だけ彼女の方に向ける。
「ふん、ようやくかんね……」
「進級は諦めて下さい」
「……は?」
くるりときびすを返し、ネオ・グランゾンの手に乗り、コクピットへ戻る。
なにやら騒いでいる少女は放置し、そのままネオ・グランゾンを上昇させていった。
「チカ、次元座標算定は?」
「はーい、出来てますよー」
「では、帰るとしましょうか」
ネオ・グランゾンの対消滅エンジンが低いうなりを上げると、ハルキゲニアの空からその姿はかき消えた。
突然の転移に、シュウ・シラカワは驚きを隠せない。
「チカ、空間座標算定を」
「はい!」
クチバシと足を器用に使い、コンソールを操作するファミリア。座標はそちらに任せ、シュウはカメラの目視で周囲を警戒する。
先程までシュウは、ラ・ギアスの空を飛んでいた。
金の鉱脈近くや、かつて高圧高温であった地殻付近でデモン・ゴーレムを作り出すと、金や宝石、或いはレアメタルを多く含んだデモン・ゴーレムが出来上がるので、普通に掘り出すよりも余程簡単に貴金属を採取可能となって非常に有用なのだ。
今日もその一環で近くの鉱脈跡へ向かっていたのだが、いきなり至近に鏡が現れ、回避する間もなくネオ・グランゾンはそこに突っ込んでしまったのだ。
「地平線……ここは地上ですか?」
そこでようやく、シュウはネオ・グランゾンの足下にいる人々が見えた。何やらその周りには地上でもラ・ギアスでもお目にかからないような珍妙な動物が沢山居たが。
「何です?ここは?」
いぶかしみながらも、外部の音声を入れる。
『……でゼロのルイズが!』
『こんなゴーレムを呼び出すなんて……!』
『でっけー!何メイルあるんだ!?』
『どう!これが私の実力よ!』
声を拾い聞きすると、どうも調度目の前に立っている少女が、自分を強制転移させた存在らしい。
「……座標算定はどうです?チカ」
「んー、もう少しかかりますねー」
一応状況を確認すべきか。大気の成分は……問題ない。
コクピットハッチを開放し、表へ出るシュウ。
自分の姿に、ざわざわと地上がどよめく。
「お初にお目にかかります。私の名前はシュウ・シラカワ。そしてこれは、私の愛機ネオ・グランゾンです」
優雅に一礼し自己紹介する。そのままネオ・グランゾンの掌に移り地上へ降りる。
「さて、お話を聞く限りどうやらあなたが私をここへ連れてきたようですが……どういうつもりなのか、聞かせて頂きますよ?返答次第ではタダではおきませんが」
と言いつつ、桃色の髪の少女に鋭い視線を向ける。その鋭さに一瞬腰が引けたが、必死に自尊心をかき集めて正対して見せた。
「……つまり、私はあなたに使い魔として呼び出されたという訳ですね?」
少女と、時たま補足説明をしてくる頭髪の薄い中年男性の説明を聞いたシュウは成る程、と首を縦に振った。
「ええ、そうなるわ。本当なら、平民なんて願い下げだけど、仕方ないし。多分召喚されたのはあんたで、ゴーレムはおまけなんだろうし。まぁまぁ許せるくらいには美形だし……さ、契約をするんだから少しかがみなさい」
少しかがませて、何をしようと言うのかは判らないが、どちらにしろ自分には関わりのないことだ。
「お断りします」
きっぱりとシュウは言い放った。
「な、何ですって!?」
「私に命令を下して良いのは私だけなのです。そして何者も私を利用することは許しません。使い魔などもってのほかです」
手を胸に当て、見下すように言う。
まぁ、正直契約とやらを行っても、ヴォルクルスの支配すら逃れて見せた自分ならば、平気で使い魔としての支配からは逃れられそうだなとは思うが。
「平民のくせに!貴族に逆らう気!?」
「……その言い方、下品ですよ?」
蔑むような目を向けて言う。
「血筋でもって自身の正当性を主張するような感性は、改めた方が良いと思いますがね」
その一言に、今まで少女を嗤ってきた連中の目も、射殺さんばかりにシュウに向けられたが、それを嘲笑で受け流す。
「ともかく、私は使い魔には成りませんし、そもそも使い魔に向いても居ないと思いますから、別な使い魔を召喚する方が早いと思いますよ」
「そうもいかん」
と男が告げる。
「サモン・サーヴァントは神聖なものだ。やり直させる訳にはいかんよ」
「旧習、ということですか」
やれやれとため息をつく。
「どうか、彼女の使い魔に成ってやってくれんか……これが出来なければ、彼女は進級出来ないのだ」
コルベールの言葉に、ふかーくため息をついた。
「それでは、仕方有りませんね……」
顔だけ彼女の方に向ける。
「ふん、ようやくかんね……」
「進級は諦めて下さい」
「……は?」
くるりときびすを返し、ネオ・グランゾンの手に乗り、コクピットへ戻る。
なにやら騒いでいる少女は放置し、そのままネオ・グランゾンを上昇させていった。
「チカ、次元座標算定は?」
「はーい、出来てますよー」
「では、帰るとしましょうか」
ネオ・グランゾンの対消滅エンジンが低いうなりを上げると、ハルキゲニアの空からその姿はかき消えた。
「時空間座標固着終了――結界展開」
見慣れた、球の内側のラ・ギアス。元居た場所にたどり着くと、シュウはすぐさま先程まで居た世界を次元的に閉じこめた。
これであの世界は異世界と交流することは出来なくなったはずだ。結界の効力は精々200年といったところだが、少なくとも自分が生きている間は二度とあんな忌まわしい召喚の対象となることはないだろう。
「……ふっ。あの世界のみを次元的に孤立させるなど、私のネオ・グランゾンの力をもってすれば造作もありません」
似たようなことはガンエデンもやっている。
「しかし……ふむ……」
先程は自分の召喚された理由のばかばかしさに勢いに任せて戻ってきてしまったが、その事を除けばちょっと惜しかったか、と久しく知的好奇心を満たされていなかった心が疼いた。
見慣れた、球の内側のラ・ギアス。元居た場所にたどり着くと、シュウはすぐさま先程まで居た世界を次元的に閉じこめた。
これであの世界は異世界と交流することは出来なくなったはずだ。結界の効力は精々200年といったところだが、少なくとも自分が生きている間は二度とあんな忌まわしい召喚の対象となることはないだろう。
「……ふっ。あの世界のみを次元的に孤立させるなど、私のネオ・グランゾンの力をもってすれば造作もありません」
似たようなことはガンエデンもやっている。
「しかし……ふむ……」
先程は自分の召喚された理由のばかばかしさに勢いに任せて戻ってきてしまったが、その事を除けばちょっと惜しかったか、と久しく知的好奇心を満たされていなかった心が疼いた。
(元の世界に帰るのが)造作もない使い魔・完